yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

another 5 完

2016-05-17 15:19:30 | another







If


もしも、あなたがこの世界にいなかったら







大野さんが自分の部屋の窓から外を眺めている。







何でこんなことになったんだっけ。


ああ、そうだ。


あの時。


大野さんの絵を見たくて


大野さんの描いた絵が欲しくて


食い入るように見つめていたら


大野さんが突然目の前に現れて


本当に欲しくて買っているのかと


同情で購入するのはやめてほしいと


そう言われたんだった。





だから、違う、と言って


大野さんの絵が好きだから


大野さんの事がずっと好きだったから


だから欲しくて買っているのだと


そう言ったら


大野さんはその綺麗な顔でふっと笑って


そして少し考えるような顔をした。





そして


今から自分の家に行っていいかと聞いてきた。


今から?


自分の家に大野さんが来る?


突然のその言葉にびっくりしながらも
答えは一つしかなかった。
そしてタクシーに乗りそのまま自分の部屋へとやってきた。


なぜ突然大野さんがそんな事を言い出したのか
なんてわからない。


ただ。


大野さんと一緒にいられる
大野さんと話ができる
大野さんの顔が見れる


それだけで、嬉しかった。







大野さんは部屋に入ると
すごいマンションだね、と言ってふふっと笑った。
そして夜景が見える窓の方にゆっくりと歩いていく。
そして窓から外を眺めた。


その横顔はとても美しくて可憐で


やっぱり


自分はこの人の事が好きなんだと


そう思った。


大野さんは外をしばらく眺め
そしてゆっくりとこちらを振り返った。
そして目が合うと世界が違う、と
小さく言ってふふっと笑った。


世界が違う?


世界が違うってどういう意味だろうと
大野さんの顔を見つめていると
今の翔くんと俺とでは住む世界が違いすぎるよね、と
大野さんはそう言ってまたその綺麗な顔で
小さくふふっと笑った。


「今の俺の生活はね、バイトして絵を描いて
お金がたまったら外国に行って。
で、お金が無くなったら戻ってきて
絵を描いてバイトしてっていう毎日なの。
今も、そして今後もそれは変わらないと思う」

「……」


やっぱり意味が分からなくて何も言えないでいると
大野さんがゆっくりと語りかけるように話し出した。


「だから国民的アイドルスターで
こんな凄いところに暮らせる翔くんとは全然違う」

「……」


その口調は穏やかだったけど
強い意志を持った表情をしていた。


それを伝えるためだけにここに来たのだろうか。
その事を身をもって知らしめるために。


わざわざ?


何で?


何のために?


頭が混乱して何も言えない。


大野さんの顔を見ると
大野さんが真っ直ぐに見つめ返す。








「前にあった時に言ったでしょ?
後ろなんて振り返らなくていいんだって。
俺の事なんて忘れ去っちゃっていいんだよ」

「……」


大野さんが自分の心の中を読んだみたいに
静かにそう言った。


「なのに、こんなに俺の絵まで買い揃えて」

「……」


大野さんはそう言いながら
部屋に飾られている大野さん自身が描いた絵を見つめた。


「ダメ なの?
大野さんの絵を買うことも
大野さんの事を好きでいることも」


大野さんが真っ直ぐ見つめたまま静かにうなずく。


「……何 で?」

「……」


自分とどうこうなってほしいとか思っている訳じゃない。


ただ。


「ただただ思っているだけでもダメなの?」

「翔くんには前だけを向いていてもらいたいから」


大野さんが静かな口調で言う。


「……じゃあニノは?」

「ニノ?」


大野さんがなぜそこで突然ニノの話が出てくるのだろうと
不思議そうな顔をする。


「あなたがいないのならデビューする意味なんてないと
そう言って辞めたニノみたいに俺も辞めていたらよかった。
俺だってニノと同じだったから。
そしたら住む世界が違うとも言われなかったし
ニノみたいにずっと気にしてくれた?」


自分でも支離滅裂で何を言ってるのかわからない。


「……翔くん、泣いてばっかだね。
って泣かせているのは俺か」


大野さんが苦笑いをしながらそう言う。


「だったら、アラシを辞めたらいいの」

「何言ってんだよ、辞めれるはずなんてないだろ」


大野さんが強い口調で言った。
バカなことを言っているのは自分でもわかっている。
そんな事が今更できないことも。




あの日。


あの時。


もうプロジェクトは進みだしていた。
もう後戻りはできなかった。
頑張って歯を食いしばってここまで来た。
忙しい中、大学も言われた通り4年で卒業し
必死にここまで走ってきた。


何がダメだった?


何がいけなかった?


無我夢中で突っ走ってきてやっとここまでたどり着いて
そしてずっと会いたいと願っていた大野さんに出会えたと思ったら
住む世界が違うと言われて
絵を買うことも
好きでいることも
何もかも全て否定されてどうすればいい?




自分のやってきたことは何だった?




やってきたことはすべて無駄 だった?




涙があふれては流れ




あふれては流れ




そして、目の前が真っ白になっていく。

















「……く ん」

「……」

「しょく ん」


遠くから大野さんの声が聞こえてくる。


違う。


「翔 くん?」


大野さんじゃない。
智くんだ。


目をゆっくり開けるとそこには
心配そうにのぞき込む智くんの顔があった。


今までのは、全て 夢?


「翔くん、大丈夫?」


智くんが心配そうな顔で見つめている。
その顔はいつもの智くんの顔で
さっきまでの智くんの顔とは違う。


「……いや、俺8年分の夢見てたわ」

「8年分? 長くね?」

「ホントすげー長かった」


智くんはそう言ってくすくす笑う。
いつもの智くんだ。
その表情にほっとする。


全て夢だったのか。
とてもリアルで怖い夢。


何であんな夢を見たのだろう。


昨日はお互い珍しく朝ゆっくりだからと
酒を飲んだ後目覚ましもかけずに寝た事を思い出す。


「しかも、すげえうなされてたよ? 涙も」


智くんはそう言って、んふふっと笑う。
慌てて涙をぬぐいながら、ああ、いつもの智くんだと
そう、実感した。


「だって、智くんが酷いんだもん」

「俺ぇ?」

「そう。でも、夢だったからいーや」

「え~何? 何? 聞かせて?」

「いや、夢の話だし」

「翔くんがこんなうなされて、涙を流すなんて
よっぽどの事じゃない? 
俺がどんな酷いことを翔くんにしたか聞きたい」

「え~」


こちらの気持ちとは裏腹に智くんがワクワクした顔で言う。


可愛いんだけどね。


でもこの顔じゃ話すまで許してはくれないんだろうな。


そう思いながら時計を見るとまだ出る時間まで余裕があったので
仕方なく夢であった8年分の話を始めた。










「何か、わかる」

「わかる?」


話が終わると智くんは少し考えるような顔をして
分かるといった。


「だって、今のこの状況でもそう思うもん」

「こんなに長く同じメンバーでやってきてるのに?」


そんな事を言うなんて思わなかったから
びっくりして問い返す。


「うん、だって翔くんと俺とは全然違うもん。
翔くんはちゃんと大学も出てキャスターをやったり
毎日凄く勉強もしていてしっかりしているし」

「でも、智くんには俺にはない才能がたくさんあるでしょ?」

「それでも、やっぱ違うもん。
そう言えばこないだだって、なんかのテストで満点だったんでしょ?
もうそういうのが信じらんないんだよね~
頭の中どうなってんの?」


そう言って口を尖らす。
その顔もかわいいんだけどね。


「ああ、あれ。何かね、そうだったみたいだね」

「ああいうのを目の当たりにするたびに
俺とは違いすぎるって思うもん」


この人はいつもどこかコンプレックスが抜けないままでいる。
こんなに才能にあふれていてダンスも歌も素晴らしくて
ずっとジュニアの頃から憧れているのは変わらないのに、ね。


「でも、ごめんね。翔くんを苦しめちゃって」


そんなことを思っていたら智くんが
そう言ってやさしく頬に手をふれた。


「いや、智くんは全然悪くないんだけどね
俺が勝手に夢見ただけだし」


「でも辛い思いしたんでしょ、ごめんね」

「いやいや夢の話にそんな謝られると」


そんなに謝られるとちょっと困惑してしまう。


「翔くんだってこないだ夢の中で嫌なことをされたって言ってた女の子に
謝ってたでしょ?」

「でもあれは番組の話だし」

「それと一緒。だから、ごめんね」


そう言ってふんわりと包み込むように抱きしめてくる。
だから思いっきりぎゅうぎゅうとその華奢な身体に抱きついた。


夢の中の智くんにはとてもそんな事できなかった。


見えない大きな壁があって
智くんの視線がどこか冷めてて
智くんなのに智くんじゃなくて


そもそも何であんな夢を見たんだろう?


ここ最近続けて智くんが辞めたかったっていう話を聞く
機会があったからだろうか。
それがどこか頭に残っていたせいだろうか。


でも、ニノは? 
ニノは何なんだろう。
どこかニノに対しては智くんと二人の関係に
嫉妬していたのだろうか。


こんなに一緒にいるのにね。


そんなことを思いながら自分自身に苦笑いをしていると
智くんの方から顔を近づけてきてちゅっとキスをしてくる。


「でも、もし、翔くんが嵐にいなかったら、俺が泣いちゃう」


そして唇からゆっくりと離れるとそう言ってクスリと笑った。


自分が嵐のメンバーでなかったら智くんが泣く?
そんなことあるだろうか。
でもその言葉だけでも嬉しい。


「俺も智くんが嵐にいなかったら泣いてるよ」

「まあ、でもそんな生活も憧れるけどね~」


そう言って、んふふっと笑う。


「いやいや、困ります」

「そうですか?」

「当たり前です」


ずっと智くんと一緒にやってきて
智くんなしの嵐なんて考えられないのにね。
あの主旋律をつかさどる歌声、圧倒的なダンスパフォーマンス
バラエティ番組での存在感。
智くんもニノもいない嵐なんて嵐じゃない。
5人だから嵐なのにね。


智くんを見ると、クスクスと笑っている。


いつもの智くんだ。


今までずっと苦楽を共にし、一緒にやってきた智くんだ。


家族以上に一緒に過ごし強い絆で結ばれている嵐のオオノサトシだ。


「智くんが嵐で本当によかった」


そう言ってちゅっとその唇にキスをした。
唇が離れると智くんがいつものように
ちょっと照れくさそうに、んふふっと笑った。


その頬を包み込みながら、好きだ、とそう言って
ゆっくり顔を近づけていって
そして深いキスをして
そしてまたぎゅっと抱きしめあった。


顔を少し離しお互いの鼻をくっつける。
智くんがくすっと笑う。
そのまま額にちゅっとキスをして
頬に唇に首筋にとキスをして
そしてその綺麗な手の甲にちゅっとキスを落とす。


智くんがどうしたの? って顔で見る。
だから8年分の思いだよって言ってまた頬にちゅっとキスをした。


そしてゆっくりと智くんをベッドに押し倒し上から
その綺麗な顔を見つめる。
智くんが照れくさそうに目を伏せるから
その唇にむかってゆっくりと顔を近づけ
ちゅっとキスをする。


8年分の思いがあふれて止まらない。
どんなに見つめてもキスをしても抱きしめあっても
まだ全然足りない。


その綺麗な肩をむき出しにすると
がぶりと優しく噛みついた。


智くんが何? って顔をする。


足りない足りない足りない。


そう思っていたら智くんがゆっくりと起き上がって
反対に自身がベッドに押し倒される。
そして智くんがまたがってきたと思ったら
クスリと妖艶に笑った。


そして自分の思いを知ったかのように
今度は智くんの方からぎゅっと抱きついてきた。
そしてしばらくそのままでいたかと思ったら
ゆっくり身体を離し、目が合うとまたくすっと笑って
そして唇に唇を重ねる。


そして智くんの方から舌を絡ませてくる。
その動きに無我夢中でついていく。
何度も角度を変えお互いに求め合って
抱きしめあって



そしてやっと



自分の中の8年分の思いが



消化されていくのを



感じた。














おわり。



次回は、リクエスト頂いた話をアップ予定です♪



another 4

2016-05-07 21:56:00 | another







この人は本当に人の懐に入るのが上手な人だと思う。





昔から好きな人に対しては


とても甘え上手で人懐っこくて


いつの間にか仲良くなっている。


そんな人だった。





そして


それは大野さんに対しても例外ではなく


大野さんがいなくなる前の時も


そして今回も


とても8年ぶりに会ったとは思えない程


ニノは大野さんの懐の中にすっと入り込んだ。





二人の間には


8年の年月を感じさせないほど


和やかで穏やかな時間が流れている。


自分の時とはまるで違うその二人の空気感に


少しだけ嫉妬した。


そしてニノは


自分がどうしても聞きたくても聞けなかった事を


難なく大野さんから聞き出す。


その事にまた嫉妬した。







でも。







大野さんは事務所を辞めてから
世界各地を旅していたという。
それはもちろん8年間ずっとではなく


絵を描いて
ものを作って
バイトをして
お金が貯まると
また海外に行って
絵を描いて
物を造って
バイトして。


そして


時々仲間数人と場所を借りて
個展を開いて
創り上げたものを
披露して
売って
海外に行って
創作活動に励んで
それを形にして
世に出して。



そんな8年間だったらしい。


それを聞いて


大野さんらしいな、と思った。






でもその個展を開いている場所は
まだまだだから、と
教えてもらうことはできなかった。
そしてニノの元気な姿が見れて安心したと
満足そうにそう言うとまた目の前からいなくなった。


そして大野さんと会ってもうひとつ分かったことがある。


あの日。


8年ぶりに会えたあの日。


あの日は珍しく絵が売れたので
いつもは飲まないような所で祝杯をあげようと
一人で飲んでいたという。




絵が売れたからいつもは飲まないような所で祝杯


その言葉がいつまでも頭に残った。







そして少ない情報からあらゆる手段を駆使し
その場所を突き止める。
そしてスケジュールの合間を見つけその場所に行った。


やっと見つけ出したその場所。
その場所に一歩また一歩と足を踏み入れる。
独特の空気を感じた。


その中に人はまばらにしかいなくて
まだ世に名が知られていない作家さんたちの作品が
たくさん展示されていた。


その中に大野さんの絵があった。
その絵の前に立つ。
絵を見つめていたら8年分の思いがこみあげてきて
涙が出そうになった。


何でここまでこの人のことを思うのか。
自分でもわからない。


ただ。


昔からこの人の描く絵が好きだった。
そして描いている姿を見るのが好きだった。


デビュー前はよく大野さんが絵を描いていると
ずっとそばに座ってその絵を見ていた。
そしてその描いている姿を飽きることなく
ずっと眺めていた。






そこには大野さんの作品が5点ほど飾られていた。
大野さんらしい絵。
本当は全部欲しい。


でもそれだと他の人の目にさらされることがなくなってしまい
大野さんのチャンスを潰すことになってしまうかもしれない。
そう思い1枚だけ選ぶ事にした。


じっくり眺めて


考えて


見つめて


悩んで


慎重に慎重に選ぶ。






そしてその後も個展が開かれていることを知ると
必ずその場所を突き止め訪れ1枚だけ購入し
そして8年ぶりに偶然会ったあの場所を訪れた。


大野さんに会えることはなかったけど
部屋に大野さんの造り上げていったものが
一点、また一点と増えていった。


そして今日もその場所を訪れる。


大野さんの描いた絵を


見つめて


悩んで


考えて


眺めて


一つだけ作品を選ぶ。


どのくらいの時間そうしていただろうか。


はっと後ろに気配がして後ろを振り向くと
大野さんが立っていた。


「……」

「翔くんだったんだね?」


驚いて何も言えないでいると
大野さんが静かにそう言った。


「……」

「不思議だったんだよね」


どういう意味だろうと見つめると
大野さんがゆっくり話し出した。


「あれから個展を開くたびになぜか確実に売れる」

「……」

「何でだろうってずっと不思議だった。
けど、翔くんだったんだね」

「……」


何といって答えればいいのかわからず
その静かに語りかける美しい顔を見つめる事しかできない。


「……買っては ダメ だった?」

「ダメなんて言ってない。
ただ本当に欲しくて買ってるのか疑問なだけ」

「……」


大野さんが静かにそう言う。
そんなの本当に欲しいからに決まってる。
でもそう言いたくても声が出ない。


「同情で買うならやめて欲しい」


その顔はなんだか怒っているみたいだった。
もしかして大野さんは勘違いしているのだろうか。


違うのに。


ただあなたの描いた絵だったから
あなたの絵がずっと好きだったから
あなたの事がずっと好きだったから


欲しかった。


大野さんが真っ直ぐな視線で見つめてくる。












大野さんが窓から外を眺めている。






真正面に見える東京タワーを見つめて


立ち並ぶ高層の建物を眺めて


煌びやかな街を見下ろして


その横顔はとても綺麗だ。


東京の街はキラキラと瞬いている。


ここは高層マンションの最上階にある自分の部屋の中。


大野さんが外の景色からゆっくりと視線を外し振り返った。


そして小さく微笑む。


その綺麗な顔に目が離せない。


そして世界が違う、と言ってふふっと笑った。


世界が違うって? と、意味かわからなくて聞き返すと


今の俺と翔くんでは住む世界が違すぎるよね、と


そう言って、またその綺麗な顔を向け


そして微笑んだ。







次回ラストです~。












セカムズで嵐。というか、山。




社長は、そのまま大野さん。
秘書は翔くんで、運転手さんは相葉ちゃん。
みさきは、そのままはるさん。
松潤は三浦で、ライバル会社社長はニノちゃん。


翔くんはまんまできる秘書。
相葉ちゃんは、優しくてお茶目で大野社長とは
犬を飼う話で盛り上がったり何かと気が合う。


みさきは、新入社員としてはいって来たばっかりで
まだ恋愛とか全く眼中にない。
松潤は軽そうに見えて意外と鋭く周りの状況をよく見ている。
ニノちゃんは、仕事はできるが恋に対しては全然ダメな
大野さんの事を見て密かに面白がって楽しんでいる。


大野社長は新入社員で入ったみさきにある日一目ぼれ。
翔くんと相葉ちゃんは、大野社長の恋を知り
恋が成就するよう日々叱咤激励しながらも応援していた。


一方、ニノちゃんはその恋の行方を楽しみつつも
常日頃からこのできる秘書、翔くんの事を
高く評価し興味を持っていた。
そこで翔くんを呼び出す。


そしてその中で優秀な秘書であると確信するとともに
大野社長の事をただの社長としてだけではなく
一人の人間として深く思っていることを感じ取る。
ニノちゃんはますますそんな翔くんのことが
気になり一緒に働きたいと思うようになる。


その話を耳にした大野社長はふと考える。
才能やセンス、そして経営能力でここまで会社を大きくしてきたけど
それは決して自分自身の力だけではなかったのではないかと。


翔くんが事前に根回しし事が運びやすいようにしてくれ
また秒単位でのスケジュールを一寸のくるいもなく
管理をしてくれていたおかげなのではないかと。
そして今まで当たり前のようにずっとそばにいて
見守ってくれたがそれは決して
当たり前の事ではなかったのではないかと。


一方、そんな事は露とも知らない翔くんは相変わらず
大野社長の恋を見守り協力を続けている。
しかし翔くんの心の中にもやもやする感情が
生まれてきていることに気付き始める。


うまくいきそうになるにつれそのもやもやは
だんだんと大きくなってくる。
翔くんはこのままでは大野社長に迷惑がかかってしまうと思い
ニノちゃんのところに行く事を考えた方が
いいのかと思い悩みはじめ…



山だとこんな感じかな~? と。

another 3

2016-04-24 18:47:00 | another








『大野さんの事を聞かせて欲しいのです』







その言葉に


大野さんは、何で?って顔で


びっくりしたような表情を浮かべて


そして


ちょっと困ったような顔になると


話すようなことなんて何もないよと


そう言ってその以前と変わらない


美しい顔でクスッと笑った。


そして


もう用はすんだとばかりに


じゃあこれで、と


そう、いとも簡単に言ったかと思うと


つかんでいた手を優しくはがし


その場から去ろうとした。







やっと会えたのに
大野さんが気にしていたのは、そして聞きたかった事は
ニノの事だけだったのだと、その現実が悲しかった。


そして


ずっと会いたいと願い続けていたその人が
また自分の前から消えようとしていた。





「……」

「……!」


大野さんがびっくりした顔で見る。


涙が出ていた。


大野さんが明らかに困惑している。


けど聞きたいことはたくさんあった。


伝えたいことも山ほどある。


やっと8年ぶりに会えた。


でももうこのチャンスを逃したら、もう二度と会えない。


そう思うと止まらなかった。





「……」

「……」

「……翔くんって豆みたいだったよね」


しばらくの沈黙の後
突然、大野さんがそう言った。


『翔くん』とその懐かしい響きに
また、涙が出そうになった。


けど、まめ?


今、マメって、言った?


豆って豆?


その言葉に涙が一気に引く。


「翔くんが最初に入ってきた時、小さくて豆みたいで
凄く可愛い子が入ってきたなって思ったんだよね」

「……」


確かに入所当時、背がすごく小さくて
豆みたいだったかも知れない。


けど、豆?
っていうか自分の事覚えていてくれた? 
それとも思い出してくれたのだろうか?
それに凄く可愛いって言った?
色んな思いがぐるぐる回ってとても整理しきれない。


「こんなに立派になっちゃうなんてね」

「……」


そう言ってクスッと笑う。
その言葉にどういう意味だろうと何とも言えない気持ちになった。


「だからもう、後ろなんて振り返らなくていいんだよ」

「……?」

「ずっと前だけ向いて歩いていけばいいんだ」


困惑していると、大野さんがそう続けていった。
それって大野さんのこと?
過去の人の事なんて振り返らず、前を見てろとそういう意味?







「これからも、ずっとテレビの前で応援してるから」

「……待って」

「……?」


困惑しながらも、帰ろうとするその人を呼び止めた。


「ニノといつもあなたの事を話してました」

「……!」


その言葉に大野さんの足がピタッと止まった。
そしてわかってはいたけど
やっぱりニノの事となると表情が変わった。


「8年間、ずっとニノも会いたがっていました」

「……」

「会ってやってくれませんか?」


もしかしたらと思った。
ニノの事をずっと気にしていたから
そう言ったら、この人の事を止められるのではないかと。
このまま別れてしまったら、もうこの人とは二度と会えない。


「……ニノが?」

「そうです。ずっと会いたいと言っていました」

「……」

「大野さんもニノと会って話をしたいと
思っていたんじゃないんですか?
だったら俺が何とかしますから、会ってくれませんか」

「……」


そう言うと目を伏せた。


そして


ゆっくりと顔をあげ


躊躇いながらも


小さくうなずいたのだ。


その大野さんの姿に


やっぱりという気持ちと


そして少しの嫉妬を感じた。










ずっとこの人はアラシを見て
ニノの事を考えていたのだと思う。
自分が辞めたことでニノまで辞めてしまったことに対する
罪悪感を感じながらずっと見ていたのだと。


でも。


そんな風に思ってもらえるのなら自分だって
あの日一緒にやめていたのに、とその顔を見て思う。


もともと親にも高校卒業するまでという約束で
成績を落とさない事を条件に部活動の延長線上みたいな感じで
やらせてもらっていただけなのだ。


辞める事が大前提で始めたこの活動。
いつでも辞める事を考えていた。
ましてや大野さんがいなくなったこの場所に
自分自身いる意味なんてなかった。


でも、あの日。


ニノが辞めると社長に話しているのを聞いて
変わったのだ。


動き出している盛大なプロジェクト。
たくさんの人がもうこのデビュー話に携わっていて
もう一人辞めるなんて言える状況ではなかった。


いや、まだ高校生だったから投げ出してしまうことも
できたのかも知れない。でもそうしなかった。
これ以上迷惑をかけないために、進む事しか考えなかった。


だから高校卒業までという約束をしていた
両親を何とか説得し、大学を必ず4年で卒業すると
そう約束して、死に物狂いで頑張ってきた。


5人の予定が3人となり大変になるのは
わかりきっていたけど、やるしかなかった。
苦しくても辛くても、前に進むしかなかった。




でも今大野さんの頭にあるのは
自分のせいでやめてしまったと思っているニノの事。
確かに今テレビの前での自分たちの姿は
トップアイドルとして華々しく見えるだろう。
金銭的にも十分な対価をもらっている。


でも、と、ぎゅっとこぶしを握り締めた。












「あの大野さんに会ったんですか?」


ニノがびっくりしたようにそういった。


当たり前だ。


8年間、誰も連絡が取れなかったのだ。


そう、このニノでさえ。


ニノは入所してからずっと大野さんの事が好きだった。
甘え上手で人の懐にすっと入ってくのが上手なニノは
ちょっと手の届かないような近寄りがたい存在であった
大野さんにも難なく近づき仲良くなっていった。


その大野さんと同じグループでデビューできると知って
一番喜んでいたのは紛れもなくこのニノだった。
でもその大野さんが辞めてしまったと聞いて
落胆したその姿は今でもよく覚えている。


一緒にデビューできると思っていたのにできず
それどころかいつの間にか事務所自体も
やめてしまっていて連絡もつかない状態だった。


ニノは食事ものどに通らない状態になり
どんどん痩せていった。
そして社長にもデビューはしないと言い切った。
その姿を見て社長も無理だと悟ったのだろう
事務所に残る事を条件にニノのデビューの話はなくなった。


ニノはしばらく落ち込んでいたものの
元々夢だった舞台やコンサートの演出の仕事をするようになって
だんだんその才能を現し始める。
そして今では自分たちのコンサートでの演出に
はなくてはならない存在になった。







ニノは


ニノは、どうなのだろう?


嬉しそうに見えるけど


もしかして恨んでいるのだろうか。


それともずっと好きな気持ちは変わらなくて


思い続けていたのだろうか。


その表情からは読み取れない。


ニノに元気にしてたのかとか
今何をしているのかとか
色々質問されたけど元気そうにはしていたとしか
答えられなかった。


どうしていたのかも、何をしていたのかも
結局聞けずじまいで、ただニノの事を
心配していたと言ったら
頬を赤く染め嬉しそうに笑った。


その顔を見つめながら
もし自分が辞めていたらニノのように
心配されて気にされていたのだろうかと思った。


そしたらこんな風にいつまでもニノと同じように
思ってもらえたのだろうか。
テレビを見るたびに罪悪感を感じながら
自分の事を思い出してくれたのだろうか。


ニノが羨ましくて


そして


やっぱりちょっとだけ


妬ましい。







でも




辞める訳にはいかなかった。




前に進んでいくしか




なかった。












今日見たら200万超えてました。
ありがとうございます。
ここをはじめて1754日。
なのに記事数は160ちょいしかなくて、10分の1以下か…
と、ちょっと愕然としておりますが細く長くという感じで。
これからもどうぞよろしくお願いします♪


another 2

2016-04-19 16:02:40 | another






小学校の時家族旅行で訪れたのが最初で
高校の修学旅行も九州でした。
その後も数回旅行で訪れています。大好きな場所です。
2011年の時は九州新幹線開通のCMを何度も見ました。
どうか早く平穏な日々が過ごせますように。











「ニノの事、知ってる?」







8年間ずっと会いたいと願っていた人。


ずっとどうしているのかと


何をしているのかと


気になっていた人が


今、目の前にいる。


信じられないような気持でいると


その人が部屋に入った瞬間


そう聞いてきた。








そうか。そうだったのか。


その人が半ば強引に誘ったこととはいえその個室へと来てくれたのは


そしてこうして自分と話をしてくれる気になったのは


ニノの事を聞きたかったためだと


その言葉に妙に納得する。


じゃなかったらこのVIPと呼ばれるこの部屋に


決して強引に誘ったとしても入りはしなかっただろう。


ニノという名前が出た瞬間。


やっぱりという気持ちと、少しの嫉妬が


入り混じった。








元々アラシは今のアラシのメンバー3人と
大野さんそしてニノが入った5人で
漢字一文字での嵐としてデビューするはずだった。


それは社長の前からの希望だった。
でもそれは叶うことはなかった。


一番デビューさせたいと社長が思い願っていた大野さんは
自身の本来の事務所に入った目的である
ダンスを極めるという目標を達成してしまったため
デビューどころか事務所を辞めると社長に伝えたのだ。


でもその才能を高く買っていた社長はどうしても
大野さんという存在を世に出したかったのだろう。
半ば強引にデビューの話を進めていたのだが
大野さんの決意は固く社長の努力もむなしく
事務所を辞めてしまった。


その時の社長の落胆した顔を忘れることはできない。
それほど社長にとっては大きな存在だったのだろう。
でも当の大野さんは自分の才能には無頓着で
変わりはいくらでもいると思っていたと思う。


確かにあの当時(今もだろうけど)デビューしたいと
願い待ち望んでいた人は事務所の中にたくさんいた。
というよりか、デビューする事が目的でない人の方が
珍しい存在で大野さんのような存在はかなり特殊だった。


大野さん自身は5人でデビューするのなら自分ではなく
もっとデビューしたい人がデビューした方がいいと
思っていただろうし、またデビュー目前と言われていた人も
何人もいたからその中から選ばれるだろうと
楽観的に考えていたのかもしれない。


ただ、大野さんにとって唯一の想定外だった事がニノの事だったのだろう。
俺と松潤、相葉ちゃん、ニノそして自身の代わりに
もう一人誰かが入り嵐として5人でデビューするものだと
思っていたらそこにニノの姿はなかった。


多分、あのデビュー会見の日。
一番驚愕したのは、多分
この人だったのではないかと思う。









「ニノは今、演出の方をやっています」

「……演出?」


そう言うと意外そうな表情を浮かべる。


「元々夢だったみたいです。
コンサートや舞台の演出をすることが」

「……演出が、夢?」

「はい、今は俺たちのコンサートや舞台の演出も
担当していて頑張ってくれています」

「……」


大野さんは少し考えるような表情を浮かべた。


「夢だった仕事につけて、今すごく楽しそうですよ」

「夢だった仕事…」

「それにすごく評判もよくて、あちこちから依頼を頼まれていて
本人も充実した毎日だって言っていますよ」


その言葉に、そうなんだと言ってホッとした表情を浮かべた。


その表情にどれだけ8年間ずっと思い悩んできたのだろうと思った。


自分のせいでニノの運命まで変えてしまったのではないかという
罪悪感があったのかもしれない。
本来ならニノもデビューし人生が変わっていたのかもしれないと。
今のアラシの成功を見て余計にそう思い悩んでいたのかもしれない。


「……よかった」


そう安心したように小さくつぶやくと
じゃあこれでと言って席を立ちそのまま部屋を出ようとした。


「待って」

「……?」

「少しだけでいいから」


帰ろうとするその人の手を思わずつかんで
引き留めた。














あのデビュー当時の事は、昨日の事のようによく覚えている。


ニノがあの人がいないのなら自分がデビューする意味なんてないと
そう社長に言って社長の説得も聞かず
事務所に残る話と引き換えにニノはデビューの話を降りた。


社長は何で?とすごく驚いていたけど
傍から見ていてそれは当然の事のように思えた。
大野さんのことを誰よりも慕い尊敬し
憧れの先輩の欄にはいつもその人の名前を挙げていたニノ。


大野さんが京都に2年間行っていた時期は
毎日のように連絡を取り早く帰ってきてと訴え
時間とお金が許す限り京都にも行っていたという。


その大野さんと一緒にデビューできないのなら
自分もデビューする意味なんてないと社長に訴えていたニノ。


でも、それは自分にとっても同じだった。
華々しくデビューした時も
苦い思いをしながら頑張っていた時期も
こうして成功をおさめトップになった今も
どこかぽっかり穴が開いていて満足できなかった。


ずっと入所してきた時から見つめてきたのは
ニノだけではなく自分も同じだった。
一緒でなければ何の意味もないといった
ニノの言葉はまさしく自分の言葉でもあったのだ。


でもデビューを予定していた5人のうちの2人が辞め
もう引き返せないところまで来ていたから
突っ走って行くだけしかなくここまできただけの話なのだ。











もう二度と


この人に会えるチャンスはないかもしれない。


そう思ったら引き留めずにはいられなかった。


大野さんが手をつかまれたまま不思議そうに見つめる。


「……」

「……?」


無言のまま視線が合った。


「……あなたの」

「……?」

「大野さんの事を聞かせてほしいのです」


聞きたいことは山ほどあった。


この8年間どう過ごしてきたのか
どこに住んでいて
今、何をしているのか。


ずっと


ずっと


8年間ひたすら会いたいと願っていた。


地位も名声も手に入れたけど


でも、何か足りなかった。


成功し、トップになっても


国民的アイドルグループだと言われても


何かが足りなくて


隙間が埋まらなくて


心から満足することはなかった。








大野さんが静かにつながれた先に視線を向ける。


そしてゆっくりと視線が動いた。


視線と視線が重なる。


胸の鼓動が高まる。


昔と変わらずその綺麗な顔。


ずっと憧れていて


ダンスも、歌も格段に上だったけど


いつか同じ場所に立ちたいと願い思っていた


その人が目の前にいる。


その綺麗な顔をドキドキしながら見つめると




大野さんが




ふっと




小さく笑ったような気がした。





another 1

2016-04-12 17:38:40 | another






If 



もしも、あなたがこの世界にいなかったら







その人は自宅から見える


キラキラと瞬く東京の夜景を眺めて


『世界が違う』


と言って、ふふっと笑った。








いつも思い出すのはあの人の事。


でもどこにいるのかも


何をしているのかも


わからない。


もう


どの位あっていないのだろう。
















相葉ちゃんと松潤の3人でアラシとして
デビューしてから8年。


最初は事務所の力もあり華々しくデビューしたものの
決してここまでの道のりは順調とは言えないものだった。


デビュー後から数年で徐々に勢いは衰えはじめ
いつしかコンサートで満員にする事さえ難しくなり
事務所のお荷物と言われていた時期もあった。


3人で何度も何度も話し合いそしてお互いができる事を
一生懸命頑張っていこうと決め
相葉ちゃんはバラエティを中心に
松潤は俳優の仕事を中心に


そして自分は司会やキャスターを中心に
嫌な仕事もたくさんあったけど歯を食いしばり
必死に耐え頑張ってきた。


そしてようやくそれぞれの仕事が軌道に乗ってきて
グループとしての仕事も徐々に増え
大きな舞台でのコンサートも満員にできるまでになった。







そして、今。






東京中の夜景がまるで自分のために
あるのではないかとはないかと錯覚するほどの
都心の中心に立つ高層マンションの最上階にある
自宅からその夜景を見下ろした。















それは偶然だった。


一緒に飲もうと言っていた友達が
急にキャンセルとなり一人で個室で飲んでるのも
何だかなと思って出ようとした


その瞬間。


すぐにわかった。


それが、その人だと。


その瞬間、時が止まった気がした。


手が震え


口が『あ』の字に固まったまま


声を発する事も、歩き出す事も


何一つできない。


ただただ立ち尽くし何も言わない自分に


その人が気配を感じたのか振り返った。








「……」

「……」


ずっと会いたいと思い願い続けてきた
その人の姿があった。


「……あ、の」

「……?」


声が震えて上手く出せない。
突っ立ったまま上手く話せない自分を
その人は不思議そうに見上げる。


「……お、久しぶりです」

「……」


何とか絞り出すようにそう言うと
その人が静かな眼差しで見つめた。


「……あ、の、俺の事憶えていますか?」


8年前まで同じ事務所で一緒にダンスを踊っていたその人の姿。


でも一緒にダンスを踊るといっても
その人のダンスは他の子達とはまるで違かった。
ダンスも歌も別格だった。


そして事務所に入ったその日に後ろで手本にして踊るようにと
言われて踊ったその日からずっと憧れてきたその人。


いつも同級生や上級生たちに囲まれていて
年下である自分にはとても入っていけないような
雰囲気があってなかなか話す事さえもできず
見つめるだけの日々だった。


その人が自分の事を覚えているかどうかが不安だった。


「覚えてるも何も凄い活躍じゃん?」


その人はそう言うとその綺麗な顔でクスッと笑った。






変わってない。


あの頃と。


その綺麗な顔も


その人の醸し出す雰囲気も。


ちょっと気高くて


簡単には人を寄せ付けないようなところも


全然変わってない。


その人の顔を見て


その人の言葉を聞いて


顔が紅潮し


かっと身体が熱くなったのが分かった。





「あ、りがとうございます。
あの、それに突然話しかけてしまってすみません」

「いや、国民的アイドルグループの人に声かけられるなんて光栄だよ」


そう言ってまたクスッと笑った。





けど。



本当は



その人も同じグループのメンバーに



なっていたはずだった。



いや、違う。



あのダンスと歌唱力。



グループの中心的な



中核を担うメンバーになる



はずの人だった。