PCR検査なしで療養解除、陽性者が自分で買い物……杉並区長が訴える「“自宅療養”の深刻すぎる欠陥」
新型コロナウイルスによる医療崩壊対策として、東京都が導入した新規感染者のホテル療養がなかなか進まない。感染者が療養場所を自宅かホテルで選べるため、ホテルを“希望”しない患者が多いのだ。
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感染者数が200人を超え、東京23区で4番目に多い杉並区は、「自宅で症状が急変して死に至るケースが相次ぎ報告されているだけでなく、自宅療養者が買い物などで外出を繰り返すと感染源になりかねない」と、苦悩を深めている。そこで、同区は感染者に対して、強くホテル療養を行うよう勧告を始めた。区内の4病院でウイルス対応病床を整備するなどして独自対策を進めてきたが、さらに一歩踏み出したのだ。
ただ、それでも希望者はあまり増えていない。法律の支えがないからだ。同区は「感染症法では入院措置まで定められているのに、代わりのホテルだと実質希望制とされてしまう。法が現状に対処できていない」と、法整備を訴えている。 軽症者・無症状者のホテル収容が始まったが……
新型コロナウイルス感染症は2月に指定感染症となり、患者や感染が疑われる人には、行政が入院措置できるよう定められた。重症者は指定病院、中等症・軽症者は協力病院に収容されたが、3月から感染者が急増し、都の公表データでは4月28日までの陽性者数が4059人にのぼっている(うち死亡者108人、退院者1261人)。
あらかじめ準備していた病床は、既にいっぱいになっており、医療崩壊の危機が叫ばれている。
対策として都は4月7日から、ホテルを棟ごと借りて、陰性確認を待つだけの患者を病院から移した。同17日からは、入院治療するほどではないと判断された新規の軽症者や無症状者を、自宅から直接ホテルに収容し始めた。
都は3000室のホテル確保を目指しているというが、新規の陽性判明者のホテル収容は思ったほど進んでいないようだ。これでは自宅療養者がどんどん増えてしまう。
東京都の自宅療養者の数は発表されていない
ただし、実態は不明だ。都の感染症対策課は「多忙」を理由に、現在のウイルス対応病床数だけでなく、ホテルに収容した人数や、自宅療養者数も取材に答えておらず、「いつになったら答えられるかも分からない」と話している。
しかし、杉並区が入手した数字によると、4月27日までに自宅からホテルに直接収容された患者は、都内全体で173人にすぎない。うち杉並区分は15人だ。同日までの同区の感染者数は198人だから1割にも満たない。
一方、同区の自宅療養者は32人もいる。東京全体の自宅待機者は公表されていないので推定するしかないが、仮に杉並区と同じ割合だとすると、都内では300人を超える感染者が自宅待機となっている計算だ。
田中良・杉並区長が、新規感染者のホテル収容が一向に進んでいないと気づいたのは、都が4月17日に自宅か
らホテルへの移送を始めた直後だった。
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