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鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

第19回在宅医療推進フォーラム

2023-11-25 09:36:06 | 日記

11月23日、東京ビッグサイトで開催された第19回在宅医療推進フォーラムでNet4Uやたべるを支援し隊の活動について講演させて頂きました。蘆野先生の推薦によるものです。 

開会 ※9:30より開場
10:00~ 開会によせて
  住野 耕三 在宅医療助成 勇美記念財団 理事長
  新田 國夫  日本在宅ケアアライアンス 理事長
来賓あいさつ
  浅沼 一成 厚生労働省医政局長
10:10~12:00 ブロックフォーラム ※全国在宅療養支援医協会企画
テーマ「近未来の地域創り 〜在宅医療の役割〜 」
  (司会)   蘆野吉和  日本ホスピス・在宅ケア研究会 理事長
  (趣旨説明) 太田 秀樹  全国在宅療養支援医協会 事務総長
  (先進事例・好事例報告)
    1)Net4Uで地域に広がる食支援  三原 一郎 三原皮膚科(山形県)
    2)つるカフェ12年の挑戦 ~小さな診療所の大きな夢〜
      鶴岡 優子 つるかめ診療所(栃木県)
    3)KISA2隊の軌跡と奇跡 ~ポストコロナの展開~
         守上 佳樹 よしき往診クリニック(京都府)
  (総合討論)
  (令和5年度ブロックフォーラム(自治体ブランチ)開催状況 / 日本在宅医療コングレスの紹介)
               島田 潔 全国在宅療養支援医協会 事務局長
12:00~13:00 休憩(昼食) 
13:00~13:30 特別講演「医療提供体制に係る改革の動向」
  (演 者) 榎本 健太郎 独立行政法人 福祉医療機構 理事
  (座 長) 荒井 秀典 国立長寿医療研究センター 理事長
13:30~14:00 基調講演①「ネットワーク化が医療を変える」
  (演 者) 松田 晋哉 産業医科大学 医学部 教授
  (座 長) 飯島 勝矢 東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター 教授
14:00~14:30 基調講演②「新米総合診療医のまちづくり見聞録」
  (演 者) 鈴木 李理 医療法人 博仁会 みんなの内科外科クリニック 
  (座 長) 平原 優美 日本在宅ケアアライアンス 副理事長
14:30~14:50 休憩
14:50~16:50 シンポジウム テーマ「どうなる、どうする在宅医療 ~近未来の地域づくり~ 」
(座 長)武田 俊彦  日本在宅ケアアライアンス 副理事長
       二階堂 孝子 在宅医療助成勇美記念財団  常務理事
(シンポジスト) ※登壇順
       大橋 博樹  日本プライマリ・ケア連合学会 副理事長
       沼崎 美津子 在宅看護センター結の学校 所長
       水野 克彦  独立行政法人 都市再生機構ウェルフェア総合戦略部 部長
       中村 順子  NPO法人ホームホスピス秋田 理事長
       七条 裕美  ひろみこどもクリニック 院長
       眞鍋 馨   厚生労働省 保険局 医療課 課長
16:50~17:00 閉会によせて
  辻󠄀 哲夫  医療経済研究・社会保険福祉協会 理事長
  大島 伸一 国立長寿医療研究センター 名誉総長
17:00(予定) 閉会

 

発表スライド

 


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庄内医療情報ネットワーク特別講演会

2023-11-16 15:32:58 | 日記
庄内医療情報ネットワーク協議会主催の特別講演会が開催されましたので報告します。
特別公演は、佐渡総合病院院長の佐藤賢治先生にお願いしました。
医療にしろ、介護にしろ、行政にしろ、目的は「地域住民の生活」であるという確固たる信念のもと、10年以上にわたり、佐渡島という比較的閉ざされた地域でITを活用した地域医療に取り組んでいます。活動内容は多岐にわたりますが、地域医療のあるべき姿への挑戦と感じました。
以下、当日のプログラムです。
私からは、報告として20数年にわたるNet4Uの利活用をデータとともに報告させて頂きました。
 
1、開会、あいさつ
 庄内医療情報ネットワーク協議会 会長 福原晶子
2、報告
 「当地区におけるITネットワークの現状」
 鶴岡地区医師会理事 三原一郎
3、特別講演
 座長 鶴岡市立荘内病院 病院長 鈴木 聡
 「ICTを利用した医療福祉連携への取り組み」
 佐渡総合病院 病院長 佐藤賢治
4,閉会、あいさつ
 庄内医療情報ネットワーク協議会 副会長 佐藤 顕 
 
 「ICTを利用した医療福祉連携への取り組み」
 佐渡総合病院 病院長 佐藤賢治
 
行政・医療・介護・福祉の目的は「地域住民の生活」である。
社会保障のサプライチェーン
 医療福祉従事者が活動する空間は前後のつながりの中で存在する。
社会保障の需要
 ライフステージにより支援主役が変化
 高齢化ほど需要が高まる
 産科・小児科にアクセスできない地域は「限界集落」
情報の共有と伝達をどうしているのか?
 情報源:
  住民からの聴取、紹介状、情報提供書、お薬手帳、
  入院時徐放提供書、退院支援計画書、退院時情報提供書、地域連携パス
 伝達手段:
  紙、電話、FAX
  医療福祉に特化したコミュニケーションツール
  医療情報ネットワーク、PHR
  患者フローマネジメント、入退院支援室、患者サポートセンター
 しかし
  情報の内容、精度、迅速性?
  コストはどこまで許容できるのか?
  医療情報より、生活情報がより重要ではないか?
 協働・連携を拒む「専門化」
  専門特化「他を診なくてよい」意識を助長する
  連携されない専門特化は、「隙間」を増やす機能分断に陥り専門外を遮断する 
 協働・連携を拒む「ローカルルール」
  超少子高齢化社会では、多施設・多職種の協働・連携が必要だが、
  施設でのローカルルールが地域の協働・連携の齟齬に繋がる
 協働・連携を拒む「資源不足」
  生産年齢・小児人口が減少する中、増員は望めず、収益源・費用増は加速する
  収支バランスの悪化と要因の減少を前提に、機能・役割の見直しは避けられない
 協働・連携を拒む「コミュニケーションエラー」
  コミュニケーションは「意図的」かつ「能動的」な行動であり、
  行動なしにコミュニケーションは生まれない
 
 佐渡の取り組み
  対策の基本概念
   住民情報の共有 「さどひまわりネット」 
   住民の状態に適合する担当施設の調整 「資源適正化支援システム」
   分担機能を活用し連携を実現する人材の育成 「佐渡職種別研修プログラム」
  さとひまわりネット
   病院、診療所・歯科、薬局、介護施設、検査業者、健診業者の収集端末から
   さどひまわりネットデータセンターへ情報を集約
   集約されたデータを医療施設、薬局、介護施設、ケアマネ、行政間で共有
  参照型EHRから提案型EHRへの試み
   10年、17000人の蓄積された医療情報データの分析から予測・判定モデルを開発
  連携のための適切な情報の共有と伝達
  生活情報の共有
  資源適正化支援システム:施設機能の共有と調整
  個別化したデータに基づく健康寿命延伸を実現するモデル事業 SOLVE for SDGs
   フレイルを早期発見し、住民・医療福祉事業者双方が適切な行動につがなる
   モデルの構築
  連携を実践するのは医療従事者自身
  連携を実現する人材育成:研修プログラム
  多職種に向けた講演会
  人材の育成:佐渡に未来を学ぶ環境をつくる

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第23回日本クリニカルパス学会

2023-11-12 15:42:07 | 日記

日本クリニカルパス学会へ参加してきました。

今年の鶴岡からの演題は5題でした。

1
シンポジウム1
パスは続くよ、どこまでも
-院内多職種連携から院外多職種連携への展開-
多職種での脳卒中ケアを目指した
循環型地域連携パスの取り組み 丸谷 宏 荘内病院 11/10(金)
A会場 9:00~10:30 発表順:2番目

2 パネルディスカッション2
うちでは,これもパスです
地域一体型NST「たべるを支援し隊」は
多職種によるパス活動 三原 美雪 三原皮膚科 11/10(金)
D会場10:30~11:30 発表順:6番目

3 一般演題 口演
リハビリテーション・回復期 入院時挿入されてきた膀胱留置カテーテルの、
抜去に向けての分析
堀 正浩 湯田川温泉リハビリテーション病院
11/10(金)F会場 9:35~10:25 発表順:6番目

4 一般演題 口演
地域連携・在宅医療・退院調整
脳卒中地域連携パス症例への骨格筋量
および位相角データの活用 今野 太陽 鶴岡協立リハビリテーション病院
11/11(土)F会場 13:30~14:30 発表順:6番目


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在宅における食支援・フォーラム庄内2022

2023-10-23 10:25:38 | 日記

食支援をテーマとしたフォーラムが開催されました。

3つの基調講演のあと、実際の現場からの報告とディスカッションあり、とても充実した内容となりました。

荒金先生の基調を講演から

超高齢社会を迎え、最後まで美味しく食べる取り組みが注目されています。

食支援は、従来の栄養管理(人工栄養)とは対極にある考え方です。

一人ではできず、病院では限界があり、また医学だけでは解決できません。

キーワードは「地域」です。

障害とは、個人(医療)と環境(ケア)のミスマッチで生じるものです。

食支援の3本柱は、医療と介護連携の仕組みづくり、医療と産業との連携、地域理解です。

 

 

 

 

 


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在宅医療を考える会:医師と訪問看護師との意見交換会

2023-10-04 16:55:17 | 日記

在宅を行っている医師と訪問看護師との意見交換会を行いました。

グループワークででてきた意見などを分類整理しておきます。

 

*人材不足

Ø訪問看護師の不足  土日・祝日対応の希望も多いためなかなか休めない。結果、スタッフ一人一人の負担が大きい。

Ø訪問時間が足りずゆっくり話を聴く時間が取りにくい。

Ø訪問医が増えない。医師の高齢化が進んでいる。施設の嘱託医や学校医、休日診療所当番医のなり手もおらず負担がかかる。

*支援体制・家族

Ø支援体制が整っていない状況での訪問診療の開始。訪問看護師が介入しなかったのですごく不安だった(医師)。

Ø看護師と本人・家族との関係が築けないままの看取り。

Ø希望で在宅看取りの方針となったが、苦痛が強くなったときの本人と家族の気持ちが変わっていく。→家族の受入れらない気持ち、在宅療養継続ができるか、ゆらぐ気持ちへの対応

Ø家族の介護力の低下→特定の家族の疲弊、老々介護の増加、家族が遠方在住で支援が難しい。

*急変時の対応

Ø医師のバックアップ体制あり。ほたるへ調整依頼し頼める医師を探した。

ØACP希望→確認 急変時に予測しない看取りとなった。難しさを感じる。

Ø病院医師が主治医の場合、患者が自宅で亡くなった場合の対応に困っている。→死亡確認ができず。

Ø急変時の病院の受入れがスムーズにいかなかったり、最期は病院でとなっているのに病院に連絡をしたらなぜ近医でないのか?と言われた。

Ø患者が自己判断でERへ →主治医が知らないケースもあり

*受け入れ、経済的問題

Ø看取りの方  自宅で看れなくなった場合、受け入れてくれる場所が少ない。

 →入院受け入れ病院が見つからない。

Ø医療依存度が高い方を受け入れる施設が少なくなっている。

 →地域包括ケア病床の確保、利活用

Ø在宅医療は、医師が動くとお金がかかる。経済的負担が大きい。介護にお金をかけられない利用者が多く、必要なサービスを使えない。

*情報共有

Ø病棟が提供する情報と求めている情報が違う。

Ø2カ所の訪問看護STを併用利用の際、Net4Uは情報共有に必須。

Ø他職種の情報共有、Net4Uがあって良かった。

Ø訪問診療まで期間があったが、Net4Uを医師が確認しコメントしてくれたことで往診が早くなった。

Øケアマネとの連携含め、Net4Uは有用である。

ØわざわざNet4Uを開くことは手間がある。別のカルテを入力する必要があり負担が大きい。Ns.より電話が来た時は必ず見ている。

 

 

 

 

 


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ヘルスケアソーシャルネットワーク「Net4U」による多職種連携の実際

2023-06-01 16:30:45 | 日記

日総研が発刊している「地域連携 入退院と在宅支援」誌で、「円滑な連携につなげる記録の書き方・情報共有のあり方」というテーマで特集を組むことになり、その中で情報共有がうまく行っている好例として、鶴岡の事例を紹介して欲しい。また、Net4Uというツールだけでなく、普段からフラットな関係づくりや顔の見える場を多くつくるなどの長年取り組んでこられた内容についても執筆いただきたいとのとの依頼あり、書かせて頂いた文章です。先日、掲載紙が発刊されましたので、投稿内容を以下にアップしました。

PDF版はここをクリック

次のブログ記事にも同様内容をアップしました。


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ヘルスケアソーシャルネットワーク「Net4U」による多職種連携の実際

2023-06-01 16:28:51 | 日記

1,地域における医療・介護を取り巻く現状と課題

本稿で述べる山形県庄内内南部地域医療圏は、鶴岡市と三川町の1市1町により構成される。人口は13万人弱であるが、東北で最も広い面積を有しており、みなし過疎に分類されている。医療資源としては、鶴岡市立荘内病院(520床)を中核病院とし、回復期リハビリテーション病院2か所、一般病院4か所、精神科単科の県立病院1か所、診療所81か所、訪問看護ステーション11か所などである。病院の病床数、医師数は県平均の約3/4と下回るが、診療所の数は県平均をやや上回り、在宅療養支援診療所は県平均の2倍程存在する。介護施設数、介護職員数は県平均並みである。また、一般社団法人鶴岡地区医師会が健診センター、回復期リハビリテーション病院、介護老人保健施設、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなど多くの施設を運営しているという特徴がある。

県が定める二次医療圏は、表記の庄内南部地域と鶴岡市の北に位置する酒田市を中心とした庄内北部地域とからなるが、それぞれに同規模の市立病院があったことで、北と南で医療が完結していたという歴史がある。しかし、2008年に酒田市に市民病院と県立病院を統合した鶴岡市立荘内病院の2倍の規模(医師数ベース)をもつ日本海総合病院が新設されたことで、医療提供体制のバランスが崩れ、庄内二次医療圏全体で医療提供体制を考えていかなければならない時代となった。2つの中核病院の役割分担、それぞれの病院の適正病床数、病院と介護との連携は継続的なテーマである。また、面積が広いが故に訪問診療が難しい過疎地が存在し、診療所が減少する中その対応も課題である。

 

2,Net4U、ちょうかいネット、Note4Uの歴史

Net4Uは、2000年に実施された経済産業省の「先進的ITを活用した地域医療ネットワーク構築事業」で開発された地域版電子カルテシステムである。当時はインターネットの黎明期で医療連携へのICTの活用が期待された時代であり、医療DXの先駆けともいえる事業であった。Net4Uは所見の記載のみならず、検査データの自動登録、画像の添付、訪看看護指示書や紹介状の作成・送付、多施設間の情報共有などを可能とした高機能なクラウド型電子カルテシステムであった。事業終了以降、各地で構築された医療情報ネットワークが次々ととん挫する中、Net4Uは現在に至るまで発展的に運用されており、日本で最も歴史のある地域版電子カルテとして認知されている。この間、2012年にNet4Uは「医療と介護を繋ぐヘルスケアソーシャルネットワーク」として全面改訂され、医療のみならず、介護を含む多職種連携を支える情報共有ツールへと進化した(図1)。

・ちょかいネット

 2012年には、庄内二次医療圏にID-Linkを利用した地域医療情報ネットワーク「ちょうかいネット」が構築された。ちょうかいネットは、患者の同意の元、病院や診療所から中核病院の電子カルテ情報をインターネットを介して閲覧できるしくみである。現在、開示施設は6か所あり、Net4Uもそのなかに含まれている。おもに、診療所・病院の医師が、自院に通院中の患者が他病院を受診した場合そのカルテ情報を参照することに利用されているが、近年は医師のみならず、訪問看護ステーション、介護施設、薬局、歯科などからのアクセスも増えている。

 

・患者家族支援システム「Note4U」

 在宅医療においては、患者と接する時間が長い家族への支援は極めて重要である。そこで2012年に患者・家族が、サービス提供側である医療や介護と繋がる仕組みとしてNote4Uが開発された。Note4UとNet4Uとをデータ連携させることで、患者・家族側はNet4Uの検査結果、処方内容を閲覧でき、連絡ノート機能を利用することで、相互のコミュニケーションも可能となった。Note4Uは今後進めるべき患者参加型医療の先駆けでもあり、有用事例が蓄積されている。

 

3,Net4U運用の実際

Net4Uの運用実績

Net4Uは、2001年1月の運用開始以来22年超の運用実績を有するが、2023年3月末現在、参加施設は154で内訳は表に示す(図4)。参加職種毎のユーザ数の割合では、看護師が47%、介護職26%、リハ職10%、医師9%、薬剤師6%、歯科医師1%であり、看護師と介護職で3/4を占める(図5)。職種毎のユーザ数の年次推移(図6)では、看護師の延びが著しい。以上の実績は在宅医療の主な担い手は訪問看護師とケアマネジャーである現実を示している。とくに、看護師の書き込み数は他職種を圧倒しており、看護師が発信する情報を他の職種が参照している現状が伺われる。

訪問看護ステーションにおけるNet4U運用の実際とその効用

訪問看護ステーションでのNet4U利用の現状を鶴岡地区医師会が運営している訪問看護ステーション(愛称:ハローナース)を例にみてみる。2023年1月のハローナース利用者(患者)はトータルで198名であり、医療機関とNet4Uで情報共有している利用者は94名(47.8%)、さらにはケアマネジャーも参加している利用者は28名(14.1%)であった。ハローナースでは定期訪問、緊急訪問時対応の記録をすべてNet4Uに記載し、さらには緊急入院やレスパイト入院先へ、訪問看護サマリーなどを添付し報告している。訪問看護師側が参考とする情報は、在宅医の訪問診療の日時や指示内容、ターミナル期での本人の意向の確認などであり、また病院がNet4Uを利用することでのレスパイトの予定や入院中の情報提供も参考としている。ケアマネジャーからの情報提供としては、サービス調整に関する報告や相談、レスパイト入院やサービス調整などがある。医療系サービスの利用継続や中止については、ケアマネジャーから医師への利用確認についてのやり取りも参考としている。Net4Uからちょうかいネットにアクセスすることで、病院の情報を参考にすることもある。多職種と連携している場合は一斉に報告ができより有用性が高まる。

Net4Uの効用について訪問看護師からのコメント

-病院医師や開業医への報告、相談、指示などの確認ができる

 電話は相手の業務状況を配慮しなければなりません、FAXは個人情報の取り扱いに注意が必要です。お互い都合の良い時間帯に入力や確認ができ、記録として残すことができるために活用しています。また、Net4Uからちょうかいネットへアクセスし病院の診療記録を閲覧しています。

-認定看護師(緩和ケア、皮膚創傷、認知症など)との協働

 病院医師への報告や指示受けなどでは看護師が窓口になってもらうことで、指示の変更や受診、入院などの対処がスムーズに行えます。また、看護ケアについてアドバイスを頂き、一緒に考えることでケアの質の向上につなげられると考えています。例えば、緩和の認定看護師からは症状コントロールの相談や緊急受診の状況の報告をもらっています。皮膚・排泄ケア認定看護師からは褥瘡や人工肛門の管理などで同行訪問してもらう機会があり、画像添付で状態報告や評価、処置方法についてやり取りすることもあります。認知症看護専門看護師からは、服薬管理に関する報告や相談、また家族への指導などをNote4Uで行ってもらうこともあります。

-施設を越えた多様な情報を共有

近年、医療と介護の双方のサービスを必要とする中重度の高齢者へ多職種で支援するケースが増えています。支援者たちが持ち寄る情報を施設間で確認できることは、効果的な情報共有に繋がっていると思います。

-Note4Uを活用した患者・家族支援

独居や老老世帯へ対応することもあります。家族が遠方にお住まいであったり、近年では、コロナ禍で遠方の家族が帰省できなかったりしますが、利用者家族とのやり取りにNote4Uを活用することで利用者家族とも情報共有することができます。

 

4,Net4U を機能させ、情報共有を促進するための取り組み

Net4Uのようなシステムを施設・職種の利害を超えて地域全体で運用するには、お互いの領域や課題を知り、相互に利益のある互酬性のある関係を目指す必要がある。当地区ではNet4Uの運用と並行して、多職種が関わるいくつかのプロジェクトを実践してきた。

・地域連携パス

大腿骨近位部骨折、脳卒中においては、ほとんどの患者が当地区の中核病院である市立荘内病院へ搬送され、その多くは地域の2つのリハビリテーション病院へ転院となる。この地域的特徴を利用し、全例登録を原則とした、大腿骨近位部骨折地域連携パスの運用を2006年から、2008年からは脳卒中パスの運用を開始した。連携パスを運用するに当たっては、パス協議会を設立し、データ入力はNet4Uで培ったネットワークを活用することとした。蓄積されたデータは集計表を作成し公開している。パス活動として、連携パスの運用のみならず、月1回の全体会、学術講演会、事例検討会、懇親会などを定期的に行ってきた。日本クリニカルパス学会には、毎回10題程の演題を報告してきた。協議会を設立し、地域全体で連携パスを運用している地域は全国でも鶴岡だけだと自負している。

・緩和ケア普及のためのプロジェクト

緩和ケア普及のためのプロジェクトは、2008年の厚生労働省のがん対策のための戦略研究として当地区が受託したもので、われわれは庄内プロジェクトと呼んでいる。全国から4地域のみが選ばれたビッグプロジェクトであり、試行錯誤をくりかえしながら、緩和ケア普及のための活動を3年間にわたり実践した。活動に当たっては、医療者教育、市民啓発、地域連携、専門緩和という4本柱に沿ったかたちで数多くの活動を行った。この活動がきっかけで、各職種のキーパーソンが顔を合わせ議論する機会が急増し、結果として多職種連携が深まることに繋がった。在宅緩和ケアを進めるなかで、多職種間での情報共有の必要性が高まり、Net4Uも在宅医療を中心とした多職種連携を支えるツールへと進化した。

在宅緩和ケアにおいては、かかりつけ医、看護師、リハ職、薬剤師などが患者宅を訪れケアに当たる。これら職種がリアルタイムに情報を共有しながら、多職種協働で患者を診ていくことにNet4Uは大きく貢献している。とくに、中核病院の緩和ケアチームの参加は現場の多職種チームに大きな安心感を与えており、Net4Uは在宅緩和ケアには必須のツールとして定着している。

・在宅医療連携拠点事業

2011年からは、厚労省の在宅医療連携拠点事業を受託し、多職種連携を強化する時代へと変遷していく。地域医療連携室「ほたる」は、厚労省の在宅医療連携拠点事業を受託し、医師会内に設置された部署である。地域包括ケアシステムに関する数多くの活動を行っており、地域の多職種連携の事務局ともいえるセクションである。活動の一環として、職種間の交流会や意見交換会などを数多く実施してきた。近年のほたるのトピック的取り組みは、地域NST「たべるを支援し隊」のコーディネーターとしての役割である。たべるを支援し隊とは、食べることに困っている人へ、リハ職、歯科医、薬剤師、管理栄養士、医師、看護師などの多職種がチームでサポートする取り組みあり、多職種間の情報共有にはNet4Uを活用し、月1回程度のミーティングを重ねている。

・顔のみえる関係づくり

さまざまな活動を行うにあたっての基本となるのは、顔のみえる関係づくりと考え、楽しいイベントも数多くやってきた。BBQや忘年会は、Net4U導入以前に仲間と始めたものであるが、徐々に参加人数が増え、医療職のみならず、職種を越えて多くの仲間が集う場に成長した。連携の基本は、仲良く、楽しくと考えており、「飲みにケーション」が果たした役割は非常に大きいと考えている。また、クリニカルパス学会、日本医師会医療情報システム協議会、在宅医療連合学会などへは組織を超えて多人数で参加し、学びだけではなく、「チーム鶴岡」のマインドを醸成してきた。

 

5,これまでの成果、現状の課題、今後の展望

・成果

Net4Uは、おもに在宅医療におけるさまざまな患者情報を多職種、多施設間で共有することを可能とし、そこに関わる多職種相互のコミュニケーションを拡大するとすることで、在宅医療を支えるツールとして着実に成果をあげてきた。現在、Net4Uには医療施設のみならず、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、老人保健施設などが参加しており、ICTを利用した医療・介護情報共有基盤としては全国的にみても成果がでている地域と評価している。

・課題

とはいっても、Net4Uを利用している患者は50%程度(表記訪問看護ステーションの例)であり、記録はほとんどが訪問看護師に負っているのが現状である。医師の参加も限られ、薬剤師や歯科医師の利用は限定的である。また、参加者が増えているとはいえ、ケアマネジャーが実際にNet4Uにアクセスし、訪問看護師などと情報共有している事例はそれ程多くはないという現実もある。地域連携パスにおいても、急性期から回復期さらには生活期へとパスでつながってはいるが、あくまで医師間の情報共有であり、生活期パスへの看護師や介護職の参加はほとんどなく、脳卒中の再発や再骨折の予防を地域全体でどう取り組むのかは今後のテーマである。

さらに、Net4Uのような地域医療情報ネットワークの運用費を誰が負担するのかという、全国共通の根本的な課題がある。当地区の場合、医師会が運用費を全額負担しているが、いつまで継続できるかは不透明であり、負担の在り方は今後検討する必要がある。また、Net4Uは地域住民に知られた存在とは決していえず、Net4Uは地域住民にとってこそ有益なシステムであることを周知するための広報活動も今後取り組む必要がある。

・展望

2022年は医療DX元年ともいわれ、オンライン資格確認システム(オン資)が義務化され、マイナンバーカードの保険証利用も開始される。オン資を利用することで、患者の同意の元で患者の診療/薬剤情報や特定健診情報も医療機関で閲覧が可能となる。さらには患者自身もマイナポータルを利用し自分の薬歴などが閲覧可能となる。この国が進める全国レベルの医療情報ネットワークは全国医療情報プラットフォームと呼ばれ、今後は当地区におけるNet4Uやちょうかいネットなどの既存の地域医療情報ネットワークと融合しながら活用されていくものと思われる。

すでに運用を開始した電子処方箋は、現在紙で行われている処方箋でのやり取りをオンライン化することで、薬の重複や併用禁忌などが正確かつ迅速にチェックでき、より安全で無駄のない処方が可能となる。また、マイナンバーカードの提示でどの医療機関からも過去の薬歴などが分かるため、救急や大規模災害、パンデミックでの活用も期待されている。

医療DXは、緒についてばかりで今後の普及は不透明であるが、周回遅れと言われている我が国の医療DXが、患者を中心とした健全なかたちで発展することを期待している。


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Net4U運用状況調査(2013-2022)

2023-04-07 17:11:19 | 日記

2023年3月末現在、運用開始(2000年1月)以来の登録患者数は、83297例。うち共有患者数は14802例。

月当たりの登録数は、500件前後で推移している。

運用開始以来、医療機関参加施設数に著変はないが、近年、訪問系、介護系施設の増加が目立つ。

地域内の訪問看護師ステーションのほとんどが参加している。

参加施設の類型別の年次推移である。居宅介護支援事業所、調剤薬局、介護系施設の増加が顕著である。

 

参加職種の内訳では、看護師、介護職(ケアマネジャー)、医師と続く。看護師とケアマネジャーで3/4を占める。

 

職種別のユーザー数の推移であるが、看護師、介護職の延びが顕著である。

 

書き込み数の推移である。医師の減少が著しく、一方で看護師の増加傾向が続いている。

Net4Uを利用する患者数(アクセス数)は、ここ数年著変はないが、医師以外(おもに看護師)の利用が増加傾向にある。


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令和4年度日本医師会医療情報システム協議会 メインテーマ: 医療 DX2023 DX推進の現状と将来の展望 -DX 推進のためにできること、すべきこと-

2023-04-04 17:36:23 | 日記

はじめに

2月25,26日にオンラインで開催された日本医師会医療情報システム協議会を聴講したので報告します。今回の協議会のメインテーマである「医療DX」、2022年はその元年とも言われていますが、そもそも医療DX(Digital Transformation)をご存じでしょうか?日本医師会常任理事である長島先生は抄録で「医療のIT化により、業務の効率化や適切な情報連携などを進めることで、 国民・患者の皆さんに、より安全で質の高い医療を提供するとともに、医療現場の負担を減らすことである。」と述べていますが、具体的には、「全国医療情報プラットフォームの構築」、「医療情報の標準化」、「診療報酬改定DX」が3本柱になります。一方で、2022年がなぜ元年かというと、医療DXの入り口となるオンライン資格確認の原則義務化や電子処方箋の運用が開始されたからです。以下、医療DXの3本柱ついて私見を交え報告したいと思います。

 

全国医療情報プラットフォーム

オンライン資格確認システムの概要図を示します(図)。まずは、医療機関・薬局と支払基金・国保中央会のサーバ間に閉鎖されたネットワークを構築します。このネットワークを利用することで、保険証の資格を確認できるだけではなく、本人の同意のもと、本人が通院している医療機関での処置や処方内容を閲覧できるようになります。アクセスするには基本的にはマイナカードを利用しますが、従来の保険証情報でも資格確認は可能です。

オンライン資格確認を導入している医療機関も多いかと思いますが、遅ればせながら当院も今年1月から運用を開始ししました。まだ、マイナカードで受診する人は少ないものの、医療事務の負担軽減になるとスタッフは喜んでおり今後の普及に期待しています。また、本人の同意のもと、他の医療機関の処方内容や特定検診データを参照できるため、より安全で質の高い医療への貢献も期待できそうです。さらに、患者さん自身もマイナポータルから薬剤情報などを閲覧できますので、患者さん自身が自分の健康情報を管理、活用する「患者・市民参加型医療」(PHR)へ向けた進展にも期待ができます。

電子処方箋

電子処方箋は電子処方箋管理サービスを利用し、現在紙で行われている処方情報および調剤情報のやりとりをオンライン化する仕組みです。処方箋の電子化により、薬の重複や併用禁忌などが正確かつ迅速にチェックできるようになりますので、より安全で無駄のない処方が可能となります。また、救急や大規模災害、パンデミックでの活用も期待されています。シンポジウムでは日本海総合病院の島貫院長から電子処方箋のモデル事業についての報告がありました。毎日100枚程度の電子処方箋が実際に発行されており、薬の重複、安全で無駄のない処方に有用であり、参加施設を増やすことが課題とのことでした。

 

医療情報の標準化

 コロナ禍により、日本の医療 DX の遅れが顕在化しました。また、電子カルテの普及率は大病院を主に約 50%に過ぎず、医療情報の二次利活用も進んでいるとはいえない状況にあります。その要因のひとつとして、医療情報が標準化されておらず、医療連携や研究などへの二次利用が進んでいないという現状があります。今後は、電子カルテの標準化を進めることで、役に立つ(ガイドライン検索や診断支援よる診療の質向上)、安全性の確保(薬剤併用禁忌やセキュリティー対策)、診断支援、経営支援、情報共有(多職種連携・医療機関間連携、患者との情報共有)、研究開発などへの医療情報の活用が期待されています。

 

診療報酬改定DX

 従来、診療報酬改定時のレセコンの改修作業は、期間も限られるためITベンダーにとっては大変な作業を強いられていたようです。診療報酬改定 DX では、デジタル時代に対応した診療報酬やその改定に関する作業を大幅に効率化し、SE人材の有効活用や費用の低廉化を目指すとされています。具体的な取組には、①共通算定モジュールの導入、②診療報酬改定の円滑な施行があげられており、開発主体・体制、費用負担のあり方を含め対応方針を検討し、今年度中に結論を得るとされています。

 

全国医療情報プラットフォームと地域医療情報ネットワーク

オンライン資格確認システムで構築したネットワークを利用した全国レベルでの医療情報共有のしくみを全国医療情報プラットフォームと呼んでいます。一方で、地域にはすでにさまざまな地域医療情報ネットワークが構築されています。例えば、当地区でのNet4Uやちょうかいネットがそれに当たります。これらネットワークは地域に定着し活用されていますが、今後は全国医療情報プラットフォームとどのように棲み分けていくのか、あるいはどのように融合していくのかが議論になると思わわれます。同時に、本人・家族の意思のもとで生涯にわたって健康・医療情報を活用できる社会の実現へ向けてPHRサービスの普及も期待されています。

 

おわりに

20数年前に運用を開始したNet4Uの理念は、1生涯/1患者/1カルテでした。すなわち患者さんの生涯の健康情報は患者さんの同意の元、必要なときに、必要な人と共有できることを目指してきました。医療DXの目指す姿は、Net4Uが目指した理念と合致するものです。今後の普及は、日々現場で医療を実践している我々医療者のDXに対する意識の向上こそが鍵になるのではと考えています。


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山下達郎と僕のお宝

2023-02-13 10:25:51 | 日記

山下達郎(達郎)、シンガーソングライター、作曲家、音楽プロデューサーとして幅広い音楽活動をしており、竹内まりやの夫としても有名ですから皆さんご存知ですよね。8月に新潟で行われた達郎のライブへ初めて行ってきました。噂には聞いていましたが、休憩を挟まない3時間に及ぶライブはまさに圧巻、高域までよく伸びる美しい声と凄まじいまでの声量で披露される達郎の歌唱力には圧倒されました。還暦を迎えてのこれだけの歌唱力はポップ系の歌手としては小田和正くらいでしょうか。

ところで、達郎がまだ高校生の頃(僕の医学生時代)、僕の住居へ出入りしていたことがあります。僕は赤羽に住んでいたのですが、はとこ(現在、芸大出のチェリスト)と達郎が同じ高校のブラスバンド部に属していたこともあり、はとこが達郎を僕の住居へ連れて来たのがきっかけで知り合いました。その頃の僕の住居といえば、僕や妹、さらには亡き妻(妹と同期)の友人が出入りするアジトみたいな場所になっていたこともあり、達郎もちょくちょく訪れては、レコードを聴いたり、ギターを弾いたり、麻雀も良くやっていました。

そんな折、持ち込まれたのが、達郎が中学時代からのバンド仲間と自主製作したアルバム”ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY”でした(写真1&2)。達郎の友人の自宅あるいはガレージでレコーディングし、ジャケットのイラストもメンバーが描いたという作品で、高校生の作品としては内容的にもなかなの出来栄えです。100枚限定で作成された1枚を購入したのですが、当時は達郎がこんなに有名人になると思っていませんでしたので、今では超レアなお宝になりました。ところで、このアナログレコードは後にCD化され、達郎のオフィシャルサイトで購入可能だそうです。また、ウィキペディアで本アルバム製作までの経緯を詳しく知ることができます。

3枚目の写真は、僕が当時良く通っていた中古レコード店で手に入れた”HAPPENINGS” というコーラスグループのアルバムに、達郎が書いてくれたライナーノーツです。高校生の頃から音楽に対する造詣は並外れたものがあり、音楽評論家としても秀逸な一面をもっていました。B5判のノートに書き綴ったシミだらけの達郎自筆によるライナーノーツも私の密かなお宝のひとつなのです。

 


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