2010年 VOL.10
プラスアクトミニから抜粋
総合演出・プロデューサー インタビュー
「彼はリーダーだけど、裏リーダーだ」と言ってるんですけど。
全然リーダーっぽくないんで、そういう風に見られないですけど
なんかちょっと意見がわれたりした時に、大ちゃんが
「こっちでいいんじゃない?」
って言うとまとまる、みたいな。そういうところがありますよね。
リニューアルにあたって、色んな打ち合わせをしていた時に、
やっぱりまだオンエア前のことなので、どうなるか
だったり、色んな意味で意見がわかれることもあって。
そういう中で、なんとなくですけど
普段、そういう時に率先して喋るタイプじゃないですけど
大ちゃんのひと言でまとまることもありましたしね。
裏リーダーだなっていう感じは今でも思っていますね。
『もう足がしびれちゃってダメだ』
『ニノどうしたの?』
『腰やっちゃった 左足がしびれて』
『ジャンプアップやめる?』
『大丈夫、大丈夫』
『イケる? スライドアップでもいいよ』
『……』
『スライドにしようよ』
『いい?』
『(うん)』
『スライドアップ!』
智くんは、いつも名ばかりのリーダーで
リーダーらしい事は何もしてないって言う。
けど、違う。
あれは、ニノが腰を負傷した時のこと。
松潤が心配して、すぐに駆け寄りニノの状態を配慮し
演出を変えたほうがいいのではないかと
ニノに確認していた。
でもその時点では、二人ともまだ少し
迷い躊躇っているようだった。
ニノに至っては、その責任感から肉離れを起こし
足が痺れるほどの激痛に襲われていたにも関わらず
スタッフやメンバーに心配かけないようにする為に
大丈夫、大丈夫、なんて言ったりして。
でもすぐに智くんが後から駆け寄っていって
『スライドにしよう』
そう智くんが言って
すぐにスライドになることが決定した。
その時間、1分足らず。
その決断力と強さ。
あなたは、やっぱり嵐の真のリーダーだと思う。
あの一切の迷いのない強い決断力で
ニノの躊躇いも迷いも吹き飛ばす。
ニノが『いい?』って心配そうに聞く中
智くんは、まっすぐな視線でニノに
それで間違いないからという風に強く頷いた。
そこから一気に舞台は動き出す。
あなたは、いつも名ばかりのリーダーで
リーダーらしいことは何もしていないけどって言う。
でも、違う。
仕切ったりまとめたりと目に見えるリーダー像もあるけど
こういう時の決断力や目に見えない精神的なカバー力。
本人もあまり画面には出したがらないし
表立っては見えないけど
あなたはやっぱり真のリーダーであり
精神的な支柱であり続ける。
『みんなでおそば屋さんに行って話したんだよ』
『2002年か2003年くらいじゃない?』
『で、今も状況を打破するには今の状況を投げ打って
下克上を起こすしかないと思っているんだけどどうかな?
って話になったの』
『今の生活も仕事もあって、でもそれを全部ゼロにしてって
いう意見があったんです。
だからどうしたらいいか考えて欲しいってなった時に
この人が嫌だって言ったの』
『今まで何にも言わなかったの、この人。
うん、わかったわかったしか言わなかったのに
でも、そんときだけは、嫌だって言ったの』
『今あることを頑張ればゆくゆくそうなるんじゃないかって
そういうようなことを言ったわけ。
それ、すっごい覚えているの』
『俺もすっごい覚えている。
“今、目の前にあることを頑張れないやつが何を頑張れんだ”
って言ったの』
『そん時、すっごい強かったの』
『すごい強かった』
『だから俺の仕事の根底はそこになっちゃったのよ。
今あるものをちゃんとやろうって思うようになったのは
リーダーの言葉だったんだよな』
「……やっぱりさ」
「ん~?」
二人でまったりと過ごす時間。
いつものように酒を飲みながら思い思いに過ごす。
「いつもリーダーとしては何もしてない。
影のリーダーは俺って言ってくれるけどさ
リーダーは智くんなんだよね」
「え~?」
「NHKのやつやってたから見てたらさ、やっぱそう思った」
「……?」
そう言うと、智くんは不思議そうな顔をした。
相変わらずというか、やっぱりというか、見てないね?
そう思いながら、つい笑ってしまいそうになる。
「あのニノが腰をやっちゃった時もさ
二人とも、どうしたらいいか迷ってたじゃん。
けどすぐに状況を察知して智くんが行って
決断を下してそれで変わっていったじゃん」
「そうだったっけ?」
「そうだよ」
智くんは、そうだったっけ? なんて軽く言っているけど
あの決断がなかったら、ニノは無理してやって
その後とんでもないことになっていたかもしれない。
そう考えると本当に恐ろしい。
「それに、あの、今、目の前にあることを頑張れないやつが
ってやつもさ、結局、智くんの言う事を通したから
今につながっているわけじゃん」
「あれねぇ。あの頃は、ホントもがいてたよね」
そう言って智くんは、んふふって笑う。
「そう、焦って、もがいて、もがいて。でも上手くいかなくて。
CDも全然売れなくてレコード会社からも切られて。
まあ、その後自社レーベルで作ってもらったけど」
「ふふっあの状況でよく社長作ったよね~」
智くんは他人事のようにそう言って笑った。
「まあね、それはそうなんだけどさ。
俺はそん時もう、すべてをぶっ壊して一からってやるしかねえな
って思ってたんだよね。そう思ってた時の智くんの言葉だった」
「んふふっあの頃の翔くんて、今と違って、結構ね」
「……ん?」
結構なんだ? と思いながら智くんの顔を見ると
智くんは可愛らしい顔でクスクス笑っている。
「なんていうか、アツいっていうか、やんちゃっていうかね。
キャスターなんてやっちゃってる今じゃあ
想像つかないけど、んふふっ」
「……」
……確かに。
「でもさ、それからさお互いが出来ることを
頑張っていこうってなって、そしてそれが今に繋がっている。
そういうのを考えると二十歳そこそこで言い切った
智くんてやっぱすげえなって」
「んふふ。そっかな」
「……だからあの智くんが辞めるって話は
本当にショックだったし衝撃的だった。
デビュー当時ならわかるけど10周年の前までそんなこと
考えてたんだって知らなかったから」
「まあ、誰にも言わなかったからね」
「間接的には何度も訴えていたのかもしれないけど
全然気付かなかったから、何だかショックだったんだよね」
この世界になんの未練も執着もなさそうだから余計ね。
多分、他のメンバーも同じだと思う。
みんな言葉を失ってたもんな。
「本当にやめないでいてくれてよかったよ。
もう何より危なかったって言葉しか俺には出てこねぇけど」
「んふふっおれも危なかった」
「ふふっ自分で言ってるし」
ニノとは一番釣りにはまってた時に、このまま漁師になる
なんて言い出すんじゃね? なんて冗談で言って
心配してた時もあったんだけどね。
まさかそっちですか、みたいな。
「いや~ほんと危なかったよ」
「ね~」
「ね~って他人事だし。
まあ、でも、今ここにいてくれて、本当によかったよ」
「ふふっおれも」
やっぱり他人事みたいな顔をして
智くんは笑っている。
こっちは寿命が縮まるかって思ったくらい
衝撃的だったというのにね。
「ああ~だから」
「……?」
「15年スイッチは崩壊していたのか」
「ふふっそうかも」
何だか信じられないくらいハワイでは
ずっと泣いていたんだよね。
「で、今はどうなの?」
「今は全然思ってない」
「それ聞いて安心した。
今、目の前にあるものを頑張れねえやつがっていうのが
嵐の基盤になっちゃているんだから
その当事者がいなくっちゃね」
「ふふそっかな」
「そりゃそうだよ」
「ああ~本当に危なかったよ」
「まだ言ってるし」
そう言って智くんはクスクス笑う。
「当たり前だよ。今回のハワイで一番衝撃的なことだよ」
「翔くん、大げさ~」
「大げさじゃねぇよ」
本当に嵐にとってもそして自分にとっても
どれだけ重要で大切で必要な人だかわかってない。
そう思いながらほんのり頬を赤く染めたその綺麗な顔に
顔を近づけていくとその可愛らしい唇にちゅっとキスをした。