yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

山 短編5(後編)

2013-11-19 18:04:16 | 短編


「……え?」


智の言った意味が理解できず呆然とその顔を見つめる。


「俺は翔くんの事、中三の時から知ってた」

「中三?」

「そう。ここの学校説明会で翔くんは一番前の席で熱心にメモとってた」

「……学校説明会」


そう言えばそんな事もあったっけ? と記憶を手繰り寄せる。
あの時はこの学校の事や受験勉強の事しか考えてなくて
周りを全く見ていなかった。
でも智は見ていてくれたのか。


「で、次に翔くんを見たのは入学式。
翔くんは、新入生代表で何か読んでた」


確かに入学式の日、新入生代表としてステージに上がった。
その時は不安と緊張で全く余裕がなくほとんどその時の事は
憶えていない。


「俺、本当はここ無理って言われてたんだ。
だけど説明会で翔くんを見かけて一緒の学校に通いたくって
死ぬ物狂いで勉強したんだ。
だから翔くんを入学式の日に見つけた時凄く嬉しかった」


そんな前から自分のことを思っていてくれた事にびっくりする。


「でも翔くんは毎日凄く忙しそうで、
同じ学校に通ってても何だか違う世界の人みたいだった。
だからホント毎日見ているだけだったんだ」

「……そうだったんだ」


全然知らなかった。


「そう。だから翔くんの方から声かけてくれた時凄く嬉しかったんだよね。
あまりにもびっくりして変な顔になっちゃったけど」


確かに智に話しかけた時、怪訝な顔をされた。
だからこんな風に思っていてくれていたなんて思いもしなかった。


でも自分も同じようなものだ。
智の存在を知ったのは智よりも随分後だったかも知れないけど
智のその才能を知るたびに自分とは別世界の人だと思っていた。


「ふふっ」

「……?」


お互い同じように相手を思い考えていたことに思わず笑ってしまう。
智は意味が分からないって顔で不思議そうな顔をして見つめてくる。


「いや俺も智くんの事、別世界の人だと思ってたから」

「……え?」

「だってさ絵とかの芸術的才能凄いじゃん。
そう言えばあの描いてもらった挿絵も凄く好評で
先生方からも大絶賛されていたんだよ?」

「そうなの?」

「うん、かなりね」


そう説明すると智は意外そうな表情を見せる。


「それに字も上手いし、器械体操も凄いし。
ダンスの技術も高くてしかもあらゆるジャンルのダンスを
こなせるからってダンス部から
一緒に踊って欲しいと頼まれたりもしているんでしょ?」

「まぁね」

「しかも歌も上手だって聞いているよ」

「んふふっ。よく俺の事知ってるね?」

「ふふっ」


それはもう徹底的にリサーチしましたから、とはいえず曖昧に微笑むと
智はびっくりした表情を浮かべながらも照れくさそうに笑った。
そしてお互いに目が合うとまた笑い合った。


「……でも」

「ん?」


智は少し考えるような表情になると、でも、と言った。


「でも、翔くんの気持ちがいまいち分かんなくて」

「俺の気持ち?」

「そう。俺が生徒会室に遊びに行くと喜んでくれるけど
でもそれがどういう気持ちからなのかがわかんなくて ね」

「うん?」

「だから、寝たふりしてみた」


そう言うと智は可愛らしい顔で笑った。


「えぇ? 寝たふりだったの?」

「そう。上手だった?」

「うん。って、えぇ?」


じゃあずっと智は何をされているのか知っていたのか。
自分の行動を思い返し恥ずかしくなって
思わず顔が真っ赤になったのが分かった。


「……ね?」

「うん?」

「翔くんは俺の事好き?」


智はまっすぐな視線を向けるとそう聞いてきた。


「……うん。好きだ」

「よかった。俺も」


好きだと答えると智も自分もだと言った。
そしてお互い見つめ合うととにっと笑った。








「ね、翔さん。あの人とうまくいってるんだって?」

「え? イヤ、まあ」


廊下を歩いているとニノがそう言って声をかけてきた。
ニノにくぎをさされていた手前曖昧に答える。


「ちぇっ、俺が先に見つけたのになぁ」

「ごめん」


思わず謝る。


「まぁ、この借りはきっちり返してもらいますけどね」

「ホント申し訳ない」


そう言って謝るとニノはそう言ってにやりと笑う。


「まぁ、いいいんですけどね」

「……?」

「あの人がずっと翔さんの事見てたのは知ってましたから」

「え? そうなの?」

「はい。翔さんはまーーったく気づいていませんでしたけど」

「……」


自分だけが気づいていなかっただけだったのか。


「だから、あの人のために教えてあげたんです」

「……」


もしかして自分は鈍感なのだろうか?


「翔さんって意外と鈍感ですよね」

「……」


そんな事を思っていたらニノがそのものずばりで言ってきた。


「でもまぁ、こんなにうまくいくとは思いませんでしたけど ね」

「……ニノはよかったの?」

「俺は前に振られているんです。好きな人がいるって」

「それって」

「そう、翔さんの事ですよ」

「……全然知らなかった」

「ホント鈍感ですよね」

「……」


……また鈍感だと言われた。


「翔さんって自分にないものを持っている人に惹かれる人でしょ?」

「……え?」

「智と翔さんはお互い持っているものが全然違うから
絶対惹かれあうじゃないかと思ってたんですよね」

「……」

「ただ、あなたがこんなにも鈍感だとは思いませんでした」

「鈍感、鈍感って」


ニノは遠慮なくそう言ってくる。


「だってそうでしょ?」

「まぁ、そうかも知れないけどさ」

「ふふ」

「でもにの、ありがとう」

「いえいえ。俺は智が好きだから
智に幸せになってもらいたかっただけです。
それに、あまりにも鈍感で気づかれない智が可愛そうだった
というのもあります」

「また、鈍感って」

「でもそうでしょ?」

「まぁ、そうだけどさぁ」

「でも」

「……?」

「でもこの借りはきっちりと返してもらいますからね」


ニノはそう言ってにっこりと笑うとじゃあと行ってしまった。









今日も智は生徒会室にやってくる。


智は相変わらずお絵かきソフトで絵を描いたり勉強したり
自由に過ごしている。


思わずパソコンに向かっている智の顔が可愛くて
ちゅっと吸い寄せられるようにその唇に軽くキスをする。
智はびっくりしてパソコン画面から目を離す。


「翔くんがこんなキス魔だったなんて知らなかったなぁ」


そう言って可愛らしい顔で照れくさそうに笑う。


「ふふっ。俺も知らなかった」

「んふふっ。変なの」


智の顔を見ているとその唇に触れたくなる。
その唇にちゅっとキスしたくなる。

いつまでもクスクス笑っている智が可愛くて
またちゅっとキスをした。

「また~」

「ふふっ。いいでしょ?」

「いいけど さ」


智はそう言ってまた照れくさそうに笑う。


「……智くん、ずっと気づかないでごめんね」


その言葉に智は、ん?って顔をして見つめる。
その顔がやっぱり可愛くてまたその唇にチュッとする。


「また~」

「ふふっ。だって」

「だって、何?」


智はクスクス笑いながらそう聞いてくる。


「だって、したくなっちゃうんだもん」


そう言ってまたその可愛らしい唇にちゅっとキスをした。

山 短編5(中編)

2013-11-16 00:16:56 | 短編



その日も生徒会の仕事で一人残って仕事をしていた。
そこへコンコンとノックをする音が聞こえた。


「はーい」


こんな時間に誰だよ?
そう思いながら扉を開ける。


そこに立っていたのは智だった。


「何 で?」

「あの、こないだ俺に話しかけてきたでしょ?
何か用なのかなって思って」


突然の出来事にうまく話せない。
でも智の方は気にするそぶりもなく
そう言って屈託なく笑いかけてきた。


「憶えていてくれたんだ」

「うん。生徒会長のサクライ ショウくんでしょ?
その人が俺になんか用なのかなってずっと気になっていたんだ」


あの、わずかな時の事を憶えていてくれて
わざわざ生徒会室まで会いに来てくれたんだと思ったら
嬉しくて涙が出そうになった。


そして自分の事を気にしていてくれたこともそうだし
生徒会長だから知ってても当たり前の事なのかもしれないけど
自分の存在を知っててくれた事も嬉しかった。
この日ほど生徒会長をやっててよかったと思った日はない。


「あ、あの、今広報にのせる文面考えているんだけどさ
そこに載せる挿絵みたいの描いてくれないかな、
なんて思って声をかけてみたんだけど」


頭をフル回転させ確か絵が上手で何度も入選していた
事を思い出し思いついた言葉をそのまま言った。


「……う~ん。いいよ」

「そりゃそうだよね、ごめんね突然変な事頼んで」


そりゃそうだよね。
突然そんな事頼んだって断られるに決まってるじゃん、
そう思いながら謝った。


「イヤ、いいよって言ったんだけど」


そう言って智は可愛らしい顔でクスクス笑う。
でも考えてみると、確かにいいよと智は言った。


あまりにも会いたくても会えなかった時間が長かったのと
智ととこうして話す事が出来た事が夢みたいで
自分自身訳が分からくなってしまっていた。
でも確かにいいよと智は言っていた。


「え? マジで? それって今からでもいいの?」

「ふふっ、いいよ。今日特に何もないし」


智はそう言って可愛らしい顔で笑う。


「あの…」

「……?」

「……いつも一緒にいる人たちは?」


それが一番気になる事だった。
けどどう言っていいのか悩んでいたら智が
なあにって顔で見つめてくる。
なので思い切って聞いてみる事にした。


「……? ああ、松潤と相葉ちゃん?
二人とも今日学校休んでいるんだ」

「……? そうなの? 二人ともなんて珍しいね?」

「ふふっ。もともと俺が風邪ひいててそれが二人にうつっちゃったの」

「ふふっ、そうなんだ」


二人が一緒に休むなんて珍しいと思いながら
そう聞くと智はえへへっと照れくさそうに笑った。
その顔があまりにも可愛くてついつられて笑ってしまう。


「すいません、むさくるしいところなんですけど、どうぞどうぞ」


そして智の気が変わらないうちにと
そう言って慌てて生徒会室の中へと案内した。


「ふふっ。翔くんって面白い~」

「……え?」


智はおかしそうにそう言ってクスクス笑う。


でもその言葉に一瞬時が止まったかと思った。 
今、翔くんって言った?


「あ、ごめん生徒会長って呼んだ方がよかった?」

「そんな事ないです。翔くんって呼んでいただけて光栄です」

「ふふっ。面白い~。生徒会長がこんな人だとは思わなかったなぁ」


慌ててブルンブルンと首を振ると智はそう言ってまたクスクスと
可愛らしい顔で笑った。
智の笑顔がこんな近くで見られるなんて。
イヤまさか智とこんな風に話す日がくるなんて夢みたいだ。


そんな事を思っていたら智は生徒会室に入ったのって
初めてと言いながらきょろきょろと可愛らしい顔で
興味深そうに周りを見渡していた。


“可愛すぎる~”


そして一通りパソコンでの絵の描き方を説明すると
おもしれ~と言いながら目をキラキラさせて
夢中になって絵を描いている。


“だから可愛すぎるから”


智はよっぽど面白かったのか絵が仕上がっても
このまま触ってていい?と言って嬉しそうに
夢中でパソコンソフトを使って絵を描いている。
その姿を飽きることなく眺めていた。


「そろそろ暗くなってきたし帰ろっか?」

「うわぁ、もうこんな時間」


智は夢中になっていたせいか時計を見てびっくりしている。
自分としてもこのまま智の姿をずっと眺めていたかったが
痴漢に遭遇した事もあるという話も聞いていたので残念だが今日は帰ることにした。
遅い時間ではなかったけどやっぱり智の事が心配だったので
送ると言ったが智は大丈夫だと頑として譲らずその日はそのまま別れた。








その後もなぜか嬉しい事に智はたびたび生徒会室にやってきた。


生徒会室は生徒会での大きなイベントがない限りは閑散としている。


でも智はなぜか生徒会室が気に入ったようで
お絵かきソフトで遊んだり勉強したり自由に過ごしていた。
そしてその姿を見ながら生徒会の仕事をしたり
智の勉強を見る事が日常になっていた。


「二人、心配してない?」


あれほどずっと一緒にいたのに大丈夫なのだろうかと心配で聞くと
大丈夫と智はにっこり笑う。
智がどう説明しているのかは分からなかったけど
いつも一緒の二人が智が生徒会室に来るときは二人の姿はなかった。









今日も智が来てくれたらいいなと思いながら生徒会室に行く。
部屋に入るといつもと何か様子が違う事に気づく。


「智くん?」

「……」


部屋にはすでに智の姿があった。
でも声をかけても智からの返事はない。
智のそばによると智は机にうつ伏して眠っていた。


顔を近づけていってその顔を見つめる。
いつも可愛らしい顔をしていると思っていたが改めて見てみると
とても綺麗な顔立ちをしている。


ゆっくりと手を伸ばすとその長い睫毛に触れる。
智は目を閉じたまま微動だにせず相変わらず
すぅすぅと寝息を立てている。


思わず手をその唇にもっていく。
そしてその整った唇になぞるようにふれた。


「……智くん」

「……」


唇に触れたまま智の名を呼んでみる。
でも智は目を閉じたまま。
唇から指を離すとまたその綺麗な顔を眺める。
智は起きる気配がない。


そのままゆっくりと顔を近づけていって
吸い寄せられるようにその唇に自分の唇をあてた。
その瞬間、智が目をぱちっと開ける。


慌てて離れる。
智はゆっくり身体を起き上がせると無言のまま
じっとこちらの顔を見た。


「ご、ごめん」

「……何で?」


すぐに謝った。
智はなぜか不満そうな顔をして何で? と聞いてくる。


「イヤだって俺、今、ごめん」

「何でごめんなの?」


智は相変わらず不満そうな表情を浮かべたまま
何でごめんなの? と聞いてくる。


「だって、、」

「俺、嫌じゃなかったよ」


何と言っていいか分からず言葉に詰まっていると
智は不満そうな表情を浮かべたまま思いもかけない言葉を言った。


「……え?」

「っていうか、嬉しかった」

「……え?」


智から思いがけない言葉を言われて
やっぱり何と言っていいか分からず言葉に詰まる。
今、嬉しかったって言った?


「翔くんの気持ちよく分かんなかったから」

「……え?」


その後も智は思ってもみない言葉を続ける。


「ね、翔くん?]

「……はい」


智は名前を呼ぶとまっすぐな視線でこちらを見る。


「翔くん俺の事知らなかったでしょ?」

「……?」


意味が分からずその顔を無言で眺める。


「俺、翔くんの事入学する前からずっと知ってた」


山 短編5(前編)

2013-11-15 17:24:51 | 短編


生徒会の仕事と言うのはメインの仕事よりも
つくづく雑用が多い、と思う。




春から2年生となり、昨年に引き続き生徒会の役員になった。
しかも生徒会長。


別に志願したわけではなく
初年度は首席で入学したからその流れで何となくという感じで
そして今年度は、先生に泣きつかれて仕方なくという感じだった。


それ以外にも学生の本分である勉強、そして恋愛、クラブと
忙しいながらも充実した日々を送っていた。
そんなこんなで学校生活は入学した当初から忙しく、
与えられた仕事をこなすのと自分の事で精一杯だった。


だからずっとその人の存在に気づかなかった。







ある日。
生徒会の仕事で放課後残っていたら
体育倉庫に用事があった事を思い出す。
慌てて体育館へ向かうとその入り口には見たことのある人影があった。


「……にの?」

「あ、翔さん」


同じクラスのニノがじっと体育館の中を見つめていたので
思わず声をかける。
ニノはびっくりしながらもこちらを振り返り笑顔を見せた。


「何してたの?」

「え? ああ、見てたんですよ」


何をそんなに真剣に見ていたのかと不思議に思いそう聞くと
ニノは指で差し示し教えてくれた。
その先を見ると体操部がマット練習をしているところが見えた。


「体操部に興味があるの?」

「違います」


ニノが体操に興味があるなんて意外だと思いつつ
そう聞くとニノはすぐに違うと即答した。
じゃあなんで? と思っていたら一人の男の人を指差した。


「あの人、体操部の人じゃないけど
めちゃめちゃ動きが綺麗なんですよ」

「……へえ」


言われてみるとその人だけ制服を着たままの格好だった。


“あんな格好で、できるのかな?”


そう思った瞬間。
その人が走った。
そして手をついたかと思ったら2回ぐるりと回転した。
そして今度はそのまま反対向きから手をついて2回、回転。
そしてそのまま今度は手をつかないで回転したのだ。


「……すげぇ」

「翔さんは出来る?」


あまりの出来事に息をのんで見守っていたら
ニノが出来る?って無邪気な顔で聞いてくる。
だから思いっきり首を振った。
あんな神業、とてもじゃないけどできない。
大きな声では言えないけど側転だってあやしい。


「まぁ、体操部じゃなくても出来る人は出来るんですけどね。
俺もできるし」

そんな事を思っていたら、ニノはそう言って笑った。


「でもあの人のは手や足の先まで神経が行き届いていて
凄く綺麗なんですよ」


そう言われて見てみると体操の事はよく分からないが
他の人たちがやっているのと比べて動きが確かに美しい。
他の人達も確かに体操部なだけあって
手先足先まで神経を配られていて綺麗なんだけど
何かが違うように思えた。


「あの人ってさ、全体的な動きはもちろん綺麗なんだけど
手が凄く綺麗なの」

「……?」

「俺さ、手にコンプレックスがあってさ人並み以上に
人の手って見るんだよね」

「……うん?」


何だかそのまま目が離せなくなり体操部の練習の
見ていたらニノがなぜか手の話をしてきた。


「で、あの人の手って凄く綺麗なの。指も細くて長くてまっすぐで。
で、手先の動きまでもが美しいから余計に綺麗に見えるんだよね」

「……」


ニノが突然そんな事を話してくるから何も言えず
その話に耳を傾ける。


「俺さ、学校の帰りにさ、定期を出そうと思いながら何気なく
前の人の手を見たんだよ。
そしたらその手がやたら綺麗でさ」

「……?」

「で、てっきり女の人の手だと思ってたらあの人の手だったんだ」


なぜニノは突然自分に手の話をしてくるのだろうと思いながら
その顔を眺めた。


「で、それから一気にあの人に興味がわいてさ
色々調べたら結構何でもできる人で絵とかでも何度も入選していたり
体操部じゃないのにこうやって顧問から呼び出されて
披露したりしているのを知ったんだ」

「……へぇ」


ニノの事は中学の時から知っていたけど
こんなに他人に興味を持つなんて珍しいなと思った。


「しかもさ、これがまた可愛い顔してるんだよ」

「……?」


なぜかニノは突然照れたような顔になるとそう言った。
そう言われるまでその人の綺麗な動きに夢中になり
顔を全然見ていなかったことに気が付く。
そして改めてその顔をじっくり見てみるとニノの言った通り
とても可愛らしい顔をしていた。


“あんな可愛らしい顔であんなアクロバティックな事を”


一気に興味がわいた。


「ダメだよ、翔さん。俺が見つけたんだから」

「へ?」

「イヤ、何かただならぬ気配を感じたもので」

「いやいやいや」


ニノには一応そう言ったが
興味が抑えきれないのを自分自身で感じていた。










その日からその人に対する徹底的なリサーチを始める。


その人はニノの言ってた通り何でもできた。
でも決して目立つタイプではなかった。
いや、自ら目立とうとしないタイプと言った方が
正しいかもしれない。


“珍しいタイプだな”


あれだけ何でもできたら普通だったら
自慢したり目立とうとしたりとするだろう。
でも智にはそれがなかった。
その事で余計興味がそそられる。
なんとかその人と接点を持ちたかったがニノがそれは難しいと言っていた。


そしてその意味はすぐに判明する。
なぜならいつも隣にしっかりとした顔立ちのイケメンの男と
人のよさそうな、さわやかボーイが寄り添うようにいたからだ。


またいつもの徹底的リサーチで二人の事を調べ上げる。
二人はそれぞれ松潤、相葉ちゃんと言われる人たちで
中学から智と一緒だったらしい。


智はその可愛らしい顔立ちのせいか
なぜか痴漢に遭遇したりと色々あったようで
それでいつも一緒にいて守っているという事だった。
確かにとても可愛らしい顔立ちをしていたので
それもわかるような気がした。


そしてその頃彼女とも別れた。
自分の中での智に対する興味が彼女に対するそれよりも
圧倒的に大きくなっていたのだ。


その事を彼女に気付かれ詰め寄られ結局別れた。
もともと押し切られるような形で付き合っていたので
不思議なくらいダメージがなかった。
それよりも智とどうしたら近づけるんだろうと
その事で頭の中が一杯だった。









ある日。
この日も生徒会の仕事で放課後残っていた。
広報に載せる文面を考えていたのだがどうにもアイディアが浮かばず
煮詰まってしまい部屋の外にでた。
ふと、廊下の先を見ると見たことがある人影を見つける。


“あれは智?”


珍しく今日は一人のようだ。
思わず駆け出し傍に寄ると声をかける。
近くで見る智の顔はとても幼くそして
とても可愛らしい顔をしていた。


突然話したこともない相手から話しかけられたせいか
智は怪訝そうな顔をする。


「いたいた、おおちゃーん。松潤も待ってるから帰ろ帰ろ」


話をしようとした瞬間、いつも一緒にいる
相葉ちゃんと呼ばれている人が駆け寄ってきて智の手を引く。
智はこちらの事を気にしてくれているような感じだったが
そのまま引っ張られるように行ってしまった。
その姿を呆然と見送る。


「だから言ったでしょ? 難しいって」


呆然と立ち尽くしていたら後ろからそう
ニノが意味深に笑いながら言ってきた。


「ニノ、いつからそこに?」

「えーと翔さんが生徒会室から出た直後からですかね?
で、あの人に話しかけてどうしようとしていたんですか?」

「……」

「まぁ、いいですけど ね」


そう言ってニノはやっぱり意味深に笑いかけると
そのまま行ってしまった。
その姿をやっぱり呆然としたまま見送った。
そしてその姿を見つめながらこれまで以上に
あの人と何とか話がしたい、と強く思った。


この気持ちは一体なんだろう?
自分でも不思議な感覚。


でも願っても願ってもなかなかその願いは実現しなかった。



ありふれた日常 part19(VS嵐 11/7)

2013-11-08 20:19:40 | 山コンビ ありふれた日常


「今日のあれ、凄かったなぁ」

「……?」


ソファに二人で並んで座り
お酒を飲みながらまったりと過ごす時間。
思わず今日収録した番組を思い出しそう呟くと
智くんが不思議そうな顔で見つめた。


「いや、あのクリフクライムさ」

「ああ~。やっぱアスリートの方は違うよねぇ」

「……まあ、ね」


確かにアスリートの方は凄いけどそうじゃない。
相手の方々はそれが本職だしそれに実績もある。
そして日々それ相応の訓練をしている人だ。


普段、特別な訓練や練習をする事無く
毎日自分と同じように忙しく過ごしている智くんが
そのアスリートの方と同じようにできてしまえる事が
純粋に凄いと思った。


あの体力も筋力もそしてセンスも要求されるのぼり方。
あのアスリートの方のやった正面からのぼる方法は
決して誰にでもできる訳ではない。


でもニノも松潤も次にのぼるのが智くんだと分かっていたから。
そしてできてしまえるだろうという確信があるからこそのあの前フリ。


本当はああいう風に面白おかしく言っているけど
あれは絶対的に智くんができるという事が
確信できているからこその前フリだったんだよね。
それだけ信頼されていてそして見事にやり遂げてしまえる
智くんがやっぱり凄いと思った。


しかも軽々とやってしまえているし、ね。
本当は凄い事なのにそう思わせないように
簡単にやってしまえるところがまた凄いところなんだよね。


本当に昔から身体能力が高くて能力とセンスを
兼ねそろえた人だと思っていたけど。
そして何でもできる人だとも思っていたけどやっぱり凄い人。
こんなに食も細くて華奢な身体をしていているのにその力は
どこから湧いてくるんだろう。


「……智くんって本当に何でもできるね?」

「え~? 翔くんの方が何でもできるじゃん」


智くんにそう言うといつもそう言ってくる。


「いや、そんな事ないよ」

「そう?」

「うん、そうだよ」


智くんは意外って顔をする。
本当に自分の凄さを全くわかってない。


「それに、俺は絶対にあんな風にのぼれないよ」

「ふふっ。そうかなぁ?」

「そうだよ、あのあごの部分じゃなくても
普通に上にのぼっていくのだって正直言って微妙だしさ」


そう言って自分自身に苦笑いをすると
智くんはおかしそうに声を出して笑った。


智くんはいつも自分の方ができる人だと言ってくれるけど。
そして世間でもそう思われているけど本当は違う。


確かにキャスターをやってたりして社会面、勉強面では
強いかもしれないけど自分としてはその智くんの
秘められた能力にいつも感心させられている。
きっと智くんにそう言っても大したことじゃないのにって
顔をされてしまうと思うけど、ね。


でも。
いつもその秘められた能力を知るたびに惹かれていく。
もう人生の半分以上一緒に過ごしているというのに
それはとどまるところを知らず今もまだその能力を知るってところが
本当に驚きなんだけど。
その秘められた才能はどこまであって、そしてどこまでいくのだろう。


「その才能を一つ分けてほしいよ」

「え~?」


歌も演技もダンスも
そして絵や字などの芸術面も
そしてその今なお衰えを知らない身体能力も。


本人は何が?って顔をして、え~って言ってるけど
その才能の凄さに気づいていないのは本人と
そして本当の智くんを知らない人だけだよね。
そう思いながら無邪気に笑っている智くんの顔を見つめる。


「翔ちゃん酔ってるの?」


才能を一つ分けてほしいと言った言葉が余程ツボにはまったのか
クスクス笑いながら酔ってるの? なんて可愛らしい顔で聞いてくる。


「まぁね」

「ふふっ。珍しいね~」


そう言って抱きついてきたかと思ったらチュッと頬にキスをして
可愛らしい顔で微笑んできた。


“可愛すぎる”


そう。
たぶん酔ってる。
智くんの才能を知れば知るほど。
その能力にふれればふれるほど。
智くんに酔っている。


そう思いながらその身体を優しく押し倒す。
智くんはまっすぐな視線で上を見上げる。
視線が合うと智くんはふふっと可愛らしい顔で笑う。


「翔ちゃん、酔ってるね~」

「うん、酔ってるよ」


智くんが酔ってるねって可愛らしい顔で言ってきたから
そうだと答えたらふふっと笑う。


そのまま顔を近づけていってちゅっと触れるだけのキスをする。
そしてその綺麗な顔を見つめると智くんが
お酒のにおいがすると言ってまたその可愛らしい顔でふふっと笑った。


だから智くんもね、と言ってお互い見つめあったまま笑いあう。
そしてゆっくりと唇に唇を重ねると智くんの腕が背中に回ってくる。


そう。
酔っている。
智くんと出会ってからずっと
智くんに酔っている。
そう思いながらそのまま深いキスをした。