18時24分35〜36秒
『ドーン』と言う衝撃音と共にこの悲劇は始まってしまいます。
18時24分37秒
警報音が鳴り響きます。
この警報音を事故調は客室高度警報音として事故調査報告書に記載しています。
1秒間に3回警報音がなったと。
この客室高度警報こそが、急減圧があった証拠であると言う見解です。
これこそが与圧隔壁破壊の為に起きた急減圧で、されを示すのが警報音であると結論付けました。
しかし、本当にそれが正しいのでしょうか?
実はこの警報音は1秒間に3回ではなく
1.4秒間に5回鳴っていたのです。
これは、ノイズリダクションをかければハッキリと判りますし、可視化されたグラフにも1.4秒間に5回鳴ったと言う事が示されたのです。
そもそもボイスレコーダー冒頭の衝撃音の後に鳴り響く警報音は客室高度警報音と離陸警報のどちらかです。
両方は同じ警報音を使用しています。
離陸警報は主に地上で、客室高度警報は離陸後使用されるものであるから、同じでも構わないと言う事です。
24000ft上空は約8000m弱です。
この高さの気圧は0.3気圧です。
空気は薄く、デスゾーンと呼ばれる高さです。
その為に機体内部は圧力が高められ地上気圧に近い状態にされています。
これを与圧と言います。
B747には2種類の与圧があります。
差圧8.9psiこれは、更に高高度を飛ぶ事が多い国際線が主に行う与圧です。
差圧6.9psiこれは主に国内線が行う与圧です。
そして当時のJALは国内線に於いても8.9psiに設定されていました。
事故調はコレに対して『6.9psiならば与圧隔壁の疲労は3倍に延びていただろう』と見解を示しています。
さて、この差圧とは客室内の気圧ではありません。
差圧とな外気圧と客室気圧の差を表すものです。
これを計算する公式がありこれを
測高公式と言います。
P=po{1−0.0065z/(to+273.15)}^5.257
poとは気圧(hpa)
toは地上気温(℃)
zは高度(m)
事故当日の気象を加味しながら計算すると
地上気圧1013hpa、当日の気温26.3℃、高度は7285m
先の公式を基に計算すれば
上空気圧P=409.84hpaになります。
これを重量毎平方inchに直します。
(÷68.948)
5.94psiとなり23900ft気圧となります。
これは衝撃音がした時に飛んでいた高度とぴったり合います。
では客室気圧を計算してみましょう。
1013hpa、外気温26.3℃
客室内設定高度198.12m(650ft)
990.3hpa
(÷68.948)
14.36psi(0.977気圧)となります。
14.36−5.94=8.42
差圧8.42psi
事故調もほぼこれと似た差圧を計算しています。
事故調はこの差圧こそが後部圧力隔壁を破断に導き、客室の気圧を一気に低下させた為に、冒頭の警報は客室高度警報が作動した音であると推定し結論付けています。
しかしこれはあくまで『推定』です。
果たして事故調の推定は正しいのか?
寧ろ事故調の事故原因に対する結論から考えれば『客室高度警報でなければならない』と言うご都合が働いているのではないでしょうか。
当然ながら、客室高度警報が鳴るには条件があります。
それは客室内気圧が10000ftに達した時に警報音はなり出します。
事故調が示したグラフ計算では衝撃から最速で1.656秒です。
この客室高度警報のセンサーはコックピットにあります。
圧力隔壁で変化した気圧はコックピットのセンサーに届くまでの時間はパスカルの原理にしたがい時速1224kmで届きます。
これはつまり音速で均一に広がるわけです。
東大名誉教授の加藤寛一郎氏は大雑把ながら『圧力隔壁の開口が1㎡ならば2.4秒』と計算しています。
事故調は圧力隔壁破壊により約11tの前向き圧力がかかったとしています。
加藤教授はフライトレコーダーから
力=(重量÷G)×0.05G=0.05×重量=12t
と計算しています。
そこから圧力隔壁の開口面積を0.83㎡と導きだしています。
更に開口面積が1㎡、客室気圧1気圧であった場合の計算が2.4秒と言う事です。
つまりこの時間は客室の圧力高度が圧力隔壁破壊から客室圧力が10000ftに達して、警報がなるまでの時間と言う事です。
しかし、事故調は開口を1.8㎡と言う見解で1.656秒と試算しています。
また、事故調の報告書では減圧が緩やかだった場合でも5秒としています。
つまり事故調は1.656秒から5秒の間に客室高度警報が鳴ったはずだと推定しているのです。
圧力隔壁から収録用マイクまでの距離は53.7mです。
最初の衝撃音がマイクまで届くには経路は2種類。
一つは機体内部を伝わる空気伝播。
もう一つは機体そのものを伝わる固定伝播音です。
音の速さは密度と体積の弾性率で変わります。即ち硬さです。
密度が高く硬いほど音は早く伝わる。
普通に考えれば機内の空気伝播音より機体を伝わる個体伝播音の方が早く届いたはずです。
空気中の音速は摂氏0℃1気圧の場合、331.5m/sです。
1℃上がる毎に、0.6m/s速度があがるので機内を25℃とした場合
331.5×0.6×25=346.5m/s
と、なります。
機体は金属ですから密度が高く硬い、約空気の15倍程度で5000m/sになります。
しかし旅客機の機体構造は複雑な為、機体を伝わる正確な速さはわかりません。
しかし、空気伝播音と時間差があった事は確実です。
過去にこの時間差をあるテレビ番組が解析したことがあり、その時間差は約0.14秒と結論しています。
空気伝播音が機内マイクまで伝わった時間は約0.15秒。
と、言う事は固定伝播音は0.01秒で機内マイクに達した事になります。
これによりボイスレコーダーの波形を検証した結果、隔壁破壊から1.58秒後に警報がなった事がわかります。
事故調推定の1.656秒より短いのです。
となると警報音は客室高度警報ではない可能性が出てきます。
しかしこれはあくまで圧力隔壁の開口が1.8㎡と仮定した場合です。
しかし警報圧力到達時間はいくら開口を1.8㎡より大きくして計算しても1.58秒より早く鳴ることは不可能なのです。
そもそもそんな短時間の急減圧が起こりうるのか?と言う事です。
生存者の証言では機内に急激な空気の流れは無かったとあります。
急減圧があれば、機内の空気は一気に外に排出されてしまいますか、相当な速さの空気の流れがあったはずです。
つまり最初の警報音は客室高度警報音ではないと結論付けるしかないのです。
では、あの警報音はなんなのか?
次回、別の角度から考えてみようと思います。
続く...