yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

ありふれた日常 part34(VS嵐 翔くんverプラス)

2016-08-19 14:15:10 | 山コンビ ありふれた日常







part33を翔くんバージョンで書いてみたりして💦
次回からは続きものに戻ります。









あのタッキーと大野さんが一緒にいる。


しかも一緒に歌って踊っている。


これって、凄くない?







タッキーとは年代も近くジュニア時代は
一緒に踊ったり歌ったりしていた。


でも自分たちのデビューが決まり
タッキーのデビューが決まり
そういう機会があまりないまま今日まで来てしまった。


事務所のメンバーが一斉にそろう年末の恒例行事でさえ
舞台があったりして一緒に踊ったり歌ったりという機会が
ほとんどなかったように思う。


だからあのタッキーと大野さんが二人で
一緒に踊って歌っているなんてすごく珍しくて貴重で
もうこんな二人の姿が見られるなんて
二度とないかもしれないと夢中で
写真を撮りまくった。





その画像をパソコンで眺めながら


その時の興奮が


またよみがえる。








「ちょっ、これ凄すぎない?」

「……」


でもこちらの興奮とは裏腹に
智くんは大して興味もなさそうな顔で
よっこらしょっと言って隣に座った。









あのタッキーと智くんが一緒に並んで歌って踊っている。


自分の中ではあり得ないくらい凄い事だ。


ジュニア時代の代表的存在だったタッキーと
自分自身の憧れの存在だった智くん。


そんな自分の中のジュニア時代のツートップが時を変え
その時代を彷彿とさせる姿で目の前にいる。


やっぱ信じられない。







「って、その顔~」


そんな事を思いながら画像を見つめていると
智くんが呆れたような表情をしてそう言った。


「だって」

「……?」

「だってタッキーと智くんが一緒に歌って踊ってんだよ?
貴重すぎじゃない?」

「めっちゃ興奮してるし…」


あまりにも興奮していたせいか
写真がたくさんあったのを見てびっくりしたせいなのか
智くんがちょっと引き気味にそう言った。


「だってこんなのジュニア以来だよ?
めちゃくちゃ貴重だよ? お宝だよ?」

「……」


きっとこのツーショットがどれだけ凄い事で
貴重な事なのか智くんはわかってない。










「すげえよ、コレ。俺のお宝コレクションとして永久保存版にしよっ」

「……俺の一番のファンって、実は翔くんなんじゃね?」


画像を見ているだけで嬉しくなってきて
何だかウキウキしながら整理していると
智くんがそうつぶやくように言った。


「え? そうだよ」


そんなの当たり前だ。
以前から智くんのファンであることを公言してきたし
本人にだって何度も伝えているのに
何を今さらと思いながら答える。


「そうだよって平然と答えてるし…」

「だってそうなんだもん」


昔からその才能を近くで見てきて
他の誰よりもファンだった。



「凄いね?」

「凄い?」


だからそう答えると智くんは不思議そうな顔をして言った。









「だってずっと一緒にいて俺の嫌なところとかダメダメなところとか
散々見ているのにファンでいられるって…」


智くんは少し困惑したように言う。
でも、そんなの知ってる。
そんなの、わかりきっている。


「まあね」


でも誰よりも一緒にいてずっとその姿を見てきたから
嫌いになんてならない。
なるはずなんてない。


「でしょ?俺が逆の立場だったらもうダメだコイツって言って
とっくのとうに辞めてる」

「え?」


だからファンを辞めるなんてあり得ないのに
智くんはそう言って自嘲気味に笑った。









「でも翔くんは変わらず一緒にいてくれるね。何で?」


そして智くんは少し考えるような顔になると
そう聞いてきた。


何でって。
何でなんてそんなの決まってる。


「それは俺が智くんのコアなファンだからかな」

「……」


昔からその才能を知るたびにファンになった。
その人柄を深く知れば知るほど好きになっていった。


「ダメなところももちろんたくさん見てるし、
知ってるけどそれ以上のものを見せてくれるから
ファンを辞める事なんて全然考えられないんだよね」

「……」


そう言うと智くんが真っ直ぐな視線で見る。


「俺、何だか凄く好きみたい。智くんのこと」

「……何か恥ずかしいんですけど」


その言葉に智くんはちょっと俯いて照れくさそうに笑った。
可愛い。
そしてその顔を見ながらこういう可愛らしいところも好きだなと思う。









「だってジュニアの頃からずっとファンなんだもん」

「……」


でも誰がどうこう言おうとそれがすべてなのだ。
出会った時から。
最初に手本にして踊れと言われたその日から
多分ずっと、ファンだった。


「だからジュニア時代しか見られなかった貴重な2ショットには
めちゃくちゃ興奮したし嬉しいし。
だからこれはもうお宝ファイルに保存するしかなくない?
いや、いつでも見られるように待ち受けにでもする?」

「ほんとに、好きだね?」


そう言うと智くんは少し困惑しながらも
照れくさそうにそう言って笑った。


「うん、好き。ずっと好き。
だからずっと何があってもファンでいられる自信ある」

「すげえな」


そう断言するように言うと智くんが感心するようにすげえなと言った。


「昔からコアなファンですから」

「……」


確かに色々あった。
目にしたくないことも耳にしたくないことも
全くないと言えばそれは嘘になる。
それでもやっぱり好きなのだ。
ずっとファンなのだ。
そしてそれが、まぎれもない事実なのだ。













「だから、ファンの分際でこうして一緒にいられることが幸せなんだよね。
それにこんなこともできるし」


そう言って智くんの顔を見つめ
そしてゆっくりと手を伸ばすとその華奢な身体を抱きしめた。


「……役得」

「役 得?」


そしてその身体を抱きしめたまま
そうつぶやくように言うと智くんが
意味わかんないって顔をして聞き返す。


確かにこういう時に使う言葉ではないことはわかってる。
でも、同じメンバーでなかったら
お互い違う人生を選んでいたら
こんなことはできなかった。


「そ。同じメンバーだからファンである智くんとずっと一緒にいられるし
こんな事も出来ちゃう」

「……」


そう言って抱きしめたその身体にぎゅっと力を込めた。










「好きだよ。どんなあなたも。ダメなところもいいところも全部知ってる。
いつも控えめでどこか自信なさげなところも知ってる。
でもそういうあなたも全部好き」

「なん…」


きっとそういうあなただからずっと好きなのだ。


でも智くんは納得できないようで
何でって顔をしてそう言ってくる。
だからもう言葉はいらないよとその小さな唇に指をあてた。


何で? なんて聞かれても理由なんてない。


その才能に惚れファンになり
その人柄を好きになり
そしてその美しい顔も、
透き通るような歌声も、
体重を感じさせない美しくキレのあるダンスも
秘めた才能の数々も
そしてそれをひけらかさない所も
そしてそんな才能がありながらも
なぜかどこかいつも自信なさげで控えめなところも
そういうあなたのすべて好きなのだ。


そんな事を思いながらゆっくりと顔を近づけていく。


そしてゆっくりとその唇にあてていた指を離すと
代わりに自身の唇をその唇に重ねた。


「好きなのに理由なんてないでしょ?」

「でも…」


そしてゆっくりと唇を離すと智くんがでも、と言う。


「何がそんなに不安なの?」


こんなに好きだと伝えているのに
誰よりもあなたの事を知っていて
ファンだと伝えているのに
やっぱり信じきれずにいるあなたはそう言って目を伏せる。









その身体をそのままゆっくりと倒し上から
その美しい人を見つめた。


「どう言ったら伝わるのかな?」


どれだけ好きだと伝えても
あなたはまだ信じられないって顔をして
いやきっとわかっているのだろうけど
でもその自信のなさからなのか
丸ごとは信じきれずほんの少しの疑いの眼差しを向ける。


「何かいっぱい考えているみたいだけど
好きなことには変わりないから」

「……」


そう言ってその人を見つめる。


「好きだよ」


何度も伝えているけどまた伝えたくてそう言うと目を伏せ気味にする。
そのままゆっくりと顔を近づけていって唇を重ねると
智くんの口が小さく開く。
そのまま自分の舌を差し入れ深いキスをした。


唇が離れるとその人の顔を見つめる。


そして視線が合うとやっぱりその人は照れくさそうな顔をして
目を伏せがちにするからそのまままた唇を重ね
ちゅっと触れるだけのキスをした。


そしてまた唇が離れると角度を変え今度は深いキスをする。


その身体を抱きしめて体温を感じあう。


そして腕の力を緩めるとお互いの視線が合って
お互い照れくさくて思わずくすっと笑いあう。
そしてまたその華奢な身体を抱きしめた。






どのくらいそうしていただろうか。






『俺も好き』






智くんが背中に回している腕に力を込めてきて
力強くぎゅうっと抱きついてくるから
そのままぎゅっと抱きしめ返す。


そして力を弱め少し身体を離し智くんを見ると
智くんも真っ直ぐな視線で見つめてくる。


何? とわらいかけるとその人は、俺も好きと
つぶやくように言った。


その言葉に思わず笑みが浮かぶ。


智くんは照れくさいのか視線を落とした。


だから俺も好きだよとそう言って
またその身体を強く強く抱きしめた。








翔くんバージョンでした。

ありふれた日常 part33(VS嵐 2016.8.4)

2016-08-06 16:56:00 | 山コンビ ありふれた日常






ちょっと一休み。
暑いので甘~い話を。






「ちょっ、これ凄すぎない?」

「……」


家で二人で過ごす時間。
翔くんが興奮しながらそう言って
パソコンに入っている画像を見せてきた。


だから飲んでるグラス片手によっこらしょっとと
隣に座って一緒にその画面を見つめた。


「って、その顔~」

「だって…」


そこにはみんなで集まった時に翔くんが撮った
写真の数々が映し出されていた。


そう言えば何だか妙に楽しそうに
興奮しながら撮っていたっけ。


「だってタッキーと智くんが一緒に歌って踊ってんだよ? 貴重すぎじゃない?」

「めっちゃ興奮してるし…」


でも別にそんなの普通じゃない? 
みんなもしてたし、そんな興奮することだっけ?


「だってこんなのジュニア以来だよ? めちゃくちゃ貴重だよ? お宝だよ?」

「……」


そんなこちらの思いとは裏腹に翔くんは
めちゃくちゃ盛り上がっていてお宝なんて言って興奮している。
って、何だかめちゃくちゃ楽しそうだね。
そう思いながらその端正でかっこいい男の横顔を見つめた。







「すげえよ、コレ。俺のお宝コレクションとして永久保存版にしよっ」


そう言って翔くんは嬉しそうに
パソコンの画面を見ながら操作する。


「……俺の一番のファンって、実は翔くんなんじゃね?」


その中には歴代の嵐の(俺のがなぜか圧倒的に多い…)
画像がたくさん入っていることを実は知っている。


「え? そうだよ」

「そうだよって平然と答えてるし…」

「だってそうなんだもん」


そう思いながらそう言うと
翔くんは当たり前じゃんって顔をして答える。
でもそれって当たり前の事なのかな?








「凄いね?」

「凄い?」


そう言うと翔くんは不思議そうな顔をする。


「だってずっと一緒にいて俺の嫌なところとか
ダメダメなところとか散々見ているのにファンでいられるって」

「ふふっまあね」


っていうかそもそも同じメンバーでありながら
ファンていうのもどうなんだ? 
と思いながらそう言うと翔くんはまるで
気にしていないかのようにふふっと笑った。
その顔を見つめながらやっぱイケメンだなと思う。


「でしょ? 俺が逆の立場だったら
もうダメだコイツって言って、とっくのとうに辞めてる」

「え~?」


そう言うとやっぱり翔くんは不思議そうな顔をする。
でも本当に翔くんほどの人がずっと
そう思っていてくれるなんて信じられない。


「でも翔くんは変わらず一緒にいてくれるね。何で?」


いつも不思議に思っていた。
それは、同じメンバーだから?
だから仕方なく一緒にいてくれるの?って。


「何でって、それは俺が智くんのコアなファンだからかな?」

「……」


そう不安になって聞くと翔くんは真面目な顔でそう答える。


「ダメなところももちろんたくさん見てるし、知ってるけど
それ以上のものを見せてくれるから
ファンを辞める事なんて全然考えられないんだよね」

「……」


何も言えなくて翔くんをただ見つめてると
翔くんがそう説明するように言った。


「俺、何だか凄く好きみたい。智くんのこと」


やっぱり何も言えないでいると
翔くんが顔を見つめながらそう言って笑った。









「……何か恥ずかしいんですけど」


その真っ直ぐに向けられる視線に
その言葉に恥ずかしくなって直視できない。


「ふふっだってジュニアの頃からずっとファンなんだもん」

「……」

「だからジュニア時代しか見られなかった
貴重な2ショットにはめちゃくちゃ興奮したし嬉しいし。
だからこれはもうお宝ファイルに保存するしかなくない?
いや、いつでも見られるように待ち受けにでもする?」


翔くんはちょっとおどけるようにそう言って笑った。
そう言いながらもやっぱり顔も言動もカッコいいなと思う。









「ほんとに、好き だね?」

「うん、好き。ずっと好き。
だからずっと何があってもファンでいられる自信ある」

「すげえな」

「ふふっ昔からコアなファンですから」

「……」


翔くんはそう言って笑う。
その翔くんの顔を見つめた。


「だから、ファンの分際でこうして一緒にいられることが幸せなんだよね~
それに、こんなこともできるし」


そう言って横を向いたと思ったら
両腕をゆっくり伸ばしてきて身体全体を包み込むように
ふんわりと優しく抱きしめてくる。


「ふふっ役得」

「……役 得?」


突然の事にそのままされるがままでいたら
抱きしめた状態のまま役得と言って翔くんがふふっと笑った。


「そ。同じメンバーだからファンである智くんと
ずっと一緒にいられるし、こんな事も出来ちゃう」

「……」


そう言いながら抱きしめている腕にギュッと力を込めて
翔くんがそう小さくつぶやいた。








「好きだよ。どんなあなたも。
ダメなところもいいところも全部知ってる。
いつも控えめでどこか自信なさげなところも知ってる。
でもそういうあなたも全部好き」


そう言って抱きしめていた腕の力を少し弱め身体を少し離すと
顔と顔が向き合うようにした。


「なん 」


そう言いかけたら翔くんが困ったような顔をして
もう言わなくてもいいよって感じで唇に指をあてる。


でもずっと何で何で何でって思ってる。


でもそんな疑問は無意味だよっていう風に
少し困ったような顔で笑って唇に指をあてたまま
ゆっくりと顔を近づけてくる。


そしてゆっくりとその指を唇から離すと
その柔らかい唇で唇を塞ぐ。


でもやっぱりわかんない。


「好きなのに理由なんてないでしょ?」


そう思っていると唇から離れ
至近距離の状態のまま
そう言ってふふっと笑う。


「でも…」

「何がそんなに不安なの?」


でも、と思ってるとそう言って両方の肩に
両手を乗せられてそのまま優しく身体を横に倒される。








上を見ると翔くんがその端正な顔で見つめてて
目が合うとふっと笑う。
やっぱりカッコいい顔しているなと思う。
頭もよくて顔もかっこよくて。


そんな人が何で? ってやっぱり思っていると
やっぱりその人はちょっと困ったような顔になって


「どう言ったら伝わるのかな?」


と言って苦笑いを浮かべた。


だってサクライ ショウだよ?
日本中が熱狂する嵐のメンバーで(自分もだけど)
頭もよくて、いい大学も出てて
選挙やオリンピックでもキャスターを務めてて
お父さんだって凄い人で。
もしかして都知事とかなってたかもしれない人だよ?
そんな人が…


そんな事を思っていると翔くんがまた困ったようにふふっと笑った。


「何かいっぱい考えているみたいだけど、好きなことには変わりないから」


そう言ってゆっくりと顔を近づけてくる。


頭がいいのにバカなこともできて
カッコいいのにちょっと抜けてて可愛くて
忙しいのにキャスターの仕事はいつも完璧で。


「好きだよ」


そう思っていたら真っ直ぐな視線で翔くんが好きだと言ってくる。








何だか恥ずかしくなって視線を落とすと翔くんがくすっと笑ったような気がした。


そしてそのままゆっくりゆっくりとその唇を重ねてくる。
だからそれに応えるように少し口を開くと
翔くんのがゆっくりと入ってくる。


そのまま背中に腕を回した。
そして自分も好きだと伝わるように
ぎゅっとその腕に力を込める。


そして唇が離れると見つめあって
またゆっくりと唇を重ねて
お互いの気持ちを確かめ合うように深いキスをして。


また強く抱きしめあって
目が合うと
お互いに照れくさくてくすっと笑って
そしてまた抱きしめあって







そして



『俺も、好き』



と、そうやっぱり言葉で伝えたくて



視線が重なった時に



小さくつぶやくように



その人に伝えるとその人は嬉しそうに



ニコッと笑った。


Song for me 4

2016-08-02 17:28:00 | Song for me






今日から大野さんが出勤してくる。


なぜかそれをソワソワしながら待っている。



大野さんから何か言ってくるのではないかと


どこか期待しながら待っている。





イライラしてムカついていたはずなのに




その姿が現れるのを今か今かと




緊張しながら、待っている。











あの日はただ同僚の家へ頼まれたものを届けに行っただけなのに
そして言われた通りパソコンの設定をしただけなのに
何だかまるで二人だけの秘密を共有したかのような
そんな気分になっている。


大した話をしたわけでもない。
特別な事をしたわけでもない。


でも、その時の事や大野さんの顔を思い出すと
ちょっとくすぐったいような嬉しいような
それでいて恥ずかしいような
そんな変な気分になる。


でも、その反面。


謎が増えてしまったも確かだ。
大野さんの家庭の事情
大野さんの言った言葉の意味。


大野さんの事は気にしないように
見ないようにしていたのに
あれからずっと大野さんの事を考えている。


そして大野さんが自分に話しかけてくるのを
今か今かと緊張しながら待っている。







大野さんの姿が見えた。


あの日以来だ。


何だか不思議な気持ちでその姿を見つめる。


あの日までは仕事場で会うだけのただの同僚だった。
そのただの同僚であった大野さんの自宅を訪れ
そして部屋に入り、お茶を飲み
大野さんの家のパソコンを設定した。


その全てが夢だったような気さえする。


大野さんの顔をじっと見つめた。
大野さんは気付かない。


今まで気にして見ていなかったけど
綺麗な顔をしているなと思う。
小さく整った唇。
鼻筋が通った綺麗な鼻。
バランスの良い顔立ち。


特に愛想がいいわけでもない。
明るく挨拶をするわけでもない。
でも、なぜかそこだけ空気が変わる。
自然と周りの人が寄ってくる。
そんな不思議な雰囲気を持った人。


そして今もまた、大野さんが現れると
休んでいたせいもあるのだろうか
次々と人が寄ってきて話かけている。







そしてその中に一人。
一際親しげに大野さんに話しかける人がいた。


高山さんだ。


高山さんは大野さんが休んでいるときに異動で入ってきた人で
どうやら二人は同期らしい。
二人がお互いの存在に気付き何やら
めちゃくちゃ盛り上がっている。


確かに同期の存在は他の同僚と違って何か特別な存在だ。
研修などでもなにかと一緒になる事も多いし横の繋がりもある。
だから親しげにしていても何ら不思議な事はない。
でも、何だかちょっと面白くない。


これまでも大野さんは自然と人が寄ってきて
話しかけられる人ではあった。
でも高山さんは何か違う。
同期のせいかやたらなれなれしくてスキンシップも多い気がする。
何だかそれを見ると無性にイライラした。


今まで大野さんが他の同僚などに話しかけられているのを見ても
楽しそうに笑っているのを見ても何とも思わなかったのに
高山さんと一緒にいるのを見るとなぜか無性にムカついた。


大野さんは自分の視線には全く気づかない。
何だかイライラしてムカついた。










そして結局この日は大野さんと話をすることもなく
そのまま大野さんは定時で帰ってしまった。


なんとなく大野さんから一言くらいあるかなと
多少期待していたせいかがっかりしている自分がいる。
イライラしてムカついていたはずなのに
何もなく終わってしまった一日を
残念に思っている自分がいる。






そしてそうこうしているうちに一週間が過ぎてしまった。


自分も外勤が入ったり打ち合わせなどで忙しく
あわただしい毎日だった。
大野さんも休んでいた分が一気に押し寄せているみたいで
忙しそうだが淡々と仕事をこなしていた。






そんな毎日。











昼休み。トイレで手を洗っていると人が入ってくる気配がした。
それが大野さんだとすぐに気づいた。
大野さんの方は、全く気付かない。
手を洗いながらじっとその姿を見つめた。


あれから10日以上が過ぎていた。


そう言えば以前もこんな事があったなと思う。


あの時は大野さんが手を洗っていて自分が後から入ったんだっけ。
そんな事を思い出していたら大野さんが自分の存在に
気付いたみたいで近寄ってきた。


「ごめん、ずっとお礼を言えてなかったけど
あの時は届けてくれてありがとう。パソコンも…」


そう言って大野さんがニコッと笑った。
その無邪気に笑う笑顔に胸がきゅっとなった。


なぜだろう。ずっと大野さんからこうして自分に
話しかけてくれるのを待っていたせいなのだろうか
その笑顔に胸がきゅっとなる。


そして大野さんの方も、やっと伝えられたと思っているのか
どこかほっとしたような表情をしたように見えた。


「いえ、お役に立てて嬉しいです」

「んふふっほんと凄く助かった~」


大野さんが可愛らしくそう言って笑った。
その姿にまた胸がきゅっとなった。









「あ、あの、でも…」

「……?」


何だかこのまま会話を終わらせてしまうのは
もったいないような気がした。
それにあの時言った大野さんの言葉の意味も確かめたかった。


「でも、あれから大野さんの言ってた言葉の意味をずっと考えてました」

「……え?」


だから大野さんが満足し歩き出そうとしたところを
待ってと話しかける。


大野さんが立ち止まり何だろうと真っ直ぐな視線で見る。


「大野さんが言っていた、子供が持てない人生ってどういう事だろうって」

「あー」


ずっと考えていた。
どういう意味なのか。
どういう考えがあってそう言ったのか。


「それって、もしかしておたふくの事ですか?」

「へ?」


ずっと考えて考えて一つ思い当たることがあった。


でもそれを言うと、大野さんがきょとんとした顔をした。
あれ? もしかして違った のか?


「いや。こないだ伺う時におたふくになったことがあるか
確認してから行くようにってしつこく言われていたので
気になって調べたんです。それで…」

「んふふっおたふくは全然関係ないよ」

「そ、そうなんですか?」


大野さんがおかしそうにクスクス笑った。
そんなに変な事言ったかな?
大人になってからおたふくになると男の人は不妊症になる事があるって
書いてあったから絶対これだって思ったけど違かったのか。


大野さんがよっぽどおかしかったのか
クスクスと可愛らしく笑い続けている。


「何を言い出すのかと思ったら」


そう言いながらいつまでもおかしそうに
くすくす笑う大野さんを見てあんなにイライラして
ムカついていたはずなのに思わず笑みが浮かんでしまう。


この人は笑うとこんなに可愛らしい人なんだなと思った。


そしてトイレから戻った大野さんに
また高山さんが嬉しそうに話しかけていた。
それを見てまたイライラした。


確かに同期は特別な存在だ。
新人研修から一緒だし何かと一緒になる機会が多い。
だから何でこんなにムカついてしまうのかわからないけど
でもやっぱりその二人の姿を見るとイライラしてムカついた。








そんな毎日。








仕事は忙しいけど充実してて


大変だけど面白くなってきて。


たまに親に顔を見せに実家に帰って


時々彼女とデートして。


仕事場では相変わらず高山さんが大野さんに絡んでいて


それを見てまたムカついて。










そんな中、大野さんが在宅勤務に変わるという噂を耳にした。


大野さんが在宅勤務に変わる?
ってまさか。
嘘だろ?
でも、もしかしてあの男の子のため?
でもそれしか考えられなかった。


確かに大野さんの仕事は在宅でもできる。
現にあの時も家で仕事をしてたし、それにこれまでも
そういうことが何回かあったようだ。


でもそれは単発の仕事だ。
完全に在宅勤務になってしまうと今までのような仕事が
できなくなってしまうし仕事内容がかなり制限されてしまうだろう。


そしたら今までのように大野さんの才能が
十分に発揮できなくなってしまう可能性がある。
あれだけの才能を持っている人なのにもったいないと思った。


そしてそこまであの男の子のためにしなくてはいけないのかとも思った。
お姉さんの子供と言っても
血がつながってるとは言っても
自分の子供ではない子。
あの男の子の父親や祖父母もいるはずだ。
大野さんがそこまで犠牲にならなくてはいけないのかと思った。


そして何より、もし大野さんが在宅勤務に完全に変わってしまったら
今までの様に大野さんに会えなくなってしまうだろう。
それがなんだか凄く寂しいような気がした。


別に特別仲がいい訳でもない。
毎日話をするわけでもない。
昼ご飯を一緒に食べるわけでもない。
チームで一緒に仕事しているわけでもない。


でも。


何だか自分の中で気になるのだ。
もともとここは入れ替わりも多い。
自分自身半年前にここに部署に異動になったばかりだ。
でも他の人が異動になっても自分が異動が決まっても
へーとしか思わなかった。


でもなぜか大野さんが在宅に変わると聞いて
驚いている自分がいる。
そしてその才能が発揮できないのがもったいないと
自分の事の様に悔しく思っている自分がいる。











今日も大野さんは変わらない。
淡々と仕事をこなし定時になると退社する。


そして相変わらず高山さんは大野さんに話しかけていて
それを見てイライラしてムカついて。


まだ正式な辞令は出ていない。


本当に大野さんは在宅勤務に変わってしまうのだろうか?


だとしたら、いつ?











「大野さん在宅勤務に変わるって、本当ですか?」


いてもたってもいられず
帰ろうとする大野さんを廊下で呼び止め聞いた。
大野さんが怪訝そうな顔で見る。


「え?」

「噂でそう聞いたので」

「んふふっ、俺の事避けてたって言ってたでしょ? ちょうどいいね」


大野さんは揶揄うようにそう言った。
確かに揶揄われてムカついて避けていた時もある。
でも今は、違う。


「……あの男の子のためですか?」

「え?」


どうしても聞きたかった。


「どうしてそんなに大野さんが犠牲にならなくちゃいけないんですか?」

「別に犠牲だなんて思ってないよ。前にも言ったでしょ? 関われて嬉しいの」


そう言って大野さんはふっと笑う。


「でもだからって在宅勤務になったらもったいないです」

「もったいない?」


大野さんは自分の才能に自覚がないのか
そう言って不思議そうな顔をする。


「こんなに才能にあふれているのに」

「才能なんてねえよ」


やっぱり自分の才能に自覚がないのだろう
大野さんはそう言ってくすっと笑った。


「俺は大野さんの事才能の塊だと思ってます」

「は?」

「だから、在宅なんてもったいないと思ってます」

「……」


そう言うとさっきまで笑っていた大野さんが
真面目な顔になって真っ直ぐな視線で見た。


「だから、俺も……」

「……?」

「俺も、できることは協力しますから、このまま…」


大野さんがその言葉にびっくりした顔をする。
確かにそんな事言われれびっくりするだろう。


「……自分で何言ってるかわかってる?」

「……」

「これからあの人と結婚するんでしょ?
そんな協力なんてできるわけないでしょ?」

「……」

「それこそ子供とかできたら
自分の家庭が第一になって他の家の事なんて
構っていられなくなるよ?その時にどうするの?」

「それは……」

「そういう事でしょ?家庭を持つって」


確かにその通りだ。でも……。


「気持ちは嬉しいよ」


そう言って大野さんはクスッと笑った。


「でも在宅にするかどうかはまだ考え中。
確かに在宅になると仕事の幅が狭まってしまうから
じっくりと考えなくてはいけないかなとは思ってる」


って、決定した訳じゃないんだ。
一気に肩の力が抜ける。


っていうか勝手に焦って何やってんだろう。
それに思い余ってとんでもない事まで口走ってしまった。
なんて軽々しい事をいってしまったのだろう。
確かに自分自身が家庭を持ったらそんな事できるはずないのに。
自身の言った言葉に今さらながら恥ずかしくなる。


でもあの時は大野さんが続けられるのであれば
何でもしたいって思っていた。
自分の家庭の事なんて全く考えてなかった。


大野さんがここに毎日来てくれればいい。
才能を埋めてしまうのはもったいない。
それだけだった。









今日も彼女は結婚の話をしてくる。
それをどこか遠い国の話のように聞いている。







レールの上の人生。


これからもずっとそのレールの上を歩むと思っていた。


そして30歳くらいまでに結婚して、家庭を作ってと


そう思っていた。


それが自分の人生だと思っていた。







でも。







あの日。



大野さんが



『茨の道を進もうかどうしようか悩んでる?』



と、そう問いかけた。