鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

日医医療情報システム協議会2024

2024-03-04 15:52:36 | 日記

はじめに

3月2-3日に日本医師会館で開催された日本医師会医療情報システム協議会を聴講したので報告します。今回の協議会のメインテーマは、「医療DXで何が変わるか!~国民と医療者が笑顔になるために~」でした。ところで、医療DX(Digital Transformation)とは具体的に何を指すのかご存じでしょうか?医療DXは、「全国医療情報プラットフォームの構築」、「医療情報の標準化」、「診療報酬改定DX」が3本柱ということになっていますが、本協議会では、厚労省から、オンライン資格等確認システム、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、診療報酬DXの現状と今後が報告されました。以下、テーマに沿って報告します。

 

オンライン資格確認システム

オンライン資格確認システムは、義務化されてこともあり、全国97%の医療機関に導入されています。医療機関・薬局と支払基金・国保中央会のサーバ間に閉鎖されたネットワークを構築することで、保険証の資格を確認できるだけではなく、本人の同意のもと、本人が通院している医療機関での処方や処置内容を閲覧できるようになります。アクセスするには基本的にはマイナカード(マイナ保険証)を利用しますが、従来の保険証情報でも資格確認は可能です(他院からの処方などの情報は閲覧できません)。また、また患者本人もマイナポータルを利用することで通院している医療機関からの処方を参照することができます。

今年の12月5日には紙の健康保険証が廃止されマイナ保険証に一本化されますが、現状でマイナ保険証の利用率は全国平均で5%を下回っており、マイナ保険証がどこまで普及するのか不透明な状況が続いています。国としては、マイナ保険証普及へむけて、保険者からの周知、医療機関などへの支援金制度、診療報酬での評価などの導入を考えていますが、反対意見も多く困難が予想されます。

電子処方箋

電子処方箋は電子処方箋管理サービスを利用し、現在紙で行われている処方情報および調剤情報のやりとりをオンライン化する仕組みです。処方箋の電子化により、薬の重複や併用禁忌などが正確かつ迅速にチェックできるようになりますので、より安全で無駄のない処方が可能となります。また、救急や大規模災害、パンデミックでの活用も期待されています。しかしながら、電子処方箋を導入するには電子カルテあるいはレセプトコンピュータの改修が必要であり、診療所では40-59万円程度かかります。19.4万円を上限に国が負担しますが、電子処方箋の有用性は理解していたとしても、今のところ医療機関にとって経済的メリットは少なく、医療機関の普及率は1%以下にとどまっているのが現状です。(なお、薬局での普及率は、10数パーセント程度、全体で6%)また、電子処方箋はその仕組みから、地域の多くの医療機関が参加しないと十分な有用性を享受できません。病院を中心に地域全体で一斉に導入する成功事例を積み上げていく必要があるのではというのが私の意見です。

なお、日本海総合病院は電子処方箋のモデル事業(全国から4地区)に参画し、先行事例として実証事業を行いました(参加施設:病院2,診療所2,調剤薬局17)。

電子カルテ情報共有サービス

 医療DXの3本柱の一つとして、オンライン資格確認システムを拡充し、レセプト・特定保健等情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテ等医療情報などを共有・交換できる全国医療情報プラットフォームの創設が挙げられています。全国医療情報プラットフォームの優れた点は、ほぼすべての医療機関の公的保険の患者情報が繋がっていることにあります。

診療報酬改定DX

 従来、診療報酬改定時のレセコンの改修作業は、期間も限られるためITベンダーにとっては大変な作業を強いられていたようです。診療報酬改定 DX では、デジタル時代に対応した診療報酬やその改定に関する作業を大幅に効率化し、SE人材の有効活用や費用の低廉化を目指すとされています。具体的な取組には、①共通算定モジュールの導入、②診療報酬改定の円滑な施行があげられており、開発主体・体制、費用負担のあり方を含め対応方針を検討し、今年度中に結論を得るとされています。

 

全国医療情報プラットフォームと地域医療情報ネットワーク

オンライン資格確認システムで構築したネットワークを利用した全国レベルでの医療情報共有のしくみを全国医療情報プラットフォームと呼んでいます。一方で、地域にはすでにさまざまな地域医療情報ネットワークが構築されています。例えば、当地区でのNet4Uやちょうかいネットがそれに当たります。これらネットワークは地域に定着し活用されていますが、今後は全国医療情報プラットフォームとどのように棲み分けていくのか、あるいはどのように融合していくのかが議論になると思わわれます。同時に、本人・家族の意思のもとで生涯にわたって健康・医療情報を活用できる社会の実現へ向けてPHRサービスの普及も期待されています。

おわりに

令和4年に総理を本部長とする医療DX推進本部が設置され、国は、本気で医療DXを進める方針のようです。医療DXは、救急・医療・介護現場での切れ目のない情報共有、医療サービスの効率化・負担軽減、医療安全、健康管理、疾病予防、公衆衛生、医学・産業への二次利用などへの貢献が期待されます。一方で、普及には財源も含めて医療者のみならず国民全体での理解と協力が不可欠であり、今後の展開は予断を許さないと感じています。
 
 

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