ある日、また事件が起こった。
解決の糸口が見つからないまま時間ばかりが過ぎていく。
翔は智の知恵を借りたかったが
その事件は難解でその現場を実際に見ないと
解明は難しいと思われた。
時間が勝負なこともあり翔は焦っていた。
家に帰り智にどうしても現場を見て解明してほしいと頼む。
しかし智はまだ家の仕事が終わっていないだの
写真かビデオなどに撮ってきたものをみせてほしいだの
なんだの言って家から出ることを渋る。
翔はますます焦る。
何とか智を言いくるめ車に乗せ現場に向かった。
智はあれほど嫌がっていた割には
現場をくまなく検証し事件解決へと導く答えを出した。
そして事件は無事解決にむかう。
翔は智に感謝し家へと送り届けた。
「今日は、ありがとね。
あと2時間位したら家に帰るから」
そう言って翔はまた仕事に戻っていった。
そしてきっかり2時間後、翔は家に帰ってきた。
智はいつものように翔を迎え入れる。
しかし難事件が解決にむかった事で翔はかなり上機嫌になっており
智の異変に気付かない。
智はいつものように食事の準備を始めた。
しかし身体が思うように動かないのか
思考が働かないのかちょっとしたミスを繰り返す。
「……?どうかしたの?智らしくない ね」
と言い終わる終わらないかの瞬間に
智は膝から崩れ落ちるように倒れてしまった。
「智っ?」
智は完全に意識を無くしてしまっており反応がない。
額に手をやるととても熱く頬は真っ赤になっていた。
翔は慌ててベッドに寝かせるとホームドクターを呼んだ。
祖父母の時代からであるホームドクターはドクター自身の
代も変わったとはいえ相変わらず親身で
すぐに来てくれ診察をしてくれる。
診察の結果、炎天下にいた事による発熱と
元からあると思われる貧血が重なったせいだろう
との事で今日は点滴をし、
また翌日診察をするという事でドクターは帰っていった。
翔は目を閉じたままの智を見つめる。
メガネを外して目を閉じている智は
熱のせいで頬を真っ赤に染めていたが、とても綺麗な顔をしていた。
翔は智の額に優しく手をおいた。
「無理をさせてしまったかな?」
そう独り言のように呟いた。
そしてしばらくその綺麗な顔を眺める。
智は一向に目を覚ます気配はない。
翔は額に当てているタオルを冷たいタオルに変えると
そのままその唇に自分の唇を近づけていき
ちゅっとキスをした。
この時翔は智の事がずっと好きだったのだと気付いた。