yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

山 短編7 後 (幼馴染)

2014-04-24 18:44:24 | 短編





「翔くん?」


家に帰ってきて自転車を片付けていると


懐かしい声がした。




「久しぶりだね」


久しぶりに会うその人は少し大人っぽくなって


ますます綺麗になっていた。




「勉強があるから」


まだ話したげそうにしているその人に


冷たくそう言い放つとそのまま家に入り


扉をバタンと閉めた。







そのまま玄関のドアに寄りかかると深くため息をつく。


そして胸のドキドキがおさまるまで目を閉じた。






きっと扉の外ではあの人が今にも泣きそうな顔で


呆然と立ち尽くしている。
















智くんと会わないようにしていた。




恥ずかしいのと


照れくさいのと


気まずいのと



不思議とその時は感じなかった感情が


ダメだと言われて急に現実味を帯びたというか


改めて実感したというか。





妙に恥ずかしくなって


妙に照れくさくなって


そして妙に気まずくなって




あれから智くんの顔を


まともに見ることができない。










あの日から登校時間を変えた。


もともと近所に住んでいたから
大体出る時間は一緒で会えば一緒に登校していた。
でもわざと家を早めに出るようにして
登校時に出会わないようにした。


そして学校内でも極力会わないようにした。
もともと智くんとはクラスも離れていたし
委員会なども違っていたので智くんの時間割を見て
会わないように行動するのは簡単な事だった。


それでも時々廊下などですれ違う事があった。
何も知らない智くんはいつもと変わらない笑顔で話しかけてくる。


それが、今は辛い。


だから、わざとそっけない態度をとったり冷たく返事をした。
そしてそれを察した智くんは
以前のように話しかけてはこなくなった。


ずっと一緒の幼馴染みだったのに
ずっと一緒に過ごしてきたのに


その日からただの同級生になった。















高校はわざと遠い学校を選んだ。


あの人に出会わないように。


偶然すれ違ったりすることがないように。


















でも、高校に入学して数ヶ月がたった時


懐かしい声がして振り向いたらあの人がいた。


久しぶりに会うその人は少し大人っぽくなっていて


そして相変わらず綺麗な顔をしていた。










「久しぶり」


そう言って嬉しそうに近づいてくるその人に


冷たい態度をとる。





多分、扉の外ではあの人が呆然と立ち尽くしている。


目を閉じて呼吸を整える。


そして思い切って玄関のドアを開けた。












「……」

「……」


智くんはまた外に出てくるとは思っていなかったのだろう。
驚いた表情を浮かべている。


久しぶりにじっくりと見た智くんの顔は
少し髪の毛が茶色がかっていて
それが余計に智くんの顔の美しさを
際立たせていてとても綺麗だった。


「さっきはごめん」

「ううん、翔くんに避けられてるの知ってるのに
つい嬉しくって話しかけちゃって、俺ってホントバカだよね」

「……」


智くんはそう言って自嘲気味に笑った。
その言葉に何も言えなくなる。
智くんは何一つ悪くはないのに。


「ごめんね、もう話しかけないから安心して。
じゃあね、翔くん。勉強頑張ってね」


智くんはそう言ってその綺麗な顔を向け
にっこりと笑うとそのまま歩き出した。


「ちょっ、待って」

「……?」


思わずそう言って引き止める。
智くんは立ち止まると不思議そうに見つめた。


「今、誰もいないし、ちょっと寄ってって」

「……」

「……?」

「勉強があるんじゃないの?」

「いや、大丈夫」


そう言って引き止めると智くんは戸惑いの表情を浮かべた。
当たり前だ。
今までずっと避けてきた。
そしてさっきもまた冷たい態度を智くんにとった。













「ここに入るの何かすごく久しぶり」

「……」


躊躇する智くんをなんとか説得し部屋に通す。
智くんは相変わらず可愛らしい顔でそう言って笑った。
その顔は幼い頃から変わらず無邪気で可愛い。


そして智くんはあまり変わってないねぇなんて言いながら
キョロキョロと可愛らしく部屋を見渡している。


智くんは昔から変わらない。


綺麗な顔
綺麗な手
細くて長い指
色白の肌
そして身体つきは華奢だけれども、つくところには
ちゃんと筋肉がついていて綺麗な身体をしている。


少し潤んだ茶色の目
長い睫毛
少し茶色がかった髪の毛
筋の通った綺麗な鼻
そして形の良い小さな唇


幼稚園の頃からずっと一緒にいて
大好きだった。


その身体も
その綺麗な顔も
その穏やかな性格も


そして一緒にいる空間も
遊んでいる姿も
本を読んでいる姿も
勉強している姿も


そして初めて見る高校の制服の姿は
学ランの前ボタンを少し開けていて
少し着崩している感じがとても似合っている。
そしてそこから少しだけ見える肌。



そのまま部屋をのんびりと眺めている智くんの身体を
入ってきた扉に押さえつけた。
智くんはびっくりした顔で見つめる。


目と目が合う。
智くんの瞳は不安げにゆらゆら揺れている。
そして何か言いたげに見つめたまま目を逸らさない。
そのまま顔を近づけていくとその唇に唇をそっと重ねた。


唇を離すと智くんは中学の時にした時と同じように
目をまん丸にしてやっぱり何か言いたげな顔をして
じっと見つめてくる。


「……ごめん」

「ふふっ。また、してくるし」


思わず謝ると智くんはそう言ってクスリと笑った。


「うん、また、しちゃった」

「久々にあったのにね」


照れくさくて顔も見れずにそう言うと
智くんはふふっと笑う。


「ごめん」

「いいけど」


智くんは怒っている様子もなくそう言って笑った。


「でも、もう、しないよ」

「え?」


智くんはその言葉にえ?って顔をした。


「前しちゃダメって言われたじゃん?」

「言ったね」

「でもやっぱ、だめだわ」

「……?」


智くんは意味が分からないって顔をして
不思議そうな顔で見つめてくる。
そりゃワケわかんないよね
ずっと冷たくされて久しぶりに会ったと思ったら
こんな事されてそれでワケわかんないこと言われて。


「やっぱ、その顔を見るとダメだわ
だから、もう会わないようにする。
智くんも見かけても気づかないふりして」

「……は?」

「ごめん」

「ホントごめんだよ」


智くんが怒ったので直ぐに謝った。
当たり前っちゃ当たり前だけど。


「だいたいさ翔くんって最初から勝手なんだよね。
勝手にチュウしてきてさ。
なんだと思うじゃん?
でも知らんぷりしてるしさ。
でもさ、彼女もいるし悪いと思ってそう言ったら
次の日から妙に避けられるしさ」

「……」


智くんの言う通りだ。


「俺、スゲェ悩んだんだよ。
そんな悪いこと言ったっけって。
挙句にはあんな遠くの学校に行っちゃうしさ。
いくらでも近くにあのくらいのレベルの学校あんのに
どこまで避けられてんだよ俺、みたいな」

「ごめん」


口調は穏やかだけれどもあまり怒らない智くんが
めっちゃ怒っている。


「さっきもさ、久々にあえて嬉しくって話しかけたのに
あんな冷たくされてさ。
もうホント泣いちゃいそうだったんだから。
かと思えばさ、急にまたチュウしてきて、勝手な事言うし」

「そうだよ ね」

「ほんと信じらんない」

「ごめん、智くんが好きだったからさ」

「は?」

「俺もさ今わかったんだけど。
好きだったからキスしたかったんだよね。
でさやめられなくなって、
でも拒否されてどうしようもなくなってさ
智くんの顔見るのが辛くなって
それで避けちゃったんだよね」

「も、信じらんない」

「ごめんね、智くん」

「知らない」


智くんはプンスカ怒っている。
でも、その姿も可愛いなんて言ったら怒るだろうか。


「あのさ」

「ナニッ」


やっぱ怒っているね…。
まぁ悪いのは自分なんだけどね。


「もう一回してイ?」

「知らない」


顔はプンスカ怒っているけど拒否する感じはない。
まあ怒られるようなことたくさんしてきたから仕方ない。


でももう一度したくてその綺麗な顔に顔を近づけていくと
その可愛らしい唇にちゅっとキスをした。
唇が離れるとお互い見つめ合う。


「智くん、好きだよ」

「知らない」


智くんに好きだというと智くんは知らないって言って顔を真っ赤にして俯く。
そしてもう一度角度を変えて顔を近づけていくと
もう一度キスをする。
そしてそのまま口を開かせるようにすると
今までの時間を埋めるように深い深いキスをした。



山 短編7 中 (幼馴染)

2014-04-13 15:07:10 | 短編




高校はわざと遠い学校を選んだ。


あの人に出会わないように。


偶然すれ違ったりすることがないように。





あの人は何一つ悪く


ないのに。










智くんとは、ただの幼馴染だった。


智くんもそう思っていただろうし


自分の中でもそうだと


ずっと思っていた。





でも


あの日。


あの日から、自分の中で智くんは


ただの幼馴染ではなくなった。











あの日。





その日は


あたたかい風がふんわりと吹いていて


夏はもうすぐそこまできているのだと


そう思わせてくれるような


そんな日だった。









その日は2年の1学期末テストの真っ最中だった。
偶然、テストを終え家に帰ろうと歩いている
智くんの姿を見つけた。
思わず駆け寄っていって声をかける。


最近は彼女と一緒に帰る事が多かったから
智くんとこうして一緒に帰るのなんて久しぶり。
そんなことを思いながら、一緒に帰る。


智くんは睫毛が長くて、鼻がすっとしていて
とても綺麗な顔をしている。
そう言えば、昔からその綺麗な顔を見るのが好きで
よく見つめていたっけ。
そんな事を思いながらその綺麗な横顔を見つめた。


そして一緒に並んで歩いているとなんだか自分でも
よくわからないけどホッとしていた。


何でだろう?


幼稚園の時からずっと一緒に過ごしてきたから安心感があるのか
それとも智くんというその存在にホッとするのか
よく、わからない。





智くんは幼稚園の頃からあまり大きな声で騒いだり
はしゃいだりするタイプではなかった。
いつも穏やかで、おっとりとした優しい人だった。


そしてそれは小学生になっても同じで
休み時間は外で遊ぶよりも気の合う友達と絵を書いたり
ぼーっと外を眺めたりしている事が好きな人だった。


かと言って運動が苦手という訳でもなく
むしろ運動神経は抜群で、そして美術面であったり
字も綺麗だったりと
結構何でも器用に出来てしまう人だった。
そんな智くんをどこかいつも尊敬していた。








そして、あの日。


その日はそのまま一緒に帰り、そしてテスト勉強をしようという事になった。
でもあまり勉強が好きではない智くんは一時間程ですぐに飽きてしまう。
その姿があまりにも分かりやすくて
そしてあまりにも智くんらしくて、つい笑ってしまう。


そして一旦休憩しようということになった。
智くんは、うーんと伸びをして床に寝っ転がった。
そして智くんはちょっと寝ると言って
目を閉じると、そのまま本当に寝てしまった。


その寝顔を見つめる。
その寝顔は昔から変わらず無垢で無防備で
可愛いらしい顔をしている。
しばらくその可愛らしい寝顔を見つめた。


そして15分がたった。
約束通り智くんを起こす。
智くんの寝起きの顔は、少しぼーっとしていて
何だかやっぱり可愛いらしい。
その寝起きの顔を見つめた。


智くんはおもむろに持ってきたジュースを飲む。
その、飲んでいる姿、顔、そして唇を見つめる。
智くんの小さくて形の良い可愛らしい唇。
その唇はぷるぷるしていて思わず触れたくなる。






そして


その瞬間。


自分でもなぜそんな事をしようと思ったか、よく分からない。
突然、その唇にキスしたら智くんはどんな反応を示すだろうと
ちょっとした好奇心と悪戯心が湧き出た。


びっくりして、目ぇ覚めるかな?


そんな事を思いながらその可愛らしい顔を見つめ
思わず笑ってしまいそうになる。
それをなんとか堪え顔を近づけていった。


何をされるか全く分かっていない智くんは
至近距離になっても不思議そうな顔をしたまま目をそらさない。
そしてそのままその綺麗な顔に顔を近づけていく。
そしてその唇に自分の唇をちゅっとおしあてた。


唇が離れると、智くんは目をまん丸にして見つめた。
その智くんのびっくりした反応があまりにも可愛らしくて
やっぱり笑ってしまいそうになる。
でもそれをなんとかこらえ何事もなかったような顔をして
すました顔でいた。


智くんは何も言わず呆然としたまま見つめている。
何か言いたげな顔をしていたけど
それに気づかないふりして、そして何でもない顔をして
智くんの反応を楽しんでいた。








その時は本当に


ちょっとした好奇心だった。






でも、次の日もテストを終え帰ろうとしている智くんを
見つけると一緒に帰りそしてまた一緒にテスト勉強を
しようということになる。


そして二人で勉強をしていたらまた智くんの
あのびっくりした可愛らしい顔を思い出してしまって
そしてつい隙を見てその唇にまたチュッとキスをした。


智くんはやっぱり目をまん丸にして驚いた顔をしている




それからはもう


自分でも、よくわからない。




二人で会うたびに隙を見てはその可愛らしい唇に
ちゅっとキスを繰り返す。


智くんはその度に戸惑った表情を浮かべたり
びっくりして、目がまん丸になったり
なにか言いたげな顔をして見つめてきたり
頬を赤く染めて俯いたり


その智くんの反応が見たくて
会うたびに隙を見てはちゅっとキスをした。


智くんはキスをするといつも何か言いたげな顔をして見つめる。
でも、それに気づかないふりして
そして何事もなかったような顔をして
すました顔でその反応を楽しんでいた。








そうこうしているうちに夏休みになった。
夏休みは毎年、お互い用事がない時は一緒に過ごしていた。
一緒に夏休みの宿題をしたりゲームをしたり。
そして各自思い思いに好きなことをして過ごしたり。




そして


この夏は


隙を見ては智くんに


キスをした。



智くんの唇はプルプルしていてとてもやわらかくて
キスをするたびにいつもドキドキした。








でも


ある日。




いつものように隙を見てキスをしようとしたら
智くんの手で塞がれてしまった。




「ダメ」

「……え?」


智くんは手で塞いだまま困った顔をしてダメと言う。
その言葉に呆然としながら見つめた。


「もう、ダメ」

「……」


そして智くんは手を外すと、まっすぐな視線でそう言う。
真剣なその顔に何も言えなくなる。


「ダメ なの?」

「うん、ダメ」


その時には自分の中ではもうするのが当然みたいな感じに
なっていたからびっくりして聞き返す。


「何 で?」

「だって、彼女さんに悪いでしょ」

「……え?」


そして何でって聞くと、智くんが彼女に悪いと言う。
その言葉に何も言えなくなってしまってただその顔を見つめた。


「まぁ、今更かもしれないけどさ」

「……」


智くんはそう言って自嘲気味にエヘヘって感じで笑う。
その顔を何も言えず見る。


「もう、しちゃダメってこと?」

「そう。彼女とだけすればいいでしょ?」


やっぱり信じられなくてもう一度確認するようにそう聞くと
智くんはそう言ってその綺麗な顔でにっこりと笑った。


「……」










その日から
智くんにキスをできなくなってしまった。
それは自分でもよくわからないけど
かなりのダメージだった。


最初はただの好奇心だったのに。








今は、その顔を見るとその唇に触れたくなる。
そして、その唇にキスをしたくなる。
何でそう思うのか自分でもよくわからない。




こちらの思いを知らない智くんは


妙にさっぱりとした無邪気な可愛らしい顔で


笑顔を向けてくる。


それが、今はちょっと辛い。






最初は


ただの好奇心だったハズなのに。

山 短編7 前 (幼馴染)

2014-04-03 21:26:02 | 短編





いつからだったっけ。






今日も


翔くんはその綺麗な顔を近づけてきて


唇にちゅっとキスをする。







ただの



幼馴染なのに。








翔くんとは、幼稚園からずっと一緒で幼馴染だった。
毎日のように幼稚園が終わるとどちらかの家に行って
母親たちは、飲み物を飲んだりお菓子を食べながら談笑し
子供たちは、家の中で遊んだり庭に出て遊んだりして過ごす。
そんな毎日だった。


毎回二人だけという訳ではなかったけど
家も近く、また親同士の気も合ったのだろう。
他の友達に比べて圧倒的に二人で遊ぶ機会が多かった。


そして、そのまま二人は同じ小学校に上がった。
その頃はお互いクラスの気の合う友達と遊ぶことが多く
学校では一緒にいる事はなかった。


ただ、昔から一緒にいたせいか、何となくお互いに安心感がある。
家も近所だったから帰りはどちらからともなく誘い一緒に帰った。
そして、一緒に帰った後は、お互い他の友達と約束してなかったり
習い事がなければどちらかの家で宿題をしたり一緒にゲームしたり
漫画を読んだりして過ごした。


そうこうしているうちに中学生になった。
二人の関係は相変わらずで学校ではお互い気の合う奴とつるみ
そして時々一緒に帰った。


一緒に帰った時は、用事がなければどちらかの家で過ごす。
多分、どちらの親も小さい時からずっと見てきたせいか
安心感があるのだろう。いつ行っても歓迎された。






翔くんは、端正な顔立ちをしていて頭も良く
昔からやたらモテる人だった。
そして、中学に上がるとますますそれは顕著になり
同級生だけでなく先輩や後輩からもよく告白されていた。


そして中学2年になると翔くんは同じクラスの
綺麗な顔立ちの女の子と付き合い始めた。
そしてその彼女とはテスト期間以外は毎日のように登下校を一緒に
するようになったので翔くんと一緒に帰ることはなくなった。







そして、その日は


期末テストの真っ只中だった。




草木の色が濃くなり、初夏を感じはじめた学期末テスト期間中のある日。
思いがけず翔くんに話しかけられそのまま一緒に帰ることになった。
以前は、毎日のように一緒に帰っていたのにこうして
並んで帰るのも久しぶりだな、なんて事を思いながら翔くんの顔を見る。


翔くんは、相変わらず端正な顔立ちをしていて
そして太陽の光が当たりキラキラしていてとても綺麗だった。
その姿をぼーっと眺める。


そして、その日はそのまま一緒にテスト勉強しようという事になり
翔くんの家に行く事になった。
部屋に入ると翔くんは慣れた手つきでテーブルを出してきて勉強道具を広げる。
その姿を、やっぱりぼんやりしながら眺めた。


「ふふっ手ぇ止まってる」

「だって、やる気出ないんだもん」

「ふふっ相変わらずだね~」


翔くんは、そう言って可笑しそうに笑う。
でも、そうは言っても明日も試験なのでそんなことは言ってられない。
仕方なく勉強道具を広げるとテスト勉強を始めた。
そして勉強を始めて1時間くらいがたった。
だんだんやる気も失せてきてシャープペンを持っている手が止まる。


「ふふっ飽きちゃった?」

「うん、飽きた」

「じゃ、ちょっと休憩しよっか」


それに気付いた翔くんが優しくそう聞いてきた。
シャープペンをポイッと手から離し、飽きたと答えると
やっぱり翔くんは優しい表情で休憩しようという。
こういうところが安心できるところなのかな? なんて思いながら
その端正な顔を見た。


「うん。15分たったら教えて。ちょっと寝る」


翔くんがどうする?って表情をしたから
そう言ってそのまま、うーんと伸びをすると
床に寝っ転がり目を閉じた。


「ふふっわかった。じゃあ、俺、ちょっと飲みもんとってきたりしてるから寝てて」

「うん、わかった」


翔くんはやっぱり優しくそう言ってきたので
目を閉じたままそう返事をした。






「智くん15分たったよ。おやつもとってきたよ~」


優しい翔くんの声で目を覚ます。
ちょっと目を閉じるだけと思っていたのに
本気で寝てしまっていたらしい。


「じゃあ、ヤだけど、やるか」

「ふふっ」


そう言って、よっこらせと起き上がった。
そして持ってきてくれたジュースを半分位飲んでコップを置いた。
翔くんは何も言わず優しい顔で見ている。


そして、そのままゆっくりと顔を近づけてきた。


「……?」


翔くんは至近距離で黙ったまま見つめる。
お互いの顔と顔がくっつきそうになる。
でも、翔くんのその視線から目を離す事ができない。



“え?”


そして、あっと思った
その瞬間。


唇に柔らかい感触を感じる。
それはほんの一瞬だった。
すぐに翔くんの顔が離れる。


「じゃ、再開しますか」

「……うん」


そう言って翔くんは、ふって笑いかけると
何事もなかったかのような顔をして勉強を再開した。


“今の ナニ?”


翔くんはやっぱり何事もなかったかのような顔をして勉強をしている。
一瞬、夢かと思う。
でも、唇にはまた柔らかな感触が残っていた。


でもいくら翔くんの顔を見ても
翔くんは特に気にする感じはなく平然としていた。
だから何も言えなくなってしまう。
仕方なく困惑する気持ちをなんとか抑え勉強を再開する。





でも、いくら勉強に集中しようとしても


頭の中にハテナマークがいっぱいで


とても集中できそうもない。







そんなこちらの思いをよそに



それは



その後も続いた。









[ここを開設して1000日超えました。その前にやってたファンブログ(閉鎖してます)が1500日。月日が経つのが早いです~]