yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

山 短編3

2013-09-24 21:20:38 | 短編


「ちょっと二人、くっつきすぎ」


昼休み。
買い物組の二人で飲み物とパンを買って
教室に戻ると、そう言ってあなたは顔をしかめた。


「別にいいじゃないですか、何なら翔さんも繋ぎます?」
にのは特に気にする風でもなく平然としたまま
そう言って笑う。


「イヤ、いい」
そう言ってあなたはぶすっとした顔で
横を向いてしまった。





色々あって留年する事となってしまった自分に対して
最初に話しかけてくれたのはこの人、ニノだ。
にのは初めて出会った時からすごく人懐っこくって
不安と緊張を抱えていた自分に
凄く簡単に、そして気軽に話しかけてくれた。


そこから一気に仲良くなり、そのままにのの友達だった
翔くんや相葉ちゃんとも自然と仲良くなった。
にのは初めて会った頃からかなりのスキンシッパーで
肩に手を置いてきたり手を繋いできたり
時には抱きついてきたりもしてくる。
最初は凄くびっくりしたけど、それもすぐに慣れた。


“犬みたいだなぁ”


最初に出会った時から何の躊躇いもなく
好きだ好きだと言って手を繋いできたり身体をくっつけてきたり。
よしよしってすると全力でしっぽを振ってるように見える。
だからにのは友達っていうよりかはペットみたいに可愛い存在。


だけど翔くんにはそれが理解できないようで
手を繋いでいたりくっついていたりすると
気持ち悪ィとか言って、とたんに不機嫌になる。
そんな翔くんに、にのは全く気にもせず
面白がってますますくっついてきたりする。


でも気付くとそれはにのの時だけじゃなくって
他のクラスメートとちょっとしゃべっていても
相葉ちゃんとふざけてじゃれ合ったりしてもそんな感じで、
視線を感じて視線の先を見ると翔くんがムッとした顔で見ている。


“もしかして嫌われているのかな”


そんなこんなで自分達二人の間にはどこかぎくしゃくした空気が流れていた。
お互いそれが分かっていたから極力二人きりにならないように気を遣う。
それでも他のクラスメートと一緒の時や4人でワイワイ集まっていれば
楽しかったし仲良くやってたので全く問題はなかった。


ある日いつものように4人で翔くんの家に集まって
宿題を始めようとすると、にのと相葉ちゃんに呼び出しがかかった。
二人は部活に入ってはいないけど時々こうやって
助っ人として呼び出しがかかる。


「戻ってこれそうだったら戻ってくるから」
そう言って二人は申し訳なさそうに慌てて学校へと戻る。


「……」

「……」


思いがけず二人きりで残されてしまう。


お互い二人きりにならないように努力していたから
学校以外で二人きりになったのは
多分この時が初めてだったと思う。


シーンと静まりかえった部屋の中、時計の秒針の音だけが響く。


「多分この調子じゃ二人とも戻ってこれないと思うから、俺も帰るよ」

「……え? 何で?」

「何でって」


二人きりでいても気まずいだけなのに
なんでそんな事聞くのだろう。
そう思いながらその顔を見るとなぜか残念そうな顔をしている。


“何でそんな顔するんだろ?”


「だって、二人いなくなっちゃったじゃん」

「でもまだ宿題これからじゃん」

「……」


何言ってんだろう?
二人になると気まずいから空気よんで帰ろうって言ってんのに。
意味分かんない。
そうは思ったが面と向かってそんな事も言えない。


「……じゃ、宿題だけやって帰る」


仕方なくそう言って机に戻ろうとすると
なぜかホッとしたような顔を見せた。
何で? 
二人でいたって気まずいだけなのに。
ホント意味わかんない。


いつもお互い二人きりになるのを避けるのが
暗黙の了解になってたはずなのに。
そう思いながらもそう言ってしまった手前、
仕方なく宿題を広げると、ちゃっちゃっと終わらせて
とっとと退散する事にした。


いつもはにのと相葉ちゃんがきゃっきゃっ言いながら
賑やかな感じで宿題をするのに今日は空気が重い。
こんな事なら用事があるって言って帰ればよかった。
そう言わなかった事を半ば後悔しながら宿題を始める。


「……」

「……」


空気が重い。
重い。重い。重い。
重くて息苦しい。
とっとと終わらせて帰ろう。
そう思いながら宿題に集中する。


「……」

「……」


お互い無言のままシャープペンの走る音だけが鳴り響く。
空気が重い。
重くて、苦しい。
でも、あと一問。
そう思った瞬間。


「……俺」
突然翔くんがつぶやいた。
「……?」
びっくりして顔を上げると翔くんが
困り果てた顔で見ていた。


多分頭のいい翔くんの事だからとっくに宿題は
終わっていて、自分の終わるのを待っていた状態だったんだろう。
「何?」
その困り果てた顔に戸惑いを覚えながら恐る恐る聞き返す。


「俺、智くんの事、ずっと前から知ってた」
突然そんな事を言い出す。
意味が分からずその端正な顔を見つめる。
それっきり翔くんは黙ったまま、ただ顔を見つめるから
どうしていいのか分からずその顔を見つめ返す。


そして突然翔くんの身体が動いたかと思ったら
両肩を掴みそのまま押し倒される。
「な、何?」
一瞬何が起きたか分からず気付いた時には
翔くんのその綺麗な顔が目の前にあった。


びっくりして起き上がろうとすると
そのまま両手を頭の横で固定され上から見つめられる。


「何 すんだよ」

「ずっと、好きだった」


そう言って力ずくで起き上がろうとしたら
両手を頭の横でがっちりと固定したまま
翔くんが困り果てた顔でそう言った。







入学式。

初めて出会ったその人に恋をした。



高校の入学式。
何人かは同じ中学出身だけど殆どが知らない顔ぶれ。
不安と期待と緊張が入り混じる。


そんな中、その人に出会った。


退屈なだけの式が終了し教室に戻る。
その時に数人の学生とすれ違った。
その中にその人が、いた。


その人はとても綺麗な顔立ちをしていて人目を惹いた。
他にも何人か一緒にいたと思うけどそれが何人だったかも
その人以外の他の人の顔も全く分からない。
その人だけしか、目に入らなかった。


でも、その時。
その一瞬で恋に堕ちた。


それからは毎日その姿を探しては見つめる。
一つ上のその人はいつも同級生に囲まれていて
何だか守られているようだった。


あまりに見つめすぎるせいか時々視線が、合う。
その人は不思議そうな顔で見つめ
そしてふっと笑った。


そんな見つめるだけの日々。
でもそれだけでも満足だった。


でも。
ある日からその姿が急に見えなくなった。
病気で休んでいるというような事を聞いた。


“病気”


それからは毎日がつまらなくてただ生きている
ただ学校に行ってる、そんな感じだった。
いつも一緒にいた同級生達も心なしか寂しそうに見えた。


そうこうしているうちに2年生になった。


そして、そこに、その人がいた。
一瞬目を疑う。


そして気付いたらにのと仲良くなっていた。


この二人、にのと智くんはやたらくっついていることが多い。
時には手を繋いでいたりなんかして、
しまいには智くんのお尻を触っていたりなんかする。
その事を指摘しても智くんは笑っているし
にのは別にいいでしょって感じで動じない。


そりゃまあ、背格好も同じ位の可愛らしい顔立ちの二人が
何をしていたって犬がじゃれているようにしか見えないし
女の子達が大宮コンビかわいい~とか言って
陰でファンクラブが出来ている事も知っている。


“分かってるけど、何だか面白くない”


その二人の姿を見て無性にイライラした。
そしてそれを察した智くんが自分に気を遣っているのも分かっていた。
そしてそれが二人の間の微妙な空気をつくってしまっているのも分かっていた。


“せっかく毎日会えるのに”


あれほど会えない事で絶望的になっていたはずなのに。
自分自身に腹が立って仕方ない。
どうしようもない位の自己嫌悪の毎日。




そして今日。
思いがけず二人きりになった。


引き留める自分に戸惑いを見せる智くん。
二人きりになると微妙な空気になるのが分かっているから
帰りたがっているのは分かっていた。
でも、わざと空気が読めないふりをして二人きりになる。
そして宿題が終わりそうなところを見計らって声をかけた。


そしてそのままその華奢な身体を押し倒す。


余裕なんて微塵もない。


“ずっと好きだった”


智は戸惑いの表情を浮かべる。


「好きだ」


そう言ってその綺麗な顔に顔を近づける。
智くんは目をそらすと伏し目がちになる。
長い睫毛が黒目を隠す。


“何て綺麗な顔をしているんだろう”


初めて見た時からずっと惹かれていた。


ドキドキしながら唇を近づけていって触れるか触れないかのキスをする。
唇が離れると智くんはびっくりした顔で見つめる。
何か言いたげな智に気付かないフリをして
そのままもう一度角度を変え唇に唇を軽く押し当てる。
心臓がバクバクいっている。


顔を離し目が合った瞬間、智は何かを言おうとして
でも言えなくてまた伏し目がちになる。
その瞼にもちゅっとキスを落とす。
智はびっくりしたのか大きく目を開ける。


「好きだ」


もう一度そう言って首の下に腕を回しキスをしようと
するとそのはずみで智の口が小さく開く。
そのまま舌を差し入れると深いキスをした。







「ずっと嫌われているのかと思ってた」

「……ごめん」


智はまっすぐな目でそう言って笑った。
その言葉に謝ることしかできなくて素直に謝る。


「しかも突然こんな事するし」

「……ごめん」


智は怒ってる風でもなく笑いながらそう言う。
その言葉にやっぱり返す言葉が見つからなくて謝った。


「んふふっ。まぁ、いっけど」

「ごめん」

「んふふっ。翔くん謝ってばっかり」

「ごめん」


やっぱり謝ることしかできなくてそう言うと智が頬に手をやり
自分からちゅっと頬にキスをしてきた。


「俺も昔から翔くんのこと知ってたよ。よく目、合ってたじゃん」

そう言ってクスリと笑うと今度は唇にちゅっとキスをした。


ありふれた日常 part17(VS 9/5)

2013-09-18 18:58:13 | 山コンビ ありふれた日常


久しぶりに会った子役の男の子は
びっくりする位身長が伸びていて
声変わりまでしていた。


「怪物さ~ん。ちょっと並んで~並んで~」
なぜか妙に嬉しくなって←
そう言って智くんを立ちあがせると
並んでもらうように促した。


智くんは何とも言えない表情をしながら
その男の子の横に立ち、促されるまま背比べをする。
そして身長が追い抜かされてしまった事を知ると
また何とも言えない表情になり苦笑いをうかべた。





「ただいま~。あれ? 智くんの方が先だったんだ?」
そう言いながら部屋に入る。
「…うん。ちょっと前に」
智くんは膝を抱えてソファに座ったまま小さな声で答えた。


“あれ? もしかして元気ない?”


「取りあえずシャワーだけ浴びてくるね」
元気のなさが気になったが取りあえず汗だけでも流しておきたくて
そう言ってバスルームに向かった。


シャワーを終えリビングに戻ると
相変わらず智くんは膝を抱えた状態のまま
テレビを見ている。


“この体勢、かわいいんだよね~”


「……子供って、すぐ大きくなるね」
智くんが座っているソファの隣に腰を下ろし
タオルで髪の毛を拭いていたら、智くんがテレビを見つめながら
小さくつぶやいた。


「……?」
あ~今日の収録?
確かにあんなに小さかった男の子がたった数年で自分の身長を
追い抜いているだなんてホント衝撃的だよね~なんてことを
思いながら智くんの顔を見る。


“あれ? もしかしてショック受けてる?”


「ほんと、びっくりだよね」
数年前に会った時はまだまだ小っちゃくて
いかにも子供って感じだったのに。


このわずか数年の間にこんなに成長してしまうなんて
育ちざかりとはいえ、いざ目の当たりにすると
感慨深いものがあるよねぇ、何てことを思いながら返事をする。


「……みんなどんどん抜かしていくんだもんなぁ」
智くんはちょっと考えるような表情をすると
そう小さくつぶやいた。


「……」
その言葉に何と言っていいか分からなくて
その綺麗な顔を見つめる。


「翔くんもそうだし」
テレビから目を離したと思ったらこちらの顔を見てそう言った。
その突然出てきた自分の名前にびっくりして見つめ返す。


「えっ? 俺?」
思わず聞き返した。
「そうだよ。最初会った時は本当に小っちゃくって
俺の胸くらいしかなかったはずなのにさ」
そう言ってその可愛らしい口を尖らせた。


“かわいい”


「それが、いつのまにか抜かされてたんだもん」
そう言って頬を膨らませる。


“可愛すぎる”


まさかそこから自分につながるとは夢にも思わず
可愛らしく頬を膨らませている智くんの顔を呆然と見つめた。


「いや、まあ、それはそうだけどさ」

「ちぇっ、何だよなあ」

「……うーん。そうだなぁ」


何と言っていいかわからず、ただその顔を見つめる事しかできない。
実際問題、やわらかくて優しく可愛らしい顔立ちをしている
智くんにはこの位の身長が似合ってると思う。
でも、それを言ったところで本人が納得するとは到底思えなかった。


「俺にとっては、丁度いい感じなんだけどね…」
ついついそんな言葉が口から出てしまう。
「丁度いい感じって?」
不満そうな表情を浮かべそう聞いてくる。


「いや、何ていうかさ…」


“丁度いいサイズ感というか”


その身体を抱きしめるにも。
その肩を抱くにも。
そしてちゅってするにも。
自分には丁度いいサイズなんだよね~。
でも、そんな事を言ったらやっぱり怒ってしまいそうで
とても言えなかった。


「何ていうか、何?」
口を尖らせながら可愛らしい顔で聞いてくる。
「いや、智くんってよくソファで寝ちゃうじゃん。
そんな時抱っこして運んであがられるしさ」
苦し紛れにそう言った。


「……」


智くんは納得できないのか不満そうな表情を浮かべたまま無言で見つめる。
本人としてはもしかしたら気にしてるかもしれないけど、
自分としてはその位の身長の方が智くんらしくて好きなんだけどね~。


まあ、もちろんどんな身長でも変わらず好きだったと思うけど。
でもやっぱりこの位のサイズ感が智くんらしくてイイんだよね~。
そうは思ったがそんな事とても本人には言える雰囲気ではない。


「ね、ほら、もう遅いから寝よ。連れてってあげるから」
まだ不満そうな表情を浮かべる智くんを
ベッドルームまで連れて行こうと抱え上げようとした。


「いい。自分で歩ける」
やっぱり不満に思っているのか智くんは珍しく拒否する。
「いいからいいから」
本気では嫌がってない事が分かるので
そのまま抱え上げるとベッドまで運んだ。


“やっぱりこの位が丁度いいんだよね~”


そう思いながら心の中で笑ってしまう。


そしてそのままベッドに優しく横たえる。
そして不満そうな表情をうかべる智くんに気にもせず
(どんな智くんも)好きだよ、と言って唇にちゅっとキスをした。

ありふれた日常 part16(zip 8/26)

2013-09-05 19:51:41 | 山コンビ ありふれた日常
[遅くなりました…]




『率直なことを言うと手元がおぼつかず

 練習通りの完璧なものが出来なくて

 ちょっと正直悔いてます。

 引っ張られて歌えなかった人たちもいると思うから
 
 そこに関しては本当に申し訳ない……』



バックステージ。
智くんがゆっくり近づいて来たかと思ったら
誰にも気づかれないようにそっと手を繋いだ。


「……!」
突然の行為に驚いて智くんの顔を見ると
智くんは特に気にする風でもなく
すました顔で手を繋いだままいる。


「……」

「……」


しばらくされるがままの状態で智くんと手をつないでいたら
少しずつ気持ちが落ち着いてくるのが分かった。


智くんは本当に不思議な人だ、と思う。


普段ぼーっとしているように見えて意外と人の事をよく見ている。
普通グループのリーダーというと前を率先して
歩いていくイメージだけど智くんは違う。
いつも一歩後ろに下がった状態から自分達4人の事を見ている。


そして人の感情の変化とかにも敏感でよく気が付く。


だから今回の事もすぐ気づいたんだろう。


「これ終わったら行くからね」
そう言って、有無を言わせない位の
飛び切りの可愛らしい笑顔を向けると
ぎゅっとその握っている手に力を込めた。





シャワーを浴び部屋に戻ると
先にシャワーを浴びた智くんがソファの上に足を抱え
体育座りの状態でちょこんと座ってテレビを見ている。


“かわいい。こんな32歳って”

そう思いながらその可愛らしく座っている
智くんの横に腰を下ろしその姿を盗み見る。


“あぁ、かわいい”

その可愛らしくテレビを見ている姿を眺めているだけで
疲れが吹っ飛ぶような気がした。
しばらくテレビを見ているふりをしてその姿をぼんやりと眺める。


“さすがに疲れたな”

智くんも疲れたんだろう。
しばらくお互い動くこともせず、ただついているだけの
テレビを眺めながら時間だけが過ぎていく。



「翔くんのピアノ、素敵だったよ」

しばらくぼーっと智くんとテレビとを交互に眺めていたら
突然ぽつりと小さくつぶやいた。


「……」

その言葉に何と答えていいのか分からず
智くんの顔を見る。


「本当は翔くんが納得できる演奏が出来たら
一番よかったんだろうけど、ね」
そう言ってこちらの顔を見る。
そして目が合うとにっこりと微笑んだ。


“全部知っている”

そう思った。


「……」

やっぱり何も言えず、
その可愛らしく微笑む顔を眺めていると
智くんが、でしょ?って感じで首を傾ける。


「俺、翔くんのピアノ好きだよ」

何も言うことができず無言のまま、その綺麗な顔を見つめていたら
智くんはそう言ってゆっくりと両腕を伸ばしてきた。
そして身体全体をその華奢な身体で包み込むように抱きしめてきた。


「……智くん」

突然の思いもしない智くんの行為にびっくりしながらも
そのまま身体を預ける。
気付くと背中に回っていた智くんの手が優しくぽんぽんとする。


涙が零れ落ちそうになった。


「智くん」
もう一度抱きしめられたままの状態で名前を呼ぶ。
「なあに?」
智くんが優しい声で聞いてくる。
何と言っていいかやっぱり分からなくて何でもないよ、と言うと
智くんは抱きしめた状態のまま、んふふっと笑った。


しばらくそのまま身体を預け抱きしめられていたら
色々な思いが剥がれ落ちていって
少し気持ちが楽になったような気がした。


智くんは回していた腕をゆっくり離す。
そして至近距離で顔を見つめる。


きっと涙で潤んでいるであろう自分の瞳を見られるのが
何だか気恥ずかしくて下を向くと
智くんは両手を包み込むように頬に手をあてる。


「翔くんのピアノ素敵だったよ」
上を向かされ目が合うと、もう一度そう言ってにっこり笑った。


「……ありがと、智くん」


いつも多くを語る人じゃない。
でも、いつも助けられている。
多分本人は気づいていないだろうけど。


「智くん、好きだよ」

「ふふっ、知ってる」


好きと言うと智くんは手を頬にやったままにっこりと笑って
知ってる、と答える。


好きという言葉だけじゃ、とても足りない。
大切な存在で。
大事にしたい人で。
自分にはなくてはならない人。


「智くん、愛してる」

そう言うといつも照れくさそうに笑う。


そのままソファにゆっくりとその身体を押し倒すと
智くんの手が背中に回ってきた。
そのままゆっくりと顔を近づける。


目が合うとお互いにニッと笑う。
そのままゆっくりとその唇に唇を重ねる。


そしてそのまま深い深いキスをした。