最初に結論を言ってしまいますが、理不尽な研修がなくなることはありません。「理不尽、ブラック、スパルタ式」研修といえば、あの「富士山のふもとに幽閉されるブラックな」研修会社が有名です。研修の内容(ごく一部)は次のようなものです。
朝のラジオ体操。全員が真面目で気合いの入った体操ができるまで終わらない。「何事においても本気で挑む」という精神を学ばせる。昼、チーム対抗40Kmウォーキング。目的達成のために何をすべきかを学ぶ。午後、作文を書かせて、制限時間内に終わらない場合は作文用紙が破り捨てられる。納期厳守を学ぶ。夜、長文を暗記。限界まで大きな声を出しながら暗記する。「限界」と見なされなければ怒鳴りつけられる。翌日は「断食の日」。当たり前にできていたことができなくなった時の辛さを経験させる。
こうした研修を好む経営者が世の中には少数ですが存在します。ちょうど「ゲテモノ料理」を好む人たちがいるように。したがって、こうした「ゲテモノ食材」を出す店も無くならないのです。
「スパルタ式・ゲテモノ研修」の弊害については、今更解説する気も起きませんので止めておきます。私は20年近く大学で非常勤講師をしていますが、具体的な社名を挙げて「この手の研修を採用している会社には絶対に行かないように」と指導しています。もっとも、理系の大学院生が受けるような会社はほとんどありませんが。
「スパルタ式・ゲテモノ研修」が一部の経営者にうける理由のひとつに、新入社員の離職率の「高さ」があります。つまり、「ゆとり世代」は厳しくしつけられていないからすぐに辞めるのだ、という理屈です。「ゆとり世代は根性が無い」、「ゆとり世代はすぐ辞める」と口にする経営者は意外と多いのです。
「ゆとり」はすぐ辞める。その証拠(エビデンス)を求めて調べてみました。厚生労働省が発表した「新規学卒者の離職状況 」※を見ると「ゆとり教育」を受けた大卒就職者の入社3年以内の離職率は、それ以前と比べるとむしろ若干減少しています。
長らく学生に接してきた人間として感想を言えば、「ゆとり世代」の学生の真面目さと学力は、現在の40代、50代の管理職層よりも間違いなく上です。「ゆとり世代」の欠点があるとすれば、そうしたダメな管理職層の人々にむやみに従順なことです。ブラックな研修は、ダメな管理職にこそ有効な気がします。
さて、「ゆとり世代」をさんざんこき下ろす某社の経営者に「ゆとり以前の新人は、やはり今とは違っていたのですか?」と質問したところ、「知らない」という答えが返ってきました。
この会社の離職者が多い理由がわかりますね。