鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

第21回日本クリニカルパス学会学術大会報告♯3

2021-12-18 10:40:41 | 日記

シンポジウム10 地域で活躍するメディカルスタッフ

-地域連携パス、退院支援、在宅医療-

 

たべるをあきらめない -食支援を通じた社会連携の取り組み-

 小川 豊美 (株)とよみ 認定栄養ケア・ステーション とよみ

鶴岡には、医療職以外に多くの優秀な人材がいますが、管理栄養士の小川豊美さんもその一人です。シンポジウム「地域で活躍するメディカルスタッフ」に登壇頂き、地域医療が抱える課題を「たべる」にフォーカスして、さまざまな取り組みを紹介して頂きました。とくに、2018年から始まった多職種によるたべるを支援する活動「南庄内たべるを支援し隊」については、コロナ禍でもZOOMを活用してのカンファレンスを継続していることや、患者さんの情報共有にNet4Uを活用していることなどを報告して頂きました。

 


パネルディスカッション3 大腿骨頚部骨折地域連携パスにおける多職種連携
-2次骨折予防に向けて-大腿骨近位部骨折地域連携パスの現状と課題  病病から病診パスへ

渡部 美穂

「大腿骨近位部骨折地域連携パスの現状と課題」というパネルディスカッションでは、荘内病院PTの渡部さんから大腿骨近位部骨折パスにおいても、再骨折予防を目的(アウトカム)とした病診パスが必要であり、病診パス運用へむけて検討しているとの報告がありました。なお、大腿骨近位部骨折は、二次骨折が多い疾患であり、骨粗しょう症治療薬の継続で有意に再骨折を予防できることが分かっています。しかしながら、現状では骨折後においても骨粗しょう症治療薬の内服は20‐30%に過ぎず、二次骨折予防の重要性が高まっています。

 


パネルディスカッション4 これからの緩和ケアとクリニカルパス

在宅がん患者のQOL向上に向けた取り組み -つらさPATHの導入-

 上林 沙希子

 

従来、緩和ケアにパスは馴染まないといわれてきました。緩和ケアという多様な病態に画一化、効率化を目指すパスは馴染まないという考え方だと思います。一方で、パスは患者さんのゴールを多職種チームで共有し、協働しながら患者さんを支えるツールですので、その人らしさを支える治療やケアにおいて、パスは重要なツールになり得ます。荘内病院の緩和ケア認定看護師の上林さんからは、つらさPATHという取り組みについての発表がありました。つらさの評価指標にはIPOS(Integrated Palliative care Outcome Scale)を用い、評価シートをNet4U上で運用することで、在宅療養中の患者の状況をより包括的に把握できるとの期待を述べていました。

 

以上、シンポジウムとパネルディスカッションへの当地区からの発表について簡単に報告させて頂きました。

 

その他に一般演題として、両リハビリテーション病院とこころの医療センターセンターからの発表もありましたが、詳細はパス協議会のホームページへの掲載してありますので、参照下さい。

庄内南部地域連携パス推進協議会


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第21回日本クリニカルパス学会学術大会報告♯2

2021-12-18 10:39:39 | 日記

シンポジウム3 癌の地域連携パス-なぜ軌道にのらないのか-

 

人生100年時代のがんパスを考える

三原 美雪(みはら みゆき)1 、坂本 薫2 、遠藤 貴恵3 、 菅原 和也4

当地区のパス協議会のパスアドバイザーをお願いしている三原美雪さんからは、「癌の地域連携パスーなぜ軌道にのらないのかー」というシンポジウムで、山形県のがんパスの現状や鶴岡で昨年から動きだしてIT化した大腸がんパスの報告がありました。人生100年時代に則し、県内統一からシフトした地域特性を生かしたパスへの改善、ITのよる情報共有とデータ分析による疾病管理、告知から緩和までの一貫したパスへのギアチェンジ、介護も含む多職種連携、がんに特化せず一本化した「私のカルテ」の実現が必要とまとめていました。

 

がんパスのアウトカムの大きな柱は、二人主治医制の普及です。病院の主治医とかかりつけ医が協働してがん患者さんをみていく仕組みですが普及しない最大の課題は病院医師とかかりつけ医との信頼関係が不十分であることに起因するのではと思っています。病院側も各科の説明会や懇親会など病診連携普及のための努力をしていますが、参加者が少ないという現状があり医師会の求心力不足を感じています。

 

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シンポジウム7 認知症のある人が、本当に地域で生き生きと暮らしていく

ためにできることとは-クリニカルパスの視点から-

 

認知症高齢者の在宅支援パス構築に向けて -本人の思いをつなぐ-

富樫 千代美(とがし ちよみ) 鶴岡市立荘内病院 看護部

荘内病院の認知症看護認定看護師の富樫さんからは、シンポジウム「認知症のある人が、本当に地域で生き生きと暮らしていくためにできること」において、慢性心不全で在宅療養の患者さんをNet4U、Note4Uを活用し、在宅医、薬剤師、看護師、理学療法士よりなる在宅チームと共に患者の願いを支え、在宅看取りを行った事例の報告がありました。本人・家族を含むチームが協働しながら同じ目標に向かう指標があることは有効であると述べており、まさにパスの実践事例の報告でした。とくに、Note4Uを利用し患者本人の思いを最後まで確認しながらの在宅看取りには頭が下がる思いでした。

このシンポジウムの最後のプレゼンターは、映画「ケアニン」のモデルになった介護施設を運営する加藤さんでした。自分の事業所に高齢 者を集めてお世話になっているだけの人を作り続けてい るのでは介護保険制度化では仕事をしていることにはな らないのではないだろうか?利用者のアイデンティティ とストレングスを中心に生活介護を行い、できることを 伸ばしていく。さらにその自立支援を地域包括化するこ とを前提にしていき、地域貢献に資する拠点をつくる活 動をおこなう。公園の清掃活動や子どもたちとの交流と いった地域活動を地域住民といっしょに考えるケアを実 践していく。介護スタッフは「お世話係」ではなく「地域デ ザイナー」である。目から鱗の素晴らしい講演でしたし、このような施設が一般的になるといいなと感じました。


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第21回日本クリニカルパス学会学術大会報告#1

2021-12-18 10:37:05 | 日記
11月26日~27日に山形市で開催された日本クリニカルパス学会学術集会では、当地区からシンポジウム5題、パネルディスカッション2題、一般演題5題、ランチョン1題、論文発表1題の計14題を報告してきました。
 
今回の学会のテーマは「時代に即するみんなのクリニカルパス」でした。今後高齢化とともに増えてくる心、呼吸器、骨折、認知症などの疾患をどのようにしたら、病院と地域~医療と介護が一体化して提供できるかがテーマでした。
 
クリニカルパス(パス)に対しては、治療のスケジュール表というイメージをもたれている方が多いと思いますが、患者さんのゴール(アウトカム)をその患者さんに係わる多職種が共有し、皆が同じゴールを目指し、それぞれの役割を果たしていくツールというのが根本的な考え方です。パスは病院では随分と普及しましたが、診療所を含む地域でパスを運用できている地域は数少ないのが現状です。
 
鶴岡は、脳卒中地域連携パスを診療所を含む地域全体で運用している数少ない地域です。しかも、全例登録を原則としたICTパスシステムを利用し、地域の疾患データベースを構築するとともにデータ分析を行い、学会等での報告を継続している全国でも唯一の地域だと自負しています。
 
さて、今回の学術集会でも多くの発表をしてきましたが、パス活動を知ってもらう良い機会ですので、当地区からの報告をかいつまんで報告したいと思います。
 
「地域包括ケアシステムにおける地域連携パス」というシンポジウムでは、鈴木さん(ストローハット社)が「地域包括ケアの変容と地域連携パスが 目指すべき深化の方向性」と題して、地域連携パスと地域包括ケアの差異に着目し、地域連携パスが目指すべき方向性についての総論的な話をして頂きました。私からは「地域包括ケアにおけるICTの活用」と題して、鶴岡の地域連携パスへの取り組みの現状と地域包括ケアにおけるNet4Uの成果や今後の課題について発表しました。
 
Net4Uは、おもに在宅医療の現場で、多職種の情報共有~コミュニケーションツールとして活用されていますが、パス情報の共有はシステム上可能となっているものの、訪問看護師やケアマネジャーなどの間では十分に活用されていないのが現状です。その要因のひとつとして地域の中でパスの概念や目的がよく理解されていないことが挙げられます。今後はパスの概念やパス情報を地域で共有する方策を模索する必要があると考えています。
 

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