じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

砂川文次「ブラックボックス」

2022-01-20 21:03:40 | Weblog
★ 芥川賞を受賞されたというので、砂川文次さんの「ブラックボックス」(講談社)を読んだ。

★ 滑走する自転車の描写で始まる。肉体とマシンが一体化している様子が凄まじい。そして主人公のサクマの物語に入っていく。

★ 彼はキレやすい、また集中が苦手だ。映画など最後まで見終えたことがないという。その衝動的な性格ゆえか、学校からドロップアウトし、自衛官に任官したものの長続きせず、あとは職を転々。今はメッセンジャーの仕事をしている。しかし、年をとってできる仕事ではなく、コロナ禍で仕事の量も不安定だ。将来への不安を抱えている。そんな折、同居している女性から妊娠を告げられる。サクマは彼なりに生活を改めようとするのだが・・・。

★ 後半は「これでもか」というほどに刑務所での生活が描かれている。彼はここで自分自身を見つめ直すことに。

★ 「自分の中の自分が邪魔だった」という文が印象的だった。切れやすくどうしようもない自分とそれを何とかしたいと思う自分。心の葛藤が随所で見られた。一度社会のレールから外れてしまえば、なかなか元には戻れない。舗装された道が一気に砂利道に変わり、行く当てがわからなくなる。そんな心境が良く描かれていた。 
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