そこに映っている智くんは
切なくなるくらい美しくて
そして可憐で
何だかわからないけど
それを見ていたら胸が苦しくなった。
少し前に貰っていた2013年の国立の映像。
忙しくて全然見れてなかった。
おもむろにセットし
ぼんやりとその映像を眺める。
そこには自分たち最後の国立の映像が映っている。
それを見ながら
あの時はあんな風だったっけね、とか
あの場面ではあんな事があったよね、とか
あん時はこんな事を考えていたんだっけ、とか
そんな事を思いながら軽く流しつつ見つめる。
そしてあの時の
音、風、香り
国立競技場という一種独特の空気
だんだん色を変えていく風景
ファンの歓声
そしてメンバーの姿、声、表情
曲、歌、ダンスを
思い出す。
松潤はこの時こんな髪型だったっけ?
相葉ちゃんは相変わらず一生懸命で可愛いね。
にのは~なんて事を思いながらグラスを傾ける。
そして、智くんは
この時の智くんはいつもにも増して美しくて可憐で。
そしてソロパートの声は相変わらずクセのない綺麗な歌声で
心をこめて歌っていてそれが凄く綺麗だった。
そしてダンスナンバーは、これはいつになく
一生懸命踊ったつもりだったのに
こうして改めて見るとやっぱり智くんとの差は歴然で。
相変わらずキレキレのダンスは体重を全く感じさせない
軽やかな動きでつい見惚れてしまう。
リハでも何度もやってきたし実際コンサートもやったけど
こうして改めて画面越しに見ると見えていなかった部分が
よく見えるしよく分かる。
そしてニュースやWSなど断片的にではなく
こうして通して見るとまた違った感じを受ける。
そして智くんのソロ。
そこには同じステージなのに
いつもと違う智くんがいる。
それはソロではいつも感じることだけど
やっぱりそう思ってしまう自分がいる。
Take me farawayは以前にも披露したことがある曲で
あの時も美しくて可憐だったけど今回はまた違う。
今回はいつもにも増して大人の色気を感じる美しさと
そして情感が込められていて見ているものすべてを魅了していた。
いつもあんな猫背なのが信じられないくらい
とても美しい姿で移動していく智くん。
そしてダンスの時のあの足さばき。
手の動きもそうだけどあの足は一体どうなっているんだろうね?
いつも一緒にいるのに
ここにいるのはいつもの智くんとは別の人。
智くんだけど、智くんじゃない。
智くんには違いないけど、でもいつも見ている智くんとは違う人。
不思議なんだけど
ソロじゃないときはあまりそう思わないのに
ソロの時は何だか妙に美しくて艶やかで色気があって
そんな智くんを見ていたら胸が苦しくなった。
そんな時、お風呂からちょうど出てきた智くんが
頭を拭きながらあ~いい湯だったなんて言いながら
ヨイショとソファに座る。
その姿をつい見つめると智くんは、なあにって
不思議そうな顔をして見つめ返してくる。
そしてTV画面に気づいたのかそちらを見た。
「これ、こないだの国立?」
「そう」
智くんは風呂上がりのせいかやや頬を紅潮させ聞いてくる。
やっぱ、何か違うんだよね。
「何かさ、このソロの智くんと普段の智くん全然違うよね?」
「そっかな?」
普段の智くんはふんわりしていて綺麗というより
可愛らしい感じというイメージの方が強い。
「うん、そう。凄く色気もあるし」
「ええ? 色気?」
そう言うと智くんはびっくりしたような顔をする。
「そう」
「ん~それはバックダンサーのお姉さんが色っぽいからじゃん?」
「いやまあダンサーのお姉さんも色っぽいけど、さ」
智くんはバックダンサーの方のせいだと思っているらしいけど
そうじゃない。
智くん自体が凄く艶やかで綺麗でいつもの智くんじゃないように思う。
「何かこないだ相葉ちゃんのテレビで言ってたけど
テレビで見ると本人と何か違うって話してたじゃん。
何かそれなんだよね」
「んふふっ、そっかな?」
「うん、そう」
「でも翔ちゃんもいい笑顔たくさんしてたよ。
イケメンだったし」
「ええ? そう? それよりもう見たの?」
智くんが既に見ているなんて意外すぎる。
そう思いながら聞き返す。
「ん~ちょっとだけだけど」
「ああ、そうなんだ」
「それに、色っぽいといえば
翔くんのソロの後の顔も色っぽかったよ」
「ええ? そうなの?」
「うん。ああ、この後じゃん?」
そう言って智くんはリモコンを持つと画面を送る
「ほらこの時の翔くん。
髪の毛かきあげてて、それが何だか色っぽくてかっこいいんだよねぇ」
「えー全然気付かなかった」
「んふふっ」
「じゃあ、今日はこれ見ながら飲みますか?」
「え~?」
「何その嫌そうな顔」
「えへへっ」
そう言って笑う智くんの顔は無邪気で可愛らしくて
やっぱりあの色気のある智くんと同一人物とはとても思えない。
「何か贅沢だねえ」
「ん~?」
智くんは映像を見ながら小さく呟く。
「ここに映ってる人と一緒にこうして一緒にいるなんて」
そう言って、可愛らしくんふふっと笑う
「それはお互い様でしょ?」
「そうなんだけどさ、何か不思議で」
確かに不思議な気分ではある。
さっきまで見ているだけで胸が苦しかったのに
その当人が隣にいる。
手を伸ばしていって、ぎゅっとその手を握ると
智くんはこちらの顔を見て、ん?って顔をする。
智くんは拒否する感じもなくそのまま繋がれたままでいる。
だからしばらく手をつないだままコンサート映像を見る。
そしてそれを見ながらお互いこん時はああだったね、とか
こうだったね、とか時々思い出したように話す。
そして時々隣にいる智くんの顔を見て
ここにいる人がこの人なんだなあって
わけもなく感心したりその顔を見つめたり。
そしてさっきまで胸が苦しかったのに智くんに触れて
顔を見つめてほっと安心する。
「智くん、好き」
テレビ画面を見ながらそう言うと
智くんは、ん?って顔をして見つめてくる。
「普段の智くんも、ステージにいる智くんも
どの智くんもやっぱ好きだわ」
「んふふっ変なの」
そう言って智くんはクスクスと笑う。
「さっきさ、智くんのソロ見てて苦しかったんだ。
切ないというか。
で、なんだろうってずっと考えてて、今わかった」
「……?」
「俺、智くんの事好きすぎんだわ」
智くんはきょとんとした顔をして見つめている。
そしてクスクス笑いだした。
「ん?」
「知ってるよ」
なんだろうと思いながらその顔を見つめると
智くんはそう言って可愛らしく笑う。
「そっか」
「うん」
「そうだよね」
「うん」
そう言ってお互い視線が合うとニッと笑う。
そしてそのまま顔を近づけていってちゅっとキスをする。
唇を離すとその綺麗な顔を至近距離で見つめる。
智くんは照れくさいのか目線を落とす。
その少し目を伏せた感じがまた綺麗で可愛らしくて
思わず角度を変えてもう一度ちゅっとキスをすると
そのまま深いキスをした。