日々雑感

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半音くらい

2011年10月08日 | Weblog
半音くらい

。名曲・荒城の月 に出てくるフレーズ「 フア フア ミ レ ミ 」のレが半音あがるか。上がらず元もままのレになるかが、大いに問題になる。半音くらいどうでもよい。そう思う人が大半だろう。僕にとってはこの半音はどうでもよくはない。
D#かDか。わずかな差であるが、これによってこの歌の品格や格調の高さが変わってくる。滝廉太郎はD#にした。これだとせっかく荘重な響きを持ってやってきたメロデイがこの半音上がるために、全体に浮いたような軽さが出てくる。それは歌詞の荘重さを軽く表す。

これを作ったとき、彼は20代の青年である。23歳で結核に倒れる青年に歌詞の荘重さを求めるのは、酷かもしれない。少なくとも彼の3倍以上の長さを生きてきた僕がそう思うとしても。名曲であることは間違いない。

翻ってD#の#をとりはらって、Dに編曲したのは山田耕筰氏である。先生いくつの時の編曲かしらないけれど、先生のあの格調高い好みに合わせたものだろう。
それは山田先生のプライド、即ち高踏的な、宗教的な品性によるものだと僕は思う。
山田先生のはきっと20代でこの編曲をしたとは思われない。恐らく30代後半か
40代になってからのことだろうとおもう 。人間の年は争えないものだ。年輪ただで刻んだものじゃない。こういうことが分かってくるには、ずっと勉強を続けて20年か30年かはかかるものだ。

近頃の歌は芸術性がほとんど見られない。格調の高い歌に触れることのない今の若者は
気の毒だと思う。今日本をぐるりと見渡して、20代で滝廉太郎ほどの格調とセンスを持った作曲家を一人も見いだせないことに、がっかりする。
どうすれば彼のような音楽芸術家が現れるのか。今の軽薄な世相をひっくり返して、いわゆる「まともな世」になる以外恐らく現れないだろう。