yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

1126 誕生日

2012-11-28 18:18:45 | 山 誕生日


「もうちょっとで誕生日だね。
何が欲しい?」
すでにベットの中に入って眠そうにしている
智さんにそう聞くと
「うーん。
…愛情?」
ちょっとの沈黙の後そんな返事が返ってくる。


「愛情?」
毎日たくさん愛情を届けているつもりデスケド。
しかも俺以外からもたくさんの人から散々気に入られて愛されて。
嫉妬で狂いそうなんですけど。
本人はきっと分かってないだろうけど誕生日の日には
本気のお誘いメールと、おめでとうメールがわんさか届くよ。


そう思いながら
「それって俺からの?」
一応聞き返す。
「うん」
……即答だし。


どれだけ愛情に貪欲なのか、あるいは鈍感なのか。
「いつもたくさんあげているでしょ?
足りない?」
布団から顔だけ出して可愛らしく微笑んでいる智さんに問いかける。


「うーん。足りないって訳ではないけど…」
そう言ったかと思うとゆっくりと両手を広げ
おいでという風に待ち構えている。
その腕の中におさまろうと身体を近づけると
嬉しそうな顔を見せる。


こういうところが本当に可愛いらしいんだけどね。
そう思いながら望むまま身体を預ける。
もういいかなって思ってゆっくりとその身体から離れて
顔を見つめると少し不満そうな表情を見せた。


「どうしたの?」
その何か言いたげな瞳にそう問いかけると
「これからもずっとそばにいて支えててね」
まっすぐな目でそう言う。


「…?うん」
当たり前じゃん、俺が智さんから離れられるわけ無いでしょ
そう思いながらぎゅっとその華奢なカラダを抱きしめると
背中に腕が回ってきてぎゅっと強く抱きしめ返される。


昔から、
今も、
これからも、
ずっと智さんとずっと一緒にいたい気持ちに変わりはないよ。
そう思いながらちゅっと唇に触れるだけのキスをして顔を離すと
両手がゆっくりと伸びてきた。
そしてもっと、というかのように頬を包み込んでじっと見つめる。


「好きだよ。」
そう言ってもう一度唇を近づけたら軽く口がひらかれた。
そのまま差し入れると絡みあう深いキスをした。







隣ですでに眠ってしまっているその綺麗な顔を見つめる。
“何か不安だったのかな?”


この人はいつまでたっても少しのコンプレックスと
不安が解消できずにいる。
どんなに周りが凄い凄いといってもそれはいつまでたっても
変わらないまま。


“どうしたらいいんだろうね?”
その答えの出ない問題を、安心しきってスヤスヤ眠っている
顔に問いかける。
どれだけの言葉を言ってもどれだけずっと一緒にいても
不安を消し去ることはできないのかな。


“愛してる。ずっとずっとそばにいるからね。”
そう何度も何度も本人に伝えている言葉を
寝ているその顔にもう一度言うと頬にちゅっと口づけた。


そして“おやすみ”と言って目を閉じた。

17   vol 3

2012-11-20 19:33:00 | 日記

借りた傘をみつめながら考える。

その人は傘は捨てていいと言ったけどやっぱり返すことにした。



その人はいつも困っている時に助けてくれる存在ではあったけど、
それだけで用がない限りは話したりすることもなく
単なるクラスメートの一人、という感じだった。

また助けてもらったお礼に、と話しかけても
そっけない態度を取られる事が多かったので
どう接していいのか戸惑うところもあった。


またその人の視線も気になっていた。
なぜか視線を感じてそちらを見るとその人がいる。
でも振り向いた瞬間にはその人は別の方を見ているので
確証はなかったが何となく見られているという実感があった。


それが何の意味をしめすのか分からなくて戸惑いばかりがおそう。
助けてくれたり優しくしてくれるけど、そっけない態度をとられる。
気づくと視線を感じる。
どうその人と接していいのか分からなかった。



でも借りた傘は返さなくちゃいけないと思い
一人になったところを
見はからって勇気を出してその人に話しかける。


「あの、櫻井くん」
急に後ろから話しかけたせいかビクッと背中が動く。
「あ、何?」
その人は振り向いたかと思うとぶっきらぼうにそう答えた。


この人のこういうところにいつも戸惑う。
優しくしてくれるけど言葉使いは決して優しいとは言えない。
だからどう話しかけていいのか分からなくてついおどおどし
ながら話してしまう。
「あの…傘、ありがとう」
そう言って傘を差し出した。


その人はびっくりしたような戸惑ったような表情で
見つめる。
そして傘の方に視線を移したかと思ったら手が伸びてきた。
そして傘を当然掴むのかと思ったらなぜか傘ではなく
傘を差し出したその手首を掴んだ。


「…?」
あまりの出来事に何も言えずただその握られた自分の手首を
見つめる。
その手は何故か手首を強く掴んだままだった。

暫くその握られた自分の手首をボーゼンと眺めていたが
「あのう…?」
そう言って自分より少し背の高い彼の顔を見上げた。
視線が合う。


その目は何故か切ないような愛おしいような目をしていた。
この人の自分を見るこういう表情にいつも戸惑う。
どうしていいのかわからなくなって
何も言えなくなって手首を握られた状態のまま見つめ合う。


でもその手は手首を掴んだまま離してくれそうもない。
誰かに見られても変に思われてしまうだけだろう、
そう思ってもう一度勇気を出して話しかける。
「櫻井くん、手…」
その言葉に急に我に返ったようで慌てて手首にあった手を離した。


そして慌てて傘に持ち替えたかと思うと
「ごめん。間違えた。
傘捨ててよかったのに」
そう言ったかと思うと傘を掴んで走って行ってしまった。


何が起こったのか訳が分からずボーゼンとして
ただその人が走っていくその姿を見送った。
そしてふと自分のその握られていた手首を見ると
少し赤くなっていた。

なぜその人がそんな事をしたのか分からなかったけど
それからもその人が助けてくれる事には変わらず
また特別親しくなることもなく日々は過ぎていったので
ただ単に考え事をしていて間違えたんだなと思うようにした。


ただ相変わらずその人の視線を感じる日々は続いていた。

それは自分でも不思議と嫌なものではなかった。
















走りながら胸がドキドキして止まらなかった。
自分でもどうしてそんなことをしてしまったのか分からない。

ただ話しかけられたその顔があまりにも美しくて見とれてたら
男の手とは思えない細い綺麗な手が差し伸べられてきた。


無意識にその手首を握っていた。


櫻井くん、と名前を言われてその時初めて我に返った。
そして自分のしていることに気づいて
慌てて手を離し間違えたとごまかしたが
絶対に変だと思われただろう。

そう思うと穴を掘ってその中に自分を入れてしまいたい気分だった。


どうしてあんなにその人が気になるのか

どうして何とかしてあげたくなるのか

どうして訳もなく見つめてしまうのか


自分の気持ちに気付いてしまった。





いや、とっくのとうに気がついてはいたが

気づかないふりをしていただけだ。


初めてその人を見たその瞬間から


好きだった。



だから気づかれないように必死になってわざとそっけない態度をとったり
ぶっきらぼうに接したりした。


でも気持ちを伝えることは、
辛い状況にあるその人には酷すぎるような気がしたし
困らせるだけだと思いしまっておく事にした。

















そして僕たちは3年になった。

クラスも変わり学校にも慣れてきたその人を
助けるという事はその頃にはなくなっていた。

ただ、その人を見かけると胸がきゅっと締め付けられる感じが
ずっと続いていた。


でもそんな気持ちもだんだん受験という波が

自分自身を巻き込んでいっていつしか忘れさせていった。









そして風の噂でその人は東京に戻るという事を聞いた。

自分は地元の大学に行くのが決まっていたので

もう会うこともないのかなと漠然と思いながら

その時は過ごしていた。





























大学を卒業し東京に就職したオレは忙しいながらも
充実した日々を送っていた。

そしてその頃にはすっかりその人を好きだった事を忘れていた。



でもある日この大都会の真ん中で出会ってしまった。



一瞬すれ違っただけだったけどすぐにその人だと分かった。

その人は小柄な人だったけど一際美しくて人目を引いた。


そして気が付いたら話しかけていた。

「あの失礼ですが…。
高校の時一緒だった大野くんですか?」
その人は振り返ると、びっくりした表情で見つめる。

「あ…っ」
少しの間の後、どうやら思い出したみたいだった。

「突然話しかけてごめんなさい。
高校の時一緒だった櫻井です。
覚えてないかもしれないけど。。」
あの時の君はきっとそれどころじゃなかっただろう。
それに仲のいい友達って訳でもなかったし。


そう思いながらも、そう話しかけると思いがけず
「覚えてるよ。サクライ ショウくんでしょ?」
そう言ったかと思うとふにゃんと笑った。
そのあまりの可愛さにクラクラとしながらも
「そう。覚えていてくれたんだあ、嬉しいなあ。」
そう言って何とか冷静になろうと努力しつつ、そう話しかける。


苗字だけでなくフルネームで覚えていてくれたなんて
それだけで嬉しくて舞い踊りたい気持ちを抑えながら
「あ、ごめんね。急に話しかけてしまって。
今、大丈夫だった?
もしよかったらだけどどこか入らない?」
このままで終わってしまうのがどうしても
嫌で慌ててそう提案した。


店に入るとその美しい顔で見つめられる。
「あの俺の顔になんかついてる?あ、老けたか?」
あまりに見つめられるから恥ずかしくなってそうおどけると
「ううん、顔は変わらないけど雰囲気が随分変わったなあ
って思って」
そう言って、んふふっと笑う。


「え?」
その言葉に少し動揺した。
「だってあの頃…。
ちょっと怖かったし。
話しかけづらい雰囲気を醸し出していたし
だからこうやって普通に話しているのが何だか凄く変な感じ」
こちらの動揺とは関係なくそう話を続ける。


「ああ、あの頃は…」
好きだったから。それをごまかすために必死だったから…
という言葉を飲み込む。
「あの頃は?」
その人は不思議そうな顔で聞く。


「いや、
いやなんでもない、多分いきがってただけ。訳わかんないけど」
本当は好きだったけど
ごまかすためのひそかな戦いだったんだけどね
と言う言葉は心の中にしまっておいた。


「それにしても懐かしいよねえ
これからも逢えるかな?」
これからも逢いたい。そう思ってそう話しかけると
少し怪訝そうな顔になった。


「いや、ごめん、調子に乗りすぎちゃったかな?
おれ地元から離れてきたばかりで寂しくって
だから知ってる人がいると嬉しくって。」
黙っているその人に慌ててそう言ってごまかすと
納得したようにいいよ、とふにゃんと笑った。







それから。
その日からあの頃の気もちがまたふつふつと吹き出してきて
止まらなくなってきている自分に気がついた。

いや、あれからまた一段と綺麗になっている姿を見て
あの時以上に気持ちが強くなってきている自分に気がついてしまった。

しやがれ part 1

2012-11-12 18:02:00 | 嵐にしやがれ
ベッドに入って帰りを待っていると
玄関からガチャっと帰ってきた音を告げる。

そのまま、そーっと寝室のドアが開けられる。
そして顔をこれでもかってくらい近づけてきたと思ったら、
覗き込むようにして見るから、寝たふりをしていたのに
つい笑ってしまう。


「起きてたんだ」
そう近づけた顔のまま嬉しそうに言う。
「うん、起きてた。
ゼロも見たよ。今日もかっこよかったよ」
ベットに入ったまま顔を少しだけ出した状態で
そう答えると
「そう?ありがと」
そう言って今にも崩れてしまいそうなとびきりの笑顔を見せる。


「ご飯は?」
時計に目をやりそう聞くと
「うん、食べてきた。
とりあえずシャワーだけ浴びてくるね」
そう言ってバスルームに向う。


暫くするとシャワーを流す音が聞こえてきた。
シャワーが終わりバスローブを身にまとって
寝ているベッドの空いてるスペースに軽く腰掛ける。
そして濡れた髪の毛をタオルでバッサ、バッサと拭いている
その姿をぼんやり眺める。

「どうしたの?」
視線を感じたのか髪を拭きながらそう聞いてくる。
「うんやっぱ翔くんはキャスターの姿がかっこいいなって思って。」
そう答えると
「そ、そう?」
嬉しそうだけどちょっと複雑そうな表情を浮かべる。


「しやがれでムラオサンと並んでる姿みて
改めてそう思ったんだけどさ、俺には絶対できないなって。」
昼間の収録とさっきまでの姿を思い出しながらそう言った。

「そんなこと言ったらオレは智くんみたいに
踊れないし歌えないし絵も描けないよ。」
笑いながらそう言う。


「うーん。でも…」
言葉を続けようと思ったら、もうそれ以上の言葉はいらないよ、
という風に唇を唇で塞がれる。
そしてゆっくりと唇が離されると
「俺ができないことが智さんにできて
智さんができないことが俺にできるなら
それでいいんじゃない?」
目をじっと見つめながらそう言う。


「まあ…ね。」
納得できるような納得できないような
そんな言葉を言われて曖昧な返事になる。

「うん?何?それともキャスター以外の時の
俺はかっこよくないって事?」
突然、そんなことを言い出すから
「うっ……そんな事 な い よ」
つい歯切れが悪い返事になってしまう。


「その変な間は何なんだよ?
さてはそう思ってるなっ」
笑ってしまいそうになるのを堪えて
わざと怒った表情を作ってそう言ってくる。
「いやっまあ」
その表情についつられて笑ってしまいそうになるのをこらえ何とか答える。

「肯定しちゃってるし。
嵐のオレもかっこいいでしょう?
そうじゃないとやばいじゃん、オレ。」
そのあまりの対応に笑うしかなくなってしまったのか
笑顔でそう言う。

「んふふっ。そう ね。」

「また変な間ー」

笑いながらそう言いあった。


「何だよなあ?
もう落ち込んじゃうよ?」
そうぶつぶつ言って拗ねているその綺麗な顔を見つめる。

そしてその顔を両手で包み込むと
顔を近づけていってそっと触れるだけのキスをした。
「そんな翔くんも好きだよ」
そう言うと
「…そう?…そんな?」
複雑そうな表情でそう聞き返してくる。


「うん。そんな翔くんも好き。」
そう言うと
「何か言われ方が複雑で素直に喜べないんデスケド」
そう言って苦笑いをする。


ただキャスターやってる翔くんがかっこよくて好きなだけなんだけどねー。
そう心の中で思いながら
複雑そうな表情をしている、その綺麗な顔に
もう一度近づけると唇にちゅっとキスをした。

17   vol 2

2012-11-11 16:14:29 | 日記
季節外れの転校生は


物静かで自分から率先してしゃべるタイプでは


決してなかったけど


なぜか人を惹きつけるものを持っていて


いつもクラスメートに囲まれていた。



その人が転校生としてクラスに来てから
クラスメートは皆その人の持つ
その不思議な雰囲気に魅了されていた。

それはその人の身ににおこった出来事に対しての同情、とか
東京からきた、とか
そういうのとは一切関係なく
その人の持つ独特な空気感と存在感のせいだったと思う。

そして自分も決して例外ではなく
初めてその人を見た時から
ずっと惹かれていた。

初めてその人を見た瞬間からなぜか目が離せない。



そんな自分の気持ちに戸惑いながら
あえてその人と距離を置く。
だけど困っているときは助けたい
何とかしてやりたいという思いが常にあり
その人にあまり気づかれないようさりげなく助けてきた。




そして、あの日。


その日、珍しくその人は朝いなかった。
そこに教師の休みのための教科変更の連絡と
教室の移動の話があった。

その移動教室からは校門が見える場所だったので
その人が来るかもしれないと思って
ずっと見ていた。

そしたらその人は来た。


理由をつけて慌てて教室に戻ると誰もいない教室でその人は
ボーゼンとしていた。
自分の気配に気づいたのか後ろを振り返り
「ああ、びっくりした」
とあまりびっくりした風でもなく綺麗な顔でそう言った。

その顔があまりにも綺麗で何も言えなくなって
見惚れていると
「今の時間って確か古文だったよね」
その人は反応がない事を気にする風でもなく
ふにゃんと笑ったかと思うと続けてそう言った。

その同性とは言えあまりの可愛さにクラっとしながらも
「古文のセンコー急に休みになったから移動になった。こっち」
そう自分の気持ちを押し殺して
何でもないふりをしてそう言って前を歩いた。
そうでもしないと顔が真っ赤になったのが
バレてしまうと思った。


ただそれだけの出来事なのに胸がドキドキした。
その人が気になって仕方がない。
だけど親しくなるとこの気持ちがどうなってしまうのかが
怖くてわざとそっけない態度をとる。




そしてあの雨の日。


あの日何やら担任に頼まれごとをされているなと思い
わざと帰り支度をゆっくりしていたら
その人は帰る準備をせず
残って何かをするようだった。

気にはなったが教室に残る理由もなく
帰ることにした。

家に帰りボーとしていると雲行きが怪しくなってきた。
きっと傘なんて持ってきてないだろう
そう思うといてもたってもいられず
自宅のそばにある学校に傘を持って戻る。


下駄箱を確認するとまだ学校にいるようだった。
そうしているうちにどんどん空は暗くなってくる。

下駄箱から少し離れたところで待っていると
その人は現れた。
急な雨にボーゼンとしているようだった。

そのまま雨の中駆け出して行きそうだったので
慌ててその人のもとに行く。
そして傘を差し出した。


その人は急に現れた自分と傘を差し出された事に戸惑って
いるようだった。

そして一本しかない傘に
「櫻井くんはどうするの」
その時、自分の名前をその人の口から聞いた瞬間。
時が止まったように思った。

何も言えなくなる。
何とかその人が不審に思われないよう
家が近いから大丈夫だと、使い終わたっら捨てていいと

それだけを何とか告げて

走り出していた。

17   vol 1

2012-11-05 22:48:43 | 日記
季節外れの転校生は


守ってあげたいと思わせるような儚さと


そしてとても美しい容姿をしていた。


噂では両親を事故で亡くしたため祖父母のいる


この町にきたとの事だった。




子供の頃から何度か遊びに来ていたこの町に
突然住むことになった。


それは突然起こった不幸な出来事に対し
それを非常に心配した祖父母が
高校を卒業するまではなんとか自分達の元に、
という強い思いがありそれを受け入れこの町にきたのだ。


それから数ヶ月。
その出来事のショックの大きさと
そして突然訪れた新しい環境、人間関係に
とにかく慣れる事に必死でその間の記憶はほとんど、ない。


だけど、ようやくその出来事を自分の中に受け入れ
そして学校にも慣れてきて
周りが見えてくるようになってきた頃
一人のクラスメートがいつもさりげなく
自分を助けてくれていることに気がついた。

それは最初、気のせいかもとか、思い過ごしかもと思った。
でも、それはそうではないと確信する出来事がいくつもあった。



その人は髪の毛を明るくし耳にピアスを開けていて
とても目立つ存在だった。
そして頭がとてもいい人で、いつも学年でトップを争っていた。
顔もよく、いかにもモテそうな風貌で女子からも人気があった。
その人を見かけるといつも違う女の子を連れていた。

その人とは特別話をしたりとかはなかったけど
なぜかいつも困っている時にその人がいて
助けてくれる、そんな不思議な存在だった。



ある日、寝坊をしてあわてて教室に駆け込むと
教室内には誰もおらず教室はシーンと静まり返っていた。
この時間って古文じゃなかったっけ?
そう思いながらしばらくボーゼンとしていると
後ろに人の気配を感じる。

振り向くと同じクラスのサクライ ショウ、
その人だった。
「ああ、びっくりした。」
誰もいないと思っていたのに急にその人が
現れたのでびっくりしながらも、そう話しかけると
その人は何も言わずただじっと顔を見つめる。

「…今の時間って確か古文だったよね?」
その人は黙ったままなので続けてそう言うと
「古文のセンコー急に休みになったから移動になった。こっち」
その人はぶっきらぼうにそれだけ言うとスタスタと
前を歩いていってしまった。
「あ、待って」
そう言って、その後ろを慌ててついていく。


追いかけながら、前を歩くその人の茶色く綺麗な髪の毛を見つめ
今まで誰がどうとか考えた事も考える余裕さえもなかったけど
この人はこんな風にいつも困っている時に何故か現れて
さりげなく助けてくれている、そう思った。

それは偶然なのかそうでないのかは分からなかったが
そのさりげない優しさにいつも感謝していた。


またある日の放課後、担任の頼まれ事で一人教室に残っていた。
そして夢中になってそれを仕上げ
担任に届けて、いざ帰ろうとしたら
雨が急に降りだしてきた。

その日はとても雨の降るような天気ではなかったので
傘などなくボーゼンと立ち尽くしていると
雨は徐々に激しくなっていく。

仕方ないこのまま帰ろう、そう思って
外に一歩出ようとしたところで
またどこからともなくその人が現れる。
「これ」
そう言って差し出された手には透明のビニール傘。
「え?…これ?」

どういう事かと戸惑って手が出せないでいると
「使っていいから。」
その人は何故か一本しか持っていない傘を無理やり掴ませる。

「…櫻井くんはどうするの?」
その言葉に一瞬驚いたような意外そうな顔をする。
「…?」
その思ってもみない反応に言葉が出ないでいると
「俺んちは近いから、それ使って。
捨てるつもりだったから返さなくていいから」
そう言い終わるか終わらないかのうちに
その人は雨の中を走って行ってしまった。