◆まさか自分が「オレオレ詐欺」にあうとは思いませんでした。しかも、もっと驚くべきことは、騙されていることに全く気付かなかったことです。
◆夜電話が鳴り、取ると、「お父さん? オレ」という相当かすれた声。「扁桃腺をやられた。風邪だと思っていたら、医者が、菌が入っているようなので、切ることになるかもしれないと言って、順天堂を紹介してくれた」と言う。「入院することになるのか」と聞くと、「分からない。明日順天堂に行く。本当は会社を休みたいのだけれど、会社に連絡したところ、大事な話があるので、朝だけ会社に来てくれと言われた。だから、朝会社に寄って、その後病院に行く。結果が分かったら、また電話をする」と言うのです。「痛いのか」と聞くと、「唾を飲み込んでも、痛い」とのこと。話には少しもおかしなところはなく、原形をとどめないほどのかすれ声だったものの、話し方から、私は、電話の主が次男であることに、全く疑いを持ちませんでした。
◆翌日、私はCOSMOSの練習に出掛け、練習の合間に、妻に「電話があったか」聞くと、「ない」とのことだったので、息子と連絡を取るよう頼みました。すると、妻から電話があり、「会社に出勤していて、ピンピンしている」とのこと。私は、それまで、声の主は次男だと思っていたのですが、一気に自信がなくなり、それでは長男かもしれないと言うと、妻は長男にも連絡し、こちらにも変わったことはないことが分かりました。妻は、長男から「呆けたんじゃないか」と言われ、「呆けたのは、お父さんの方でしょうと言った」と、怒り心頭の態。情けないことに、ここまで来て、やっと私も、騙されたことに気付いたのです。
◆敵は、どうやら、私の応対から、詐欺成功の確信が持てず、第二段階の決行を断念したものと思われます。いや、もしかしたら、単に、私よりも成功の確率の高そうな対象が見つかったからかもしれません。もし、詐欺師達が、私に対して詐欺続行を決めた場合、どのような展開になったのでしょうか。「検査の結果、重い症状だったことが分かり、入院になると言って、金を無心するのではないか」と予想する声もありました。しかし、私の推理は、そうではなく、「重要な件で、朝会社に行く」というところに、仕掛けられた伏線があったのではないかと思うのです。つまり、会社の上司と弁護士あたりが電話をかけてきて、「お宅の息子さんが会社の金を使い込んでしまった。警察に届けず、穏便に済ますので、金を用意してほしい」というように。
◆翌日、私は警察に電話をして、事の次第を報告し、私の推理を得意げに話しました。若い警察官は、「どうでしょうか。彼らは色々なテクニックを持っていますから」と、あまり気のない返事。私が住んでいる付近は、高齢者が多いので、振り込め詐欺の電話が多く、気を付けるようにとのことでした。皆さんもお気を付けて。「自分の子供や孫がどんな窮地に立たされても、お金だけは、びた一文出さないぞ」と、日頃から固く決心しておくべきかもしれません。 (2013.3.21 菅野)