【和訳1】
鷹派の安倍氏が自民党新総裁
108対89の逆転で決選投票を制し総裁経験者が石破氏を降す
自民党がその新しい総裁に鷹派の安倍晋三元首相を選んだ。水曜日【2012年9月26日】のこと。自民党は来るべき次の総選挙での同党の政権奪還を安倍氏の指導に託したことになる。
今般の総裁選挙は極めて重要なものとなった。なぜならば、最近の各種世論調査によれば、遅くとも2013年の夏までには実施される次の衆議院選挙では最大野党の自民党が、現下の日本の与党・民主党を凌駕するとの見立ては衆目の一致することだから。この予想通り事態が推移すると、自民党総裁として今後3年間の任期を得た安倍氏がこの国の次の最高指導者の地位に就くことになる。
108対89の逆転で決選投票を制し元首相が元防衛相の石破茂氏を降す。
今般の勝利に関わらず安倍氏には党内外から強い批判が浴びせられている。自身はその病気はすでに治癒していると述べているものの、安倍氏は、潰瘍性大腸炎を患っているとして2007年に首相を辞任した過去があるのだから。
総裁選の結果判明の後、安倍氏は自民党の党員諸氏に向けて、5年前の突然の退陣以来となる、自民党総裁として再登板する機会を与えくれたことを感謝した。(中略)
自民党のこの新総裁は現行憲法の改正を目指しており、他方、近隣の支那および韓国との緊張関係が昂じる中、それを巡って論争が巻き起こっているとある島礁に対する日本の権利を守る旨を強く主張してもいる。
政界事情通や自民党国会議員の中には、しかし、安倍新総裁の鷹派的傾向が件の島礁を巡る支那や韓国との軋轢を憂慮すべき事態にまで至らせかねないと危惧する向きもある。
【和訳2】
安倍総裁、自民党の新執行部を立ち上げ
最大野党たる自民党新総裁の安倍晋三氏が、金曜日【2012年9月28日】、彼を支える新しい党執行部を立ち上げた。来るべき次の総選挙における民主党からの政権奪還を睨んだ安倍執行部の立ち上げである。
党執行部人事名簿は金曜日の午後開催された自民党の臨時総務会で承認された。世間の注目を集めた水曜日の自民党総裁選挙の結果、元首相が自民党のトップに返り咲いたのだ。
高村正彦元外相(70歳)が副総裁に補任された。閣僚経験も豊富な高村氏は当選10回のベテラン議員。今回の総裁選挙に臨んでいち早く安倍支持を表明した人物。(中略)
石破茂氏(55歳)は自民党の政調会長経験者にして防衛相経験者。その石破氏が幹事長。今回の総裁選挙、決選投票でこそ安倍氏の後塵を拝したものの石破氏は都道府県の支部から最多の支持を集め第1回目の投票では首位に立った経緯がある。
細田博之元内閣官房長官(68歳)が総務会長に、他方、甘利明元経済産業大臣(63歳)は政調会長にそれぞれ任命された。また、浜田靖一氏(56歳)が党国会対策委員会の副委員長から委員長に昇進し、新総裁の側近中の側近の一人、菅義偉元総務大臣(63歳)は幹事長代行に補任された。加之、小泉純一郎元総理の子息である小泉進次郎氏(31歳)は引き続き党青年局長の重責を担うことになる。
【和訳3】
日本で元首相が野党党首に返り咲き
安倍晋三氏、民族主義者として知られている元首相の安倍氏が、水曜日【2012年9月26日】日本の最大野党の党首に選ばれた。彼が日本の最高指導者として返り咲く可能性が出てきたということ。而して、<安倍総理の逆襲>というそのような事態の惹起は支那やアジアの他の近隣諸国【正確に言えば、「アジアの他の近隣諸国」とは韓国・北朝鮮のことにすぎません。】と日本との緊張関係を一層高めるかもしれない。
安倍氏率いる自由民主党は、野田首相の不人気もあり「近いうち」に実施されると見られる全国レベルの国政選挙で大きく躍進する状勢。実際、野田首相と野田氏率いる民主党の支持率は、昨年の大災害に対する拙劣な対処、加之、ある種の機能障害を発症し政策立案が滞るという、国会が立ち往生している事態によって低下の一途なのだから。(中略)
自民党総裁としての登板は、前回の首相在任時の中間選挙【=2007年の参議院選挙】で自民党が惨敗して以来の、安倍氏にとっては臥薪嘗胆・苦節6年の日々を突き抜ける鮮やかな復活と言えよう。もっとも、2006年に内閣総理大臣に就任した際に安倍氏は、日本はより強硬で謝罪など一切拒否する姿勢を採用すべきだと唱えていたものの健康問題を理由に僅か1年で退陣した。畢竟、件の中間選挙の時点では、安倍氏の民族主義的の色彩の濃い政策提言は、雇用と景気回復により強い関心を抱く有権者総体にとっては的外れのものだった。
前回の短い首相在任期間中、安倍氏は、日本の非戦主義の憲法の改正を目指したこと、第二次世界大戦中にアジアの女性達が日本の軍隊のための性奴隷になること/性奴隷の状態であることを無理強いされた事実を否定したこと【所謂「従軍慰安婦」なるものに関するこの記述は完全な間違いと言えるけれど、原文に従って訳しています。】、加之、日本の戦争中の歴史について日本の教科書の記述を「過去の悪行を糊塗」しようとしたことによって支那および韓国の怒りを買ってしまった。もっとも、幾つかの点では、安倍氏は日本と支那との緊張関係が沸騰しないような道筋を選択したとは言える。例えば、首相としての最初の外遊先に支那を選んだこと、加之、その神社を巡って【日本と特定アジア諸国との間で、見せ掛けの】論争が続いている東京のとある戦争神社への参拝を差し控えたことなどがその事例である。
久しく両国間の懸案となっている、とある島礁を巡って日本と支那の関係が感情的の度合いを増しているここ数週間の状況を鑑みるに、<安倍総理の逆襲>という事態になれば両国間の軋みは一層加熱することになるかもしれない。前回の首相在任中に比べても安倍氏はより右寄りにシフトしてきており、実際、正にこの点に関して、再び総理に就任した暁には靖国神社に参拝するつもりであること、あるいは、戦争を巡って日本が行ってきた幾つかの謝罪は撤回すべきであるという安倍氏の近時の発言を見れば、<安倍総理の逆襲>による両国関係の悪化は杞憂とも言えないだろう。
水曜日の記者会見で、経済面での日本と支那との間の強い紐帯に言及する一方で、安倍氏は件の島礁について支那政府に対して彼が強硬な姿勢を貫くと明言した。加之、日本が軍事面でもより積極的な役割を担うことによって日米間の防衛協力を更に強靱なものにしていくとも。
その突然の首相退陣以降、白黒はっきり言えば、安倍氏は日本の政治分析の専門家の間では歯牙にもかけられない存在だった。その退陣は世の嘲笑を招くものだったし、なにより、彼の退陣によって長らく政権与党の座にあった自民党の党勢は大きく削がれたのだから。実際、2009年には彼が属する自民党は民主党に破れ、半世紀の間ほとんど途切れることなく保持してきた政権を失った。
時は流れ、現在では民主党はその支持の大半を失ってしまった。権力を日本の官僚組織から奪い去るという民主党の公約の多くは達成されないままであり、昨年惹起した津波と原発危機からの復興の拙劣さを目の当たりにしては民主党政権に対する国民世論の幻想も醒めてしまい、加之、瀕死の経済情勢はいまだにこの国に重くのし掛かっているのだから。ことほど左様に、来年の夏まで解散総選挙を引き延ばせないわけではないけれども、野田首相には「近いうち」の解散総選挙を要求する世論の凄まじいプレッシャーが寄せられている。いずれにせよ、来るべき総選挙ではまず間違いなく民主党は衆議院での多数を失い、他方、おそらく自民党も単独では衆議院の過半数を制することは難しく、よって、この国の政治は更に混迷の度合いを深めることになりかねない。政治分析の専門家の意見はこのような予測の線でおおよそ一致している。
水曜日の自民党総裁選挙において安倍氏は最有力候補というわけではなかった。実際、安倍氏は第1回の投票では石破茂氏に続く第2位だったのだから。ちなみに、防衛大臣経験者の石破氏は保守派ではあるけれども、安倍氏に比べた場合に「イデオロギー=社会哲学的な理念」をより重視するタイプではない。そして、政治分析の専門家によれば、1回目の投票結果を受けた決選投票で石破氏は、自民党の長老・重鎮のメンバーからの支持を得られなかったとのこと。この経緯については、90年代のある期間それもあって自民党を一時離党することになった石破氏の独立自尊的の傾向が与して力あったということだ。而して、決選投票では108対89の差で最終的に安倍氏が自民党総裁選を制した。
◆解題
ご紹介した英文報道の中でコメントすべきは、所謂「従軍慰安婦」なるものの存在を前提にして書かれた、New York Times記事の次の箇所でしょう。
he angered China and South Korea with ・・・denials that Asian women were forced into sexual slavery for the Japanese military during World War II.
(第二次世界大戦中にアジアの女性達が日本の軍隊のための性奴隷になること/性奴隷の状態であることを強要された事実を否定したことで彼は支那と韓国の怒らせた)
もちろん、(本稿末尾にURLを記した拙稿で論証しているように)所謂「従軍慰安婦」なるものは歴史的事実としては存在しません。よって、この箇所は荒唐無稽な記述。けれども、いかにNew York Timesが「アメリカの朝日新聞」とも称すべき左翼・リベラル派の<カルト新聞>だとしても、このような事実誤認は独りNew York Timesの不勉強に起因するものではない。そう思います。実際、所謂「従軍慰安婦」なるものに関してアメリカの第110回議会第1会期(2007年)の下院外交委員会(the Committee on Foreign Affairs)で提案された反日決議、所謂「従軍慰安婦」なるものを巡る対日非難決議(House of Representatives, 110th Congress 1st Session, Resolution 121, submitted on January 31, 2007)にも、例えば、次の如き歴史の改竄と歴史の不勉強が炸裂しているのですから。尚、引用文中の下線はKABUによるものです。
Expressing the sense of the House of Representatives that the Government of Japan should formally acknowledge, apologize, and accept historical responsibility in a clear and unequivocal manner for its Imperial Armed Force's coercion of young women into sexual slavery, known to the world as `comfort women', during its colonial and wartime occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II.
(下院は次のような見解を表明する。すなわち、日本政府は、1930年代から第二次世界大戦の全期間に亘り、アジアの植民地支配と太平洋諸島を占領していた戦時に、日本帝国の軍隊が強制力を行使し若い女性を性奴隷にしたことを(その性奴隷とは、現在では「従軍慰安婦」としてすっかり知れ渡っているのだが、)公式、かつ、平明・明瞭なやり方で認め謝罪すべきであり、また、そのような事実に対する歴史的な責任も同様に平明で明瞭な形式を通して受入れるべきである、と)
Whereas the Government of Japan, during its colonial and wartime occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II, officially commissioned the acquisition of young women for the sole purpose of sexual servitude to its Imperial Armed Forces, who became known to the world as ianfu or `comfort women';
(以下の事実を鑑みるならば、すなわち、1930年代から第二次世界大戦の全期間に亘り、アジアの植民地支配と太平洋諸島を占領していた戦時に日本政府が、帝国の軍隊に供される性奴隷(性奴隷とは、現在では「慰安婦」や「従軍慰安婦」としてすっかり一般に定着しているけれども。そのような性奴隷)にすることを唯一の目的として、若い女性の調達を公式に委託した事実。この事実を考慮すれば、)
Whereas the `comfort women' system of forced military prostitution by the Government of Japan, considered unprecedented in its cruelty and magnitude, included gang rape, forced abortions, humiliation, and sexual violence resulting in mutilation, death, or eventual suicide in one of the largest cases of human trafficking in the 20th century;・・・
(以下の事実、すなわち、「従軍慰安婦」の制度が日本政府の手になる軍隊のための強制売春の仕組みであることを鑑みて、さらに、「従軍慰安婦」制度がその残酷さと規模において前例のないものであること、換言すれば、それは、強制連行、堕胎の強要、陵辱、および、身体を機能障害に至らしめる性的な暴力、死、あるいは、結局自殺を選ばざるをえなくした、20世紀の人身売買の中でも最大規模のものであることを考慮すれば、・・・)
Now, therefore, be it
Resolved, That it is the sense of the House of Representatives that the Government of Japan--
(1) should formally acknowledge, apologize, and accept historical responsibility in a clear and unequivocal manner for its Imperial Armed Force's coercion of young women into sexual slavery, known to the world as `comfort women', during its colonial and wartime occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II;・・・
(下院は日本政府が次のことを行うべきと考え、そう決議する。すなわち、
(1) 1930年代から第二次世界大戦の全期間に亘り、アジアの植民地支配と戦時に太平洋諸島を占領しているた戦時に、日本帝国の軍隊が強制力を行使し若い女性を性奴隷にしたことを(その性奴隷とは、現在では「従軍慰安婦」としてすっかり知れ渡っているのだが、)公式、かつ、平明・明瞭なやり方で認め謝罪すべきであり、また、そのような事実に対する歴史的な責任を受入れるべきであると・・・)
転記・翻訳していて失笑を禁じ得ませんが、太平洋をまたいでなされたこれらの大がかりな戯言もまた、しかし、必ずしもNew York Timesやアメリカ下院の不勉強、あるいは、アメリカにおける親支那/親韓国勢力による勤勉なロビー活動の成果というだけではありません。蓋し、このような大がかりな国際的な<悪い冗談>の源泉は「河野談話」である。蓋し、「河野談話」によって(それは閣議決定もなされていない、時の官庁長官の私的談話にすぎないのですが、その私的談話によってあたかも、)日本政府が所謂「従軍慰安婦」なるものの存在を認めたとも思われていること。これがこの<悪い冗談>の蔓延の病根であろう。と、そう私は考えます。
もちろん、その「河野談話」が出されるについて朝日新聞の誤報が決定的な役割を果たしたことは、最早、周知の事実。しかし、こと国と国との間の紛争としてこの問題を捉える場合、その病根は「河野談話」に収斂する。この認識は「盗人猛々しい」あるいは「マッチポンプ」という表現がぴったりの次の朝日新聞社説(2012年9月27日付け社説)が逆照射しているの、鴨。
▼安倍新総裁の自民党―不安ぬぐう外交論を
自民党総裁選は、40年ぶりの決選投票をへて、安倍晋三元首相が当選を決めた。5年前の参院選で惨敗後、首相だった安倍氏は突然、政権を投げ出した。その引き金となった腸の難病は新薬で克服したというが、政権放り出しに対する批判は安倍氏の重い足かせだった。それが一転、結党以来の総裁再登板を果たしたのはなぜなのか。
◆「強い日本」を前面に
もともと安倍氏は本命視されていなかった。・・・いわば消去法的な選択といっていい。 さらに領土問題で中韓との関係がきしんでいなければ、再登板はなかったかもしれない。「強い日本」を唱える安倍氏の姿勢が、中韓の行き過ぎたふるまいにいらだつ空気と響きあったのは確かだ。「尖閣諸島は国家意思として断固守る」として、避難港を造るなど管理の強化を訴える。
慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた河野官房長官談話や、「植民地支配と侵略への反省とおわび」を表明した村山首相談話を見直すと主張している。首相になった場合の靖国神社参拝にも意欲を示す。
ナショナリズムにアクセルを踏み込むような主張は、一部の保守層に根強い考え方だ。だが、総選挙後にもし安倍政権ができて、これらを実行に移すとなればどうなるか。大きな不安を禁じえない。隣国との緊張がより高まるのはもちろんだが、それだけではない。
前回の首相在任中を思い出してほしい。5年前、慰安婦に対する強制性を否定した安倍氏の発言は、米下院や欧州議会による日本政府への謝罪要求決議につながった。靖国参拝をふくめ、「歴史」に真正面から向き合わず、戦前の反省がない。政治指導者の言動が国際社会からそう見られれば、日本の信用を傷つける。(後略)
蓋し、所謂「従軍慰安婦」なるものを巡る<悪い冗談>の蔓延を見るとき、日本と特定アジアとの間の本当の障壁は所謂「従軍慰安婦」なるものや首相の靖国神社参拝自体ではなく、むしろ、それら本来はなんら問題ではない事柄を日本自体が<問題>と捉え、支那や韓国に遠慮していることなのではないでしょうか。而して、ならば、このような<悪い冗談>の撲滅のためにも、日本は安倍総理が論じておられるように、
①「河野談話」を正式に否定し、②朝日新聞の件の誤報も含めて「河野談話」なるものが世間と世界に出された経緯を、③国会が設ける専門機関で詳らかにすること、そして、④そのすべての調査結果を公開し国内外に向けて発信すること。
所謂「従軍慰安婦」なるものを巡る<悪い冗談>をこの世から消し去るにはこの線で日本自身が一汗かく必要があるの、鴨。と、そう私は考えます。尚、この所謂「従軍慰安婦」なるものを巡る私の基本的理解については下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。
・石原知事-橋下市長が「河野談話」を一刀両断
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/00e9b430bbdefea7909292451e0890b4
・「従軍慰安婦」問題-完封マニュアル(上)~(下)
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11137268693.html