金曜日の夜、これといったテレビ番組がなかったので、OCNのオンデマンドビデオで「終戦のエンペラー」を観た。2012年のハリウッド映画だけど、観るのは初めて。敗戦直後の昭和天皇という難しいテーマを史実にかなり忠実に描かれていて、最後まで面白く観れた。この手の映画はアメリカ側からの一方的な描写が多い中で、冷静に日米どちらの側にも偏らず公正な描かれ方がされていたことに好感が持てた。
連合国軍総司令部(GHQ)最高司令官、マッカーサー元帥が厚木飛行場に降り立つところから物語りは始まる。彼の部下で知日派のフェラーズ准将(マシュー・フォックス)に戦争で昭和天皇が果たした役割は何かを調査し報告するよう極秘の命令を下す。つまり天皇の戦争責任を明らかにするためだ。戦争を誰が始め、誰が終わらせたのか。玉音放送前夜の軍のクーデター、直接天皇が自らの声で国民に敗戦を伝える放送に天皇が込めた戦争終結への思いも明らかにされる。マッカーサーと昭和天皇との会見や写真撮影がどのようにして行われたのかも描かれている。
フェラーズ准将の恋人役の初音映莉子さんの堂々とした演技がよかった。役柄に彼女のもっている空気感がぴったりとはまっていた。
あらためて、今の日本があるのは敗戦時に天皇を戦犯不訴追とし、天皇制を維持して日本国民の心を一つにして国家を平定するという正しい占領方針とスキームが形作られた結果だと思う。裕仁天皇の戦犯を求める圧倒的なアメリカ国内での世論の中で、天皇に対する国民の信任の心理をうまく利用する対日心理作戦は正しかった。その判断は日本と日本人を真に深く研究し知り尽くした人だから冷静な状況分析とスキーム構築ができたのであり、ボナー・フェラーズ准将の存在なくして今の平和な日本はなかったといえそうだ。