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パワハラをしている当事者には自覚がない

2018年03月07日 | コンサルティング

7万1千件。これは2016年度に厚生労働省や各労働基準監督署に寄せられた労働相談のうち、パワハラを含む「いじめ、嫌がらせ」に関する相談件数です。相当な数ですが、解雇や退職勧奨の件数を上回り、5年連続のトップだったとのことです。

「パワハラ」という言葉の定義がなされてからはや6年たちますが、パワハラは減るどころか増加の一途をたどっています。2016年に心の病を患って労災認定された人は498人ですが、その原因のうちでトップなのが「嫌がらせ、いじめ、暴行」とのことです。

6年の間に抜本的な改革が進まない中、現在、厚生労働省が対策として議論しているのが法制化です。これまでの対策は、企業の自主的な努力を促すための周知・啓発が中心でしたから、法制化に向けた動きは対策が大きく飛躍するきっかけとなるのかもしれません。

パワハラの件数が増加している中、弊社が担当させていただいている管理者研修の育成指導の項目では部下の「ほめ方」と共に必ず、「叱る」という行為にも時間をたっぷりととって焦点を当てています。

その研修では、叱るとはどういうことなのか、何を目的に行うのか、どういう叱り方をすれば部下が成長するのかについて、講義と共に徹底的にロールプレイングを行い、練習をしていただいています。

この研修の中で数多く見受けられるのは、大半の管理者は叱ることとパワハラを一緒くたに考えてしまい、叱ることに強いためらいを持っている人が多いということです。

しかし、実はこういう人はパワハラについて一定の意識をしているわけですから、パワハラをする心配はないのです。反対に部下を叱らなければならないときに叱れず、管理者としての役割を果たせてないという別の問題はありますが。

一方、パワハラをする人に共通している特徴は、本人にはその自覚がないことで、そのことが被害を大きくしています。

先日の研修でも、自身のパワハラにより部下を退職に追い込んでしまったり、異動させざるを得ない状態を作ってしまったりしている管理者から「最近の若い人は傷つきやすくて困る」という話を聞きました。当の本人にはパワハラをしている自覚が全くなく、若者に関するステレオタイプの傾向を問題視している発言でした。

そういう人には、研修で繰り返しパワハラの問題点を伝えても、本人にその自覚がないため、残念ながら効果はほとんど期待できません。

そもそも、こういう人が管理者に任命されていること自体が問題なのですが、このような人に限って「上」を見て仕事をしているので、経営者には実態が伝わっていないことが多いのです。したがって、これは経営者の任命責任とも言えますが、これも大変な問題です。

働き方改革が叫ばれている中、長時間労働の背景にパワハラが潜んでいる可能性があると言われていることも踏まえ、パワハラの撲滅に向けて本気で取り組む姿勢、それがいよいよ必要になってきています。

こうしたことから、前述のようにパワハラ防止策の法制化を巡り、現在各方面で様々な議論が行われています。法制化には賛否両論ありますが、パワハラを本気で防止することを考えるならば法制化もやむを得ない、私自身はそのように考えています。

さて、管理職をはじめ部下を指導する立場にいる皆さん、皆さんはパワハラの定義を意識していますか。そして、そうならずに部下をきちんと叱る自信がありますか。

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