じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

小田雅久仁「残月記」

2022-01-23 19:20:12 | Weblog
★ オミクロン株の感染者数が爆発的に増え、近隣の小中高校でも陽性者が急増している。大規模自然災害と同じように、数が大きくなるにつれて感覚がマヒ。もはや新型コロナは特別な感染症ではなく、日常的な風邪やあるいはインフルエンザのような感覚になってきた。「人流制限ではなく人数制限」「ステイホームはいらない」と、専門家会議は、隔離路線から集団免疫路線に軌道修正をしているのではと感じる。

★ そんなご時世の中、小田雅久仁さんの「残月記」(双葉社)から表題作を読んだ。売り文句にあるように、近未来のディストピア小説だった。

★ その世界では「月昂(げっこう)」と呼ばれる感染症が蔓延していた。月の満ち欠けに合わせて、躁鬱を繰り返す、極度の気分障害のようなもの。昏冥期にはそのまま死に至る人が出る一方、明月期には高まる感情、研ぎ澄まされる感覚をもてあまして犯罪に走ったり、人智の及ばない芸術的境地に達したりするという。

★ その世界は、一党独裁政権が支配していた。少子高齢化や財政破綻、それに多大な犠牲者を出した「西日本大震災」から国を救うという公約を掲げた救国党、とりわけ下條拓総理大臣が言葉巧みに国民の支持を得て独裁体制を確立していた。全権を握るや反体制の人々を弾圧。「月昂」の感染者もまた、社会の忌むべきものとして強制的に隔離・収容されていた。

★ 「月昂」に感染し、隔離・収容された宇野冬芽という青年が政府の方針で闘剣士となり、そこで出会った女性との愛を貫くというストーリー。(闘技場の様子は「ベン・ハー」や「グラディエーター」という感じ)

★ 随所に面白い場面はあるのだが、何しろ盛りだくさんの内容で、どこを焦点を当てて読めばよいのか少々戸惑った。ともあれ、この物語がパラレルワールドのファンタジーであることを祈りたいものだ。

★ 昨夜は、NHKドラマ「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵出世階段(後編)」を観た。中村勘九郎さんの熱演。上白石萌音さんも良かった。歌舞伎役者に歌舞伎役者を演じさせるんだから、そりゃすごいわね。
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