午後から、前売りを買ってあった展覧会へ。
エレベータの中。
ピカソと言えば、どこかエキセントリックなイメージ。
しかし、子供のころ、父から聞いていた。
若いころは普通の絵をとてもうまく描く基本に忠実な画家だったと。
その基礎があってこその抽象画なのだと。
この展覧会は、そんな普通の画家であったローティーン!!のころから、青の時代、バラ色の時代、
そしてキュピズムの萌芽へと変遷してゆく過程をたどる構成となっている。
青の時代の作品群がとても心に響いた。
ただ陰鬱なのではなく、そぎ落として引き締まった肉体、強い意志のある目、よく見ると柔らかな表情。
いくつも発見があった。足るを知った人々の清廉で高潔な暮らしに同感を持って接しているのだろうと感じた。
そして、初期のキュピズムの小品を見て思った。
これは、絵画であり、平面に描かれたものではあるが、実は立体なのであると気が付いた。
2次元に立体を構成させるという奇跡を成し遂げたのだと。
彫刻など現実の立体では表現できないものだ。
解説にあったが、ピカソは、観念や夢想を絵の題材にとったことは無いのだそうだ。
キュピズムは抽象画ではなく、人物、静物などの具体的なモデルを写実したものなのだそうだ。
確かに、全ての作品のタイトルにそのモチーフの名称が明記されている。
一目では何が描かれているのかその対象を判別することは難しい。
平面なので、見る我々は正面からしか見ることはできない。
しかし、画家は、前から見た視点、横から、後ろから、上からなど多様な視点から見た形を描きこんでいる。
そしてそれはやはり秩序を逸脱することはないが、強い蒸留酒のように、受け手に覚悟を求める。
しかし、一度受け容れてしまえば、何度でも、いつまでも見ていたいと思わずにいられない。
14歳のころのまるで写真のようなデッサンに見られるような高い基礎的技術の裏打ちがあってこそ、
この大胆な対象の変化を誰が見ても心地よい、そして飽きないエンタテイメントとして昇華させることができたのであろう。
面白いものを見せて頂きました。