桃尻語訳による枕草子を始め、絵本徒然草、窯変源氏物語、桃尻誤訳百人一首等々、数多の現代語訳による古典を発表してきた橋本治センセイによる、「落語世界文学全集」の第1回目「おいぼれハムレット」。
これが面白いのなんの!!
帯に「西洋のお大名家のお話しも色々とございます内で、『長ろうべきか死すべきか』で評判を取りました後日譚」とある通り、歳を取っていぼれた「ハムレット」である。原作では、最後には全員が死んでしまうが、ここでは誰も死なず、元気に年寄りをやってる。
ここでは、オフィーリアも死なずに歳を取って(耳が遠いフリ、呆けてるフリをする)尼になっていて、時々ハムレットの前に現れてはジャマするかき回す。。。。
北風吹きすさぶ城壁の天辺のシーンから始まるのだが、ハムレットもすでに80歳過ぎ。付き従ホレイショーも同様に歳を取り、半分呆けている。。。
“落語”版であるから、語り口はほとんど落語か講談か、ハムレットは『ご隠居』。
三代揃って長男の名前は“ハムレット”で、弟は“クローディアス”、奥方は“ガートルード”。なので、誰が誰だか分からなくなってる(読む方も混乱してくる)。。。ハチャメチャです。
スラブからの難民が城内に押しかけてくるのを、「通すだけなのよね?通って、ノルウェーに行っちゃうんだわよね?」と妃のガートルード。「だったらさっさと門開けなさい!ささと明けて、追っ払っちゃいなさい!・・」。。。。あれれ。。?これはあれ??
最後は、墓から掘り出されたシェークスピアの髑髏を手に「これに酒を接ぎますと、“お前ェ、ふざけるのも大概にしとけよ”と申しますそうで」とオチが付いて、めでたく『お後がよろしいようで』で終わり。
巻末に、「ページが余っちまったンで、楽屋噺でもなんでも」と席亭に言われたと、あとがき代わりの談があるが、これもまた財務省事務次官のセクハラの“言葉遊び”があったり(最後の文章は「あたしももう年なんでね、落語世界文学全集なんて言ったって、いつまで続くか分かりゃしませんよ。死んだらおしまい。予定は未定ってことでね。じゃ、あたしは帰りますよ。お疲れさん。キスしていい?ハハハハハ。最近のお気に入りだよ」)、抱腹絶倒の可笑しさ。
橋本治センセイの“知”は古今東西剛柔自由自在。大笑いのうちにたっぷりアタマが刺激されました。
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