老人支配国家 日本の危機 : エマニュエル・トッド 著 2021年11月 文春新書
数年前からトッドが書くものを注目し、何冊か読んできた。幼児死亡率からソ連の崩壊を予言した人口学者として有名で、例の2015年「シャルリ・エブド」(パリ)の襲撃事件を受けてフランス各地に起きた動きに関する論説は他にないユニークなものであった。
本書はその後文藝春秋に何度か書かれたものを集めたものだが、こんなに書かれていたとは知らなかった。例えば、トランプが当選するまえ、当選を予言するところまではいっていないが、多くの支持を集めている背景を説得力ある形で説いている。すなわち日本にはあまり入ってこない白人中下層の意識であって、高学歴リベラルのインテリや新聞などの視点からは抜け落ちている層である。
結果としてそれは当たっており、トランプは次の選挙で敗れたが、問題は変わっていない。
そのほか、人口と家族構造から多くを説き起こしていて、仮設にとどまっているかと本人も行っているケースもあるけれども、まただからどうせよとすぐにはならないにしても、今日世界に起きている難題を落ち着いて理解する助けになる。
おりからアメリカ(民主党)が世界に民主主義、人権をアピールしているけれども、独裁主義とはいわないまでも「権威主義」(最近こういうことが多い)の支配国数の方が多い現代であり、中にはなんとか治まって人民が生きていけている国もあるということを、どう考え、国際政治のなかで動いていったらいいのか、しばらく見ていく必要はあるのだろう。
またこの中には、よく見ている「英雄たちの選択」(NHK BSP) の磯田道史との対談もあり、思考実験として面白い。
一つ一つの指摘についてどうかということは、ここでは置いておく。
数年前からトッドが書くものを注目し、何冊か読んできた。幼児死亡率からソ連の崩壊を予言した人口学者として有名で、例の2015年「シャルリ・エブド」(パリ)の襲撃事件を受けてフランス各地に起きた動きに関する論説は他にないユニークなものであった。
本書はその後文藝春秋に何度か書かれたものを集めたものだが、こんなに書かれていたとは知らなかった。例えば、トランプが当選するまえ、当選を予言するところまではいっていないが、多くの支持を集めている背景を説得力ある形で説いている。すなわち日本にはあまり入ってこない白人中下層の意識であって、高学歴リベラルのインテリや新聞などの視点からは抜け落ちている層である。
結果としてそれは当たっており、トランプは次の選挙で敗れたが、問題は変わっていない。
そのほか、人口と家族構造から多くを説き起こしていて、仮設にとどまっているかと本人も行っているケースもあるけれども、まただからどうせよとすぐにはならないにしても、今日世界に起きている難題を落ち着いて理解する助けになる。
おりからアメリカ(民主党)が世界に民主主義、人権をアピールしているけれども、独裁主義とはいわないまでも「権威主義」(最近こういうことが多い)の支配国数の方が多い現代であり、中にはなんとか治まって人民が生きていけている国もあるということを、どう考え、国際政治のなかで動いていったらいいのか、しばらく見ていく必要はあるのだろう。
またこの中には、よく見ている「英雄たちの選択」(NHK BSP) の磯田道史との対談もあり、思考実験として面白い。
一つ一つの指摘についてどうかということは、ここでは置いておく。