じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

「貧困大国アメリカ」

2008-09-06 11:48:57 | 
ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)
堤 未果
岩波書店

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★ 超大国アメリカ。繁栄の頂点に達したかに見えたこの国の傲慢さ、もろさが21世紀になって暴露されてきた。1つは大量破壊兵器の存在をでっちあげてイラクに侵攻したこと。1つは経済格差の現実である。

★ 堤未果著「ルポ貧困大国アメリカ」はこうしたアメリカの現実を痛いほどえぐり出している。

★ 教育、医療の民営化。「民営化」といえば効率化が図られ、競争によってサービスの向上が実現できると言う印象があるが、反面、それは営利を目的とする活動であるから、弱者切捨てになりやすい。

★ 世界経済を大きく揺るがしているサブプライムローンにしても、手段を選ばない収奪装置だとも言えよう。

★ 経済格差拡大の現実は度重なるハリケーンの被害が物語っている。

★ こうした現実を踏まえて、「教育」「いのち」「暮らし」といった政府の主要な仕事が「民営化」され、市場原理で回されるとき、はたしてそれが「国家」と呼べるのか(10p)と著者は問題提起する。

★ 私が最も衝撃的だったのは、貧困と兵士調達のメカニズム、そして「民営化された戦争」という字句だった。今や戦争もビジネスとなっているのだ。国家のリーダーがいかに大義名分を演説し、合衆国憲法がいかに高尚な理念を掲げようとも、現実は金儲けの構造ではないか、と思った。

★ 大衆をうまく口車に乗せ、体よく搾取する。アメリカと言う国の裏側には大きな権力構造が潜んでいるような気がした。政治家もまた彼らの捨て駒なのかもしれない。

★ 本書では9.11以降のマスメディアの動向にも批判を加えている。自国が攻撃を受けたことに対して感情的になるのは当然だ。しかし、メディアが一斉に愛国心を吹聴した背景には大資本に牛耳られるメディアの現実があるという。

★ 著者は「民主主義には二種類ある」と述べる(186p)。国民が指導者にとって都合の良い「消費者・捨て駒」と扱われるか、尊厳をもった「いのち」として扱われるかだという。

★ いささか極端の感もあるが、確かに真理の一面を突いている。問題は時として国民が前者のようなリーダーを選んでしまうことである。例えば、小泉首相の高人気は一体何だったのか。ヒトラーだって最初から軍の力を背景に政権を掌握したのではなかろう。

★ 誰が加害者で、誰が被害者なのか、この見えにくさが問題を難しくしているように思える。その混乱を尻目に富を蓄積し、権力を拡大している人々がいるのだろう。

★ 本書は小泉改革以降の日本への警告の書である。 
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教育非常事態宣言

2008-09-06 00:18:19 | 教育
★ 橋下知事が大阪府の「教育非常事態」を宣言した。文科省が行った学力テストの結果が2年連続ほぼ最下位に低迷し、改善される気配もないことから、知事が業を煮やした形だ。

★ 今日のニュースで府教委の学力向上プロジェクトの様子が伝えられたいたが、今に至って「授業の改善」が話し合われているようでは、先行きが険しい。あのメンバーでは抜本的な改革は無理だ。長年教育行政の現場に身を置くと、何かをやる前から「やれないこと」が見えてしまうらしい。

★ 何をやるにしても膨大な労力や責任がつきまとう。うまく言って当たり前、失敗でもしようものなら責任をとらされる。自然と事なかれ主義になってしまうのだろう。

★ 教育委員会制度は形骸化しているから、今のままでは何の意味もない。

★ 教育委員会に代わる新しいプロジェクトチームをつくる必要があろう。

★ ところで大阪府の学力を向上させるのは形式的には簡単なことだ。上位層は各家庭、各自で放っておいても学習を進めるから、底辺層の生徒の学力を伸ばせば自然と平均点は上がる。統計的には底辺層の底上げこそが求められる。

★ 問題はこの底辺層である。学力の底辺層は社会的な底辺層とダブる。学力問題は社会問題だ。家庭の再生、家庭の経済的安定が不可欠だ。授業の改善でどうにかなる問題ではない。金もかかるが、橋下知事はどこまで覚悟を決めてこの問題に当たるのだろう。

★ ところで、「教育非常事態」は大阪府に限った問題ではない。都道府県に順位をつけることにどれほどの意味があるのかはわからないが、大阪府の挑戦は貴重なパイロットスタディとなるだろう。大阪府だけの問題とせず、日本全体の知見を集める価値がありそうだ。 
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