大変珍しいのですが、岩手大学の旧高等農林正門門番所が公開されています。
岩手大学ミュージアム10周年記念事業の一環として、教育学部・教科教育専攻の美術コースの学生、平たくいえば修士課程の彫塑・染色の学生の作品が展示されています。
この建物の公開は、多分今回が初めてとなります。実はこの建物と旧正門、それに続く盛り土のスロープも国の重要文化財に指定されています。そしてこのような門番所がかなり良く保存されているのは、珍しい事です。一度移築しているのですが、ほぼ当時の材料で残っています。
八画の中は土間と、座るための縁が回っています。その片隅に炉がありました。ここで炭火を焚いていたのではないのかと思われます。
天井組は、割と単純。材が太いのが特徴でしょうか。屋根組が不必要なまでに頑丈に出来ています。構造的にここまでしなくていいのにと思うのですが、多分当時の大工がこんな作りをした事が少なかったのでこうなったのかと思います。
先の炉との関係ですが、建物の暖房は変遷があったはずで、確か修復前には煙突が付いていたと思います。
炉で薪を焚くためには、天井に火棚が吊るされなければ行けないのですが、天井が高くないので吊るせなかったと考えられます。またその名残が天井に見えません。排煙の機構も見えません。それで炭を焚いたと推察した訳です。
炭が練炭になったりしたでしょうが、薪ストーブか石炭ストーブになり、煙突が作られ、門番所が使われなくなってそれらも無くなったのでしょう。
中はこんな感じです。展示されている作品と何かしっくり来る物があります。
古い建物で美術作品を展示すると、建物に食われたりイロイロ起きますが、この建物はそれがとても少ないのが特徴と思います。とても優しく包み込んでゆく感じがあります。
ただ、大きい物は置けません。
でもこの空間は以外と尖った物を置くと良いかもしれません。最先端のホログラムやCGあたりがかなり行けるかもしれません。
それ以外にも、不定期な産直なども良いと思います。岩手大学の茶道部では毎年この近くで野点を行っているのですが、待ち合いとしても使えそうです。
細かい所ですが、屋外の電灯の笠は古い物のようですが、中にある傘は現代の物です。それにしてもよく捜したなと思うのですが、磁器ではないのが残念な所です。
今回展示で糸車を出しています。門番所で糸を紡いでいた訳ではありません。
でもこの小さな畳部屋がこの建物の味を出しているんです。
でですね、やっぱりトイレですよ。こういった物は。もうトイレが保存されていると言うだけでキターってなもんです。ありました。染め付け磁器です。
古い建物でも、使われている場合は水回りは改修される事が多い訳で、なかなか残る事がありません。それが残っていると言うだけでも偉いのですが、多分明治期の物なのは間違いがないと思います。木製だった時代のデザインを踏襲していることと、筆線のてきとーさが確信持てる所です。
ただ最初っから門番所にこれがあったかどうかは解りません。高等農林本館にあった物を移しただけかもしれません。門番所に当時として高級品を置いたのかどうか、あり得る話しですがちょっと違うように感じます。
なおこのトイレ、使用禁止です。それでいて汚いのはなぜ?
現状維持と考えましょう。
手洗いのあたりは、当時だと人造石だったりするのですが、ステンレスっぽいです。多分どの時点か解りませんが直したのでしょう。
さてこの建物の内部がよくわからなかった最大の理由なのですが、ガラスが当時の物かその後の物で、もの凄く脈打っているのです。窓ガラス越しでは中が本当に解らないのです。この擦りガラスだと多分擦り合わせの際に平面になっているハズなのですが、透明なガラスはそのまんま平面ではない訳です。
さて今回は彫塑の平井君が大体います。彼の作品も面白いですし、今彼が門番なのですよ。ここも面白いのです。
今の門と言うのは、とても広い物になっています。そこがかなり面白いです。
期間は平成25年10月17日(木)~平成25年10月21日(月) 9:00~15:00です。この期間岩大の学祭もありますので、ぜひ見に行ってもらいたいです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます