国立新美術館で開催中の「カルティエ、時の結晶」展を観た(もう2週間前のことになっちゃったけど💦)。
先月の終わりに観た映画「去年マリエンバートで」では、衣装担当したシャネルのスタイリッシュなドレスの数々に耽溺(!)って感じだったが、今回は、カルティエである(!)。どちらもフランスの文化・伝統・技術と感性が合致して最高の美を創造してきたことを物語っている。
序章は、「時の闇 ミステリークロック、プリズムクロック」。
時計のムーヴメントは台座や装飾彫刻の中に隠され、光と目の錯覚を利用して、まるで2本の針が浮かんでいるよう。。
”時計師だけでなく金銀細工師、エナメル職人、研磨師など、多くの職人が携わり、完成までに最低でも数ヶ月かかる”という(!?)
綿密に計算され、手をかけて丁寧に完璧な形を創り上げていくその過程を想像するだけで、手仕事でしか作り得ない芸術品の素晴らしさに感動する。
1923年頃のものから50年代、90年代、2015年16年と、制作年代が異なる作品は、時代の新旧を感じさせない普遍性と一貫したカルティエの美意識で貫かれている。
この他、メタルの技術(プラチナ素材の導入など)によるティアラの数々やネックレスの煌びやかで色褪せない輝き、
石の技法(翡翠、クウォーツ、化石かした石など)によるネックレスやブレスレットの色や質感の深み、さらに、エナメルや真珠母貝、カワセミの羽根、バラの花びらなど使った象嵌技術の高度な職人技。。。。どれもこれも繊細で丁寧で、かつ大胆な発想から生まれた作品が並ぶ。
第2章「フォルムとデザイン」、第3章「ユニヴァーサルな好奇心」と観ていくと、カルティエがほとんど森羅万象のものからデザインの本質を掴み、計算された必然だけでなく偶然、日常性と非日常性、自然の写実と抽象、東洋と西洋といった、相対するもの全てを取り込んで昇華してきた過程のようなものも感じたのであった。
会場はほとんど真っ暗で、最初は眼が慣れずに「足下コワイ〜!」。
白い円柱に置かれ薄いベールで包まれたミステリークロックの展示は、暗闇の中に浮かび上がって息を吞む美しさ!
帰宅して、オットに話したら、「お店じゃないんだから。。暗くしておかないと、間違って売ってると思っちゃう人もいるんじゃないの?」と。なるほど!芸術品としてのカルティエの仕事を見せる展覧会だからね。
会場の出口にはどの展覧会でもおみやげや記念品など売ってるが、今回は、さすがカルティエ!壁にはカルティエの本がズラリと黒い背表紙を見せて並んでいて、無駄なし。雑多なし。完璧なカルティエの世界にまとめていた。
それにしても、今回展示された作品の数々には、カルティエコレクション以外に個人蔵のものが多数並び(アクセサリーだしね)、ヴォリュームのあるネックレスや(重そう〜。。)ブレスレットなどを観ると、ヨーロッパの豪奢な王族や貴族階級の存在と時代背景があってこその芸術品だと思わざるを得ない。贅沢さ、豪華さ、知性がより本質的に美しいものを育み、生みだしてきたのだろうなぁ。
国立新美術館 https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/cartier2019/
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