中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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今さら「体験」ですか?

2014年04月23日 | コンサルティング

今年の入社式からそろそろ1か月、多くの企業では新入社員研修が一段落する頃だと思います。もちろん、「一段落まで行っていませんよ。うちの配属は7月ですから」というところや、「配属は1年後で、それまでは各部署で修業です」というところもあるでしょう。

ところで、最近の新入社員研修に関する報道で少々気になっていることがあります。

それは、「体験型研修」が新しい流れであり、従来の研修は「一方通行講義型」とされていることです。さらに、従来の研修は駄目で、体験型こそが非常に有効だともしているのですが、私はこうした報道に接するたびに、違和感を持ちます。

その理由は2点あります。

一つ目は、私が研修の仕事に携わるようになってかれこれ20年以上経ちますが、当時から研修は決して「一方通行」ではなく、ロールプレイングやケーススタディなどの演習を取り入れた「双方向」で進める研修が主流だったことです。社内ルールや部署の紹介など、知識の付与を目的とした研修ならばともかく、仕事の進め方やスキルを学ぶ研修で受講者が一方的に聴くのみという研修はまずありません。

そうした歴史を知ってか知らずか、「過去の研修は一方通行であり、体験型が新しい」と紹介しているのです。また30代くらいのアナウンサーまでもが「私の時代は研修中はひたすら眠気との戦いでしたが、体験型なら眠くならなくて良いですね」などと言っているのも、とても気になります。

二つ目は体験型だけが有効だとすることです。ある報道ではこのことを「普段の食事は昨日食べたものでも思い出せないけれど、旅先で食べたものは何年たっても思い出せる。体験することで記憶に残る」と紹介していました。

もちろん、この全てを否定するものではありませんが、旅行やレクリエーションならともかく、研修では「〇〇の体験は楽しかった」という記憶だけが残っても意味はありません。

体験を実務で活用できるようにするためには、まず講義できちんと理論を伝え、体験後には丁寧な振り返りをすることではじめて意味をなすのです。

そのためには、ある程度は講師が「一方的」に講義する時間も必要になってきますし、また、振り返りにおいては個々人で振り返ることもとても重要です。

新しいものに変更してもらうには、従来型を否定するのが手っ取り早いのかも知れませんが、体験だけすればよいわけではないのは言わずもがなで、取り違えて否定されたのでは困ります。

研修を企画される担当者様には「体験が良い、従来型の一方通行の研修では役に立たない」というフレーズの提案があった際には、是非「体験型研修は最近の流行ではなく、実は20年以上前から取り入れられていること」、「体験することが有効ではなく、体験したことを実務でどのように生かせるかが重要であること」を思い出していただければと思います。

(人材育成社)