☆ 中村文則さんの「遮光」(新潮文庫)を読んだ。作者自身が「あとがき」で書かれているように、暗く癖のある作品だった。ただ終盤の数ページ、奥歯をかみしめてぶちのめすような、爆発的な若々しさを感じた。
☆ この作品を読んでいるとカミュの「異邦人」が浮かんできた。主人公ムルソーが人を殺し、死刑になる話。もし彼が海水浴に行かなければ、もし彼がピストルをもっていなければ、そもそもママンが死ななければ、彼は人を殺すこともなかったし、法廷で裁かれ、死刑になることもなかった。すべてが破滅的な方向へと進んでいく。まるで定められた道を歩んでいるように。
☆ 「遮光」の主人公も、そもそも風俗嬢が部屋を間違えなければ、破滅的な道を進まなくてよかった。たまたま訪れた風俗嬢を愛さなければ、たまたまその女性が交通事故で死ななければ、彼は彼女の「体の一部」を持ち歩く必要もなかった。
☆ 彼はなぜ美紀の「体の一部」を持ち歩いたのだろうか。遺骨や形見ではダメだったのか。「阿部定」のような猟奇性を感じるが、本人にとってみれば、そうせざるをえない何かがあったのだろう。
☆ 彼は警察官の問いに「美紀が死んだからだ」と言う。「異邦人」のムルソーが「太陽がまぶしかったからだ」と言ったように。
☆ 疑問や感想が後から湧いてくる作品だった。
☆ この作品を読んでいるとカミュの「異邦人」が浮かんできた。主人公ムルソーが人を殺し、死刑になる話。もし彼が海水浴に行かなければ、もし彼がピストルをもっていなければ、そもそもママンが死ななければ、彼は人を殺すこともなかったし、法廷で裁かれ、死刑になることもなかった。すべてが破滅的な方向へと進んでいく。まるで定められた道を歩んでいるように。
☆ 「遮光」の主人公も、そもそも風俗嬢が部屋を間違えなければ、破滅的な道を進まなくてよかった。たまたま訪れた風俗嬢を愛さなければ、たまたまその女性が交通事故で死ななければ、彼は彼女の「体の一部」を持ち歩く必要もなかった。
☆ 彼はなぜ美紀の「体の一部」を持ち歩いたのだろうか。遺骨や形見ではダメだったのか。「阿部定」のような猟奇性を感じるが、本人にとってみれば、そうせざるをえない何かがあったのだろう。
☆ 彼は警察官の問いに「美紀が死んだからだ」と言う。「異邦人」のムルソーが「太陽がまぶしかったからだ」と言ったように。
☆ 疑問や感想が後から湧いてくる作品だった。