チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

ブックハンター「聞き書き砂金堀り飯場」

2012-09-12 19:29:16 | 独学

2. 「聞き書き」砂金堀り飯場(武井時紀著 昭和57年発行)

 『砂金鉱業は「拾う」ことから始まる。山間の川をさかのぼり、水底に輝く砂金を文字どおり手で拾うのである。黄金色に輝く砂金は、川底の砂れきのなかにあっても、するどく人の目をひきつける。しかも、金は化学的に安定な金属であり、すぐそのまま利用することが出来、選鉱も精錬の必要もない。高価である。北海道では、明治30年代の初期から、大正、昭和18年まで行われた。』

 『昭和49年、私は音威子府村史の編集にたずさわる機会を得た。初めての村史発行である。村役場には文書や資料は、ほとんど残されてない。したがって机に向かうよりは、古老を尋ねて村内を歩く日が多かった。訪れた老人のなかに天塩川のある支流で、砂金堀りをしたという人がいた。老人を訪ねる日が多くなり、何冊かのノートになった。しかし老人の働いた現場は問寒別川で、隣村であり音威子府村史とは、無関係の内容であった。』

 このようなに始まる「砂金堀り飯場」であるが、私が一番おもしろかったのは、以下の部分である。

 砂金堀り飯場の親方の条件
1) 賃金の清算をキチンとすること
2) 酒を飲んでも泥酔しないこと 
3) キタナイ女遊びをしない

 砂金堀り飯場の飯たき女の条件
1) 公平に人夫に接すること
2) 愛きょうがあること
3) 料理が上手であること
4) 仕事が早いこと
5) きれい好きなこと

 この親方の条件は、何とかクリヤーできる人はいると思うが、親方は20人の人夫をまとめ、夏の半年間で、成果を出すことが大変である。

 砂金堀り飯場の命運は飯炊き女に握られている、朝3時に起きて、1升釜2つと鍋1つをかまどにかけ22人分の朝食と、昼のおにぎりとおかずを3時半にくる農家の手伝いのおばさんと6時までに用意する。さらに味噌汁の具は山菜を人夫の協力を借りながら、美味しく用意する。

 飯たき女の条件が秀逸である、この条件を満足すれば、私に言わせれば、愛きょうがある(1/30)、料理が上手である(1/20)、きれい好きである(1/10)、仕事が早い(1/8)、公平に人夫に接する(1/25)すなわち、これは120万人に一人の条件であり、この条件をすべて満足すれば、皇族に嫁ぐことも可能ではと考えるのですが、笑い。

 この本は1993年に読んで、この5つの条件を何回も反芻するとき、この5つの条件がなぜ秀逸か、今回初めて解かった、それは非常に高いレベルであるが、個人の研鑽と努力で到達可能な目標であることである。愛きょうがあるとは言っているが、美人とは言ってない、愛きょうは本人の努力でつくることが出来る。公平に人夫に接するは、努力で愛きょうを勝ち得た人だけに与えられるご褒美であろう。公平であるは非常に難しく人格者と同等の意味を持っている。

 料理が上手で(北海道の山野の食材に精通しており、またその料理、保存方法に精通していること)、きれい好きである、この2つを同時に自分の物にするには、料理を考えながら、如何にして、段取りよく作業を進め、如何に無駄なく、常により美しく機能的に、仕事をこなすことで、周りの協力も得られ、誰でも頭と体をフル回転することで手に入れることが、可能である。(第3回)
 


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