yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

Love Situation 10

2018-08-04 12:34:00 | love situa...








年代物の重厚な扉


綺麗な手から作り出されるカクテル


落ち着いた客層


静かな音楽


暖かみのある照明


綺麗に磨かれ並べられたグラス


年代を感じるカウンター


アンティークな椅子






その場所が好きだった。






でも、もうこの場所には来ないで欲しいと言われた。






あの日。


その日は朝から雨が降っていて、他には誰もいなかった。
いつものようにここの雰囲気を味わいながら
大野の綺麗な手から作り出されるカクテルを眺めていた。


そしてその手から差し出されるカクテルを受け取ろうとしたその瞬間。
冷たい空気がふっと流れたような気がした。
何だろうと顔を上げると、思いつめたような顔をした大野に
もうこれでここに来るのは最後にして欲しいと言われた。








だから。


だから仕方なく他の場所を求めた。


今日はこっちのバー
翌日はあっちのバー


ここの代わりとなれる場所を探し求める。


新しくて綺麗なバー。
この場所と似た雰囲気の年代を感じるバー。
おいしいカクテルを出してくれるバー。
綺麗な女の人がたくさんいるバー。


行き場を失った穴を埋めてくれる場所であれば、どこでもよかった。


夜景が綺麗で有名なところ。
海が見えるロマンチックなところ。
賑やかで煌びやかなところ。
雰囲気があって落ち着いたところ。


でも代わりとなる場所はどこにもなくて、
行き場を失った俺はまた大野のいるそのバーを訪れた。







なぜ自分がそんなにも固執するのか。






本当は自分自身気付いていた。







高校の時、松潤と大野が付き合っているという噂が流れた。
確かに二人は仲がよかった。
肩を寄せ合っていたり、顔を近づけて話していたり。


でも。


そんな噂が流れても
仲が良すぎるくらいの姿を見ていても
何か違うと思っていた。


それは多分大野が自分に好意をよせていることに気付いていたから。
いつも、いつでも視線は自分へと注がれていたから。
だから大野が自分の事を好きであるという事を知っていた。


だけど。


仲が良すぎる二人。
二人が付き合っているという噂。
二人がイチャイチャしている姿。
それに対して周りがキャーキャー言う声。


それまで大野に対して何とも思っていなかったのに
それを目にする度にイライラして仕方なかった。
そしてそれを気にしている自分が一番バカみたいで嫌だった。
だから大野に対して余計ムカつき酷い態度をとった。


でも。


なぜか心のどこかでは大野はまだ自分への好意は変わらないだろうと思っていた。
キスをした場面を見てしまった時もあった。
冷たく接し俺の事を全く見る事もなくなった。
それでもその思いは変わらなかった。
そしてそれは卒業しても、そして数年ぶりにあった同窓会でも、そう思っていた。


だから。いや、だからなのか何なのか自分でもよくわからない。
忘れていたはずなのに、その姿を見かけた途端。
なぜか大野の事が気になって大野の働くバーを突き止めそしてここに通った。
でもそれはただ自分がそう思っていただけで本当は違ったのか。


それでもなぜか再びこの場所へとやってきて、そして酒を飲んでいる。
そして大野が仕事を終えるのを待ち、
一刻も早く帰りたがっている大野の手首をつかみそれを引き留めている。
一体自分でも何をしているのかわからない。


ただ謝ろうと思っていた。


来ないで欲しいと言われたのに今日来てしまった事。
高校の時の事。
今までの事。


でもそれまでの事もあっての事だろう、
そして今さらという思いもあるだろう
大野が困惑しているのがありありとわかった。
そして困惑しながら掴まれたままの手首と俺の顔を交互に見ている。


そして困惑している姿を見ながら困り果てている自分自身。
自分でも何をしてるのか、そしてどうしたらいいのかわからない。








本当は高校の時から大野の事が気になっていた。
そして大野から向けられる視線の意味。


だから余計ムカついたしイライラしたし、ショックを受けた。


でも自分の思いに気付かないふりをしていた。
自分の気持ちに見てみぬふりをしていた。


言いたいことはたくさんあった。
高校の時の事。
そして同窓会での時の事。
そしてこのバーでの事。
そして大野に対しての自分の思い。


本当は凄い凄いと言われ伝説となった大野の踊るダンスも見たかった。
放課後ずっと残って教室で練習をしていたのを見ていて知っていたから。
図書室での勉強を終えるといつも用がなくても教室に戻り、
そして陰で努力し続けるその姿を見ていたから。
だから本当は見たかった。


だけどその時は文化祭なんてくだらないとそう自分自身に言い聞かせ
なぜ成績に全く関係のない事に夢中の慣れるのかとそんな冷めた目で見ていた。
だから見に行かなかった。


でも陰で努力し続ける姿も、数々の才能に恵まれながらもそれをひけらかさないところも
同級生から慕われている姿も自然と人が寄ってくる姿もずっと見ていた。
そして目鼻立ちがはっきりしていて目立つ松潤の影に隠れて目立たなかったけど
その綺麗な顔も、優しい性格も知っていた。


でも自分の気持ちに気付かないふりをして
そしてくだらないと自分に言い聞かせて
学校行事もろくに参加せず勉強ばかりして
見ぬふりをしていた。


本当は、


好きだったのに。


でも、今更気付いてももう遅いのだろうか。













「はなして」


何かを考えていたのだろうか俯いていた大野がゆっくり顔を上げ


俺の顔を真っ直ぐ見ると静かにそう言った。


そしてゆっくりと反対側の手を伸ばしてきて俺が掴んでいた手をはがそうとする。


それを抵抗をすることもできずただ見つめ、そして従う。


そして手がほどけると大野は何も言わず、そのまま静かに去っていった。


その姿を何も言えず


なにもできないまま、ただ見送った。












家に帰ってもイライラは収まらなかった。
何でアイツがあの場所にいたのか。
智とアイツの関係は何なのか。
繋がっているものは一体何なのか。
それとも智の言うように二人の間には何の繋がりもないのか。
だったらなぜアイツは?
そして智も。


何もかもが分からなくてイライラした。
全てはっきりとさせてしまいたかった。
でも惚れた弱みなのだろうか、智を傷つける事だけはしたくはなかった。
そしてこんな状況でもやっぱり智に甘い自分に苦笑いをする。
こんなにイライラしているのに。


でもこのイラつきをどうしたら…


遅い時間だったけど彼女を呼び出し、会った。


でもイライラは収まらなかった。





周りは綺麗で煌びやかなもので溢れている。


誰もが羨む世界。


華やかな人脈。


華やかな生活


華やかで綺麗な人々。


綺麗な彼女。



でもやっぱり智は違う、と思う。


ずっと見てきた。


ずっと好きだった。




でも女の子が相手だったら仕方がないと思っていた。


智に好きな子ができたなら心から応援しようと思っていた。


でもそれが違ったら?


それが櫻井だったら?





櫻井に会おう。



もう、心は固まっていた。















【おまけ】



『兄さんと一緒に見ていて』
『兄さんは?』


兄さん⁉


その思いがけない兄さん呼びの連呼に、何何? と3人で顔を見合わせる。
いや、確かにこれまでも大野さんに対して兄さん呼びは今までもあった。


でもなぜ、今、兄さん呼び⁉


まあ翔ちゃんにとって大野さんは一つ年上で確かにお兄さん的存在ではあるだろう。


でも、なぜに、今、兄さん?


兄さんと呼ぶたびに3人の頭の上には思いきり、はてなマークが浮かんでは消える。
とは言っても困惑している3人に比べ、相変わらず何でも受け入れてしまう大野さんは
平然と受け入れちゃって、普通に返事をしちゃってるけどね。


そんな事を思いながらまあ翔さんの中で兄さん呼びはブームだったのかな。
何て事を思い、すっかりそんな事も忘れていたある日。
何気なくテレビをつけていたら翔さんが番宣の為だろうかゲストで出ていて
その中でアニキ会というものが紹介されいた。


同じ番組に出ている人からアニキと呼ばれることに対してどうなのかと問われると
昔から同性から好かれ慕われる人の事が憧れで理想だと言っていた翔さんは
嬉しい事だと満面の笑みで答える。


ああ、そういう事か。


相変わらずこの人は大野さんに対して変わらないな。


そう思いながら画面に映る笑顔の翔さんを見て思わず笑みが浮かんだ。










「兄さん何飲む~?」

「……」

「ん?」

「何で兄さん?」


二人で部屋飲みをしようと酒の準備をしようとしたら
智くんは思いっきり頭にはてなマークを浮かべ聞いてきた。


「何でって俺にとってお兄さん的存在でしょ?」

「お兄さん的存在…」


そう当たり前のように答えると不満そうな顔。


「ダメ?」

「ダメじゃないけど…今は…」

「今は?」

「も、いい」


何だろうと不思議に思いながらそう聞くと
なぜか智くんはプイっと首を横に向けた。


「……へ?何?何?」

「うっさいなあ」


もしかして、怒って る?
何で? 俺なんか怒らすような事言った?


「え~だって気になるから」

「もう知らないっ」

「ごめん、ごめん」

「……」


慌てて謝る。


「……ね?」

「……」


でも智くんは相変わらずプイっとそっぽを向いたまま
こちらを向いてはくれないらしい。


「ね、智?」


でも、もしかして?


「……」


そう思いながら、智、と呼んでみたら
ようやくゆっくりと顔をこちらに向けてくれた。


「ごめんね、智」

「うっせえ」


照れているのか智呼びを連呼すると顔を真っ赤にしながらうっせえと答える。
その姿を見て可愛いなと思いながらも、ああ、そうかと思う。


「智、今日は何から飲もっか?」

「もうばかじゃないの」


こんな時くらいは兄さん呼びはないよね?


「ふふっ。ね、智キスしよう?」

「うるせーよ」


そんな事を思いながら、智キスしようというとますます顔を真っ赤にさせ
うるせーなんて言ってくるからその唇をふさぐようにチュッとキスをした。
本当は好きと尊敬と憧れの総称なんだけど、今は、違うよね。


「智、好きだよ」


なんて事を思いながら俯いていた顔を頬を包み込み上げさせると
そう言って、角度を変えもう一度唇を重ねそしてそのまま深いキスをした。













【untitled 感想】


すみません、お話ではなくてただの感想です。今更ですが💦
相変わらず遅いのです。。興味のない方はスルーで。


ハピネス。ニノちゃんにとってピアノだと。そして切なくなる曲だと。
こういうのが聞けたりするのがいいなぁと。今までのもぜひやってほしい。
そして全然関係ないですが切ないと言えば私は断然言葉よりも大切なものです。
MVを見ててもそうだしその時代に歌っていた姿を見ても切ない。
その時は何気なく見ていたのに、不思議です。


夜の影。ああいう風に軽く踊っている感じを見るのが好き。
肩から手首そして指の先まで動きが流れるようでいて躍動的でとても綺麗。
軽く踊っているのサマになっていて凄くかっこいい。
本番は相変わらずめちゃくちゃキレキレ。
松潤がいつも大野さんに振り付けをしてもらっても
ソロの時みたいな振り付けをしてくれないと嘆いてできあがったせいか
今回ソロ曲がなくても満足したのは、この曲があったのもあるかもなと思ったりして。


そして終わるとすぐに行ってしまうとニノちゃんが呟いていたのがツボです。
何だか心はもう夜の影にはなくてバズりナイトなのねって感じで。
大野さんにとっては時間との戦いで必死なだけだと思うのですが、
何だかニノちゃんはちょっと寂しそうなんですよね。そこがまたすごくいいです。


バズリないと。脱いだ後がめちゃくちゃ可愛いのですが。信じられない位可愛いのですが。
肩出してミニスカートはいて、何だか相葉ちゃんが照れて言ってるようにしか見えなかった。
翔くんも普通に大野さんの事しか最初言ってなくて、みんな凄いけどさって💦
後で気付いて誤魔化しているようにしかみえなかった。そういう翔くんが好き。好き。


そしてパペットダンス。これは日常で書いたのであれですがやっぱり凄いです。
そしてメンバーがああだのこうだの聞きだそうとしているのが好き。
色々誤魔化されちゃっていますが、そこも含めていい。
でも本当にあれは大野さん一人でやって正解だったと思います。


そしてそこからのつなぐ。重厚感がある衣装が本当に素敵。
一曲だけで少しもったいないような気もしますが、つなぐの世界観が凄く大事にされていて
この曲の衣装はいつもどれも素敵でそれも含めて愛を感じます。


そしてそのつなぐの衣装を脱いだ後の感じが凄く好き。おしり小さい。
歩いている姿がいつも猫背なくせにそれを微塵も感じさせないかっこよさ。
こういう衣装を見ると背はそんなに高くないけど、バランスが良くてスタイルいいなって凄く思います。
そして大野さんのソロに合わせてメンバーがノリノリで踊ってる感じが好き。特に翔くん。


そしてお気に召すままからのビタースイート。この流れ好き。
この曲は前奏聞いただけできゅんとくる不思議な曲。
なんででしょう、その前からずっと好きだったのにその時好きだった気持ちを思い出すというか。


そして美声で歌いながら、おいでおいでって合図を送るんですよね。
で、松潤が俺のこと? って確認してるのでしょう、わかってるくせに~っ。
それに対してサラっと美声で歌いながら、こたえるのがまたカッコいいんですよね。
で、それを見て仕方ないなって顔をしながらも嬉しさを隠しきれない松潤が近づいて行って。
こういうのをみると本当に小悪魔というか人たらしというか。
平静を装ってるけどものすっごく嬉しそうな松潤がまたいいです。


で、その後はニノちゃんと遊んでいたりして。
でも翔くんは別の場所にいるから歓声だけ聞こえて見えなかったと。
それをずっと気にしているところがやっぱり好きです。
それにしても汗が凄い。やっぱり大変だったんだろうなと。ずっと尋常じゃない量の汗がひいてない。
そしてやっぱソロは素敵。5人だったりユニットだったりあるけど、やっぱりソロは聞き惚れます。
ソロがあると違うなと感じさせてくれる一曲。


と、後半あるかわかりませんが前半はここまでです。
やっぱり大好きで追っかけてるのが(全然追いつけてないけど)毎日楽しいです。
昨日もMステがあったし、こういうのも書くのも好きなのです。
全然タイムリーじゃないしお話でもなくて本当に申し訳ないとは思っていますが💦
本編もちんたらしてますし更新もほんと遅くてこのままでいいのかと自問自答の毎日でもあります。
本当にすみません。。

Love Situation 9

2018-06-09 15:23:30 | love situa...








そのゆらゆら揺れる瞳を見つめながら、その掴んだ腕を自分の方へと引き寄せる。


そのせいで少し身体のバランスを崩した智があっと小さく声を上げた。


「何で 櫻井なの?」

「……」


それを少し気にしながら顔を近づけそう智に問いかけると


智は何も言わず頭を横にふった。









これまで智が誰とも付き合ってこなかった訳じゃない。
何人かの女の子から告白をされたりして付き合ってきたのを今まで見てきた。
でも全然気にならなかった。


しかもなぜかあまり長続きすることはなくて、
俺って何か欠落しているのかも知れないと言って苦笑いを浮かべているのを
時々励ましながらも微笑ましく見ていた。



でも。



その原因が櫻井だったら?


考えたくはなかったけど、多分自分の想像は当たっているだろうとも思った。







高校時代。


櫻井はあまり学校に馴染もうとしなかった。
いつも冷ややかな眼差しで楽しく過ごしている俺たちの事を見ていた。
その視線にせっかくの楽しい気分に水を差されたような気がしていつもムカついていた。


でもなぜか智は違ったようだった。


好意的な眼差しで櫻井の事を見る。


確かにイケメンだと思う。
明るい髪の毛と色白な肌、そして端正な顔立ちが目を惹く。
それに賢く聡明で努力家だとも思う。




でも。




いつも同じ高校生なのに俺たちとは別の世界にいるような存在だった。
大人っぽいといえば聞こえはいいが文化祭や体育祭で盛り上がっていても
いつも冷めた感じでつまらなさそうにしていた。
教室でワイワイ騒ぐ事もなかった。


同じ学校に彼女はいたみたいだけど常に勉強や成績の事だけが最優先で
学校や、学校の行事なんてまるで興味がないみたいだった。
だから最大のイベントである修学旅行も行かなかったんじゃないかと思う。
そんな櫻井と俺たちの間に接点なんてなかった。


そして智が櫻井の事を気にして見ていたこともあったけどそれもなくなった。
あの日以来話すことはおろか視線さえ合わせなくなった。
そしてそれは卒業してからも、そしてあの同窓会でも同じだった。




それなのに。




なぜ櫻井が智のいるこの場所にいたのか。


俺が年に数回、それも特別な時にだけしか訪れないこの場所に


なぜ慣れた感じでこの場所にいたのか。











「櫻井と何かあった?」

「……」


その理解のできない状況に納得なんてできなくて
しつこいと思われるかもしれないけど智に聞いた。
でも相変わらず智は何も言わず首を振るだけでわからない。
それが余計俺を苛立たせた。


「本当に?」

「……だって、知らない」


現実にここに慣れた感じで櫻井がいたのに、知らないって。


「じゃあ何で櫻井がここにいたの?」

「わかんない」


そして智だって慣れた感じだったのに
それなのに、わかんないって。


「そ。じゃもういいや」


はい、そうですかと到底納得できるはずもなかったけど
でももうこれ以上聞いても埒は開かないだろうとも思った。
だからイライラを智にぶつけてしまう前にこの場から離れることにした。













松潤が帰った後、その掴まれていた腕を見ると少し赤くなっていた。


なぜ松潤がそんなに怒っているのか。
なぜ松潤は執拗にその人の事をきいてくるのかわからなかった。
でも何を聞かれても、何度聞かれても
自分自身この状況がよくわからなくて答えようがないのだ。


高校を卒業してからずっと何もなかったのにある日突然その人が現れた。
そしてなぜか連日その姿を見せる。
でもその姿を見るのが辛かったからもうここには来ないでほしいと頼んだ。
それなのになぜか再び姿を見せたかと思うと、
何事もなかったかのようにカクテルを頼んできて飲んでいる。






松潤はその人の事に凄くこだわっていたけど
もうずっと前から嫌われていて好きとか何かあるなんてことあるはずないのに。




それなのに。



この訳の分からない状況に頭の中はぐちゃぐちゃだった。
とにかく今日は疲れてしまって何も考えたくない。
早く家に帰って熱い風呂に入って寝てしまいたかった。
















「あの…」

「……?」


簡単に片づけを済ませ一刻も早く家に帰ろうと店の扉に鍵をかけ
足早に外に出た途端、話しかけられたような気がした。


「ごめん、本当はもうここにはこないでほしいって言われていたのに今日は来てしまって…」


振り向くとなぜかとっくに帰ったはずのその人がここにいて
なぜか困り果てた顔でそう言って謝ってくる。


でも、今?
なぜ、今?


確かに来ないでほしいと言ったのに何事もなかったかのように来ていた。


でも、なぜ今、その話をしてくるのか。


とてもじゃないけどそれどころじゃなかった。
頭の中は松潤に言われた言葉でいっぱいだった。
これ以上何も考えられない。今は誰であったとしても話なんてできる状況じゃなかった。













「今急いでるから」

「……!」


そう言って話を遮るようにその場を去ろうとすると
待ってと言ってその人が俺の手首を掴んだ。


「ごめん、」

「……」


そして掴んでしまった事に対してだろうごめんと謝ってくる。
謝るくらいだったら早くこの手を離して欲しい。
もう頭の中で理解できる許容範囲はとっくに超えている。


「あの、高校時代の事も…」


そう思いながらその手を見つめるが、その手はぎゅっと俺の手首を掴んだまま離さない。


そして。


なぜか、今、高校時代の事を言ってくる。



何で、今?
何で、今更?


その話をしてくるのか、意味がわからない。









「本当に急いでいるから」


せっかく信号は赤から青へと戻ろうとしていたのに
なぜまた赤信号へと戻そうとするのか。
その手を何とか振りほどこうとし、その顔を見ると



なぜか。



その人がやっぱり困り果てた顔で俺の顔を見ていた。



何、で?


困っているのは自分自身なのに。


っていうか困らせているのはその人自身なのに。


あり得ない状況のオンパレードで頭の中はパニック寸前なのに。











松潤とは高校時代からずっと友達だった。
優しくていつも自分の事を守ってくれて
落ち込んだときは励ましてくれた。


ある時、松潤を好きだという子から呼び出された。
なぜかその子は俺が松潤と一緒にいすぎるから
自分の事を見てくれないのだと思い込み激情した彼女に顔をひっぱたかれた。
でもそれがばれたくなくて誤魔化したけど松潤はすぐに気付いてしまった。


それからますます松潤は過保護と言ってもいい位の接し方で俺に接した。
そしてそれは高校を卒業してからも変わらなかった。
マメに連絡をしてくれて、そして仕事をやめると知った時には
心の底から心配してくれた。


そしてここのバーで働く事になった時。


このバーの状況や伯父さんの思いを瞬時に察してくれて
他の友達にも取り決めをしてくれた。
そしてバーの雰囲気を壊さないよう守ってくれた。


凄く大切な友達だった。
その松潤が自分の事をずっと好きだったのだと言った。
確かに好きだと言われたことは何度もあったしキスされた事もあった。
でも彼女もいたしそれは友達としての好きだという事だと思っていたし
キスも冗談だと思っていた。


でもそれは自分が思っている好きと松潤が思っている好きというのとは
違っていたという事なのだろうか。


困り果てたその人を見つめながら、


なぜか今は


松潤の真剣な顔。


松潤の言葉。


松潤のいつも自分を見つめる優しい笑顔が次々と浮かんできていた。






でも。





目の前には、困り果てた目で見つめるその人の顔があって


そして、その人に掴まれたままの、俺の手がある






その掴まれたままの手首と




そして




困り果てた目で見つめるその人の顔を交互に見つめ




そのまま




時だけが静かに過ぎていく。






















 【おまけ】



「ニノ、智くんの事ラジオ聞いたよ。ありがとうね」

「ふふっ何で翔さんがお礼言ってるんですか?」


収録が終わり楽屋に戻ると待ってましたとばかりに
翔さんが嬉しそうにそう話しかけてきた。


「え? だって、嬉しかったから」


そう言うと、変かな?って顔。


「ふふっ相変わらずですね」

「え?」


やっぱり大野さんの事に関して自覚がないんだよね、翔さんって。
昔から大野さんが褒められると自分の事のように喜び
そして自分が褒められたかのようにお礼を言っていた。


「翔さんは大野さんの事を知ってもらいたい人ですからね」

「そんな事ねえけど実際頑張ってたからさ」

「ふふっまああんな合格率の高い試験になぜか凄いプレッシャーを感じながら、珍しく頑張っていたと思いますよ?」


なぜか大野さんはあれだけの合格率なのに、
落ちるんじゃないかとおびえながら勉強をしていたんだよね。
まあ、そういう所が可愛い所でもあるんだけど。


「ふふっニノは智くんのそういう所が好きなんでしょ?」

「は?」

「何かさ苦手な事に一生懸命取り組んでいる姿が凄く健気で可愛いんだよね~」

「いや、別に」


でもそれを言われたくなくて素知らぬ顔で流す。


「え~またまたそんな事言ってぇ」

「それにもうそんな可愛いとか健気とか言ってる年でもありませんし」

「それはそうなんだけどさぁ」


そう言うと不満そうな顔。
本当にこの人は。


「ま、でもやるときはやる男ですからね」

「そうだよね~」


そして褒めると途端に満面の笑みを浮かべてくる。
でも実際問題、丸暗記はできてもテスト慣れしていなくて
しかも応用力を必要とするものを苦手とする大野さんにとって
凄い挑戦だったのだと思う。
それでもやっぱりやってしまうのが大野さんらしいと思った。












「ニノのラジオの事聞いた?」

「ううん」

「褒めてたよ? 勉強頑張っていたって」

「ニノが? 珍しい事もあるもんだ」


そう言うと嬉しそうに智くんは笑った。
あまりニノは表立って智くんの事を褒めないから
ニノから褒められると凄く嬉しそうな顔をするんだよね。


「うん、結局できちゃうってさ」

「んふふ」


そして凄く嬉しそうに笑うその姿にこちらまで嬉しくなってくる。


「そう言えばね~俺も見たよ?」

「へ? 何を?」


相変わらず主語がねえぇ


「マルとの対談」

「あ~どうだった?」

「何かね翔くんがお兄さんぽくてうけた」


うけたって。
っていうか珍しく見てくれて凄く嬉しいけど感想それだけ~?


「他に何かないの?」

「ん~別にない」

「嘘でしょ~」


俺いいことたくさん言ってたよね?
やっぱりマルだしいつも言わないような事とかグループの話だとか。
そう思いながら聞いてもやっぱりないらしい。


少し不満を感じつつも、見てくれてありがとというと
うんって凄く満足そうに笑ったから
見てくれたし感想も聞けたし嬉しそうな顔も、
そして可愛らしい顔も見れたからまあいいかって思った。










全然関係ないのですが私の作業用BGMはほとんど嵐さんの曲なのですが
その中に混ざって魔王のサントラもいれています。
GracEとかLiVE/EViL、RequieMとか。
撮影時にずっと大野さんが聞いていたと言っていたサントラ。今聞いてもやっぱりいいです。
そして魔王と言えばたまたま雑誌を見返していたら今話題の方が語っていました。
『大野君は…いやっ本当に興味深い方で。なんか、見てて飽きない人なんですよね。
つい目で追っちゃうんですよ、いつもこの人、何するんだろう?って(笑)
すっごい興味深い人。
とにかく興味深いですね、大野君。実際、興味深いじゃないですか』プラスアクトミニ2008vol02
って、どんだけ興味深いのだって感じですが💦
でもわかる気がするのです。奥が深いというか。
風とか聞いちゃうと、もうどうなってんだろうって止まらなくなるんですよね。


Love Situation 8

2018-05-18 21:06:15 | love situa...







智が勤めていたデザイン事務所を辞めると聞いたのは
働き始めてまだ数年もたっていない時の事だった。


でも才能があるというだけでは難しく厳しい世界。
だから誰もがフリーになるには早すぎるのではないかと心配していた。
でもそんなみんなの心配をよそに智はあっさりとそのデザイン事務所を辞めると
バーテンダーとして働き始めた。







智がバーテン? 




最初はその意外過ぎるバイト内容に驚きもしたけど
何でも器用にこなしてしまうその美しい手。
そして智の持つ芸術的なセンスと才能。
そして何より人と接する時の柔らかな雰囲気が智に合っているような気がした。


その店は数人入ればもう一杯という小さなバーだった。


開店当時からの雰囲気がそのまま残っているそのバーは、静かでセンスの良い音楽が流れ
そして昔から慣れ親しんだお客さんが、以前と同じようにその雰囲気と酒を楽しむ。


智はその伯父さん時代からの店の雰囲気を守り大事にしていた。
そのせいか限られた人にしかこの場所で働いていることを言わなかった。
だから俺たちはあまり頻回に訪れるようなことはせず特別な時にだけ訪れ
そして訪れた時は雰囲気を壊さぬよう他の客と同じように過ごした。







その智の働くバーの扉の前に立つ。


扉は木で造られた重厚な扉でその扉を見るだけでいつもワクワクした。







そしてその扉を開けるとそこには別世界が広がる。


少し年代を感じるクラッシックな雰囲気。
そして趣があって大人な空気。


その雰囲気も、空気も、照明も、装飾もそこにあるすべてが大好きだった。


そして何よりそこには大好きな智がいた。
そして智が自分のためにとカクテルを作ってくれるその姿が見れた。
そしてその智の作ってくれたカクテルを味わう事ができた。


そう、そこは特別な時にだけ訪れる最高のひと時。


そして、今日。


大きな仕事が決まったそのご褒美にと、この場所へやってきた。












その扉を開くといつものようにカランコロンと心地の良い鐘の音がなって
それに気づいた智が振り向く。
智はいつも特別な日にしかここに訪れないせいか優しく迎え入れてくれる。





でも。





この日は何か違ったような気がした。


俺の顔を見て智が一瞬驚いた顔をして目を大きく見開いた。
でもそれは一瞬ですぐにいつもの表情に戻った。


「……?」


なにかがおかしいと、そう思いながらも空いている一番手前の席に座った。
智は何もなかったような顔をして振る舞う。
でもやっぱり何かが違うような気がした。


何かあった?


何かはわからないが嫌な予感がした。


でも店内はあまり変わりはないように思えた。
そして、客層も。
でも、いつもと違う雰囲気。
いつもと違う空気。


小さな店内を見渡すと、そこには数人の常連客らしい客が
いつものように静かに酒と音楽を楽しんでいた。


そこに、いつもの常連客とはまた違う、どこか見覚えのある顔があった。


「……!」


あれは、もしかしてサクライショウ?


なぜあいつがここに?


確かこないだの高校の同窓会でもちらっとその姿を見た。
でもそんなに長居することなく帰ってしまったし、智と話をした気配もなかった。
それなのになぜその櫻井がここにいるのか。




あの櫻井が。











あれから。


いや、あの日から。


智と櫻井の接点はなくなっていたと思っていた。
いやその前からほとんど二人には接点なんてなかった。
話しているところを見たこともなかったし、接しているところも見た事がなかった。
そしてそれは卒業まで、そして卒業してからも変わらなかったはずだった。


それなのになぜ彼がここにいるのか?
たまたま彼の入ったバーがここだったということか?


でも。


智もまた俺が櫻井がそこにいるという事に気付いたのがわかったはずなのに、何も言わなかった。





そして。


それを見て自分の心が踊り出したのがわかった。
もうとっくの昔に諦めていた智への思いが動き出して止まらなくなる。
智の事は随分と前に諦めたはずだったのに。
そして大切な友達として一緒にいようと決めていたのに。


なのに今。


ここで櫻井を見た瞬間。


その思いはガラガラと音を立てて崩れていった。











高校時代、智が櫻井の事をずっと気にしている事を知っていた。
多分好きだったのだろうと思う。


いつも、いつでも智の視線は櫻井に向けられていた。
クラスで、渡り廊下で、校庭で、廊下で、中庭で
智がいつも櫻井の事を見ていた事を知っていた。
いつも智の事を見ていたから知っていた。


でも智はいつも櫻井の事を、そして櫻井の見ていたものを見ていただけだった。


でもあの日。


あの日、薄暗くなった教室で一人、智が窓の外を見ながら佇んでいた。
声をかけると泣きそうな顔で振り向く。
何かあったんだろうと思った。
でも何があったかはわからなかった。
深くも追及しなかった。


でもその日から智の視線は櫻井の事を追わなくなった。
櫻井の事も、そして櫻井がいつも見ていた中庭も見ることはなくなった。
そしてそのまま卒業までそれは続いた。
もちろん話すこともなく在学中を過ごし、そしてその後も接点はなかったはずだ。
そしてあの時の同窓会でも接点は、なかった。


それなのになぜ?


また心がザワザワと音を立てる。










櫻井と智の間には業務上の会話以外にはなく、ただのバーテンと客のように見えた。


でも。


それがかえって不自然な気もした。


たまたま櫻井の入ったバーに智がいただけなのか?
こんな星の数ほどあるバーでたまたま?
そんなんことがあり得るだろうか。


嫌な予感がした。


そしてあの一瞬だけ見せた智の表情。
やっぱり何かがあるのだろうと思った。






















「櫻井が来てたみたいけど?」

「え、あ、櫻 井? 来てた?」


閉店間近になり店の中には智と二人だけになった。


「うん来てた。よく来てるの、この店に?」

「いや、え? どうだったかな?」


智に何げなくそう話しかけると、智は明らかに動揺した。


「どうって、わかるでしょ?」

「もうそんなのどうだっていいじゃん。それより今日はなんかいい事あったの?」


誤魔化しているというか、明らかに何かを隠しているというか。
必死に会話をかわそうとしているのがわかった。


その智の様子を見ながら。
そしてあの櫻井の少し慣れた様子から何度かここに来ているのだろう。
そう確信した。


「ああ、今度映画に出ることになって…」

「すげえぇ映画⁉ 俳優さんじゃん」


俺の特別な日しか訪れる事ができない大切なこの場所に
櫻井は何度かここに来ていたのだ。


「まあ、まだチョイ役で俳優とも言えないんだけどね」

「でもそういう芸能の仕事、松潤に凄く向いてる気がする」

「いや、俺なんかより本当は智みたいな方が向いてるだろうけどね」

「え~俺?」



そして帰り際。


俺がずっと櫻井を見ていたせいか俺に気付いて櫻井は一瞬驚いた表情を浮かべた。
でも、特に気にする様子もなく頭を少し下げ会釈をするとそのまま帰っていった。
明らかに何かありそうなのにお互い何もなさそうに振る舞う二人。
その行動のすべてが不自然なような気がした。


「そうだよ前に文化祭で披露してたダンスなんて凄かったじゃん?」

「みんな白けてたけど…」


しかもそれは俺がいるからというわけではない。
櫻井は帰る間際まで俺の存在には全く気付いていなかった。
だから余計二人の関係が分からなくて俺を困惑させる。












「違うあれはしらけて静かになったんじゃない。
あまりの凄さにみんな圧倒されて声が出なかっただけ」

「え~何か会場中がシーンってなって俺超恥ずかしかったもん」


そう言ってプーと頬を膨らませる。
その顔が可愛らしいなと思う。


「それだけみんな魅了されてたんだよ?」

「え~魅了って」


ずっと好きだった。
その顔も。
その智の持つ雰囲気も。
そして智の踊るダンスも。


「それに運動神経だって抜群だし才能の塊だし、それに可愛い顔もしてるし」

「可愛くねえし」


その羨ましいほどの才能も。
そしてそれをひけらかさないところも。


「いやいやジャニーズ顔っていうの? してるよ」

「え~それは松潤でしょ」


そういうとおかしそうにくすくす笑う。


「ふふっそう言えばあそこの事務所って昔バク転ができないと入れないって噂があってさ~」

「ふふっ松潤はできる?」

「できないっていうか、やらない」


ずっとずっと好きだったけど、その思いを封印してきた。


「ふふっでも松潤だったら、バク転とか関係なく一発で顔パスだろうね~」

「ふふっ俺の顔になりたい?」


この関係が壊れてしまうのが怖かったから
こんな風にくだらない事を話せるような友達としていたかったから。
ただ一緒にいられればいいとそう思っていたから。


「それは、」

「なんだよ?」

「ちょっと濃すぎるかなって」

「ひでえ」





でも。



やっぱり好き。



その顔を見てやっぱり好きだと思う。
一緒にくだらない事を話しているこういう瞬間も大好きだけど
友達としてだけじゃなく好きだと思う。
どんなに綺麗な人たちに囲まれていても
どんなに美しい彼女がいても智は別だと思う。





智がそんな話をしながらカウンターの向こう側から
俺の飲んでいたグラスを片づけようと手を伸ばしてくる。


その手を、掴んだ。


「……!」


智がびっくりした顔で俺の顔を見た。


「智、好きだよ?」

「……え?」


そして智の顔を見つめそうつぶやくと
智は意外そうな顔をした。
その意外そうな顔にずっと伝えてきたのになと思う。
何度も伝えてきたのになと思う。


「智は?」

「だって、彼女 いるじゃん」


そう言って困惑の表情を浮かべる。


「うん、いる。でもずっと好き、今も好き」


何度も好きだと伝えてきたし、キスもした。
でも智にはいつも届かなかった。



「俺じゃ、ダメなの?」

「……」


だから友達でいようとその思いを封印してきた。


「それとも、やっぱり…」

「……」

「やっぱりまだあいつが…櫻井翔がいいの?」





ずっと好きだったけど大切な友達でいようとした。





だけど。




あいつが。




サクライショウが。





智の腕を強く掴んだままそう呟くと、




智の瞳がゆらゆらと揺れた。






















おまけ VS嵐2時間SP







「こないだのVS録ってある?」

「もちろん」

「翔くんは偉いよね、いつもちゃんと録ってあって」

「まあ」


そう言いながらリモコンを手渡し酒の準備をしていると
んふふっと可愛らしい笑い声が聞こえた。



「これあの時の?」

「うん見たかったの」

「ババ抜きを?」


だからどうしたのだろうと智くんの横に座ると
そこにはババ抜きの映像が映し出されていた。





しかもそれは。





『俺何か東出くんの気がするんだよなぁ~何か持ってそうな雰囲気がする~』


と言いながら一発目でババを引いている映像。


「ちょっこれ恥ずかしいんですけど」

「え~そんなこと言わずによくみて~かわいい~」


そのあまりにも間抜けな映像にそう言って抗議すると
それを嬉しそうに見ながらゲラゲラ笑っている。
いやいや全然可愛くねえし。
めちゃくちゃ恥ずかしいし。
よく見て~じゃないし。


「でねでね~」


しかもそれを見たかと思うとまたまたウキウキしながら早送りをし見せてくれる映像には


『持っていないでしょ~』


最終決戦でそう言いながらまたしても一発目でババを引いている俺の姿。



「ちょっと~」


恥ずかし過ぎるでしょ~。
しかもこちらの思いとは裏腹に智くんはそれを見ながらみてみてかわいい~みてみて~と言って
アハハと笑っている。


いやいや見させられてますし。
それ俺だし。
実際やってたし。
知ってるし。


「かわいい~翔くん可愛いよ~」


だから凄~く喜んでくださっていますがこちらとしては複雑な気分。


「俺こういう翔くん好き~大好き~」


こういうってこういうってどういう?
しかも大好きとまで言われてますが。


「俺確信した。次は翔くんが最弱王だね~」


そして何だか断言してるし。


「いや、それは絶対嫌です」

「え~可愛いのに」

「可愛くありません」


そう言いながらもおかしそうに笑っているその姿を見ながら
ちょっと恥ずかしくて複雑な気分だったけど凄く喜んでくれているし凄くかわいいからまあいっかと思った。




Love Situation 7

2018-04-20 10:57:40 | love situa...




すみません。
これとは別に少しの間だけ下書きの下書きの思いついただけの
めちゃくちゃな文章をのせてしまいました。
見てしまった方、忘れてください…。






美しく、整った顔


完璧なスタイル



周りは綺麗な人で溢れかえる。






大学時代から始めたモデルの仕事は徐々に実を結び
最近では大きな仕事も舞い込むようになってきた。


華やかな世界
華やかな人々
華やかな生活。


それは考えられない位の才能とセンスと人と力と金が動く世界。


でもその世界で生き残れるのはほんの一握り。
心を許せる人なんてひとりもいない。
心を許せる瞬間なんて一時もない。


そしてそれを選んだのは自分自身。


だから後悔なんてない。





でも。


時々。


疲れる時がある。
少しだけ疲れ切ってしまう時がある。






だから。






「智はホント植物みたい」

「え? 」


そう言うと、意味が分かんないって顔をして
不思議そうにこちらを見る。


「俺にマイナスイオンを与えてくれる植物」

「変なの」


そして、やっぱり意味が分かんないって顔をして
くすくすと可愛らしく笑う。


だからその姿が見たくて
その姿に癒されたくて


その人に会う。











智は高校の同級生だった。


好きだけど、大切な友達。
友達だけど、好きな人。


いつも一緒にいた。
一緒に笑って、ふざけて。
智の笑顔が見られるだけで幸せだった。
でもたまに落ち込んだ姿を見ると、一緒になって落ち込んで
泣きそうな顔を見ると、自分まで泣きそうになりながら励ました。


手をつないだり、肩を寄せ合ったり。
じゃれあって身体をくっつけたり、顔を近づけたり。
一緒にいられるだけで幸せだった。
周りはキャーキャーうるさかったけど、全然気にならなかった。


でも時々あまりの仲の良さにやっかみをうけたり嫌がらせされたり、揶揄されることもあった。
でも全く気にならなかった。




ただ一つの事を除いては。




ある日智が頬を腫らして学校に来たことがあった。
どうしたのかと聞いても転んでぶつけたとしか言わない。
でもそれは嘘だとすぐに分かった。


その頬に残るうっすらと見える手のあと。
誰かに引っ叩かれたのだと思った。
誰なのかはわからない。
でも、学校にいる誰かだと思った。


そしてそれが自分の事を好きな人で嫉妬で事に及んだと知った時、怒りで全身が震えた。
彼女と付き合わないのは智とは何ら関係のない事なのに。
でも智はその子の事をかばい続けた。
彼女に何かを言おうものなら友達を辞めるとまで言われ
仕方なく智の言う事に従い、今後一切そういう事がないようにこれまで以上に目を光らせた。








智は普段おっとりしたマイナスイオンを発する植物みたいな人だったけど
本当は秘めたる才能をいくつも隠し持っている。そんな人だった。


文化祭ではキレキレのダンスを魅せ会場中を魅了したこともあった。
もともと目立つことが嫌いな智は嫌がっていたらしいが
どうしてもと言われ断り切れなくなって出たそのステージ。
そこで披露された智のダンスパフォーマンにざわついていた体育館内は一瞬にして静まり返った。


生徒も先生も他校の人もみんなその智から繰り広げられる
とても高校生とは思えない美しくもキレがあるそのダンスに魅せられる。
いつもののんびりした智からは考えられない姿。
圧倒的なダンススキル。
才能。集中力。跳躍力。表現力。
誰もが魅せられ、その後暫く智は時の人となった事を覚えている。
そんな中でも智は変わらなった。


もともと身体能力が優れていることは以前から知っていた。
さらっと片手をついただけで軽く側転をする。
バク転は何度だって続けてできたしバク宙側宙となんでもいとも簡単にこなした。
でもそんな凄い事をやってのけるのにそれを何とも思わない。
そんな人だった。


しかもそれだけではなかった。
絵が上手だったり字が綺麗だったり才能にあふれた人だった。
でも一緒にいてもそれを微塵も感じさせない自然体の智。
そんな智の事がずっと好きだった。







男だけど。





もう随分と前にとっくにフラれてるけど。


キスをしたら怒られたけど。


それでもずっと好きだった。


そしてそれは高校を卒業しても
大学生になっても
そして大学を卒業しモデルとなっても
毎日完璧なスタイルを持った綺麗な人に囲まれていても
美しい彼女がいても


それは変わる事はなかった。







そんな時に舞い込んだ同窓会の話。


智はあまり乗る気ではなかったけど無理やり誘った同窓会。
久々にみんなに会えるのも嬉しかったけどなにより智と会えるのが嬉しかった。


時々は会ってはくれていたけど、全然足りない。
もっと会いたい。もっと会いたい。
だからいい機会だとそう思っていた。





だからまさか。




それがこんな結果になってしまうなんて





思いもしなかった。














久々に見たその人は、少年時代特有の儚さと美しさから
より一層かっこよさを増し大人っぽく素敵な男性に成長していた。


高校時代、はっとするような美しさと華やかさを持ったその人は
大人の男性へと成長していた。
明るく染められていたその髪の毛は少し落ち着いた髪色へと変わり
その人の美しさをより一層際だたせる。
そして少年時代の華奢だった身体は大人のそれへと変わり
たくましさと美しさを兼ね備える。


その姿に一瞬時が止まる。




でも、と。




すぐに視線を外す。


見てはいけない。
その人の視線に入ってはいけない。
自分はその人に嫌われているのだ。
その人にとって空気のような存在でいなければならないのだ。




そう。



あの日から。



自分は自分の気持ちに蓋をしてきた。
二度と開ける事ができない箱の中に思いを閉じ込め
そしてカギをかけた。


学校内では空気のような存在となり
それは何年たとうとも変わる事はない。
密かに思っていた想いは頑丈な鍵がかけられた箱の中にしまいこみ
二度と開くことはないのだ。











高校、そして専門学校と卒業した俺は会社組織というものが苦手な事もあって
少しだけ働いた後フリーのイラストレーターとなった。
とは言っても名も知られていない俺にすぐに仕事が舞い込むなんてことはなく
バイトを探していた時、足腰が弱くなってきた伯父さんに
自分の店で働かないかと誘われた。


それは伯父さんが30歳の時に始めたバーで、
カウンターと小さなテーブル席を足しても数席しかない小さなバー。
そこには開店当時から変わらない年代を感じる装飾。そして音楽があった。
その落ち着いた店内が昔から凄く好きで昔からよく遊びに来ていた。
そして年代物の重厚な扉にはこれもまた開店当時から変わらず
訪れる客を知らせる鐘が括り付けられていた。


その中で自分の好きな音楽をかけ
お客にカクテルを振る舞い
そして客は静かにお酒を味わう。


そんな店内は伯父時代からの昔からの馴染みの客も多く
品があって都会の真ん中で静かなひと時を味わいにくる。









そこに。



彼が現れた。




カランと鐘がなって扉に視線を送ると


そこには彼がいた。




まさか。


なぜ?


どうして?


心臓が止まりそうになる。
胸が苦しくなって
静かに時を刻んでいた心が乱れる。


でも。


でもきっとたまたま入ったバーに偶然俺がいただけの話だ。


だから平静を装って客とバーテンとして振る舞えばいいだけの話だ。
彼だって間違えて入ってしまったもののそのまま帰る訳にはいかず
ここで酒を飲んでいるだけだ。
だからもうここには二度と訪れないはずだ。


だから一刻も早く帰ってくれるようにと、
そう願いながら何事もなかったかのようにバーテンとして振る舞った。







それなのに。


彼は現れる。


この場所に。


俺がいるのを知っているはずなのに。


何のために?


俺がここにいると分かっているはずなのに


なぜ今日もここに来るのか。






ずっと嫌われていた。
目が合えば睨みつけられた。
落とし物を拾っても迷惑そうな顔をして奪い取るように受け取った。
それほどまでに嫌いな相手がいるのになぜ?


あの日から自分の気持ちに蓋をして
やっと忘れようと。
もう忘れられると。
そう思っていたのになぜ心をかき乱すのか。


新手の嫌がらせなのか。
何かの罰ゲームなのか。


何かはわからないが平静を装い彼に接する。
彼はカクテルの名だけ言うと
ここの馴染みの客と同じように
俺が作りだすカクテルを静かに見つめ
そして差し出された酒を静かに飲む。







そんな日々が続く。






やっぱり新手の嫌がらせなのだろうか。
何かの罰ゲームなのだろうか。



最初は平静を装い静観し様子を見ていたがその何度も訪れるその姿に
心を乱され、そして苦しかった思いが蘇ってくる
好きだった気持ちを思い出し苦しくなってくる。
その一層格好よく素敵な男性へと成長している姿を見て辛くなってくる。




だから。


あの雨の日。


絶好のチャンスだと思った。


その日は朝から雨が降っていてほとんど客がいなかった。
時間も遅い。
このままもう誰も来ないだろう。


そう思った瞬間。


その人が現れた。


濡れてしまった服を彼女にでもアイロンをかけてもらっているのだろうか
綺麗にたたまれたハンカチで拭うといつもの席へと腰掛ける。
そしていつもと同じように静かに俺を見つめ
そしてカクテルを注文すると、静かに作り出されるその姿を見つめる。


静かな音楽とカクテルの作る音だけが店内に鳴り響く。


自分のかき乱され暴れ狂う心とは反対に


静かな時が流れる。


客は他に誰もいない。





だから告げた。




もうここには来ないでほしいと。






それなのに。





その人が



現れた。





暫くその姿を見せなくてほっとしていた。


心はまたゼロへと戻った。
動き出した胸の高鳴りはまた静かに時を刻みだした。




でも。



カランと客を訪れる鐘がなって



その扉に視線をおくると



そこにその人がたっていた。















おまけ。嵐にしやがれ





「あ~あ。とっちゃった」

「何不満そうな顔してんの?」


楽屋に戻るとニノがふうっとため息をついてそう言った。


「翔さんは嬉しそうですね。って、当たり前か。あんな翔くん翔くん言われたらね~」


そう言っていたずらっ子みたいな顔をしてくすくす笑う。


「そんなことねーよ」

「そうですか?」

「そうだよ。ま、心配ではあるけど、さ」

「ねー。何で番組をあげて取らせちゃうかな~
あんな勉強嫌いの人、ひとりだったら絶対取らなかったのに」

「ふふっ」

「まったく余計なことしてくれちゃってさ」


そう言って口を尖らす。


「余計な事って」

「だってそうでしょ、だいたいさスタッフも甘いんだよね。
だんだんなぜか大野さんを喜ばせよう喜ばせようっていう計画になっていくじゃん」

「そう?」

「そうだよ、しやがれだけじゃない、ひみあらのスタッフだってそうだったじゃん?
最初は釣りができて食べれるところ~なんてやってたのに
しまいには大野フィッシングクラブまで作っちゃてるからね。
どんだけ大野さんを喜ばせたいんだって話ですよ」


そう言いながらニノの愚痴は止まらない。


「まあ確かに」


そう言えば大野フィッシングクラブではいろいろグッズまで作っていたっけ。
それに番組が違うとはいえ今だってなにかと船に乗る企画が多い…気がする…。


「で、今回は船舶免許ですよ。しかも取れちゃってるし。取れちゃったら絶対乗るでしょ、船。
そしたらまた焦げパンになるでしょ? あの人」

「ふふっニノは色白の智くんが好きだもんね~」

「いや、アイドルとしてどうなんだって話です」

「ふふ、気を付けんじゃない?」

「いーや忘れるね、絶対」






「何してるの~?」


そんな話をしていたら、珍しくご機嫌な智くんがそう言って入ってきた。


「船舶免許なんて取ったらアンタがまた焦げパンマンになるって話です」

「え~ならないよ~」

「嘘おっしゃい、絶対になります」

「ニノ怖い~」

「ね、だから船乗る時はちゃんと日焼け止め塗って、帽子かぶって」

「ちゃんと見られるものとして自覚持ちなさいよ」

「ニノ怖い~」

「怖い怖いって失礼な。あんたがいけないんでしょ? いつも見境なく船に乗って真っ黒になって」

「翔くん~」


止まらないニノの説教に助け舟を求めんばかりに智くんがそう言ってくる。


「ほらほら智くんも気を付けるって言ってるから、ね」


ま、その姿も可愛いんだけどね。
そう思いながら何とかその場を沈めた。







「とれた~」

「おめでとう」


仕事が終わって久々に二人で過ごす時間。


「もダメかと思った」

「ふふ優秀な成績でしたが?」

「んふふっやっぱ俺ってやればできる子みたい」


そう言って嬉しそうに笑う。


「そうお母さんに言われてた?」

「うん。全然やらなかったけど」

「じゃこれで実証されたね」

「……」

「……ん?」


そう言うと急に智くんの顔がパーッと明るくなった。


「翔くん大好き」

「あ、ありがと」


そして満面の笑みを浮かべたかと思うと
ぎゅっと抱きついてくる。


よっぽど試験がプレッシャーだったのか。
受かったことが嬉しかったのか。
でも何より昔からなぜかダンスとか歌などで褒められるより
コンプレックスもあるのだろうか頭の事に関して言われる方が
嬉しそうな顔を見せていたような気がする。


「俺本当に船舶2級とれたんだよね?」

「うん、とれてたとれてた」

「嬉しい~」


そう言いながら腕をまわしぎゅっぎゅっと抱きついてくる。
その姿が可愛いなと思う。



でも。



「無理しないでね?」

「うん」

「天候をよく見て、最初は熟練の方々と一緒によく話を聞きながら
何かあった時は海上ではきっと携帯は無理だろうから無線を使って…」

「大丈夫、大丈夫。俺、ちゃんと勉強したんだよ? 船舶免許2級受かったんだよ?」

「そうだけど、さ」

「無茶しないから大丈夫」


やっぱり心配になってそう言うと、嬉しそうに答える。


そのあまりにも嬉しそうな顔を見ていたらスタッフが甘くなってしまうのも
仕方がないよなと思う。


こんなに喜んでもらえたら何でもしてあげたくなる。
嬉しそうな顔を見ていたらこちらまで嬉しくなってくる。
その顔が見られるのならなんだってしてあげたくなる。
人徳もあるのだろう、得な性分もあるだろう。
でもやっぱり智くんだからみんな喜ぶ顔が見たくなってしまうのだろうと思う。


でもやっぱりそうは言っても海。
陸上とは違って心配も尽きないし、お肌もやっぱり気になる。
そう言えばズムサタでの智くんは色白になっていて無茶苦茶可愛かった。
やっぱり色白だとこの人は美しさが格段に違う。
儚さと美しさが増してますます綺麗に見える。


真っ黒になって嬉しそうな智くんを見るのも嫌いじゃないけど
でも肌も気になるし、美しい智くんを見ていたい気もする。
そんな複雑さを少しだけ感じながらも
ぎゅっぎゅと抱き着いてくるその身体を抱きしめ返しながら
おめでとう、良かったねと言うと、うんと嬉しそうに笑って可愛らしくちゅっとキスをしてくる。


その可愛らしい姿を見ながら、
この嬉しそうな顔を見てしまったらもっと嬉しそうな顔を見たくなるのも
喜んでもらえたらもっと喜んだ顔が見たくなってしまいたくなるのも
幸せそうな顔を見たらもっと幸せそうな顔を見たくなってしまうのも
何かをしてあげたくなってしまうのも
やっぱり仕方がない事のように思えた。




Love Situation 6

2018-03-13 18:55:40 | love situa...







少し(だいぶ?)寄り道をしていましたがLove Situation完結編です。






Love Situation 6







高校時代はいつもイライラしていた。


授業にも


学校行事にも


課外活動にも


休み時間にも


ワイワイはしゃぐ声にも


盛り上がってキャッキャと騒いでいる声にも




何もかもがイライラして


ムカついて仕方がなかった。















ここのオフィスは高層階にあって
そこからは大きな空と、緑と、都会の街並みが見渡せる。
そしてオフィスの南側にある大きな窓の外には、広いテラスがあって
そこには小さいながらも様々な木々や花が植えられていて
季節ごとにその時その時の顔を見せる。


そしてそこに植えられている木々や草花は、こんな都会にありながらも
そしてこんなこんな高い場所にありながらも、
地面に植えられている木々と同じように紅葉したり花を咲かせていた。


とはいっても別に自然とか植物が好きだった訳ではない。
ただ就職してようやく仕事にも人間関係にもなれ、周りが見えるようになって
自然と外の風景まで感じられる余裕ができただけの事だ。


それをぼんやりとながめながら、高校の中庭にも
同じような草木や花々があったことをふと思い出す。








高校は第一希望の高校ではなかった。
だから入学してからずっと、不本意な結果をとなってしまった事に
ぶつけようのない苛立ちがあった。
そして、何より切り替えができず
いつまでもウジウジしている自分に一番ムカついていた。


だから大学ではこんな思いは二度としたくはないと
死ぬほど勉強をし希望の大学へと入り
そして必死に就職活動をし希望の会社へと入社した。


そして今。


ようやく仕事にも慣れてきて周りが見えるようになった時、
なぜか思い出すのはなぜかあの高校時代の事だった。










あの頃。





やることみることすべてがくだらないと思っていた。
今となっては高校生なのだしバカバカしいと笑えることが
あの時の自分にはそう思えなかった。
そう思える心の余裕がなかった。


周りのみんなが楽しく騒いでいる声にも
キャッキャいってふざけあっている事にも
無性にムカついていた。


そんな時、松潤と大野が付き合っているという噂が流れた。
本人たちにはそのつもりはないのかも知れないけど
二人がくっついていると周りがキャーキャー言う。


それなのに顔をわざと近くに寄せたり肩を抱きよせたりして
ますます女の子たちがキャーキャー言った。
それが無性にイライラして仕方がなかった。
そしてその怒りの矛先は自然と同じクラスの大野に向かった。
その顔を見るだけでもイライラして目が合えば睨み付ける。


気にしなければいいのだろうけどどうしても気になってしまうその存在。
今となっては逆恨みのようなものだけど
あの時は自分をイライラさせる大野の存在が許せなかった。
だから大野に拾ってもらったパスケースも
お礼もちゃんと言わず引ったくるようにして受け取った。









でも。


その日から。


大野と俺の間には見えない壁ができた。


もともと仲がいいというわけではなかったけど
それでも大野の態度が明らかに変わったのがわかった。
それまで何となく感じていた大野の視線はなくなり
自分の存在は空気のようになにもないものとしてあつかわれた。


そして。


そのまま一度も口をきくこともなく卒業した。












「何渋い顔してんの~」

「え?」


そんな時に受け取った同窓会のお知らせ。


「あ~私もあった。大学卒業して丁度落ち着いたころに来るんだよね~」

「そんなもんですか?」


遅くなってしまった社食を一人で食べていたら
丁度食べ終わってお盆を片付けていた青山さんが話しかけてきたので
同窓会のお知らせが来たことを話す。


「そうよ~中学とかだと成人式であったりするけど、高校はバラバラだから」

「あ~確かにそうですね」

「でも櫻井くんならモテて大変だったんじゃない?
いろいろ甘酸っぱい恋の思い出がたくさんあるでしょ?」


そういって懐かしそうに笑って言ってるけど、甘酸っぱいって…


「そんなのないですよ」

「そうお? でも高校時代って体育祭とか文化祭とか色々楽しい思い出が盛り沢山でしょ」

「あ~まあそうですね」


そう言って、青山さんに合わせるように答えたけど
本当は文化祭にも体育祭にも楽しい思い出なんて一つもなかった。


「あの頃ってくだらない事でもバカみたいに夢中になっちゃうんだよね。
手間暇惜しまず夜も寝ないで凄い労力つかったりして~」

「そうですよね」


確かに周りは文化祭ともなると連日大盛りあがりだった。
毎日どこからともなく段ボールを運んできては大作を作りあげ
ペンキを使っては他のクラスや部活には負けじと
趣向を凝らしたものを演出したりしていた。


でも内申が上がるわけでも成績が良くなるわけでもない。
そんな風にみんなが盛り上がっているのを
ただ冷めた目で見ていただけだった。


そんな思い入れも思い出もない文化祭だったけど
ただ一つだけ、大野のダンスが凄いと学校中で噂になった事をなぜか覚えていた。


それはもともと目立つのが嫌いなタイプで出る事を嫌がっていた大野の
そのダンスパフォーマンスが、凄いレベルの高さだったため
しばらくその話題でもちきりだったからだ。


見た人たちはみな天才だ神だと盛り上がっていたが
実際は教室で一人遅くまで練習しているのを知っていた。
確かに生まれ持ったダンスの才能はあっただろう。
でもそれ以上に練習をしているのを、
同じようにいつも一人、残って図書室で勉強していたから知っていた。


でもあの時はなんでただの高校の文化祭にこんなにも一生懸命に
なれるのだろうと不思議で仕方なかった。


「悩んでいるなら行ってみたら? 意外と思わぬ収穫があるかもよ」


そんな事をふと思い出していたら
青山さんはそう言ってふふっと笑った。










思わぬ収穫がある。


そんな言葉を信じた訳ではないけど
なぜか俺は何の思い入れも思い出もない高校の同窓会へと足を運んでいた。
色々な人から話かけられながらもずんずんと会場に入っていくと
一際目立つ集団が目に入った。


そのなかでも特に目立つその存在。
松潤だ。
松潤はその容姿からスカウトの話が来て
モデルとなったらしいという噂をきいたことがあった。
そのせいかその場所だけ何だかキラキラしていて空気が違って見える。


そして。


その松潤の隣にはあの時と同じように大野がいた。
そしてあの時と同じように松潤に肩を抱かれていた。


その姿を見て、また、ムカついた。


ずっと忘れていたこの感情。


もう何年もたってるというのに、なぜかまたその二人の姿を見て、ムカつく。


そしてその事に自分自身が一番驚く。


視線を感じたのか大野こちらを見る。


視線が合った。


でも。


その視線は一瞬にして外された。


あのときと同じ。


そしてあの時と同じように胸がちくっと傷んだ。
あの時自分自身でそう仕向け、そしてお互い空気のような存在となり
そしてその状態に清々していたはずなのに。


それなのに。


なぜだか泣きそうだった。
もう何年もたっていて忘れていたはずなのに
あの時と同じように
やっぱり泣きそうな気分だった。















そして今。









俺は大野が働いているというバーの扉の前に立っている。
自分でもなぜここにいるのかわからない。
高校時代全く話もせずお互い空気のような存在で
そして同窓会で話さえ、いや視線さえも合わない状態だったのに。
それなのに今、大野が働いているという場所を聞きつけここにいる。


心臓はばくばく言っている。
緊張して顔はこわばり手は震えている。
その震えている手を見ながら一体何をしているのだろうと自分自身に笑う。
そして一体自分は何をしたいのだろうとも思った。


そんな事を考えながらその扉をあけると、扉についている鐘がカランコロンとなって
カウンターの中にいた大野がそれに気づいてこちらをみた。
そしてすぐに俺だと気付くと驚いて目を大きく開く。


でもすぐに何もなかったようにバーテンダーとしての顔になり振る舞う。
だから俺もただの客としてその中に入っていく。
そしてカウンターの一番奥の席に座った。


店の中には数人の客がいて
落ち付いた店内には静かな音楽が流れている。
雰囲気がいい店だなと思った。










「何にいたしますか」


大野が何事もなかったかのように。
そして俺という存在をまるで意識してないかのように聞く。
だから俺もただの客として振る舞う。


そして注文をするとその手から自分の為に作られるカクテルの出来上がる様子を見ていた。


「どうぞ」


そういってその差し出された綺麗な手。
その差し出された手にあの時、ひったくる様にして
受け取ったパスケースの記憶が蘇る。








そしてそれからもずっと自分たちの間には何もなかった。
ただのバーテンダーと客でそれ以上でもそれ以下でもなく
事務的な会話以外、何も話さない。


高校時代もそうだった。
そう、自分がしむけた。


それなのに俺はなぜかここにくる。
そして大野の作ってくれたカクテルを見つめながら
自分は何をしているのだろうと思う。




事務的な会話だけで何もない。


ただの同級生でそれ以上でもそれ以下でもない。



それでも、



仕事が終わるとここに通った。











この日は土砂降りのせいか店内には珍しく自分以外に客はいなかった。
静かに音楽だけが流れている。
そしていつもと同じように自分の頼んだものを大野が作ってくれるのを見つめる。
そして出来上がると綺麗な手が伸びてきて


そして


どうぞ、とカクテルが差し出される。


はずだった。


「もうこれでここに来るのは最後にしてください」

「え…」


でも、違った。


大野が静かにそう言った。
確かに自分がここに来るたびに大野が微妙な表情になるのを知っていた。
そして二人の間には何とも言えない空気が流れていることも知っていた。


でも。


「…他にもたくさんあるでしょう? なぜわざわざここにくるの?」


確かに同じようなバーは数え切れないほどある。
それでも。
自分でもわからない。


「ごめん、迷惑だったら来る頻度を減らすから…」


高校時代はムカついてずっと睨んでいて
そしてお互い空気のような存在となって清々していた。


でも。


ずっと気になっていた。


気になる存在だったから


だから松潤と二人でいる姿にムカついた。
だから二人がくっついているのを見て周りがキャーキャー言う事にいらついた。
だから松潤とキスをしている姿に衝撃を受けた。
だからいつも気になってその場所を通るたびに見ていた。
だからいつも見ていた木々や草花を覚えていた。
だから何の思いれもない高校の同窓会に出席した。
だから必死にこの場所を突き止め


そして、ここに通った。






でもその言葉に、大野は真っ直ぐな眼差しを向け



そして静かに首を横に振った。



それは、明らかな拒絶だった。











おまけ。


すごーくすごーく前に書いたVSの話が下書きに残っていたのでそれをアップです。
が、いつのVSだったかよくわかりません。それでもよければ↓ すみません💦



VS嵐




『大野さんの事を凄いお褒めになっていた』


その言葉にその人は意外そうな表情を浮かべた。


『カッコいいでしょ天才でしょあの人って』


そして。


凄く嬉しそうに見つめたかと思うと


そのまま、抱きついた。








「あ、落ち込んでる人がいる」

「……」


楽屋で一人でいたら、ニノがそう言って入ってきた。


「ふふっまあ大野さんの事だとは思いますけどね」

「……」


そして嬉しそうにそう言った。


「だったら気にする事はありませんよ」

「……え?」


だから何も言えず見つめていたら
なぜか気にすることはないと言う。


「あれはね、意外な条件が重なったせいです」

「意外な 条件?」

「そ」

「どういう事?」


そう言ってニノは笑ってるけど意味わかんない。


「まずね、意外な人からの情報であったという事」

「まあ」


確かに意外な人からの情報ではあったけど…


「そしてその話の内容が意外な内容であったという事」


そしてまさかあの状況から、そんな話が出るとは思わなかったけど。


「そして、その話が3年も前の話であったという事」

「……」

「そしてそれを言ったのが松本さんであったという事」

「何だよーやっぱ、それが大きいんじゃん。俺だっていつも言ってるのに~」


でもそれなのにあんな嬉しそうな顔して、抱きついて。


「何でかなあの人ってあんなにかっこよくて天才なのに
昔から自己評価が低くて自信がないんですよね。
だから俺らがもっとたくさん褒めてあげればいいんだろうけどしないでしょ?」

「わかってるなら、もっとほめてあげればいいでしょ~」

「嫌です」

「何でぇ?」

「調子に乗りそうだからです」

「ひでええ」

「でもだからこそ翔さんの存在は貴重なんです」


そう言ってニノはおかしそうに笑っているけど
やっぱりあんな顔をさせる松潤が羨ましくてちょっとだけ妬ましく感じた。








「でもあれってハグなのかな?」


そんな事を思っていたらニノがぼそっと小さくつぶやいた。


「いやどう見てもハグでしょ?」

「ま、いいや」

「え~何だよ?どういう意味よ?」


意味わかんない。あれがハグじゃなかったら何なわけ?


「まぁ、オンエアで見たら翔さんの気持ちも変わるかもよ?」


オンエアで見たら変わる?
やっぱり意味わかんない。







そう思いながらもオンエア後、気になって録画してあるものを見ると
そこにはやっぱり嬉しそうな顔をしている智くんの姿が映し出されていた。
で、このまま大野さんが抱きつきに行って…


あれ?


確かに何か違う?


そう思いながら巻き戻しもう一度同じ場面を見る。
何というか身体と顔の向きがあっていないというか。
身体だけは寄せていってるけど顔は別の方向に行ってて
何だか不思議な体勢というか。


「……」


そんな事を思いながら繰り返し見ていたら
お風呂に入っていた智くんが頭をふきながら出てきた。
だから確かめるように立ち上がって智くんに向かっておいでという風に手を広げる。
智くんは不思議そうな顔をしながらも
素直に手の中に納まるようにすっぽりと入ってきた。


目の前には大野さんの洗ったばかりの髪の毛があって
いつものシャンプーのにおいがする。
その頭に手をのせ、やっぱ俺の時はこうだよね?と、思いながら
口元が自然と緩む。


智くんは何だろうと不思議そうに顔を上げる。
だから何でもないよと言ってその身体をぎゅっと抱きしめて
そしてその唇にちゅっとキスをした。