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きらり

山コンビ小説 Drの翔くんと患者さんの智くん 1

2012-05-31 22:44:39 | 日記
「櫻井先生、先ほど入院された大野さん102号室にいます。」
病棟に戻ると看護師からそう声をかけられる。
そう言えば、肺炎で一人外来から入院した人がいるからお願いねって言われてたっけ。
そう思いながら電子カルテを確認する。
あぁ、炎症反応が高いし、レントゲンも真っ白だなあ。熱も9度か。
しばらくこのまま抗生剤を朝夕で点滴して2日後にまた採血とレントゲンのオーダーだな。

ま、その前にとりあえず顔見て挨拶でもしてくるかな。
そう思いながら病室に向かう。
トントンと軽くノックをするが返事はない。
「大野さん?入りますね。」
そう言って静かに病室に入る。

そこには赤ちゃんのようにバンザイをしながら真っ赤な顔をして眠る姿があった。
確か31歳って書いてあったよね?とても俺の一つ上には見えないんですけど。
どうやって見ても20代前半じゃね?
それにやたら綺麗な顔して寝ているんですけど。女の人みたいだけど確か男の人だったよね。
そんな事を思いながらじっと顔を見つめるとその気配に気づいたのか目を覚ます。
その美しい顔に動揺し一瞬言葉を失う。

熱もあるせいかボーっとした顔で不思議そうに見つめられる。
「あっっ。大野智さんですね。私担当医師の櫻井です。よろしくお願いします。」
あわててそう早口で挨拶する。
その言葉を聞くと身体をゆっくりおこしながら
「よろしくお願いします。」
そう言ってペコリと頭を下げる。

「ああ、熱もあるし身体も辛いでしょう。寝てて下さい。」
そう言って肩を掴み寝かせようとするとその身体の華奢さにドキっとする。
何で俺は男の人相手にドキドキしているんだろう?そう思いながら
「身体の調子はどうですか?今痛いところや辛いところはありますか?」
そうドキドキしている自分を抑えながら話しかける。

「とにかく身体がだるくて辛いです。」
「そうですね。外来で聞いたかと思いますけど肺炎をおこしているので
しばらく一日2回抗生剤の点滴を続けますね。
2日後にもう一度採血とレントゲンを見させてもらって順調にいけば
一週間以内で退院できると思いますよ。」
静かに見つめられてドキドキしながらそう答える。

その後大野はみるみる回復し予想通り一週間かからず退院となる。
その入院中、櫻井は大野のもとに毎日顔をだしさりげない会話から情報を集める。
そして彼は現在一人暮らしであること。
職業はイラストレーターで2年前に独立したこと。
軌道にのるまではと思って掛け持ちでコンビニでバイトをしていたがイラストレーターの仕事も
順調に増え来月にはコンビニのバイトをやめること。
彼が働いているコンビニの場所など聞き出すことに成功した。

そして退院後、大野の働いているコンビニにそれとなく見に行く。
大野は毎日入っているわけではなく週に何回かしか入ってないらしく
会える時と会えない時があった。
何か俺ってストーカーみたいだな、そう思い自分に苦笑いする。
でもこのまま会えなくなるのはどうしても嫌だった。

退院と決まった時も分かってはいた事だったが毎日大野の顔が見れないと思うと
寂しくて仕方がなかった。
こんな事今だかつて一回もなかったな、そう思うと自分でも何だかおかしかった。
でもコンビニのバイトももう辞めるっていってたし今しか話しかけるチャンスは
ない、そう思い大野がレジに立っている時に勇気をだして中に入る。

そして櫻井に気付いた大野は
「あっ先生じゃないですか。お久しぶりです。その節はお世話になりました。」
そう丁寧に挨拶をする。
「い、いやっ。こちらこそ。」
緊張し返答がおかしくなる。その姿をふふっと笑いながら大野が見つめ話しかける。
「先生、買い物ですか珍しいですね?」
入院中とは違う大野のその姿にドキドキする。

入院中は入院中で儚げな感じでよかったけど、こうやってエプロンつけて働いている姿は
また違う感じでいいやね。いやいや変態か、俺は?と思いを巡らす。
「あ、はい。ちょっと買い物で。」
緊張しドキドキしながらそう答える。