yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

ALL or NOTHING Ver.1.02 卒業の日

2016-02-25 23:24:20 | ALL or NOTHING Ver.1






シェアハウスの話をと思っていたのですが
こちらの話が先にできあがったので先にこちらをアップです。
ALLの智さんの卒業式の日の話です。









ケーキもOK。


花も用意した。


って、男の子相手にケーキも花もおかしいか。


今日は卒業式。


準備したケーキと花束を見て


自分自身に苦笑いした。










インターホンが鳴る


来た!


待ってましたとばかりにドアを開けると
制服姿のままの智が立っていて
照れくさそうに来たよと言って笑った。


「制服のまま?」

「うん、そのまま来ちゃった」

「ご両親は?」

「友梨佳がいるし帰った」


そっか、赤ちゃんがいると
卒業式とか何かと大変だよね。


「ふふっボタン全部なくなってる」


そんな事を思いながら部屋に一緒に入り
改めて智の姿を見ると制服の前ボタンも
袖のボタンもなくなっていた。


「あ~何か知んないけど思い出に欲しいんだって」


智は興味なさそうにそう言う。









「モテモテだなぁ」

「モテモテなのは翔でしょ?
いつも女の人に話しかけられてたし
いかにももてそうな顔してるもん」

「へ?」

「あ、ケーキだ」


そんな話をしていたらいつの間にか
智の興味は目の前にあるホールケーキに移っていた。


「ああ、だって卒業でしょ? だからおめでとうの意味で」

「ホントだ。プレートに卒業おめでとうって書いてある」


智はケーキを見ながら嬉しそうに言う。


「あと、これも」

「……俺、男だけど」


智に花束を差し出すと智が戸惑った顔をして
男なんだけどと言った。
まあ確かに男が男に花っていうのも変だよね。


「ホントは時計とかって思ってたんだけどさ
高価なものとか嫌がるでしょ?」

「うん、やだ」


智はんふふって笑って花束を両手で抱え
そして花を見つめ匂いをかいだ。
その可愛らしい姿に思わず笑みが浮かぶ。







まさかこんな風に智の卒業を一緒に祝えるなんて
思ってもみなかった。


見ているだけでも嫌がられて
目が合うとにらまれて
挙句の果てには見ないでと言われた事もあった。


でもその智と今こうして一緒に過ごしている。
それがとても不思議で嬉しくて幸せで
何とも言えない気持ちになる。


「ハラ減っちゃった」

「じゃあなんかお祝いに食べに行く?」

「うーん。ここでいい」


そんなこちらの思いとは裏腹に
智がお腹をポンポンしながら無邪気に言う。


「え~焼きそばくらいしかないよ?」

「焼きそば食べたい」

「じゃ、ちょっと作るから待てて?」

「俺も手伝う」


そう言うと智も立ち上がり一緒に焼きそばを作り始めた。


「おっ手際いいね」

「まあ、いつもつくってたから」


智は手際がいいだけじゃなく包丁づかいも上手だった。
ずっと熱が出ても一人でいたと言っていたから
もしかしたら長い休みとかは一人でご飯作って
一人で食べていたのかも知れない。


自分自身両親共に忙しい人だったけど
中学まで母は家にいたしそれに弟や妹もいた。
無邪気にそう言って笑う智に胸がチクっと傷んだ。








「友達と卒業旅行とか行くの?」

「ううん、別に」

「そうなんだ。じゃあどこか卒業旅行にでも行く?」

「え?」


智が食べていた手を止めびっくりした表情で
顔を上にあげた。


「どこか行きたいとことかない?」

「……」

「……?」

「……海」


そう言うと智はしばらく考えて
小さく海とつぶやいた。


「海?」

「うん、今まで学校で行っただけでじっくり見た事なかったから」

「そっか。じゃあ行く? 海」

「うん」


その言葉に智はうんと小さく頷く。
学校で行っただけという
その言葉にまた胸がチクっと傷んだ。










「何だか眠くなっちゃった」


智は焼きそばとケーキを食べるとお腹がいっぱいになったのか
睡魔が押し寄せてきたみたいで
そのままラグの上にゴロンと横になった。


「ほら制服のまま寝るとしわになるぞ」

「翔ってばお母さんみたい。
それにもう卒業だからしわになってもいいんだもん」


智が寝ながらクスクス笑う。


そうだった。


今日は智の高校の卒業式。








智は高校生だった。


あの日。


始発を待っていたら制服姿の智がいて
高校生だったのかと驚愕した。
高校生のくせに手慣れた様子でそこにいて
そして当たり前のようにダンスを踊っていた。


でも、高校生と知った時から
いや、高校生と知る前から
その姿に目が離せなくて
どうしようもなく惹きつけられた。







智がすうすうと寝息を立て始める。


卒業式で疲れ、そしておなかが満たされ
眠くなったのだろう。
その無邪気で子供みたいに眠る智の姿を見つめた。


無防備で子供みたいに可愛らしい寝顔。
夜の顔とは全然違う。


形の良いその小さな唇はプルプルで赤ちゃんの唇みたいだ。


智の身体にそっとブランケットをかけると
その寝ている横に座ってその姿を見つめた。


智は眠っていて起きる気配は全くない。
その寝ている姿を見つめた。
その姿を見つめゆっくりと顔を近づけていく。
そしてそのままその唇にちゅっと触れるだけのキスをした。


眠っていたと思っていた智が目を開けた。


「起きたの?」

「うん」

「……」

「……」


お互い無言のまま見つめ合う。
キスしたのを気付かれていただろうか。


「もっと」

「……え?」


そう思いながら智を見ると智が誘うようにそう言った。


「もっと、して?」


その瞳に目がそらせないでいると
智がもっとしてと言う。
その何とも言えない智の表情に
その瞳に
その言葉に
何も言えなくなる。


智がまっすぐ目をそらすこともなく見つめる。


まいったな。


高校生相手に心臓はドキドキして鳴りやまない。


「もう、俺、高校卒業したよ?」

「……」


こちらの思いをまるで見透かしたみたいに
智がそう言ってクスリと笑った。
その言葉にやっぱり何も言えなくなる。


確かに今日は智の高校の卒業式だった。


でも、と。


今日まで高校生だった智に躊躇いの気持ちもある。
高校を卒業したとはいえまだ18歳だ。


智が仰向けになったまま腕を首に回してくる。
えっと思った瞬間、そのまま顔を引き寄せられる。
一気に顔と身体が近づいて顔と身体がカッと熱くなる。


智の綺麗な顔がすぐ目の前にある。
智がまっすぐな目で見つめてくる。


その綺麗な顔
色白の肌
柔らかそうな茶色の髪の毛
長い睫毛
形の良い小さな唇。


その顔を見ると心臓の音が高鳴り止まらない。


高校生だからと我慢してたけど、無理。
可愛くて、愛おしい。


その目を見つめながら吸い寄せられるように
唇に唇を近づけていくとそっと重ねる。
智の首に回していた腕に力がこめられ
唇が小さく開いた。


躊躇いの心と
持っていかれる心。


やっぱり、無理。


そのままその小さな口に舌を差し入れると
深いキスをした。


















智が飽きることなくずっと海をみている。


その横顔はとても綺麗だ。


その姿を飽きることなく見ていた。


「……」

「どうしたの?」


ずっと海を見ていた智が振り向いた。
その顔は今にも泣きそうな顔をしていた。


「昔、お父さんに連れてきてもらった事ある」

「お父さんに?」

「ずっと忘れてたけど今思い出した。
3歳か4歳ごろお父さんに連れてきてもらって
こうやって海を見ていた」


海岸に波が押し寄せている。
小さな泡が生まれては消えていって
また新しい波が押し寄せると
新しい小さな泡が生まれそして消えていく。


智はそれだけ言ってまた前を真っ直ぐ見つめ海を見た。









「もうすぐ日が暮れるね」

「うん」


智は海を見つめながら答える。


「ホントはそこの水族館に行こうかと思ってたんだけど
海見ただけで終わっちゃったね」

「うん」

「こんなんでよかったのかな?」

「……」

「……?」


智が無言で見つめる。


「お父さんに手を引かれて海岸を歩いて
海を眺めて、貝殻拾って
波と追いかけっこして
母ちゃんが後ろで嬉しそうに見てた。
何で忘れてたんだろう」

「3歳くらいの時の話でしょ? 仕方ないよ」


智が小さくつぶやく。
その表情があまりにも悔しそうで悲しそうだったから
思わずそのその肩を抱きそう言った。







太陽が海に沈んでいく。


「綺麗だね」

「うん」


あの空間で見ていた時も思っていた。
綺麗な子だと。
でも海に沈んでいく太陽を見つめるその横顔は
綺麗でとても神秘的だ。


「日が沈んでいく」


智が海を見つめながらつぶやいた。


「そうだね。もう帰らないと」

「もう?」

「うん遅くなっちゃうとご両親も心配されるだろうから。
中華街でもよって食べて帰ろっか?」

「ううん、翔の家がいい」


そう言うと智は首をふる。
本当に家が好きなんだよね。
そう思いながらクスリと心の中で笑った。









「翔、好き」

「俺も好きだよ」


家に帰ると智がそう言ってぎゅっと抱きついてくる。
その身体を抱きしめ返すと智は顔を上げじっと見つめる。


その頬に
その額にちゅっとキスをして
またぎゅっとその身体を抱きしめた。


可愛くて、愛おしい。
儚くて、泣きそうになる。
愛おしくて、胸が苦しくなる。


こんなに一緒にいるのにね。


そう思いながら自分自身に苦笑いをしていると
智が不思議そうに見つめてくる。
だから何でもないよと言ってその唇にちゅっとキスをした。


そして智が今までできなかった家族旅行や
思い出をたくさん作っていこうねと
そう心の中でつぶやき
その身体をぎゅっと抱きしめた。



山 短編8 (シェアハウス) その後3

2016-02-16 22:08:00 | 短編





2014年にかいた話の続編です。


ここには色々な山がいて


リアルの2人であったり
高校生だったり
大学生だったり
高校生と教師だったり
会社員と高校生だったり


なので少しわかり辛いかも? と
ちょっと不安でもありますが。。






山 短編8 その後3







ここは二人だけのシェアハウス。









穏やかで


ゆっくりした時間が


静かに流れている。








はずだった。






なのに






なぜだかここの家には人が集まってくる。








「翔ちゃーん、ビールおかわり」

「翔くん、俺もお願い」

「翔さん、俺も~」

「は? 俺は居酒屋の店員か?」


席を立とうと思った瞬間。
待ってましたとばかりに次々に注文してくるから
そう文句を言って仕方なく飲み物を取りに
冷蔵庫へと向かった。


この家に暮らし始めて2年。
ここは智くんと二人だけのシェアハウス。


でも。


この二人のシェアハウスには
なぜだか次々と人が集まってくる。


弟の修也。
中学から一緒の新美。
そして、この3人だ。


いや、もしかしたらここに住んでいる事を
口止めしているからこれだけですんでいるだけで
もし知られてしまったら、もっとたくさんの人が
集まってくるのかも知れない。









「ここは居心地がいいね~」


飲み物をテーブルに持っていくと
相葉ちゃんが嬉しそうにそう言った。


「そうですね、部屋の大きさも丁度いいですし」


ニノはその言葉にうんうんと頷き答える。


「確かに、やけに落ち着くんだよなぁ」


そして松潤はソファに寄りかかりながら
グラスを傾けそうつぶやいた。


このゆったりとくつろいでいる三人の姿を見つめながら
彼らがこの家に遊びに来るようになったのは
いつ頃からだっただろうかとふと思った。






「何だかここに住みたくなっちゃった~」

「いいですね。みんなで一緒にここに住みますか?」

「そうだな、それも楽しそうだな」


三人はやけにリラックスしていて飲みながら
口々に言いたいことを言っている。
って言うか、今みんなで一緒に住むとか
楽しそうだとか言ってなかった?


「ねぇ、翔ちゃんはどう?」

「どうって…」

「いいんじゃない?」

「いいねぇ」


その言葉に、困惑していると
二人がそれはいいアイデアだと言わんばかりに
代わりに答える。


「あっそうだ。俺、いい事思いついちゃった。
あのね、表を作るの」

「表?」


相葉ちゃんの言葉に二人が興味津々な顔をして聞く。


「そう。ほら松潤は料理が得意だけど毎日だと
嫌になっちゃうかも知れないでしょう?」

「まあ、そうだなあ」


相葉ちゃんがウキウキした顔で話すと
松潤がうーんと考えながら答えた。


「だからね、お掃除当番、ゴミ出し当番、買い物当番、
料理当番、洗濯当番って書いた表を作るの」


そして相葉ちゃんの説明に二人がうんうんと真剣な顔で聞いている。


「ほら、小学生の時なかった?
まあるい表に各自の名前が書いてあって
その中に各当番の箇所が書いてあるの」

「あ~あったね」


そして話はどんどん進んでいく。


「それで毎日それが回転していくんでしょ?」

「そ~それ」

「そうだな、それだったら平等だしな」

「いいかもしれませんね」

「ね、翔ちゃん?」


三人で盛り上がってっけど
全然、ね、翔ちゃんじゃねえから。









「何、勝手に決めてんだよ?
っていうか一体どこに寝るんだよ?」

「どこにって上に二つ部屋があるでしょう?
だから俺はおおちゃんと一緒の部屋で寝て
にのと松潤が翔ちゃんの部屋で寝るの」

「は?」


相葉ちゃんは智くんを見て嬉しそうにそう言った。
って、やっぱり勝手に決めてるし。


「勝手に決めてんじゃありませんよ。
大野さんの部屋はワタクシと二人で」

「何でよ?」


そう文句を言おうかと思ったらニノが先に
相葉ちゃんに文句を言った。
っていうか、ニノも勝手に決めてるし~。


「だってあなたと大野さんと一緒にしたら危険でしょ?」

「危険って何よ?」

「危険は危険て事ですよ。だから安全なワタクシと」

「いやいやそれを言ったらニノの方が危険でしょう~?」

「何で俺が危険なのよ? 俺は紳士よ?」


二人がやいのやいの言い合っている中
智くんは楽しそうにクスクス笑いながら見ている。
かわいいんだけどね。
でも呑気に聞いてるけど話の当事者だってことを
本人ははたしてわかっているのだろうか。


「どこがよ? 今だっておおちゃんの膝の上に置いているのは何?」

「手ですけど、何か問題でも?」


何ですと!?
いつもニノが智くんのお隣に座りたがる理由が
わかったような気がした。


「大いにあるでしょっ。それにニノと一緒の部屋にしたら
おおちゃん襲われちゃいそうっていうか食べられちゃう」

「失礼なっ。そんな事する訳ないでしょう? 俺は紳士なんだから」


そんな不安をよそに智くんは2人のやり取りを
んふふって可愛らしく笑いながら見ている。
可愛いんだけど、心配過ぎる。
そう思いながら智くんを見つめた。







「いやいや、そこは間をとって俺が大野さんと一緒の部屋で」

「何で松潤が間なのよ?」

「そうですよ、しかもこういう一番紳士っぽいやつが一番危険なんですから」

「一番危険ってなんだよ?」

「もう、何、ありもしねえことで言い合ってんだよ」


二人が言い合っていたかと思ったら
松潤までそう言って参戦してくる。


「え~ありもしないって、みんなで住んだら毎日楽しそうなのに」

「そうですよね~」


二人ががっかりした顔でそう言う。


「何なら俺、当番関係なく毎日メシ作るぜ」

「もう、ダメに決まってるでしょ?」

「え~でもおおちゃんはいい話だと思わない?」

「ふふっ」


松潤までそんな事を言ってくるからダメだと言うと
相葉ちゃんが諦めきれずに智くんに聞いている。


「ほら翔ちゃん、おおちゃんはいいって」

「言ってねえから」

「もっ翔ちゃん冷たい」

「冷たいじゃねえから」


まったくもう。
どいつもこいつも。







「だってさ、なんか楽しいんだもん。
久々にみんなと会えてこうしてまた集まって」

「そうだよな」


相葉ちゃんが急にしんみりとなってそう言うと
松潤がお酒を飲みながらそうだと同意する。


「俺ら中学校ぐらいまではよく遊んでたけど
あんま遊ばなくなっちゃったもんな」


ニノもしみじみとそう言った。
確かに高校になってからこの4人であまり遊ばなくなっていた。


「だからさ、こうして再会して
こんな風にみんなで会うようになって何だか嬉しいの」

「確かにな」

「そうですね。俺らは翔ちゃんと違って
付属であがんなかったから大学もバラバラですし」

「そうそう。でもたまたま俺と相葉ちゃんがばったり会ってね
ニノや翔くんはどうしてるかなって話になって」

「そう。で、翔ちゃんがここでシェアハウスしてるって聞いて
それでここに集まるようになったんだよね。
これって運命じゃない?」


そうだった。ここでシェアハウスをしていると
三人が家族から聞いて遊びに来たのが始まりだった。
それからみんなの都合が合うとここにきて
智くんもまじえてみんなで飲んだり食べたりが
恒例になったんだっけ。


「だって、嬉しいんだもん。松潤がおつまみ作ってくれて
みんなで食べて飲んでわいわいして」

「確かに、こんな日が毎日だったら楽しそうだな」


二人が嬉しそうに言った。


「そんなの毎日だったら飽きるよ」


確かにみんなと暮らしたら最初は楽しいかもしれない。
でも、毎日となるとそれは生活になる。


「翔さんは大野さんと毎日一緒にいて
この生活に飽きているんですか?」

「……え?」

「大野さんはどう?」


ニノが突然そんな事を聞いてくるから
答えられないでいると
智くんにも同じ質問をする。


「んふふっどうかな?」


それを智くんはそう言って、んふふっと笑って
誤魔化したようにみえた。










「はぁ~やっと帰ったね」

「んふふっ。やっとって」

「やっとだよ~みんな全然帰りたがらないんだもん」

「確かに相葉ちゃんなんて帰りたくないって
泣いてたもんね~」

「ふふっそうそう。可愛いんだけどね」


3人が帰るとそう言って二人で笑った。




あの日。
父から突然智くんと一緒に暮らすように言われて
最初は戸惑いがあった。
でもお互い趣味も性格も何もかもが違うけど
一緒にいる事が自然で
今となっては一緒に暮らしている事が
当たり前の様になっている。


でも。


智くんはどうなのだろうか。
この生活をどう思っているのだろうか。
もしかして飽きているのだろうか。
ニノに聞かれて智くんが誤魔化すように
どうかなと言っていたのがずっと気になっていた。








夜も更けもう寝ようかとどちらからともなく言って
2階に上がりベッドに一緒に入る。
そして二人で同じベッドに並ぶように横になった。


「……ね?」

「ん?」

「智くんはここでの生活に飽きた?」

「……え?」


毎朝、一緒に起きて
朝ご飯を一緒に作って、食べて
大学がある日は大学に行って
バイトのある日はバイトに行って
休みの日は家にいる日もあるけど
一緒に買い物に行ったり出かけたりもする。


そして家に帰ってくると
一緒にご飯を作って、食べて
食後はリビングでお互い好きなことをしながら過ごして
夜になったら一緒にベッドに入って眠る。


こうやって誰かしらが遊びに来る事はあっても
基本は単調で変わらない。


「んふふっ飽きないよ」


智くんが不思議そうな顔をしてそう言った。


「ほんと?」

「うん、翔くんは?」

「俺も飽きない。何でだろうね?」

「う~ん。もうそれが生活の一部になっちゃってるからかな?」


智くんがうーんと考えながら答える。


そう、確かにこの生活が自分たちの生活の一部になってしまっている。
でもだからってつまらないとか飽きたとかいうのではない。









「智くん、好き」

「俺も、好きだよ」


身体を起こしその綺麗な顔を見つめた。
智くんもじっと見つめてくる。
そのままゆっくり顔を近づけていって
その唇にちゅっと触れるだけのキスをした。


キスも飽きることはない。
いつもドキドキして
顔が、身体がかっと熱くなる。


毎日一緒のベッドに入って眠ることも
智くんの静かな寝息の中に深い眠りに落ちっていくことも
夜中にふと目が覚めて隣を見ると智くんがいてほっと安心することも
それが生活の一部になっている。


いや、違う。
生活の一部なんてもんじゃない
生活の全てになっている。


毎日キスしていてもキスをしたくなる。
毎日その身体を抱きしめていても抱きしめたくなる。
もう、自分の中で智くんなしの生活なんて考えられなくなっている。


「智くんとずっと一緒にいたい」

「うん、俺も」


智くんのその綺麗な顔を見つめながらつぶやいた。


何でだろう?
飽きるどころかますますその思いは強くなる。
もっと一緒にいたい
キスをしたい
抱きしめたいと。


でも、そう思う事に本当は理由なんてないのかも知れない。











「あ~あいつら本気でここに住もうと思ってそうで怖い」

「怖いって」


そう言うと智くんは可愛らしくくすくす笑う。


「結構本気っぽいんだよなぁ」

「んふふっまあそれはそれで楽しそうだけどね~」

「え~やだよ」


今だって修也やら新美やらあいつらやら
入れ代わり立ち代わり来てんのに
これ以上二人の時間を邪魔されたくない。


「でも、それは翔くんの人徳じゃない?」

「違う違う」

「そうかなあ?」


そう智くんは言うけど違う。
みんな智くん目当てなのだ。
修也や新美はもちろん相葉ちゃんもニノも松潤も。


智くんは人を惹きつける何かを持っていると思う。
もっと一緒にいたいと思わせる何かがある。
現に自分がそうだったからわかる。


「智くん、好き」

「俺も好きだよ」

「ふふっありがと」


そう言って、キスをした。


そう、智くんが好きだ。
だからたくさんキスをしよう。
好きだからぎゅっと抱きしめ合って
そしてお互いの体温を感じ合おう。


そうだ。単純な事なのだ。
好きだから、ずっと一緒にいる。
好きだから、ずっと一緒にいたい。


智くんを見つめた。
智くんもじっと見つめてくる。
智くんの額に、頬に、唇にとキスをおとした。






唇がゆっくりと離れて


お互い見つめ合う


その身体をきつく抱きしめて


また見つめ合って


そして


唇と唇を重ねて


深いキスをする。






好きだとつぶやいて


その身体をぎゅっと抱きしめ


その額にちゅっとキスをして


おやすみと言う。





すでに深い眠りに入ってしまった


智くんに愛していると


頬にキスをして


その綺麗な寝顔を見つめる。





そして


その規則正しく奏でる寝息を聞きながら


ゆっくりと瞼を閉じて


そのまま深い深い眠りへと


堕ちていく。









それが、智くんとの日常。











ALL or NOTHING Ver.1.02 12 完

2016-02-05 22:47:30 | ALL or NOTHING Ver.1








レストルームに入ると


誰かが一緒に入ってきた気配がした。


「……」

「……」


振り向くとそこには智がいて


何か言いたげな顔をして見つめてくる。


「どうしたの?」

「何で?」

「……?」

「何で、何も言ってこないの?」

「何でって」


どうしたのかと智に問いかけると


智は不満気な顔でそう言った。


「あんな事言われてさ、ずっとドキドキしてたのに
ここにきても、目が合っても、ただ俺の事見てるだけで
俺一人バカみたいじゃん」

「……」


その言葉に何も言えなくて智の顔を見ていたら


智が責めるような顔をしてそう言った。








確かに。


確かに、智の言う通りだ。


あれからここにきても、目が合っても
見ているだけで話しかけもしなかった。


「俺の事、揶揄ったの?」

「違う、揶揄ったわけじゃない」


何も言えないでいると智は不審そうな顔を向け
自分の事を揶揄ったのかと聞いてくる。
だから慌てて違うと否定した。


「じゃあ何でただ見てるだけなの?」

「……」

「……俺は、ずっと気になってたのに」

「……」



あの日。


智を抱きしめてしまった事を
そして智に好きだと伝えてしまった事を
ずっと後悔していた。


「ちょっと出ようか?」


そう言うと智は素直にこくんと頷いた。


そしてどこか静かに話せる場所でと思っていたら
智がやっぱり家がいいというので
智が望むようにマンションへ向かった。









「智には悪い事をしたと思ってる」

「どういうこと?」


家へ着くとテーブルに冷たいお茶を入れたグラスを差し出す。
智はその言葉に不審そうな顔を向けた。
確かに急にそんな事言われても不審に思うだけだろう。




でも。




智はまだ高校生だ。


あんな事を言われても智にとっては負担になるだけだろう。
だからこれからも智の事は見ているだけにしようと
心に決めていた。


そして、もし、智の方から頼ってくるような事があったら
家族のような存在で受け入れ助けてあげたいと思っていた。


でもそれ以上の存在にもそれ以下の存在にもならない。


そう決意していた。


「何でそんな事を言うの?」

「……」

「俺は、抱きしめてくれて、好きだって言われて嬉しかったのに」


その事をどう智に伝えようかと悩んでいたら
智が思いもよらず嬉しかったと言ってくる。
その言葉に心が揺らぎそうになる。






だけど、と。






智はこれから先、大きく素晴らしい未来が待ち構えている。
色々な人と出会って、そして恋もするはずだ。
その機会を奪ってしまっていいのか、と。


そして智の家庭の事も気になっていた。
智は断片的にしか話さないからどういう家庭環境
なのかよくわからない。


だけど言葉のちょっとしたところに家族に対する寂しさや不安さ
そして家族の愛情の飢えのようなものを感じる。
だからその代わりを求めているのではないか、と。



「ね、家の方はどう?」

「……どうって」


そう聞くと智はなぜ突然家の事を言ってくるのかと
不審そうな顔を浮かべる。


「ずっと気になっていたから」

「……」


あの日も泣きそうな顔でダメだったと
家族になれなかったと言っていた。
智は無言のまま見つめる。


「高校卒業したらどうするの?」

「……専門に行く」

「そっか。まだまだ学生なんだなぁ」

「俺は働くつもりだったけど親が勉強できるうちは
しておいたほうがいいって言うから」

「確かに、その通りだな」


智は何で今そんな事を聞いてくるのかと
不満気な顔をしながら答えた。









「智は家族と仲いい?」

「……何でそんなこと聞くの?」


ずっと聞きたいと思っていた。
何で高校生のくせにこんな時間に
こんな場所にいつもいるのかと。
家にいたくない理由はなんだろうと。


「家は、どう? 嫌い?」

「嫌いって訳じゃないけど……」

「けど?」

「あまり自分の家って感じがしないから」

「どういうこと?」


智は小さく答える。
前にも自分は違うからと言っていたことがあった。
それがずっと気になっていた。


「もういいじゃん、何でこんなことばっかり聞くの?」

「これ以上は聞かないから、お願いだから聞かせて?」

「……母ちゃんが結婚して、友梨佳が生まれて」

「うん?」

「……三人だけが家族って、思うから」


智は何でそんな事を言わなくてはならないのかと
不満そうにしながらも答える。


「つまり家での居場所がないってこと?」


その言葉に智は小さくうなずいた。


そうか。


やっと点と点が繋がった。


今回の進学の話にしても、こないだのお礼の件にしても
どうにも智の言葉と結びつかなかったが
これで合点がいった。


「そっか、愛されてるんだな」

「……」


そう言うと智は家での居場所がないと言っているのに
何で愛されているということにつながるのだろうかと
不満そうな表情をする。


「今はどうしても赤ちゃん中心の生活になってしまっているだろうから
自分の存在価値とか見つけられなくて
疎外感を感じてしまってるかもしれないね」

「……」


智は意味が分からないって顔をする。
でも今はわからなくてもいつか分かる日が来る。


「それで話は終わり?
それより俺に悪いことしたってどういうこと?」

「…俺、最初に見た時から智の事が気になっていた」


そんな事を思っていたらさっき言った事は
どういうことなのだと智が詰め寄ってくる。


「最初?」

「あのフロアの中心で踊ってたでしょ?」

「見てたの?」

「見てたって、目、合ったじゃん?」

「知らない」


まじか。
どうやらあの時目が合ったと思っていたのは
自分だけだったらしい。


「凄く綺麗なダンスを踊る子がいるなって
夢中になって見てた」

「そうなの?」

「うん、でもその後、学生服の智を見て愕然としたけどね」


その言葉に智は何でって不思議そうな顔をする。


「智はあまり気にしてないみたいだけど
高校生は出入り禁止なんだよ。なのにあんな目立っててさ」

「だって、あれは頼まれたから」

「まあそうだろうね。それにホントは目立つの嫌いでしょ?」

「うん」


智は素直にうんと頷いた。









「でも、あの時の智の踊りと智にすごく惹かれたんだ」

「俺の事よく見てたもんね?」

「そう、で、見るなって怒られた」

「だってしつこくずっと見てくるから」

「しつこくって」


そう言って智はくすくす笑う。
でも確かにその通りだ。
最初はダンスに惹かれて
そして綺麗な顔をした少年に目を奪われた。


色白の肌が茶色い髪ととても似合っていて綺麗で
それでいて何気なく踊るダンスが美しくて
目を離す事ができなかった。


「そりゃあ、変な人に連れ去られそうになるし?
今にも倒れそうな状態なのにいるし?
目ぇ離せないよ」

「そんな事もあったね~」


そう言って、智はあははっと笑う。
その無邪気に笑う智につい笑みが浮かぶ。


でも。


その美しさもさることながら
あまりにも無邪気で無防備だったから。
だから余計目が離せなかった。
放っとけなかった。










「……」

「……」

「俺の事好きだって言った事は本当?」

「本当」

「でも、困った顔してる」


智がじっと見つめそう聞いてきたから
正直に答える。


「……だって、智は高校生だし」

「来月卒業だけど」

「そっか。だとなおさらこれから可愛い女の子や綺麗な女の人と
出会いがたくさんあるでしょ?
そんな時に言うべき事じゃなかったなって」

「言うべき事じゃないって何? 
それが俺に悪いことしたってこと?」


そしてずっと考え思っていたことを智に言うと
智はそれが何なんだと不満そうな顔をした。


「そう。だから、伝えてしまって悪かったなって」

「いいも悪いも俺が翔がいいのに?」

「……」


その智の言葉に何も言えないでいると
智が突然ぎゅっと抱きついてきた。


「俺、翔とこうしているの好き」

「俺も好きだよ」


そして智が抱きついたままそう言ってくる。
その智の突然の行動にびっくりしながらも
可愛くて愛おしくてその身体をぎゅうっと
抱きしめ返しながら答える。






でも、と。


そう思っていたら


「それに家族の代わりとも思ってないよ」


智が顔を見つめそう言った。






「確かに家に居場所はないし、疎外感も感じてるし
翔にいつでもここに来ていいって言われて
すごく嬉しかったけど、それだけじゃないから」

「うん」


一瞬心を読まれたのかと思いドキッとする。
そしてわかったからと頷きその身体をまた抱きしめた。


智を抱きしめると目の前には柔らかそうな茶色の髪の毛あって
前の時と同じように甘いにおいがする。
その髪の毛にそっと手を伸ばし優しく触れた。


智が、ん? って顔で見つめる。


その顔を見つめながら前髪にかかっている
その茶色い髪の毛を上げ額を出した。
そしてその綺麗なおでこに唇を近づけていくと
その額にちゅっと触れるだけのキスをした。


智が見つめてくる。


「……」

「……」


その綺麗な顔を見つめた。
最初に見た時も思っていた。
とても綺麗な顔をしていると。


その綺麗な顔に見つめられ心臓はドキドキと高鳴る。


「……好きだ」

「……俺も、好き」


本当はもう見ているだけの存在になろうと思っていた。
でもそんなの無理だ。


可愛くて、愛おしい。


『好きだ』


そう言うと智が俯いて自分も好きだと言って
ぎゅっと抱きついてきた。


可愛くて、愛おしい。
切なくて、苦しくなる。


家族のような存在で支えてあげたいと思っていたけど
そんなの無理。


両手でその綺麗な顔を包み込むようにすると
そのまま顔を近づけていってちゅっと
その唇に唇を重ねた。


唇が離れると智が照れたような顔をして
もっと、と言うような顔で見つめてくる。
その綺麗な顔に見つめられ、そんな顔をされ
心臓は高鳴りバクバク言って苦しいくらいだ。


心臓の高鳴りを感じながら指を智の唇に持っていく。
そして指を下に下げるようにすると
智は何の抵抗もなくその小さな口を小さく開く。


その小さく開いた唇に唇をゆっくりと押し当て
重ねるとそのままキスをした。
智が服をぎゅっとつかみながらも
自分の動きについてきているのが分かる。


愛おしい。


愛おしくて、可愛い。
ドキドキしすぎて、胸が苦しい。


唇が離れるとその身体をきつく抱きしめた。









「ここに住みたくなっちゃった」

「ふふっ本当にここの家好きね?」

「だって、ここにくるとあったかい気持ちになるの
優しくしてもらったこと思い出してほんわかするんだもん」

「嬉しいんだけどね、またいつでもおいで」

「うん、くる」

「で、いつか一緒に住めたらいいね」

「うん」

そう言うと嬉しそうにうんと言って、ぎゅっと抱きついてきた。


可愛くて、愛おしい。


やっぱり家族みたいな存在なんて、無理。


そう思いながらまたその唇にちゅっとキスをした。













あの日。


無理やり連れてこられたこの空間。


たくさんの人が踊ってる中


智の踊るダンスだけを見ていた。





大勢の人がいる中


智を見ると心が揺れた。


綺麗な人に話かけられても


可愛い女の子に踊ろうと誘われても


智だけを見ていた。





たくさんの人で溢れかえるこの場所で



智だけを



ずっと見ていた。










おわり。