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「信念を貫く」

 松井秀喜の「信念を貫く」(新潮新書)をたった今読み終えた。この本が刊行されたのを知ったのは3月の中ごろ、それ以来色んな本屋で探したのだが、どうしても見つからなかった。ぐずぐずしていたら、メジャーリーグの開幕が近づいてきてしまい、已む無く書店に注文した。AMAZONで注文していたらもっと早くに読み終えることができていただろうに、どうにも近頃機転が利かない・・。
 3年前に出された前著「不動心」は、何も成し遂げていない男が自分を語るなどおこがましい、と思っていたし、いかにも悟り切ったような題名にも納得がいかなかった。その後の松井の不振や相次ぐ怪我も、偉そうなことを言うからだ、と「不動心」を目の敵にした言質をあちこちで吐きまくったりした。だが、今回の「信念を貫く」は違う。念願のワールドシリーズ制覇を成し遂げ、シリーズМVPまで獲得したのだから、1つ1つの言葉の重みがまったく違う。

 「負ける悔しさを味わい、左手首の骨折、両膝の手術を経験し、思うように試合に出られない日々もありました。そういったものが、すべて糧となって、つかんだワールドチャンピオンです。
 苦しい日々があったからこそ、その感激があったと思います。僕自身、ワールドシリーズMVPという栄誉ある賞を頂きましたが、順風満帆な道を歩んでいたとしたら、大舞台で結果を残せていたかどうか分かりません」(P.52)

 本当にそうだよな。契約を延長してからの4年間は本当に苦しかった。TVを通じて見ているだけの私があれほど苦しかったのだから、松井本人はどれだけ苦しかっただろう。それでも決して松井は負けなかった。苦しみと闘いながらも、決してひるむことはなかった。そのエネルギーはどこから来たのだろう。

 「調子が悪いとき、ヒットが出ないとき、そして膝が痛いときもあります。心の中に、弱い自分が現れるときもあります。
 そんなとき、僕のプレーを励みにしてくれる人を思い出すことで、もうひと踏ん張りできます。僕はファンの方々から大きな力を頂いています」(P.86)

 他の選手がこんなことを語っても、眉に唾したくなってしまうが、松井が言うと「なるほどそうか」と納得してしまう。世間で言われるほど、松井のことを聖人君子だとは思っていないし、やんちゃな松井が好きな私だが、ヤンキースでプレーした7年間を見てきて、野球に対する松井の真摯な取り組みに心打たれることがしばしばだっただけに、「僕はファンの方々から大きな力を頂いています」という言葉には、松井の本心が込められていると感じるし、私自身その一員であったことに喜びと誇りで胸がいっぱいになる。
 松井にとってワールドシリーズ制覇は通過点でしかなかったのかもしれないが、私にとっては到着点であったため、開幕が近付いてきても、なかなか昨年叫び続けた「松井愛」を取り戻すことができないでいた。このままフェードアウトしてもいいかな、とさえ思っていた時期もあったから、もっと早くにこの書を読むべきだったと今は反省している。松井が新たなチーム・エンゼルスの一員になりきるためには、自分自身の言葉でヤンキースの7年間を振り返り、心の区切りをつける必要があったのだろう。本書はそのために書かれたものであり、ヤンキースへの哀惜よりも、新天地で思い切り暴れてやるぞ!という意気ごみの方が強く感じ取れる。

 「何度も繰り返しますが、僕は野球が好きです。好きな野球だからこそ、だれにも負けたくありません。目指すのはただ、チームの勝利です。チームが勝つために自分にできることは何かを考え、自分なりに最善を尽くします。日々それを繰り返すだけです。
 ただ、そうやってベストを尽くして結果を出すことができれば、自分のためにも、家族のためにも、恩師のためにも、そして、ファンのためにもなると思うのです」(P.184)
 
 よし、分かった。松井、君の思いは十全に受け取った。僭越ながら私、また今年も君を応援させてもらうよ。頑張れよ!!
 
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