(公)日本刀文化振興会主催、第1回「新作日本刀・刀職技術展覧会」から。
入選
岡山県 安藤祐介
脇差 銘 広康作
長さ35.2cm 反り0.3cm
おおっ!
そうきたか!
しかも、かなり上手。
温故知新、師匠である父君(刀匠安藤広清)のさらに師匠路線を
狙うとは。
刀姿を見た瞬間に懐かしさがこみ上げてきた。
ヤスリが一本突きであるのも泣かせる。
(財)日本美術刀剣保存協会「第6回新作名刀展」(1970年)
入選
東京都 小林 林(刀工登録1970年)
脇差 銘 康宏
長さ 44.9cm
地鉄板目流れ柾まじる。
刃文互の目砂流しかかる。
帽子乱れこんで小丸に返る。
毎日のように手にとって引き込まれるように眺めていた脇差だ。
刀工登録初年度出品でいきなり入選した。
しかし、某権威筋から「古刀のなかごを摺り上げて銘を切るようなこと
してもらっては困る」とクレームをつけられたいわくつきの作品だ。
その時以来、初代康宏は日刀保の新作展に出品するのを拒否した。
新進気鋭の若手、安藤広康刀匠の入選作を見たとき、この初代
康宏の入選作が脳裏に蘇った。
広康刀匠の父安藤広清刀匠は初代小林康宏の弟子だった。
独立後は岡山県津山市で作刀活動をしている。
現在、ご子息も刀工となり、鎚音を響かせている。
作州津山は江戸時代から名工が住している。
また、津山藩松平家伝来だった童子切安綱は天下五剣の
筆頭とされ、現在国宝となっている。
今、世代交代で若い刀工が各地で確実に育ちつつある。
安藤広清刀匠の息子広康刀匠も着実に実力をつけてきている。
未来永劫に人の心に残る深い作品を作ってほしいと切に願う。
未来は若者のものだ。
(安藤広清刀匠は津山にて作刀し、子息広康刀匠は長船に
駐鎚しているようです)
おさふね刀剣の里
『たそがれ清兵衛』の2枚組DVDがたまたま1000円台で
販売されていたので仕事帰りに買ってきた。
ビデオと違ってDVDの面白さは、ボーナストラックでメイキングや
インタビューが収録されていることだ。
今回購入した2枚組は1枚分まるまる製作秘話が収められており、
貴重な別テイクやオミット(削除)映像なども紹介している。
山田監督が実に緻密に自分のイメージに合うように何度も何度も
リテイクや別テイクを撮ったことがわかる。本編を観たときに感じた
作品の丁寧さというのはそうした製作サイドの執念がもたらした
ものだろう。
2枚組DVDでなくとも、本編だけで十分に傑作だ。
その後も藤沢周平の作品は映画化されたが、藤沢周平の世界を
描ききれているかどうかというと、本作が突き抜けているように
感じる。ただ、興行成績としてはキムタクの『武士の一分』の方が
松竹の収益記録を塗り替えるほどにヒットした。
私は個人的には『たそがれ』の方がずっと好きだ。
映画の出来としても本作の方がよい。
『武士の一分』が興行収益の記録を塗り替えたのは、作品主体ではなく、
出演者がどうかという別な要因だろう。普段時代劇など観ない層を
劇場に呼んだという点では成功だったのかもしれない。