きしめんってほんとはもっとおいしいはず。
名古屋の人が求める味覚は少し独特。
もちろん個人に落とし込めば千差万別ではあるが、たとえばきしめんの有名老舗も試したが、
少し塩辛くて酸味の強いスープになじめなかった。
しかし、麺類に関してはカンが働くのだ。どこかにもっとおいしいきしめんが。
いつしか、それを福岡や関西のともだちにも自信を持って勧める、そんな日を夢見ていた。
で、池下の「きしや」。
部下の紹介で、職場の4人で。
小ぢんまりとした店は、日本酒、焼酎も各種あり、飲みを伴う条件で予約もOK。
鯛の昆布じめから。
感じの良い和風のインテリアも心地よい。
ゴーヤサラダ。
盛り付けも美しい。
さて、フラッグシップメニュー、「牛すじ白きしめん(塩)」
塩味。この芸術的な景色を堪能していただきたい。
スープの透明度、各具材の色、配置、牛すじの油の光沢感。
レンコンは太陽、牛すじは大地、そしてネギは地上の豊かな実りを表現したのであろう。
一杯の芸術、なるほど和食は世界遺産なのであった。
意外と幅狭い麺は、コシがあってなめらか。
あんかけきしめん。
枯葉舞う秋の鶴舞公園、椎茸は木肌の茶色、かまぼこは十月桜の花の色、2匹のエビは、木枯らしの中を
寄り添い歩く若い恋人同士である。
このまま、名古屋市美術館に常設展示してはどうだろうか。
そして、イチ押し、「かけラーメン白」
このスープの透明度は前代未聞の摩周湖クラス。
白濁スープの国で生まれ育った男が今日、邪道外道とさげすんできた透明スープに初めてひれ伏し、のたうちまわる。
ああ、今、とうとう禁を破り、戒律に背いて、それでも箸を持つ手の震えが止まらない。
さあ、君も胸のクルスを外して、一緒にゴルゴダの丘を下りて行こう。
東山線池下駅から徒歩5分のパライソへようこそ。