KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
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丸亀国際ハーフマラソン参戦記 vol.2~マラソン難民、東へ

2012年03月07日 | マラソン参戦記
「・・・この度は愛媛マラソンに申し込みをいただき誠にありがとうございました。今回は郵便振替での定員1,000名を大きく上回る5,103名の方の中からの申し込みがありました。実行委員会にて厳選なる抽選の結果、誠に残念ながらあなたさまのご意向に添えない結果となりました。・・・」


ネットでの申し込み定員が4時間で埋め尽くされ、残り1,000人の抽選枠も5倍以上の競争率となった今年の愛媛マラソン。大会関係者にコネを持つ知人から、今回の抽選は本当に「厳正で公平」なものになると聞かされていた。陸連に登録していようが、過去に10回以上出場していようが(僕は昨年までで、18回連続出場)、好記録を持っていようが(僕は去年はぎりぎりサブ4でゴール)、スポンサー企業の社員であろうが、全く配慮されないのだという。

落選するかもしれないと覚悟していたが、やはり、寂しかった。

すぐさま、丸亀にエントリーを決めた。

「愛媛マラソン?今回は出られんのよ。抽選で落ちたけん。」

ランナー仲間に会った時の挨拶になっていた。12月を半ば過ぎると、それに新たな言葉が加わった。

「愛媛の代わりに丸亀に行くんよ。公務員ランナーを見にね。」

昨年の東京マラソンで3位になり、世界選手権代表の座を得た埼玉県の職員、川内優輝。世界選手権では16位に終わるも日本の団体銅メダル獲得に貢献したと評価され、7位入賞の堀端宏行よりも注目を集めた。そして12月の福岡国際マラソンでも後半に追い上げる走りで日本人トップでゴール。しかし、

「目標はあくまでも東京マラソンで2時間7分台で走ること。」

と宣言し、2週間後の防府読売マラソンでも2位入賞、東京まで実戦練習として走るレースとして、丸亀ハーフも挙げていた。

すれ違う時に、川内はどのくらいの位置で走っているだろうか。

スタートしてすぐに橋を越えるために坂を上る。そこを下れば、なだらかな下りが続き、無意識にペースが上がっていく。フルマラソンよりも集団がばらけるのが早い。

駅から歩いてきた道である県道33号線を北へと進んでいく。3年ぶりに走る道。なのについこないだ走ったばかりのような気がしている。思ったよりも速いペースで走れている。先週の金曜日以来、9日ぶりのランニングではあるのだが。駅へと続く道を右に折れ、5km地点手前の蓬莱橋を渡る。5kmは23分40秒で通過。かつては坂道とは感じなかった蓬莱橋も少しきつく感じられる。コースは丸亀から宇多津へ。

男子で持ちタイム1時間8分以内、女子で1時間35分以内の登録Aの部のランナーたちは15分前にスタートしている。もう折り返しを過ぎているかもしれない。大会名に「国際」が付く前から外国人の参加は少なくなかった。当時は日本の大学や実業団で競技を続けるケニアのランナーと、一般参加で韓国の実業団、サムソン電子のランナーたちが主だった。それでも、その中にアトランタ五輪のマラソン銀メダリストである李鳳柱がいたのには驚かされた。日本人を夫に持つ英国人ランナー、マーラ・ヤマウチも日本で生活していた北京五輪前に走ったことがあった。国際マラソン・ロードレース連盟公認の国際大会となってからは、海を越えて強豪ランナーが出場するようになった。別大毎日マラソンに入賞したことのある、モロッコのラシド・キスリ、福岡で優勝したことのあるウクライナのドミトロ・バラノフスキーらが今回出場しているが、目玉はケニアのマシュー・キソリオ。去年9月にフィラデルフィアでハーフマラソン世界歴代3位となる58分46秒でゴールしている22歳の若手ランナーだ。よくぞ呼んでくれたものだと思う。

反対車線に放送車が走ってきた。先頭か゜やってくる。トップはケニア人だ。速い。そして、横にいたランナーがつぶやいたように顔が小さい。それがキソリオだった。次の集団も数人のケニア人。そして数人の日本人がいた。派手なユニフォームでトヨタ自動車と分かる。高林祐介だろうか?少し空けて、日本人ランナーの集団。あの中に川内がいるだろうか?彼とすれ違ったらかけようと思っていた言葉をかける。

「ロンドンが待っとるぞ!」

今の集団の中に川内はいたのだろうか。福岡で着ていた緑と赤の「埼玉県庁」のランシャツはいなかったように思う。大丈夫か?自己ベストは切れるのか?

しばらくして、また日本人ランナーの集団。川内優輝はここにいた。もう一度声をかける。

「ユーキ、カワウチユーキ!ロンドンが待ちよるぞ!」

この声は川内に届いたのだろうか?

(つづく)


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