中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,246話 書き続ける訳

2024年12月25日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「やっと新しいネタを考えなくて済む、ほっとしているところがあります」

これは、漫画家の西原理恵子さんの言葉です。最強のおばさんの日常をコミカルに描く「りえさん手帖」が22年の時を経て、2024年12月23日に最終回(373回)を迎えたそうです。最終回を迎えるにあたり、先日(12月16日)「りえさん手帖」を掲載していた毎日新聞に西原さんのインタビュー記事が掲載されていました。記事の中で西原さんは、「毎週の掲載はきつかったです。ネタが思い浮かばず、行き当たりばったりのときもよくありました。昨日締め切りだった作品がよく描けていて、今日はそれを褒めて欲しいのに、『はい、次』と自分をせかす日々でした。だから22年は一瞬。これからは夢の中で漫画を描くこともなくなるかな、と安堵しています。」とおっしゃっていました。

22年もの間、毎週書き続けることがいかに大変なことであるか、想像に難くないことだと思います。と言いますのも、西原さんの22年間とは比べものにはなりませんが、本ブログも11年前の2013年4月に始めて以来11年半が経過し、本日晴れて1,246回目を迎えることができたからです。「人材育成に関わることをテーマにする」をルールとして幅広く取り上げてきましたが、西原さん同様に毎回のネタを考えるのは決して簡単なことではありませんでした。ブログをインターネットにアップした瞬間はホッとできるものの、次の1週間はあっという間にやってくるため、今でも絶えず次のネタ探しに追われている日々を送っています。

ここまで苦労しながら、弊社ではなぜブログを書くことを続けているのでしょうか。それは、読んでくださったからのフィードバックが励みになり、モチベーションにつながっているからです。ブログを読んでくださった方から、直接お会いしたときやメールやSNSで感想をいただけるからなのです。中でもこれまでで最も感動的だったのは、ブログの中で取り上げた人に「〇〇さんのことを書かせていただきましたよ」と伝えたところ、後日便せん3枚に感想を丁寧に書いて手紙にして手渡してくださった方がいらっしゃったことです。いずれのフィードバックも、本当に有難いと感じています。

もう一つ励みとしているのは、朝日新聞の毎週木曜日の夕刊に掲載されている三谷幸喜さんの「ありふれた生活」です。こちらは12月19日時点で1,212回書かれています。しかしながら、三谷さんが講演で話されていたところによると、朝日新聞で萩原延壽さんの「遠い崖アーネスト・サトウ日記抄」が1,947回、大佛次郎さんの「天皇の世紀」は1,555回、アサヒグラフで團 伊玖磨さんは「パイプのけむり」を1,842回書かれたとのことでした。こうした先人達の足跡は素晴らしいとしか言いようがありません。

このブログは回数などのゴールは特に決めておりませんが、書くことにより自分や物事を客観視できたり、新たな気づきを得たりすることができることなどがありますので、今後もネタ探しには四苦八苦しつつ、皆さまからいただけるフィードバックを励みに今後も続けていくつもりです。

さて、今年のブログはこれが最終回になります。この一年ご覧いただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

それでは皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。

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第1,245話 外発的動機付けと内発的動機付けのバランスとは

2024年12月18日 | 仕事

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「給与が今よりも高い会社に転職をすることにしました」

これは、先日知り合い40代前半の男性から聞いた言葉です。彼は長年製造業で監督職として活躍していましたが、このたび給与を上げたいと考えていたのだそうです。詳しく話を聞いたところ、現在の業務や会社自体には大きな不満はなかったそうですが、彼が言うには年齢的にもラストチャンスであり、今後必要となる子どもの教育費などのことも考え、転職を決断したのだそうです。

近年、人材の採用難に対する施策の一つとして給与を上げる会社が増えています。雇用される側としても給与は高いに越したことはありませんので、それ自体は歓迎できることで特に問題はないと思います。

この給与が上がることを動機づけ理論の視点で考えると、外発的動機づけであると言えます。外発的動機づけとは、外部からの報酬や罰などの力によってやる気にさせるもので、たとえば金銭的報酬を得たり、ペナルティを避けたりすることなどを目的として行動を起こさせるものです。一般的に外発的動機づけは人を動かす強い力になりますので、有効な手法とされています。ただし外発的動機づけには問題点もあり、報酬や罰などの刺激を与え続けていないと、いずれやる気が失われてしまうことです。

そのように考えると、給与が高い会社に転職をすることはやる気の向上に寄与することにはなりますが、やがては時間の経過とともに上がった給与にも慣れてしまい、だんだんとやる気が失われていってしまわないとも限りません。

先日、高崎市にある「かみつけの里」博物館に行く機会がありました。ここは、榛名山東南麓で出土した5世紀後半(古墳時代)の人物・動物などの埴輪を模型にして、当時の様子を再現し展示している博物館です。館内の一部では「八幡塚古墳」についても紹介しているのですが、まず古墳を作るための工事費は現在の金銭に換算すると10億円ほどであり、そのほぼ全てが人件費に該当したとのことです。しかし、当時は報酬という概念がなかったため、労力の9割を占める村人たちは食事や少しの褒美を与えられるくらいで労働力を提供したと考えられるのだそうです。

それでは、そうした村人達が古墳を作ることへのモチベーションをどのようにして維持できたのかということについて疑問を持ちますが、村人たちは古墳の造営という壮大なプロジェクトに参加できるということが彼らにとってのステータスになったとも考えられるとのことです。現在のように機械はなく人力のみで古墳を作るとなると、強制されムチで打たれて労働力を提供させられていたようなイメージの、これまでの見方は変える必要があるのかもしれないとも紹介されていました。

このことは、まさに現在でいうところの内発的動機付けに当たるものだと思います。内発的動機づけとは、報酬などのためではなく自身の内部から湧き出る意思で動くことであり、私たちは仕事にやりがいを感じられたり何らかのステータスを感じられたりすると、やる気をもって前向きに働くことができるということです。

人材をなかなか採用できない、あるいは貴重な人材に転職や退職をされてしまうことを避けるためには、報酬が上がるという外発的動機付けが手段として有効であることは確かですが、同時にそれだけでは自ずと限界もあります。

したがって、外発的動機付けと内発的動機付けのどちらか一方だけに取組むのではなく、両者をバランスよく組み合わせながら、継続的に社員のやる気を引き出していくことが大切なのです。そのためには、適切なタイミングで報酬や福利厚生などを見直していくとともに、現在の仕事の魅力ややりがいをあらためて理解してもらうことです。将来の展望やそれに向けた計画などを具体的に示すなどにより、引き続き社員にやる気・モチベーションを持ち続けてもらえるようにバランスよく取組んでいくことが大切だと考えています。

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第1,244話 リーダーシップの発揮には様々なスタイルがある

2024年12月11日 | 仕事

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「おまえは30点でいけ」

これは女優の今田美桜さんが、俳優の中井貴一さんから言われた言葉だそうです。

先日、新聞のテレビ欄を見ていたところ「徹子の部屋」の出演者に今田さんの名前があり、加えて「中井貴一さんから言われた言葉が支えになっている」との見出しがありました。

それを見た私は、「中井さんの言葉に影響を受けた人がまたいるんだ」と思い、即座に録画予約をしたのです。

「徹子の部屋」では、今田さんは20歳のときにドラマで共演した中井さんから「おまえは30点でいけと声を掛けられ、その後肩の力が抜けて楽になった。背伸びしすぎなくていいんだ。 その言葉あったから、そのあとも頑張れたのかなった思っている」と語っていました。続けて、「迷ったとき、失敗したときにはその言葉を思い出して、また新たに頑張れる言葉の一つ」だとも話していました。

私はこれまでにもテレビで、吉田羊さんさんや柳沢慎吾が中井さんの言葉によって新たな機会が訪れたという話や、落ち込んでいるところを助けてもらったなどの話をしているのを見聞きしたことがあります。中井さんのことを、様々な人に対してプラスの影響力を発揮されている方だと思っていましたので、テレビの中の人ではありますが関心を持って見てきました。

前述の3人それぞれのエピソードからわかるのは、中井さんはとてもリーダーシップがある方だということです。そして、そのスタイルはぐいぐいと周りを引っ張るリーダーシップではなく、本人が気づいていない演技力を他者に伝えることによって新たな道を開くきっかけを作ったり、中井さん自身の出番は終了しているにもかかわらず、落ち込んでいる共演者の仕事が終わる時間まで待っていてその後食事に誘ったり、さらには今回の今田さんのように今後どのように頑張ったらよいのか悩んでいる人に「30点でよい」と声をかけたりするなど、ソフトなリーダーシップを発揮していると見て取れます。

話は変わりますが、弊社が研修を担当させていただく際に「リーダーシップからイメージすること」を受講者に尋ねることがあります。すると、多くの受講者がイメージするリーダーシップは「指導力」や「統率力」など力強い言葉のイメージが多く、その結果自分はそうしたリーダーシップを持ち合わせていないと感じてしまうことが多いように思っています。

リーダーシップ理論の一つにPM理論というものがありますが、これはリーダーが持つべき機能をP機能(Performance Function:目標達成機能)とM機能(Maintenance Function:集団維持機能)の2軸で捉えるものです。

P機能は成果を出すために発揮されるリーダーシップで、目標の設定や計画の策定をしたり、メンバーへ指示したり、問題発見・課題解決を率先し行ったりするものです。

一方のM機能は、人間関係を良好な状態に保つことによって、チームワークを強化していくスタイルで、具体的にはメンバーを観察して積極的な話を聴いたり、勇気づけをしたりメンバー間が対立したときに調整をしたりすることです。

そして、それぞれの機能の発揮にあたっては様々なやり方・スタイルがあるわけですから、リーダーシップにも様々なスタイルがあって当然で、100人いれば100通りのスタイルがあるということだと思うのです。

中井さんから様々な影響を受けた3人のエピソードを聞くことによって、改めてリーダーシップの発揮には様々なスタイルがあること、ソフトなリーダーシップでも他者との関係性の中で強い影響力を発揮できるのだということが改めて整理できたように感じています。

多くの人にプラスの影響を与え続けている中井貴一さん。これからのますますの活躍を楽しみにしたいと思います。

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第1,243話 自分のスキーマを把握しているか

2024年12月04日 | コミュニケーション

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「これはどのようにやればよいのですか」

弊社が研修を担当させていただく際には、テーマにかかわらず講義を行った後に必ず演習に取り組んでいただいています。その際、私としては演習の説明を丁寧に行ったつもりであっても、実際に演習が始まると既に説明をしたことであっても受講者から再度質問されたり、受講者によっては説明の中で指示したことと違うことを始めてしまったりすることがあります。そのようなときに受講者から言われるのが冒頭の質問です。私としては懇切丁寧に説明をしたつもりなのですが、このようなことがあると「伝えることの難しさ」を改めて感じることになるのです。

そうした中、先日今井むつみ氏の「『何回説明しても伝わらない』」はなぜ起こるのか?」という本を読む機会があったのですが、その中では「スキーマ」が取り上げられていました。スキーマとは、認知行動療法における特定の状況や事柄に対する個々人の認知の枠組みのことを言います。スキーマは過去の経験や育った環境などから形成されるものであり、自身の物事への捉え方や対人関係などの行動のパーターンに大きな影響を与えています。今井氏は本の中でスキーマを「当たり前」という言葉で説明していました。自分にとっての当たり前ということです。

これに関して、私たちが他者とコミュニケーションをとる際に、ある事柄について「自分にとっては当たり前のこと」として話をしてしまうと、相手にはきちんと伝わらなかったり、場合によっては誤解をされてしまったりということがありえます。これらのことから考えると、先述のとおりの私が担当する研修においても、幾人もいる受講者の中にこちらの意図が簡単には伝わらない人がいるということは、極々当たり前のことと言えるわけです。

では、このスキーマについて私たちが対人関係においてうまく活用していくためにはどうすればいいのでしょうか。そのためには、まずは自分のスキーマが具体的にどこにあるのかをきちんと認知することから始める必要があると思います。具体的には、自分自身を振り返って再認知するとともに、他者からのフィードバックを積極的に受け入れたり、ときには診断テストなどを受けてみたりするということも、その助けとなるのではないかと考えます。

同時に、他者とコミュニケーションをとる際には「うまく伝わる」ことを前提にするのではなく、そもそも簡単に伝わるものではないということを踏まえておくことが必要です。だからこそ相手にきちんと伝わるようにするためには、繰り返し伝えたり、様々な手段を駆使するとともに、思いがけない他者からの質問に対してはいらいらしたり慌てることなく、根気強く説明をしていくことが大切になります。

このようにスキーマをうまく使いこなすことができれば、他者とのコミュニケーションにおける有効な手段とすることができると思います。私自身、冒頭のような場面でいかに使っていくかを改めて考えているところです。

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第1,242話 マイクロアグレッションをしていないか

2024年11月27日 | コミュニケーション

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「事あるごとに、『て言うか、〇〇だよね』と言われてしまうんです」

これは、先日弊社が担当させていただいたコミュニケーション研修の際に、20代の受講者Aさんから相談をされたときの言葉です。

具体的に話を聴いてみたところ、AさんがB上司に業務の報告をすると、毎回冒頭のように言われてしまうのだそうです。Aさんとしては事実関係とそれについての考えを整理してきちんと報告しているつもりなので、「て言うか・・・」と連発されてしまうと自分を否定されているような気持になってしまい、話を続ける気持ちがすっかり失せてしまうとのことです。

この「て言うか・・・」は、元々は「と、言うか・・・」や「と言うよりは・・・」と表現するところを縮めた言い方だと考えられますが、相手の発言や提案を否定する意味合いを持っています。言っている本人は「そんなつもりはない…」と考えているのかもしれませんが、これを繰り返されると言われている方としては否定され続けているように感じられてしまいます。同時に話を続ける気持ちがだんだんと失せてしまい、やがては自信すら喪失してしまうことになりかねないことが心配されます。

これに関して、最近「マイクロアグレッション」という言葉を耳にするようになりました。マイクロアグレッションとは、「小さい」を意味する「micro(マイクロ)」と「他者への攻撃」を意味する「aggression(アグレッション)」を組み合わせた言葉で、直訳すると「小さな攻撃」と言えます。個人と個人の間のミクロな関係に注目した概念なのですが、B上司はAさんに対してまさにマイクロアグレッションをしていたのかもしれません。

このマイクロアグレッションの背景にあるのが、以前本ブログでも取り上げたことがある「アンコンシャスバイアス」(無意識の思い込みや偏見)です。これは無意識の思い込みや偏見によって、本人にはそのつもりはないけれども他者を傷つけてしまうということです。そのように考えると、冒頭のB上司からAさんへの発言は「アンコンシャスバイアスに基づいたマイクロアグレッション」(無意識の思い込み・偏見による小さな攻撃)に当たると言えるのかもしれません。たとえばBさんは自分よりも上の立場の人や顧客の発言に対しては「て言うか、〇〇だよね」と言うことはないはずです。

それでは相手の発言と自身の考えが異なる場合に、上記のような状況にならないようにするためには、どのように表現したらよいのでしょうか。

それには、相手の意見をいったん最後まで聴いたのちに、「Aさんは○○のように考えたんだね。私の考えはAさんとは少し異なっていて、△△のように考えるけれど・・・」などと言えば、相手が受ける印象は冒頭の例のような頭から否定されたようなものとは全く違ってくるのではないでしょうか。

B上司のように「て言うか、〇〇だよね」を連発している人は、それが自分の口癖なのだと考えるだけでなく、その根底には「無意識による小さな攻撃」があるのかもしれないということを認識することが大切です。

このブログでもこれまで何度も書いてきているように、人と人のコミュニケーションはとても大切なものですが、それゆえに難しいものでもあります。自身の言葉が相手への小さな攻撃になっていないかどうか、一度自身を振り返ってみてはいかがでしょうか。

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第1,241話 情報のファクトチェックとは

2024年11月20日 | 仕事

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記者:「それはファクトなんですか?」

返答者:「それはわかりませんが、作り手(ユーチューバー)が調べていると思いますよ!」

去る11月17日に行われた兵庫県知事選挙の結果判明後に、テレビ局が街頭インタビューをした際のインタビュアーと答え手の間で、このようなやりとりがなされていました。

職員へのパワーハラスメント疑惑等で県議会から不信任を決議され、失職した知事の出直し選挙でしたが、その結果は前知事が再選されました。前述の街頭インタビューでは、知事を支持した人が「ユーチューブではパワハラはなかったと言っている。テレビの報道がいい加減だ。テレビは信用できない」と興奮冷めやらぬ様子で語っている姿が報道されていました。私自身はこれらのユーチューブを見たわけではありませんが、話の様子からはマスコミ等で報道されていたものとはかなり違った内容であると想像できます。これを含め、今回の一連の流れを見ていて改めて思ったことは、自分が目にする情報には事実がどうかわからないこと・間違っていることが含まれている可能性も否定できず、自分で情報の取捨選択をできるようにならなければならないということです。

インターネット上で膨大な情報が発信されるようになり、SNSをはじめとして私たちの身の回りには様々な情報があふれかえっている状態だと感じています。その情報はまさに玉石混合で中には明らかな間違いや偽情報が含まれており、そうした誤情報や偽情報を信じてしまった結果、誤った判断や行動をしてしまう例も少なくないようです。

日本ファクトチェックセンター(JFC)が国際大学グローバル・コミュニケーション・センターと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%だったとのことです。人は誰でもバイアスがあって、情報が自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向があるということです。

前述のインタビューに答えた人も、ユーチューブの内容が事実なのかどうか(少なくともマスコミで報道されていることと違うのはなぜなのか)を自身で考えることなく、頭から正しいと信じているように見えました。

インターネット上の真偽の不確かな偽情報や誤情報に振り回され、間違った判断や行動をしないようにするためには、情報の真偽を検証するファクトチェックを行うことが重要であり、最近では総務省も「ファクトチェック」の推進をしているとのことです。

弊社が担当させていただいている研修でも、インターネットから入手した情報を参考として受講者に提示する機会が時々あります。これまでも情報元の組織や概要を調べることはしていましたが、私自身もその際に自身のバイアスに基づいて情報を判断していることも確かです。

情報はファクトであって初めて意味をなすものであり、誤情報は人の判断を誤らせるものであるとの認識のもと、これまで以上に情報のファクトチェックを怠らないようにしなければならないと思っています。

もちろん、個人でできるチェックには限界があるとは思いますが、それでも何かの情報に接したときに、わからないことがあったり、ちょっとでも疑問を感じたりしたら「これは本当に事実なのだろうか?」と一旦冷静になって、考えてみることが大切だと改めて考えています。

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第1,240話 対象に関係なく、教えたり指導したりする側にとっての大切なポイント

2024年11月13日 | 仕事

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「Aコーチが良いから来ています」

これは私が通っているスイミングスクールの若い仲間が語った言葉です。スクールには老若男女様々なメンバーがいるのですが、長期間通っている人が多く各々の技量の向上に向けて毎週練習に励んでいます。その中の一人が1年前に練馬区に引越しをしたのですが、引き続き品川区にあるこのスポーツクラブまで毎週遠路電車を乗り継いでやってきていて、その彼が語ったのが冒頭の言葉なのです。

彼の言うとおり、我々のAコーチはなかなかに魅力的な人です。具体的には、まず説明がとてもわかりやすく、理論に基づき一挙手一投足の動きを説明してくれるため、我々も十分に納得した上でそれを実践することができるのです。Aコーチは50代だそうですが、現在でも定期的にレースに出て良い成績を挙げていて、経験に裏打ちされた説明には説得力があります。

また、Aコーチはメンバーに一律にコメントをするとともに、個々へのフィードバックがとても豊富です。コーチのコメントに基づき改善できた泳ぎができると、その瞬間に水中で親指を立てて「グッド」を示してくれることもあり、こちらも正しく改善できたことが即座に理解できるのです。そして、25m泳ぎ終えるたびに、「○○さん ここが良くなったですね。あとはこの点をこのようにすると、さらに良いですよ」と言うなど、とても褒め上手でもあります。

さらに一貫して明るく、「必ずできる」といった雰囲気で接してくれるため、たとえ難しい課題を与えられてもこちらも前向きな気持ちなって、俄然モチベーションが上がるのです。現在はメンバー全員に「年末までにバタフライ50m完泳」という目標が与えられていて、毎週それに向けて努力しているのですが、皆、達成できそうな気持になってきています。

このようなAコーチの指導を毎週受けるたびに、私も「教えることとはこのようなことか」と改めて実感しています。知識やスキルを伝えることに加え、やる気にさせることがいかに大切かを改めて感じています。

これらは様々な組織における上司から部下へ、先輩から後輩に仕事を教える際にヒントとなるところが多いと感じます。同時に私が日々担当している研修でも、「Aコーチのようにできているだろうか」と自身で振り返るきっかけにもなっているのです。

一方で、私が担当している研修や職場での指導と、Aコーチをはじめとするスポーツ競技などでの指導では、条件が大きく異なる点があると考えています。

それは、教えられる側のモチベーションの高低です。スポーツなどの監督やコーチが指導する選手は、そもそもその種目に対するやる気が高い人達です。サッカーやラグビーなどの球技スポーツも、駅伝をはじめとする陸上競技であっても、「レギュラーになりたい、試合に出たい」という強い目標があると思います。同じ意味で私が通うスイミングスクールの受講者の多くも、「もっと楽にもっと長く泳げるようになりたい」という前向きな気持ちを持っていて、そもそもモチベーション高い人たちです。

そのように考えると、Aコーチの指導が職場や研修においてすべてが活用できるというものではないとは思います。しかし彼の行っていることは教える対象がどういう人であっても、教えたり指導したりする側にとっての大切なポイントをしっかりと押さえていると思いますので、私も研修講師としてAコーチのようでありたいと考えています。

「教える」ことは実に奥が深く、やり方も一つではないでしょうが、それ故に追求し続けるべき課題であると考えています。

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第1,239話 できない理由を雄弁に語っていないか

2024年11月06日 | 仕事

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弊社ではコンサルティングの相談をいただいたり、研修終了後に質問をいただいたりした際に、こちらから提案をさせていただくことがあります。

その際に「やってみます。アドバイスをありがとうございます」と答える人もいらっしゃいますが、多くの場合はそこでその提案ができない、することが難しい理由を語り始められるのです。

その理由として挙げられるのが、「私はぜひその方法を取り入れたいと思うけれど、うちの社員はとても忙しいので、新たなことを取り入れるのはなかなか難しい」。また、「一般的な業界であればその方法はうまくいくと思いますが、うちの業界は特別だから、そのやり方を取り入れるのは難しい」などなど、「できない理由」を理路整然と、ある意味で実に「雄弁」に語られるのです。

そのような場面では、私は「できない理由」を一通りお聞きした後で、「それでは、今の状態を続けるのが宜しいかと思います」とやんわりとお伝えすることがあるのですが、そうすると今度は「先ほど教えていただいた方法より、もっと簡単にできる方法はないでしょうか」と質問されるのです。しかし、組織で新しいことを始めたり職場の問題を解決したりすることは決して簡単なことではありませんので、本気でそれを解決したいと思うのであれば、時間をかけて真剣に取り組まなければならないことは言うまでもありません。

それでは、そもそもコンサルティングの相談をされる人や研修終了後に熱心に質問されたりするような人が、なぜ「できない理由」を雄弁に語られるのでしょうか。

その理由は様々あるのだと思いますが、一つには課題の解決に相応の時間と労力をかける「覚悟」ができていない、あるいはその権限などがないため、まずそれができない理由を挙げた上で、次に簡単に効果が得られる方法を知りたいと考えられているように思います。

しかし、前述のとおり組織で何か新しいことを導入したり職場の問題や課題を解決したりするには簡単な解決策はないのが実際のところです。本当に解決をしようとするのならば覚悟をもって真剣に取り組む必要があると私は考えているのです。

また、「この業界は特別だから」とおっしゃっている人の話をよくよく聴いてみると、ご本人がおっしゃるほどには特別ではないことが少なくないということは、長年様々な組織の話を聴いてきている中で、私が感じていることでもあります。

このように、できない理由を雄弁に語られる場面に出会ったときに私が思い出す言葉の一つに、「沈黙は金、雄弁は銀」というものがあります。これは19世紀イギリスの歴史家・評論家であるトーマス・カーライルが広めたとされる言葉で、その意味するところは「時として多くを語らない方が良い、つまり沈黙を保つことにこそ価値がある」という状況が存在することを示唆しているものです。

この言葉の意味するところを踏まえると、問題や課題を解決するためや、新たなことに臨むにあたっては、まずは「できない理由を雄弁に語る」ことに終始するのでなく、「どうしたらできるのか」をじっくりと「沈黙して」考え、具体的に取り組んでいくことが必要なのではないかと考えています。

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第1,238話 声はその人の価値観や生き方まで映す

2024年10月30日 | コミュニケーション

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今年は声優の皆さんの訃報に接することが多い年です。具体的には11名の声優が亡くなられてしまったようですが、中でも「ちびまる子ちゃん」のまる子役のTARAKOさん、「サザエさん」の花沢さん役の山本圭子さん、「ルパン三世」の峰不二子役の増山江威子さん、「ドラえもん」のび太役の小原乃梨子さんは私自身もアニメの中で長年親しんだ声でしたので、とても残念に感じます。同時に各々のキャラクターが他の人の声に代わってしまうと、役そのものが別のものになってしまうようにも感じます。それくらいに声とは、その人(キャラクター)の個性だと言えるのかもしれません。

これまで本ブログでもたびたび取り上げてきていますが、最近若い人(なかでも特に女性)の声が小さいと感じることが多いです。弊社が担当させていただく研修では、演習等で発表をしていただく機会が度々ありますが、その際にマイクを使ってもらっても聞き取れないくらいに声が小さい人がいます。それには、発言する内容に自信が持てないということも影響があると思っていたのですが、実はそれは声の大きさだけでなく声の高さにも関係があることを、この度音声認知の専門家の山崎広子氏の記事(朝日新聞 2024年10月25日)により知りました。

山崎氏によると、日本の女性は本来はもっと低い声のはずの人まで甲高い、場合によっては1オクターブ近く上の声を出しているのだそうです。その理由は、社会(男性)が高い声を暗黙裏に求めているからで、日本の女性は世間から求められているイメージに無意識に自分を合わせてきた結果であるとのことです。

確かに、私自身の記憶でも子どもの頃に固定電話にかかってきた電話に母が出る際に、普段よりも少々高めの「よそ行き」の声で応対していたことが思い出されます。また私自身も、社会人になって電話に出る際に、それに近いことをしてきたのかもしれないとも感じます。

こうしたことを考えると、研修でお会いする受講者の中に極端に声が小さくて聞き取るのが難しいという人が少なからずいるということも、それは声の大きさのみならず声の高さも影響していたのではないかと思っています。つまり、世間(主に男性)から可愛い・保護対象などのイメージと結びつく高めの声を求められていると感じていて、研修でも自身の本来の声とは別の高い声や裏声を出すことで、結果として聞き取りにくい声になってしまっていたとも考えられるということです。

前述の記事の中で、山崎氏は「声は心身の状態だけでなく価値観や生き方まで映す、その人そのものと言ってよい存在。また、日本では自分の声が嫌いな人が8割超に上りました。作り声は、他者だけでなく自分自身をも偽っているようなもの」とおっしゃっています。

他者と話している自分の声の録音を聞くと、日々自分が話している声を聞いているときとは違って聞こえることがあるかと思います。それにはいろいろ理由があるそうですが、もしかするとその一つに無意識に高い声を出しているからなのかもしれないと思うとともに、私自身も自分のありのままの声を自信をもって発していきたいと今回の記事を通して考えました。

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第1,237話 研修においても心理的安全性を担保する

2024年10月23日 | 研修

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「発言を否定されないので、安心して発表することができました」

これは弊社が研修を担当させていただいた際、終了時の受講アンケートでいただくことの多い感想の一つです。

具体的には、研修の中で受講者に発言を促し答えてもらったり、発表してもらったりするような場面はたくさんあるのですが、その際の私からのフィードバックが否定的なものではなく、肯定的な表現だったことを評価してくれた感想のようです。

近年、アンケートで「発言を否定しない」ことに対する記述が増えたように感じます。こうした記述が増えた背景には、自身の発言に対して否定されることを過度に心配したり、発言後の周囲の反応に過敏になったりしていることがあるのかもしれません。

自身の発言を否定されるより肯定をしてもらった方が嬉しい気持ちになるというのは当然のように思えます。しかし、それがあまりに過剰になってしまうと発言することへの敷居があがってしまい、同時に窮屈な気持ちにもなってしまいます。

このように発言の結果に過度なほどに敏感になってしまうのは、SNSの普及などによる「情報の即時性」が影響しているのかもしれません。その結果、否定的な反応を恐れるあまり自分の意見を言えなかったり、自己表現が難しくなったりしているようにも思います。

これについて、先日ある企業の研修終了後の懇親会に参加する機会がありましたので、その際数人の受講者にその理由を尋ねてみたところ、次のように答えてくれました。「そもそも自分に対して自信がないため発言が否定されるようなことがあると、自分の価値や判断が否定されたように感じてしまうんです。少人数であればともかく、研修時に大勢の前で発言して、間違ったことを言ってしまったらどうしようと考えてしまいます。間違った発言をしたことで、周囲のメンバーから笑われてしまうのではないかと心配になるのです」とのことです。

これは「心理的安全性が欠如している状態」であると考えられます。以前、本ブログでも取り上げていますが、「心理的安全性」とは組織行動学を研究するハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授(Amy Claire Edmondson)が1999年に提唱した心理学用語で、「心理的安全性」を自身の考えや気持ちを安心して発言できる状態、つまり「チームのメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。

それは、チームの中で自分の意見を(仮にそれが的外れだったり、間違っていたりする意見であったとしても)臆することなく発信できる状態であり、心理的安全性が高くなれば、組織にとっても様々なプラスの要因が働くことになるのです。具体的には、コミュニケーションが活発になり、仕事の生産性が上がったりエンゲージメントが高くなったりすることなどが期待できるのです。

そして、私はこの心理的安全性は研修においても大変重要な要素であると考えています。それは、自身の考えや気持ちを安心して発言できる状態が担保されていないと、大勢の中で自分の考えを発言することに気後れしてしまうようになりがちです。そうなるとせっかくの研修で得られるはずの成果が減じてしまうことになりかねないからです。

こうしたこともあり、私は研修の冒頭には必ず主体的に発言していただくことを推奨しています。同時に、「こちらが行う質問に対して唯一絶対の答えがあるわけではありませんから、どういう発言であってもダメ出しをするようなことは決してしません」と伝えています。今後も担当させていただいた研修においては心理的安全性を担保していきたいと考えています。

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