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山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

ありふれた日常 part9(VS嵐5/16)

2013-05-28 18:41:05 | 山コンビ ありふれた日常


「ね、また俺にも絵描いてよ」
仕事を終えいつものようにリビングのソファで
まったりしている智くんにそう話しかける。


「えー? 翔くんにはハタチの誕生日の時に描いて贈ったじゃん」
智くんはソファに寝っ転がったまま不満そうに答えた。


確かに描いてもらったけど…。
でもアレって、俺の要素がないような?
名前は入っていたけど。
いや、貰ったのはもの凄く嬉しいし
今でも特別な宝物だし大切に飾っているけど。


「でも、かめに描いた絵はかめそっくりなんでしょ?」
後輩に贈った絵は何ヶ月もかけてその後輩の写真を
見ながら描いた絵だという。
後輩ソックリの大きな水彩画。
“自分にもそういう絵も描いて欲しい”


「まあね」
智くんはそう言って何でもない事のように答えた。
でもその絵を描いた時、何ヶ月もその彼の写真を見ながら描いていたから
しまいには彼女みたいな感覚になっていたと聞いている。


そういう状態も、そういう絵を描いてもらえるのも
何だか凄く羨ましいんですけど。
「俺にもそういう絵、描いて?」
そう思いながらおねだりしてみる。


「うーん。そのうちね」
こちらの気持ちを知ってか知らずか智くんはあっさりそう答える。
「さては、そう言って軽く流す気でしょ?」
智くんの考えていることは丸分かりなんだよね。


「……。」
智くんはびっくりして言葉が出ないって顔をする。
「ふふっ。何で分かったのって顔してる」
収録の時もそう言ってたし、何よりずっと一緒にいるから分かるんだよね〜。


「えへへ、まあね。」
……認めちゃってるし。
「でもほんと時間のある時でいいから。ね?」
まあ、いつになるか分からないけど
取り敢えずお願いだけはしておこうと思ってそう言っておいた。



「そう言えば、翔くんかめとデートしてたんだって?」
智くんは突然思い出したようにそう言う。
「え? ああ昔ね。大昔」
そう言えば同じ収録でそんな話もしたっけ、と思いながら答える。


「聞いてない」
智くんはちょっと怒ったようにそう言った。
「え? もしかして怒ってる? それって嫉妬…とか?」
嬉しくなってそう言うと
「する訳ないじゃん、バカじゃないの?」
そう言ってツーンと横を向いてしまう。


「じゃあ何で機嫌悪いの?」
ますます嬉しくなって調子に乗ってそう言うと
「悪くなんてねえよ。何言ってんの。もう二度と絵なんて描いてあげない」
そうな事を言い出すから慌てて謝った。


「翔くんキライ」
そう言ったかと思うと智くんはぐるりと身体を動かし
ソファの背もたれの方を向いてしまう。


「ごめんってば。お願いだからこっち向いて?
嫌いとか絵描かないなんて言わないで?」
肩に手をやってこちら側に戻そうとするが
背もたれにしがみついたまま動こうとしない。


「イヤッ」

「イヤッて。 ね、お願いだから機嫌直して? 何でもするから」

肩に手をかけたままそう言って謝ると智くんの身体がゆっくりと動いた。


「何でも?」

智くんは振り向くとニヤリと小悪魔のように笑う。


「いや、まあ」

「何でもって言ったよね?」

相変わらず小悪魔みたいな顔して嬉しそうにそう言った。


「言ったけど…、例えば何?」

「うーん。今はちょっと考えつかないや。考えとく」

覚悟しててねって顔をしたかと思ったら
顔がゆっくり近づいてきてちゅっと唇にキスをする。
顔を見ると智くんはえへへって感じで笑う。


“もう可愛すぎるから”
怒ってたんじゃなかったの?
そう思いながらその唇にキスをすると
その動きに合わせて軽く口が開かれる。
そのまま深い深いキスをする。


“やっぱりこの人にはかなわないや”
そう思いながら唇をゆっくり離すと目と目が合う。
そのまま角度を変えながら触れるだけのキスをする。


“まあ、絵を描いてもらえなくても、こうしていられるだけで十分か”
その綺麗な顔を見ると、ん?って顔をして真っ直ぐな目で見つめられる。


「智くん、好きだよ」
そう言ってその身体をぎゅっと抱きしめた。

いつか part5

2013-05-21 16:29:25 | いつか






それは一瞬の出来事だった。




そろそろ帰ろうかと席を立ち出ようとした、その瞬間。


腕を引っ張られたので“ん?”と振り向いた、一瞬だった。


智のその綺麗な顔が近づいてきたかと思ったら


ちゅっと唇にキスされた。




それはほんの一瞬で、最初何が起こったか理解出来なかった。
だけど唇には柔らかな感触が残っていて
驚いて智を見ると智はにっこりと妖艶に微笑んだ。



“え? 今、何を?”


そう我に返った時には既に智は部屋から出ていこうとしていた。


もしかして今キスされた?


ドキドキが止まらない。
でもこちらのドキドキした思いとは裏腹に智は何事もなかったような顔をしていた。


そして店を出ると、翔くんはサラリーマンだから土、日が休みだよね?
と智はやっぱり何事もなかったような顔をしてそう聞いてきた。
そして自分は休みが不規則で分からないからまた連絡すると
そう言ってタクシーに乗り込むとそのまま行ってしまった。


その姿を呆然としながら見つめた。












そしてまた翌日からいつものように仕事から帰ると、
智の出ているDVDやテレビを眺める日々を過ごす日々が続いた。


DVDでの智はキラキラしていて、たくさんのファンの声援を浴びていた。
その声援に応えるように智は手を振ったり笑顔を見せている。
ここにいるファンの子達が羨ましいなと思った。


それは自分の知らない智をずっと見てきた事への羨ましさなのか
あのダンスや歌声を実際に目にしている事への羨ましさなのか
声援に応じ笑顔を向けられているのがただ単に羨ましいのか
自分でもよく分からなかった。


本当にこの人と一緒にいたんだっけ、
そしてご飯を一緒に食べたんだっけ、と
智を画面で見るたびに不思議な気持ちになった。


そして… 


キスも…。


やはりとても信じられない、とその姿を見つめた。
ただ、あいばっていう人とも頬とはいえキスしてたから
自分が考えるより智にとってはそれは特別な事ではなかったのかも知れないとも思った。


それでも何日もたった今でもあの唇の感触は残っていて
画面でその顔を見るたびにドキドキした。
そしてまたあの綺麗な顔をもっと見たいと。そして、逢いたいと思った。









逢いたくて


逢いたくて、


もう限界だと、そう思った時、智から連絡が入った。
律儀に前回、自分のせいでお墓参りができなかったから今回は自分が付き合うと言う。
そんな事気にしなくてもいいのにとも思ったけど、わかったと伝える。
ただ逢えるだけで理由は何でもよかった。


そして約束の日。


智は既に到着していてキャップを目深にかぶってそこにいた。
そこにいる智は画面から溢れ出るキラキラなオーラを見事に消していた。
土曜でいつもより訪れている人も多かったけど誰もその存在に気づかない。


そして自分の存在に気づくとニコッと可愛らしい顔で笑った。
その笑顔を見てずっとどんな顔をして逢えば、と悩んでいたのにその心配は直ぐに消えた。
そしてやっと逢えたのだと実感し、嬉しくなった。


笑った顔はやけに可愛らしくてやっぱりアイドルなんだと感心する。
歌やダンスもそうだけどこの笑顔を見るとあれだけのファンが夢中になるのが分かるような気がした。


そしてお墓の前に立つと一緒に手を合わせた。
その姿を横目で見ながらやっぱり可愛い顔をしていると思った。
そしてそれが終わるとちょっと行ってくるね、と言って一人であの場所に向かった。


その様子を盗み見る。
そこに佇む智はやっぱり儚げで綺麗で初めて逢った日の事を思い出した。


早く智のそばに行きたくて早々と自分のを済ますと智に近づいていく。
気配に気づいた智はゆっくりと顔を上げた。そしてニッコリと笑った。
やっぱり可愛い顔をしているなと思う。














「どんな人だったの?」

「……」


そこには男の人の名前が刻まれている。
智は質問には答えず無言のまま正面を見続けていた。


「あ、ごめん。言いたくなかったら言わなくていいから」

「……んとねぇ、犬?」


言いたくないのかも知れないと、慌ててそう言うと
智はちょっと考えるような顔をしてそう言った。



“疑問形だし”


「犬?」

「うん、犬。柴犬」

「柴犬?」

「うん、そう。柴犬」


智は満足そうにそう言うと、んふふっと笑った。
その顔があまりにも可愛くてついつられて笑ってしまう。


“可愛いけど全然意味がわからないよー”


でもこれ以上聞いても求めている回答はとても得られないだろうと聞くことを諦めた。
そしてお墓参りが終わると、ここから翔くんの家って近いんでしょ、と智が聞いてきた。
だから歩いて10分位だよと答えると智が行ってみたいと言った。


オーラを消してるとは言え人目につきたくないんだろう。
じゃあ家で飲みますかと聞くと智は嬉しそうに笑った。











“自分の家に智がくる?”


自分で言っておきながらとても信じられない気持ちだった。


そして智と一緒に歩いていると自分との身長差が丁度恋人同士のようで
まるでデートしているみたいだと思った。


男の人相手に一体何考えてるんだと、自分の思いに苦笑いをした。
そして部屋の前につくと智が表紙の雑誌やらDVDが出っぱなしだった事を思い出し
ちょっと待ってほしいと言って慌てて部屋に入り押し入れに突っ込んだ。


何も知らない智は別に散らかってても気にしないのに、と笑った。
そして部屋に入ると、翔くんの部屋だぁと言って嬉しそうな顔をする。
可愛いな。もう、自分でも何度呟いたかわからないくらいつぶやいた言葉を心の中で呟く。










智と自分の部屋で過ごす、ゆっくりとした時間。


でも。


智との時間はゆっくり流れているようでいて
それでいて不思議な事にあっという間に時間は過ぎていく。


そんな中、時折見せる智の何か言いたげな視線を何度も感じたけど智は何も言わなかった。
そして自分も何も言わなかった。


11時になると智がもう帰らなくてはと立ち上がった。
もっと一緒にいたかったけど智にも用事があるのだろう、
途中まで送るからと一緒に立ち上がると智はその綺麗な顔をゆっくりと上げ上目遣いで見た。


“その顔は反則だから〜”


そんな綺麗な顔で、しかもそんな目で見つめられるとあの時のキスをどうしても思い出してしまう。


思わずその唇にキスしてしまいたくなる衝動を何とか抑えた。


そしてなぜか智は綺麗な顔を向けたまま何か言いたげな表情で見つめてくる。





その視線に何も言えなくなった。





いつか part4

2013-05-14 20:52:21 | いつか





ゆっくりとした時間が流れる。




それは今まで味わったことのない、とても心地よい時間。






その人は、あのダンスを踊っていた人とは本当は別人ではないのかと
そう疑ってしまいたくなる位、のんびりしていて
こんなんでよくあんな速い動きのダンスが踊れるものだと感心さえしてしまう。


そしてずっと逢いたいと願っていたこの人と、
テレビでしかもう見る事はないだろうと諦めていたこの人と、
今、こうして一緒にいてご飯を食べている事を凄く不思議に思う。


その食べる動作一つ一つを見ても、箸使いや手の運び方といい
どこか上品で普通の人とはやっぱり違うと
つい見とれていると智は、なあに?という顔で真っ直ぐな目で見た。


その顔が本当に綺麗で、そしてその真っ直ぐな視線に
気恥かしくなってつい何でもない、と言って目をそらす。
自分の顔が紅潮したのを感じて、とても顔を真正面から見る事ができなかった。











あの後、お墓参りの話は聞いてはいけない事を聞いてしまったのでは
思い出したくない話を思い出させてしまったのでは
と頭の中が真っ白になったけど、
本人はあまり気にしていないようで気にしないで、と笑った。


ならば、と本当はもっと深くも聞いてみたかったけど
知り合ったばかりで不躾な気がしてそれもできずにいた。


ただ。


墓石に書かれてたのは男の名前だったな、と


ぼんやり思っていた。









そして、そう言えば自己紹介してなかったね、と言いながら
お互いの名前を言いあったりした。
もっとも名前なんて既に知りすぎる位知ってたけど
そんな事を言うのも何だか照れくさくて初めて聞いたような顔をして聞いた。


そして大野さんって話しかけたら智でいいよって可愛らしい顔で言ったから
その顔は反則だろうと思いながらも、じゃあ俺のことは翔って呼んで、と
言うと智はなぜか翔くんと呼んだのでこちらも智くんと呼ぶ事にした。











智はあまり芸能人ぽくない人だなと思う。


いや、芸能人のことはよく分からないけど、
でも自分が思っていた芸能人像とはかなりかけ離れている気がする。
無邪気で自然体。
そして気取った所がない。
不思議な存在。





最初に智を見た時から気になる存在ではあったけど



自分の中でますます智への思いが強くなっていく事を感じていた。











「大ちゃん〜いたぁ」


静かで、ゆっくりとした時間を二人で過ごしていたら
急に周りがざわつき始める。
そして突然自分たちのいる個室の扉が開いたと思ったら
一人の男性が智に近づき後ろから抱きついた。


うわっこの人、智に抱きついてるっ


「あれぇ、どうしたの?」


何事? と思いながらドキドキしていると
智は特に抱きつかれても気にする風でもなく
普通に抱きつかれたまま会話していた。


「さっき仕事終わってさ、ここに来たら店員さんに
おおちゃん来てるよって言われたから逢いに来ちゃったぁ」


そう言ってその男は嬉しそうに横から顔を出すと
智のほっぺにブチュ〜とキスをした。


うわぁ抱きついたと思ったら今度はこの人ちゅーしてるっ。
目の前で繰り広げられる出来事に呆然と見つめる。


「ほらほら、あいばちゃん。翔くんがびっくりしちゃってるから」


智はこちらに気遣いながら、その顔を引き離そうとしている。









って、あいば?


たしかこの人、智と同じ事務所のあいば まさきっていう人だ。
仲がいいってどこかに書いてあったのを見た気がする。
っていうか、仲がいいからって、抱きついたりチューしたりは普通にある事なのか?


そんな事を思っていたら


「ん? あれいたの? この方どなた?」


相葉っていう人がびっくりした顔でそう言った。
いや、さっきから目の前にずっといましたけど。
そう思いながらも、まさか気付いていなかったとは。
天然と書いてあったのを読んだ事があるけど、どれだけ天然さんなんだと思った。


「櫻井さんと言って、さっきそこで意気投合して一緒にご飯食べてたの。ね?」

「ああ、そうなんです」


智はそう言って、可愛らしい顔でこちらを見たのでそうだと返事をする。


「ふーんそうなんだ。おれ、あいば まさき。よろしくね」


相葉さんは、そう言ってアイドルスマイルを向け自己紹介をしてくれた。
結構イイヤツかも、と思った。











「でもおおちゃん。そこでって、またなの〜?」


って、今、またって言った?
その言葉に自分が少し特別な存在なのかと思っていたから
少し残念な気持ちになる。


「まあそんな事はいいじゃん。それより一緒の人待ってるんでしょ?もう行ったほうがいいんじゃない?」

「やっべそうだった。じゃあおおちゃんまたね、櫻井さんもまたね」


そうまた相葉さんはアイドルスマイルを浮かべ嵐のごとく去っていった。


「……」

「……」


でも、またってどういう事だろう?
しかもよくあるって?
それに、相葉っていう人とは一体どういう関係なんだろう?
抱きついたり頬とは言えチューしたり。
まさか付き合ってる訳じゃないよね?


「翔くんむずかしい顔してる」


そんな事を考えていたら智が不思議そうな顔で聞いてきた。


「あ、ごめん。何でもない。ちょっと、びっくりしただけ」

「そうだよねぇ、ごめんね何だか慌ただしくしちゃって。
それよりそろそろ帰る? ハンカチは今度でいい?」

「ああ、もちろん」


智が申し訳なさそうな顔でそう言った。
もう帰らなくてはいけないのかと一抹の寂しさを覚えると同時に
今度、との言葉にまた逢えるのだと思ったら嬉しかった。












そして帰る支度をし個室から出ようとした、その時。



突然、智が腕を掴んだ。



何だろうと、ん? と振り向いた、瞬間。





突然、唇にキスされた。







いつか part3

2013-05-07 17:32:51 | いつか





その人は雨の中、傘もささずにいた。





“これがオーラってやつか”


遠目で見ても凛とした美しさを感じる。
不思議とそこだけ空気が違って見えて
やっぱり芸能人なんだなと改めて思う。



近づいていっていいのかと迷いながらも、音を立てないように歩く。
そして雨がその人にあたらないようにそっと傘をかざした。


気配に気づいたのかその人はゆっくりその綺麗な顔をあげる。


儚げで、美しい顔。



“やっぱり綺麗な顔をしている”


テレビやDVD、雑誌等で見飽きる位、その顔を見てきたが
実際目の当たりにするとその美しさは半端ない。


よく見るとその瞳は泣いていたのか赤く潤んでいる。
でもそれが一層その人を儚く見えた。
ダンスをしている時のその人とはとても同一人物とは思えないその儚げな佇まい。


守ってあげたい、と


何故かそう思った。








あれ程までに会いたかった人が目の前にいる。
もうテレビや雑誌でしか見る事はないだろうと
諦めていた人がまっすぐな視線で見つめてくる。


その現実に意識がどこか遠くに行ってしまいそうだ。









「……濡れます よ」

「……ホントだ」


小雨とはいえ傘をささずにいたせいか
髪や肩は雨で濡れてしまっている。
そのまっすぐな視線にどうかなってしまいそうな
気持ちを抑えながら何とかハンカチを差し出した。


「ありがとう」


その人はゆっくり手を差し出しニッコリと微笑むとハンカチを受け取った。


“…可愛い”


さっきまで儚げな感じに見えていたのに
ニッコリと微笑む姿は儚げな感じから一転、
途端に可愛らしい顔に見えてくるから不思議だ。


「雨も降ってる事だし、よかったらタクシーが拾えるところまでお送りしますよ」

「……え? お参りはいいの?」


とてもこのまま放ってはおけなかった。
いや、違う。もう二度とこんなチャンスは無い。
このチャンスを逃す手はなかった


「うち近くてしょっちゅう来れるから、別に今日じゃなくてもいいんです」

「そうなんだ〜」


素直というか何というか。そういうところも可愛らしい人だなと思う。
そして芸能人とは思えないその無防備な言動に不安を覚えながらも
一緒に片付けを終えるとタクシーが拾えるところまで歩いた。


一緒に歩いているとその人の華奢さを感じる。
ますます守ってあげたいという気持ちが湧き上がる。










「今日… あいてる?」

「……え?」


タクシーが拾えそうな所まで来てどうしようかと思っていたら
その人が消えそうな声で信じられない言葉を言った。


「…ううん、何でもない」

「あいてますあいてます暇です」


聞き間違え?


まさかそんなこと言うはずはない。
そう思いながらも、もしかしたらと慌ててそう答えると
その必死さが余程可笑しかったのかその人はクスクスと可笑しそうに笑った。


「そしたら近くに知ってる所があるからごはんでもって思って。これのお礼」


そう言って、さっき渡したハンカチをぴらぴらとさせた。


めちゃめちゃ可愛いじゃねえか。
いやそんな事を言ってる場合じゃない。


この展開、マジか?
いいのか、マジで?
信じられなかった。








頭の中でぐるぐる考えている間にあっという間に目的地に到着する。
そこは隠れ家と言ってもいいような個室がある料理店だった。


芸能人だから当たり前か。


そう思いながらきょろきょろと周りを物珍しく見ていたら
すぐに人目のつかない個室に案内された。












「……」

「……」

「あの…今日はどなたのだったのですか?」

「……え?」

「あの、お墓参り」


歩いたりタクシーに乗っている時から感じていた事だが
この人は自分から誘った割にはあまり積極的に話をするタイプではないようだ。


「んーとね、 コイビトだった人」

「……え?」

「あ、違う、コイビトになる前に亡くなっちゃったんだった」


恋人?
亡くなった?


その無邪気に笑うその人と、思っていた以上にハードな内容とのギャップに
何も言えず頭の中が真っ白になった。