今日もテニスは中止。晴れていてもコートコンディションが悪くクローズ。
新聞を読みながらアナログレコードを鑑賞しようとして、ふと思いついた。
LPレコードとCD、同じソースで聞き比べ。
藤真利子、狂躁曲。1982作品。アナログ盤を持っていて、学生時代からの愛聴盤というより、
この世に存在するすべての音源の中でコレが一番好き。CDも過去に発売されたようだが、
ネットで¥20,000とかなんとも現実感のない価格だったりしたので、このLPの価値が命から
数えて片手で足りるほどの順位に昇格していた。それはそれで健康なことではないなと思いながら、
これを聞くときは、30cmウーファーのダイヤトーンスピーカーの前、正三角形の頂点に座り、
ツイーターを耳の位置に、背筋を伸ばし心静かにすべての精神的な力を集中して聞いたものです。
それが、何気なく、ほんとに晴天の霹靂で、昨年、CDで再発されていたのだ。これには驚いた。
CDが売れない時代と言われて久しいのに、果たして女優の30年前の歌に価値を見出した人は
いったいどんな日常を送りながらそれを発想し実現したのだろうか。
しかし、詩人や小説家の詞に当代人気のアーティストが曲を付けるという画期的な手法で出来た
このアルバムは、未だ、その輝きは少しも曇ってはいない。
1.薔薇 (作詞 山口洋子 /作曲 沢田研二 /編曲 岡田徹 )
2.花がたみ (作詞 寺山修司 /作編曲 鈴木慶一 )
3.花まみれのおまえ (作詞 赤江瀑 /作曲 大村憲司 /編曲 白井良明)
4.真利子うらみうた (作詞 吉原幸子 /作曲 微美杏里 /編曲 鈴木慶一)
5.野ざらし百鬼行 (作詞 赤江瀑 /作編曲 鈴木慶一 )
6.折鶴秘唱 (作詞 寺山修司 /作曲 微美杏里 /編曲 岡田徹 )
7.雪 (作詞 辻井喬 /作曲 大村憲司 /編曲 岡田徹 )
8.それがどうしたの (作詞 山口洋子 /作曲 高橋幸宏 /編曲 岡田徹 )
9.どんな春が (作詞 辻井喬 /作曲 高橋幸宏 /編曲 鈴木慶一)
10.メルヘン (作詞 吉原幸子 /作編曲 鈴木慶一 )
鈴木慶一のニューウェイブセンス、ポイント的に和楽器を使うところなんか、もう、クリエイターも
演奏者も本気で全力投球したのだろうなと想像できるのです。
6.折鶴秘唱は絶望の名曲だと思います。微美杏里は藤真利子さんのペンネームです。
10.メルヘンは全く対極の希望の名曲です。この2曲が特に好きで、ちょっと気を許すと涙が止まら
なくなります。
さて、前置きが長くなりましたが、CDとLPの聞き比べです。
CDはSHM仕様です。なんとなくSHMは音が良いという認識でしたが、そうでもないようです。
やはり、CDである以上、情報の取捨選択がされているわけで、この場合、限界高音域付近の情報
を多くして、中低域を少なくしてある感じ。ふわっと軽い音で耳障りはとても良いのだが、本物の楽器
や人の声には近づけていない。
例を引くなら、三味線の音が聞こえるが、CDは弦の音しか聞こえないが、LPだと、皮の音も聞こえる。
弦の音、”ビン”というのと、皮の音”パン”という弾けた音が合わさることで、三味線という楽器のリアルな
音になるのだと思うのです。
声もまたしかりで、CDだと、子供の声に聞こえるのです。高い周波数の音に特化しているので、本来
人間の声は高い声でも、いろんな倍音を含んでいて、それが、全部聞こえないと、その人の声らしく聞こえ
ないのだと思います。
低音もCDはなんか無理やり足したような感じで、たとえば、ベースもアタックだけが強調されて自然な
減衰になってなくて、他の楽器とのアンサンブルとして、なんか全体的にしっくりこないというか、おそらく、
録音した意図とは違う感じになってしまってるんだろうなと思います。
それでもCDの方は、ウォークマンとか圧縮音源で聞くなら、こっちかもしれません。
しかし、鑑賞するなら、圧倒的にLPだなと思いました。