「幸福のスイッチ」(2006年、105分)
監督・脚本:安田真奈
上野樹里、本上まなみ、中村静香、沢田研二
上野樹里が出ているからというだけの動機で見たもの。
和歌山県郊外の電気屋に育った三姉妹の真ん中の子(上野樹里)が売るよりは修理、面倒見中心の父親(沢田研二)に嫌気がさし、志望のアート系の仕事を求めて上京するが、芸術家気取りで仕事先で衝突し、辞めたところに妹(中村静香)から大げさな連絡が入り帰ってくると、姉(本上まなみ)は妊娠中だが無事で、実は父が骨折し店の仕事を手伝ってほしいということがわかる。
当然、仕事のやり方には戸惑うし、勝手な要求をする客ともなかなか折り合わない。しかし、こんな電気屋さんも昔はあったよね、と見る人も少しずつ納得するから、結末までの成り行きはだいたい想像するとおりで、次第に彼女も理解を示していく。
こういう話だから、こういう地域の景色、人間模様にほっとしていい気持ちになる反面、ドラマ、映画としての見栄えには欠けている。
がしかし、飽きないで最後までみることが出来るのは、この親子(母親は故人の設定)4人の出演者と、淡々とした脚本、演出、カメラのせいだろう。
特にカメラは、場面ごとに固定でアングル変更、ズームもなし、そしてTV画面を見ていてもわかるのは広角レンズで焦点深度が深いせいか背景までしっかりと見えること。これが見るものに安定感を与えるのではないか。
最近の日本映画では、よくある風景を隠さず撮っても映画としてみすぼらしく見えなくなった。これも進歩だろう。
上野は予想通りうまいが、彼女でないとという役柄ではない。本上も違和感がない。はじめて見る三女役の中村静香には見ているうちに存在感も感じられてきた。いい素材である。
沢田研二の父親は、娘達が辟易しそうなところを始めとして全般にうまい。しかしもう体重は元に戻らないにしても、この人がこういううまさだけになってしまったのかな、と感慨を覚えてしまうのだ。