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●Genghis Khan still casts a long shadow
Sitting astride his horse in a warlike pose, the bronze Genghis Khan in the middle of the Inner Mongolia University campus emits a clear signal. This is a national hero, a Chinese hero. This is not the mass murderer vilified by generations of Western historians, but the brave founder of the biggest land empire ever.・・・
The 800th anniversary of the founding of Genghis Kahn’s empire in 1206 will be celebrated this year not just in Mongolia but also in Inner Mongolia, historically part of the same culture but now under China’s firm control.
Although the great Khan has been dead for nearly eight centuries, his memory is alive and he remains an important political factor in this part of the world. China’s communist government is attempting to co-opt him as a great historical figure transcending ethnic barriers.・・・
(HOHHOT, China:AFP-Jiji, The Japan Times, Feb. 27, 2006:137 words)
■Vocabulary&Idiom
cast a long shadow 重要な意味を持つ/大きな影響力を及す
emit 熱・光・音を発する/放つ, vilify 悪く言う/詰る
anniversary (~周年)記念, co-opt 加入させる/取り込む
transcend ~を超越する/超える
■Comment
同語源の形容詞が異なる意味を持つ場合があります。例えば、industrious(勤勉な/熱心な)とindustrial(産業の/工業の)などです。これなどは多くの方が中学校の英語の授業で習われたことと思いますが、実は、TOEICの空所補充問題でも、ダミーの選択肢を作る際に「意味の異なる同語源の単語」はよく取り上げられます。本文テクストに出てくるhistorical と同じ語源のhistoricも意味が違います。historicalは「歴史に関する/歴史の」という意味ですが、historicは「歴史的大勝利」とか「歴史的な大事件」という場合の「歴史上重要な」になります。
A historical book on economics:経済学の歴史に関する書物
A historic book on economics:経済学の歴史を変えた書物
■試訳
●ジンギス汗の影響力は今も衰えていない
戦争に臨まんと馬に跨るジンギス汗。内モンゴル大学のキャンパスの中央に聳えるこのジンギス汗の銅像が発するメッセージは明確だ。この銅像は国民的英雄、すなわち中国の英雄の銅像なのだ。それは、西洋の歴史家が長年そう悪しざまに非難してきたような大量殺戮者の銅像ではなく、史上最大の版図を誇った帝国の勇敢な創業者の銅像なのである。・・・
1206年のジンギス汗の帝国創建からちょうど800年。その800周年はモンゴル国だけではなく内モンゴルでもお祝いされる。内モンゴルは歴史的にはモンゴル国と同じ文化圏に属しているが、現在は、中国の強い管理下に置かれている。
もちろん、この偉大なる大汗は8世紀も前に没した。けれども、彼の記憶は連綿と受け継がれており、彼はいまだに中国・モンゴル国では重要な政治的な要因であり続けている。中国の共産党政府は、民族間の軋轢を超越する歴史的な英雄として彼ジンギス汗を(中国の歴史の中に)取り込む試みを続けている。・・・
■感想&感慨
東洋史・西洋史を統合する世界史は、モンゴル帝国のユーラシア大陸征服によって始まった。簡単に言えば、モンゴル帝国の歴史的な意義はそこに尽きている。『世界史の誕生』(ちくま文庫・1999年8月, ちくまライブラリー・1992年5月)で中心的に語られていることですが、このモンゴル帝国の歴史的な意義は、岡田英弘さんがつとに力説しておられることだと思います。「新大陸の人々の歴史は世界史ではないのか」という点を除けば、私は岡田さんのこの主張にほぼ賛成です。
岡田さんの近著、『だれが中国をつくったか 負け惜しみの歴史観』(PHP新書・2005年・9月)で詳しく論じられていますが、<中国>というのは幻想にすぎず、中国史の大部分は基本的には異民族による征服王朝である。そして、征服した側は、よく言われるように、中国の文化に漸次同化していったというのは史実ではなくその民族のアイデンティティをよく保っていたのだと思います。
ですから、モンゴル帝国にとって中国エリアに建国された元帝国などは、どう控えめに見ても帝国の one of them にしかすぎない。これは満州族が打ち立てた清王朝についてもあるいは言えることかもしれません。
ですから、話しは飛びますが、「チベットは清の領土だったのだから、チベットは中国(中華民国→中華人民共和国)の領土だ」という現在の中国政府の主張や、1991年の湾岸戦争の際にサダム・フセイン政権が論じた「クウェートはもともとオスマン帝国の領土だったのだから、そのオスマン帝国の主要な領土だったイラクの領土である」というのは歴史的には滑稽な話なのかもしれません。
もし、そう言えるのなら、「インドは大英帝国の領土だったのだから、その大英帝国の主要な領土だったカナダの領土である」とも言えるでしょうしからね。実際、「クウェートもイラクもオスマン帝国の領土だったのだから、オスマン帝国を法的に引き継いだトルコ共和国の領土である」と言う方が遥かに筋は通ると思います。
さて、政治の話しを離れて本記事のテクストを読むとき、上で述べた中国やサダム・フセインを揶揄したような感覚とは全く異なる感想を持ちました。それは、「誰を自民族や自国の英雄と考えるか」ということについては他人がとやかく言えることではないな、という感想です。
私の極めて親しいアメリカ人家庭で体験したことですが、そのお家の子供達はネーティブ・アメリカンの英雄を自分のヒーローと感じていた。もちろん、これはアメリカ人一般に拡大できるような話ではないですし、非道な扱いを受けた当時のネーティブ・アメリカンの人々がそれを聞いたら――「わたしたちから英雄まで盗むのね?」、と――怒り出すような身勝手な話ではあるでしょう。
しかし、私の友人の子供達が「誰を自分のヒーロー」と考えるか、感じるかについて他者がとやかく言えることではないということもまた事実だと思うのです。ならば、同じアジア人としジンギス汗を我々日本人が自分達の英雄と考えるのも自由なのかな、とも。源義経・ジンギス汗同一人物説なんかはこんなメンタリティーから紡ぎだされたものかもしれないですね。
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