yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

ALL or NOTHING Ver.1.02 3

2015-11-25 21:10:00 | ALL or NOTHING Ver.1






『もう、見ないで』









見ないで。




見ないで。




ミナイデ。
ミナイデ。
ミナイデ。



頭の中でその言葉だけが何度も頭の中に響き渡る。






確かにその少年の事を見ていた。


意識的に見ていた事もあるし


無意識に見ていた事もある。





そして。


視線を感じるのかこちらを振り返り


目が合ったことも何度かある。





それが気になり




嫌だったのだろうか。








もうあの少年の事は気にしないようにしよう。


高校生が出入りしているという事は


気になると言えば気になるが


あの少年の言う通り自分には関係のない話だ。





もう気にしないようにして


そして少年の言う通り見ないようにしよう。



そう決意した。











決意した。









決意した。







はずだったけど








そんなの、無理。








この場所にきてしまえば、その姿を無意識に探している。


かといって行かなければ、どうしているのだろうかと


気になってしまい家にいても何も手につかない。


自分自身、重症だなと思いつつも


なぜ、あの少年の事がこんなに気にしてしまうのかは


わからなかった。




ただ。




高校生が毎週のようにここに出入りしている事。


そして毎週出入りしている割には全然楽しそうでもなく
惰性でここにいるように見える事。


そして少年の時折見せる寂しそうな表情。


その表情に目が離せなかった。





そして。


いつもクールで笑わない少年が一度だけ
笑っている姿を見た事があった。


高校生の友達と何やら楽しそうに笑いあっている姿を一瞬見た時
やっと高校生らしい表情が見えたと
なぜだか凄くほっとした事を覚えている。


だから高校生らしく無邪気に笑う姿が
もう一度見たかった。






そして。


何よりもその少年が踊っている姿。


その姿が印象的だった。






その少年が踊るダンスは他の人が踊るダンスとは違う。


軽く何でもなく踊っているように見えるのに


なぜかとても綺麗に見える。


天性のリズム感とダンスの才能があるのだろう。


その少年の踊るダンスは見る者を魅了する。


その踊る姿に目を離す事ができなかった。










とは言っても。


見ないで、と言われたからには凝視する訳にもいかず


気付かれないように、悟られないように


その姿を探し、そして見つめた。










見ないでって言われても。


気になるって言われても。


この場所に来ると


無意識にその姿をこの大勢の人の中から探し出し





その姿を見ていた。








少年は目が合うと見ないでって言ったでしょって顔をして
睨んできたり知らんぷりしたり。
そしてぷいっと横を向いたかと思ったら
あっかんべーっといたずらっ子みたいな顔をして
舌を出してきたりしてくる。




逆効果なのにな。





その姿が可愛くてつい笑ってしまった。
















そして。


この日はなぜか少年が一人だった。


いつもはあの高校生の子が一緒にいるのに珍しいな。


そう思いながらいつものように眺めていると


しきりにその少年に声をかけている男の姿が見えた。









「……?」


知り合いなのだろうか?
その様子をうかがっていると
その男が少年の手をつかんでいるのが見えた。


「……?」


何をしているのだろう。
少年は手を振りほどこうとしているみたいだが
男の手ががっちりと掴んでいるためかはなす事が出来ないようだ。


そしてVIP席にでも連れて行こうとでもしているのか
少年に何かしきりに話しかけている。


どうしよう。


助けた方がいいのだろうか?
かといって自分自身、あの少年に見ないでなんて
言われてしまっている。
そう思いながらその様子を見つめる。


少年はその男の強引さに困っている様子だが
そこはやっぱり高校生なのだろう、突っぱねることもできず
どうにもできないようだ。


そうこうしているうちに少年が手を引っ張られ
このフロアから連れ出されそうになっていた。


「……!」


思わず駆け寄った。


そして男の前に立つ。


「……」

「……」


少年がびっくりした顔で見つめる。


男は怪訝そうに何か用かと聞いてきた。


「その子、俺の親戚の子で
その子の親から見ているように言われてんで」


とっさにその男に向かって嘘をついた。


「……」

「……」


少年を見ると少年も自分の事を見ていた。
無言のまま見つめ合う。
少年がどう思っているかは全く分からない。


「さ、行こう?」


そう言って少年に向けて手を差し伸べた。


「……」

「……」


ドキドキしながらその少年の顔を見る。


少年はどう出るだろうか。


全く分からなかった。


また関係ないと言って突っぱねられるだろうか。
親戚なんかじゃないと言われ一蹴されてしまうだろうか。
自分の事は自分で対処すると嫌がられるだろうか。
余計なことはするな放っておいてくれと怒り出すだろうか。





「……」

「……」






どう出る?





胸の高鳴りを感じながらその少年を見つめた。

ALL or NOTHING Ver.1.02 2

2015-11-22 16:42:39 | ALL or NOTHING Ver.1




吉田さんにようやく開放してもらったのは
始発の電車が動きだす時間だった。


くそっ。
貴重な休みがもう朝かよ。
いくらお世話になった先輩の誘いでももう2度と行かねぇ。
そんな事を心の中で愚痴りながら電車の来るのをホームで待つ。


ホームはこんな時間だからだろうか
人もまばらでこれから仕事なのだろうか
どこかに出かけようとしている感じの人々。


遊んでいて帰れなくなってしまったのだろうか
始発を待っているような感じの人が数人いた。


反対側のホームにも同じような感じで人がまばらにいて
そこにはなぜか学生服を着た男の子二人が
ぼんやりとベンチに座っている姿が見えた。


土曜日のこんな時間に高校生が一体何をしているのだろう?
明らかに、これから試合か何かで遠征のために早起きして
ここにいるという感じではない男二人の姿。


一人は、細身でストレートの茶髪が綺麗な今どきの男の子といった感じ。
もう一人も同じく茶髪で肌が白くて鼻筋の通った綺麗な顔をしていた。






……って。


あの茶髪の色白の方。


見たことがある。


「……あっ!」


あのフロアの中心で踊っていた少年だ。


あの中にいた時はさすがに学生服ではなかったけど


でも、間違いない。


あの人だかりの中心で見事なダンスを披露していた少年。


若いんだろうなとは思って見ていたけど、まさか高校生だったとは。











「……」


っていうか、そもそも高校生があの店を出入りしちゃダメだろ。
ああいう場所は高校生はもとより未成年は出入りできなかったはずだ。


しかもこの時間にまだここにいるって事はずっとあそこにいたって事か?
高校生があの場所にいるのも、こんな時間まで遊んでいるのも
何もかもがダメ過ぎる。



そう思いながらも





その時は





電車が来たのでその場所を後にした。
















「驚いたな~」

「……へ?」

「いや、あん時大して楽しそうでもなかったからさ~
今もここに一緒にきているのが不思議なんだよね」


そう言って吉田さんは不思議そうな顔をする。


確かに、あの時は一刻も早く帰りたいと思っていたし
もう二度とここに来るものかと思っていた。


「もう2度とご一緒しませんって言われるのかと思ってたよ」

「……」

「ま、俺は嬉しいけどね。女の子の方からめっちゃ声かかるし」


そう言って吉田さんは、にっと笑った。


そう。


確かに言われたとおりだ。


もう二度と来ないと決意していたはずだったのに
あれか毎週のようにここに通っている。


何でだろう?


自分自身よくわからない。


ただ。


あの少年の事がなぜか無性に気になっていた。


高校生でこんなところの来ている事も


こなれた感じで踊っていていた事も。


そしてあの容姿。


男の人なのに綺麗でどこか儚くて


とても放っておけないようなその存在。


そんな事を思いながら、ついその姿を探してしまう。


なぜか目で追ってしまう。


他の人なんて目に入らない。


気付くとなぜかその姿を探している自分に気づき苦笑いをしてしまう。


なぜかなんて分からない。


ただ。


高校生という大人でもなく子供でもない。


その少年が持つ独特の儚さと美しさと、その空気感。存在。


そして。


ここに毎週のように来ている割にどこかつまらなさそうで


何か持て余しているような、そしてどこか寂しそうなその瞳に


目を離す事ができなかった。








ただ、最初に見かけた時と印象はかなり変わっていた。
あの時は周囲に取り囲まれるように踊っていて
かなり目立っていたけど、それはたまたまだったらしい。


あれからあのような場面に出くわすことは全くなかった。
見かけるといつもフロアで踊っている人たちをぼんやり眺めていたり
たまに踊っていたとしても軽く音楽に合わせている位で
目立つ事はなかった。


それでも。


もともとのリズム感が優れているせいなのか
ダンスの才能があるせいなのか
ただ軽く音楽に合わせて身体を動かしているだけのように見えるのに
どんな音楽にも綺麗に馴染んでいて美しいダンスを踊る。


その少年の踊っているのを見ると


つい見惚れてしまっている自分がいる。





その少年が踊っていると





そこだけ空気が違って見えた。










そして。


いつもその姿を見つけるとついつい凝視してしまうせいなのか
自分の存在に少年も気付いているみたいだった。


だからなのか、たまに目が合うと何見てんだよって顔をして
睨んできて、ぷいっと顔をそらされる。





それでも、その少年から目が離せなかった。














ちょっと一休みと手を洗っているとドアが開く。


思わずドアの開いたところに目をやると人が入ってきた。



「……!」


あの少年だ。


思わず目が離せなくなってそのまま見続けていると目が合った。


「……」

「……」

「……」

「また見てる」


お互い無言で見つめあう。
そしておもむろに少年が口を開くとそう言った。


「……」

「いつも俺の事見てるでしょ、何で?」


何も言えなくてそのまま無言で見つめると
少年が詰め寄るようにそう言ってきた。


「何でって……」

「気になるから見ないで」


その言葉に戸惑い答えに詰まっていると
その少年はまっすぐな視線で気になるから見ないでという。


やっぱり気づかれていたか。
まあ、あれだけ見ていれば当然か。


「ごめん、でも気になるんだよ」

「……」


正直に謝りそう答える。
その言葉に少年は何でって顔をして不思議そうな顔をして見つめてきた。


そのまっすぐに向けられる視線に
そしてその瞳に吸い込まれそうになった。


「……君さ、高校生でしょ?」

「……」


思い切ってそう言うと少年は何で知っているのかと
びっくりした顔で見つめてくる。


「帰るところ見たんだよ、学生服姿で」

「……だから、何? 今どきみんな出入りしてんじゃん」


そう言うとちょっと不機嫌そうにそう答える。


「そうかもしれないけど、何だか毎週のようにいるし凄く気になるんだよ」

「……」


その言葉に少年は押し黙ってしまった。
その美しい顔を見つめる。


「……」

「関係ないでしょ、もう、見ないで」





そしてそう吐き出すように言ったかと思うと





扉を開け走って行ってしまった。


ALL or NOTHING Ver.1.02 1

2015-11-17 13:38:02 | ALL or NOTHING Ver.1





ALL or NOTHING Ver.1.02


(注 これは詞の内容というより2002年に少クラで披露した時の曲の雰囲気、そしてその時の智さんがイメージです)











この世の中は欲で溢れている。



満たされる事は決してなく後から後から出てきて



それは留まるところを知らない。











何でこんなに人がたくさんいるのだろう。







「やっぱ櫻井、お前連れてきてよかったよ」

「……は?」

「だってさっきから次から次へと女の子のほうから
声かけてくるじゃん」

「それは、ここがそういう場所だからですよね?」

「違えよ、お前の顔だよ、そのカ・オ」



そう言って会社の先輩である吉田さんはニッと笑った。








彼女と別れ落ち込んでいたのを心配し
気晴らしにと連れてきてくれたこの空間は
ネオンが灯り、絶え間なく音楽が鳴り響く。


そこにいる人は皆、思い思いに酒を飲み、雑談し
音楽に合わせダンスを踊る。
そして、知り合いであろうが他人であろうが
誰もが気軽に会話を楽しむ。


そんな場所だった。



だからその雰囲気に合わせ
酒を楽しみ、音楽に酔い、そして軽い会話を
満喫すればいいのだろうけど
今は、そんな気分にはなれない。






そんな風に思っていた。








あの時までは。











話しかけてくる女の子は皆綺麗で
華やかに彩られているけど、何かが違う。
大学時代だったら、もしかしたら楽しめていたかもしれないけど
社会人になった今
そしてこの状況では、それも何だか難しい。


そんな事を思いながらフロアで踊り楽しんでいる姿を
誰ともなくぼんやりと眺めていると
数人の女の子達が一緒に楽しもうと話しかけてきた。



またか。


正直、どんなに可愛い子が来てもこの自分のテンションが
変えられるとは思えなかった。
話しかけてくる子達はどれも似たり寄ったり。
可愛いくて綺麗かもしれないけど何かが
自分の中で違うと思ってしまう。








「ちょっと失礼」

「どこ行くんだよ?」

「トイレですー」


そう言って席を外した。


ああ、メンドクサイ。


面倒くさくて死にそうだ。


酒ならゆっくり飲みたい。
こんな煩いところではなくもっと落ち着いた店で
静かに飲みたい。


そう思いながら人ごみをかき分けトイレへと向かう。
後ろから、えー?とか、何でよーとか、ちょっとーとか
文句言ってる声が聞こえてくるけど、そんなの知らねえ。
トイレぐらい自由に行かせろってんだよね。


それよりお世話になった先輩の誘いじゃなかったら
一刻も早く家に帰って湯船にでも浸かって
ゆっくり酒を飲みながら寝たかった。







そんな事を思っていたら


突然、わぁーっと歓声が上がった。


その歓声がある方に視線を送る。


その視線の先には周りがスペースが空けられ


一人の男性が踊っている姿が見えた。


「……?」


あれは、ブレイクダンスというのだろうか?


周りの者がスペースを空けたその中心で


一人の男性がダンスを踊っているのが見えた。


すげえ…


その軽やかで体重を全く感じさせないダンスは


見ている者すべてを魅了し興奮させている。


その惜しみないリズム感と身体能力に


誰もが息をのんで見守っていた。


何者だ?


踊っている男性の顔をよく見ようと近づいた瞬間、目が合った。


その視線に、胸がドキッとする。


視線はすぐに外されたが、そのまま見つめる。


男性は全く気にしていないようで踊り続ける。


その、薄茶色の髪の毛。


柔らかそうなその少し長めのその髪は


後ろに自然に流してあってその色白の顔にとても似合っている。


とても綺麗な子だ。


男の人に綺麗というのはおかしいかもしれないけど


ここにいる化粧で彩られている女性達よりもよっぽど


綺麗という言葉が似合う気がした。










そして、そのしなやかな肢体。



華奢な身体に見えるが腕には程よく筋肉がついている。
踊っている時に腹部もちらっと見えたが
腹部にも程よく筋肉がついているのが見て取れた。


って男性相手に何見てんだろ。
自分自身に思わず突っ込んだ。


気づくとその男の姿はなくなっていて人だかりも消え
周りは通常の状態に戻っていた。


「……」


あの男性は?
周りをきょろきょろと見渡したがその男の姿はもうどこにもなかった。


といっても。
顔はよく見るとまだ幼い感じで男性というよりかは
男の子とか少年といった言葉がぴったりな気がする。
あんな感じでもここにいる位だから成人しているだろうか。
でも、とてもじゃないけど高校生くらいにしか見えなかった。





自分でもよくわからないけど、その少年の事がなぜか気になっていた。