「サーバントリーダーシップ」という本※1を読んだのは10年近く前のことです。とても興味深い内容でした。組織におけるリーダーはサーバント(召使い、使用人、従者、家来・・・)であれというのがその主張です。たとえば、会社では上司はまず部下に「奉仕」して、その後部下を正しい方向に導きなさいというものです。
かつて日本の会社では、上司が部下に対して一方的に指示・命令を下す「支配型リーダーシップ」が主流でした。2000年に出版された「上司が鬼とならねば部下は動かず」※2という本では「良い上司とは部下から恐れられる「鬼」でなければならない」という考え方に貫かれていました。この本のタイトルは極端ですが、「リーダーとは”ボス”であるべき」というのが日本的なリーダーシップの在り方でした。
しかし、人手不足が深刻化している現代では、鬼のような上司がいる会社は敬遠されます。もしも「〇〇社のXXという部長は、いつも部下に対して一方的な命令をする」といった社員の話がネットで流れようものなら、採用でかなり苦労することになるでしょう。
そのせいか、一部の管理職研修で「上司は部下の召使いであれ」といった誤った指導がなされることがあります。そこでは、部下の要望はできる限り受け入れる、部下の心を「癒す」ことを心掛ける、といった「なんでもかんでも部下中心」マネジメントとでも言うべき内容が教えられています。
前回のブログでも書きましたが、一部の不勉強な研修講師が「上司は部下を呼びつけてはいけない」とか「上司は最優先で部下に気を遣え」などと滅茶苦茶なことを言うわけです。
言うまでもありませんが、上司は召使いでも鬼でもありません。「上司」や「部下」というのは、あくまでもfunction(ファンクション:機能、役目)です。職場では、上司は部下に指示・命令をするという「役目」を果たさなければなりません。それは人として上位にあるからではなく、そういうfunction(機能)だからです。
「サーバントリーダーシップ 」とは、本をしっかり読めばわかりますが、部下を支援しつつ正しい行動に向かわせるための指導方法です。
「上司は鬼」論も「上司は召使い」論も、その時々の社会情勢でもてはやされしまうのは仕方がないとしても、せめて人材育成に携わる研修講師はもう少しまともな講義をしてほしいものです。
それが研修講師のfunctionではありませんか。
※1「サーバントリーダーシップ 」R・K・グリーンリーフ(著)、英治出版、2008年
※2「上司が「鬼」とならねば部下は動かず―強い上司、強い部下を作る、31の黄金律」染谷 和巳 (著)、 プレジデント社 、2000年