YA-1
ヤマハYA-1。
125cc、最高出力5.6PS。
ヤマハ発動機登場以前の日本楽器
製造(現在のヤマハ)が1954年に
作った。
ヤマハ発動機が分社創立された10日
後の1955年7月10日に開催された
第3回富士登山軽オートバイ競争大会
(富士登山レース)でウルトラライト
級で優勝。
同年1955年10月の全日本オートバイ
耐久ロードレース(浅間火山レース)
では、125ccクラスで1位から4位まで
を独占した。
日本の二輪レースは戦前からオーバル
コースでは存在したが、本格的なロー
ドレースは敗戦後に世界最古の英国領
マン島TTレースを模倣して公道での
レースが開催された。
最初の名古屋TTレースはレースとして
は認可されず、パレードとして警察
から許可されたのだが、実質はオリ
エンテーリング的な要素はあったに
せよ、内実は都市部をも使うハードな
公道レースとなった。
富士登山レースや浅間火山レースは
完全な公道レースだ。その後、テスト
コースと称した専用コースで開催
されるように移行した。
当時、日本国内に舗装道路は存在して
いない。すべてアンペイヴロードだ。
それはダート(荒れ土)であったり、
グラベル(さざれ砂利)であったり、
まともな平坦地ではなく、クレイを
叩き締めたダートトラックとも異な
るまさにロードなのにオフロードと
いう道路でレースが開催されていた。
登場した最初からぶっちぎりのヤマハ。
ヤマハは最初から一番だった。
1957年の第2回浅間火山レースでは
ウルトラライト級とライト級の
2レースにヤマハはエントリー。
国内10社がワークスマシンを投入
した熾烈なレースだったが、ヤマハ
は2クラスで優勝した。
完全なフォーク直結のクリップオン
ハンドルのヤマハワークスマシン。
ぶっちぎりである。
ヤマハのオートバイが登場した時に
200社ほどあった他社を寄せ付け
ないぶっちぎりだったヤマハの
名機YA-1は、ナチスドイツ軍が
採用していたドイツのDKW RT125
を参考に作られた。基本的に設計
はコピー。日本の二輪も四輪も
航空機も船舶も、すべて模倣から
始まった。そして、本家を遥かに
抜いてどの分野でも世界一になって
いる。鉄道製作技術、橋やビルの
建築技術、トンネル掘削技術など
は現在でもダントツで日本が世界一
である。まるで戦前のドイツの
技術力が突き抜けて世界一だった
ように。
ドイツDKW RT125。これも名機。
2ストエンジンは軽量コンパクト
でハイパワーのため、安定性が
求められる戦場や軍事使用では
大活躍した。
この1930年代から2010年までの
約80年間は、全世界の実用車や
競技車両は2ストマシンが圧倒的
優位性を持っていた。特に構造上
500ccあたりまでの排気量クラス
で。
その2ストエンジンが優れていると
いう内実は今でも全く過去と同じ
なのだが、排ガス規制という機械
の性能とは別次元の政治力学により
2ストエンジンは強制的に消滅させ
られようとしている。
だが、2022年新規2ストモデルを
競技車両限定だが、世界トップの
「2スト屋」であるヤマハが製造
することを決定発表した。
世界のヤマハ、いまだ健在。
DKW RT125
この戦時中のジャーマンブルーの色の
再現は結構難しい。
タミヤ1/35シリーズのプラモを作って
いた世代の人は、プラカラー(タミヤ
カラー)で最初から塗料があったので
フラットベースを上手く使って再現
していたことだろう(私も)。
しかし、現代オートバイを大戦中の
二輪風にオールドルックにペイント
する際は調色に苦労する。
それも、プロの車両系塗装屋さん
ならば上手く調色で調合するのだ
ろうが、DIYとなると、かなりハードル
が高いだろう。
これは1958年の第1回クラブマン
レース(浅間コース)の貴重な125
クラスレースの映像。
Japanese Motorcycle Race in 50's Mt.ASAMA
浅間火山レース
友人が、この色は何の色かと問う。
最近のオールドルックのミリタリー
350もかっけーぞ。
映画『大脱走』(1963)
作品冒頭に出てくるドイツ軍の
部隊。
オートバイは2ストマシンだ。
2ストモデルは軽量ハイパワーで
故障も少なく、信頼されていた。
戦後日本のヤマハがこれを手本
に2ストオートバイを製作した。
既にチャンバー理論が考案されて
おり、マフラーは単なる排気管
ではなくチャンバー構造になって
いた。
作品中、スティーブ・マックイーン
が演じる米兵ヒルツが奪うドイツ軍
オートバイ。これは模造品で、英国
トライアンフの戦後の直立2気筒の
モデルをドイツ軍二輪風に仕立てて
撮影に使われた。
道路にワイヤー張られて独兵は
転倒して草むらに突っ込み死亡。
乗車兵の軍服と拳銃等装備を
かっぱらったヒルツは、ドイツ
軍を装って、スイスへの国境を
突破しようとする。
だが、失敗。
四方八方から猛然と二輪部隊や
サイドカー軍団、ワーゲン軍団
から執拗に追いまくられる。
ガソリンが乏しいことを確認した
ヒルツは、走行する車両隊の二輪
を奪おうと、ルガーP08での狙撃
を企むが、ドイツ軍の数が多すぎ
るので射撃をとどまる。
もうこうしちゃいられない、と
上に着こんでいたドイツ軍の軍服
も拳銃も捨てて、下に着ていた
米兵捕虜の時の服になって二輪で
の国境越え逃亡を図ろうとする。
この草原のジャンプはマックイーン
本人がやっている。
しかし、あちこちからドイツ軍が
彼を逮捕するために迫ってきた。
絶体絶命。
国境の第一柵越えの大ジャンプを
試みるヒルツ。
これはマックイーンの仲の良い友人
でもあるスタントマンがジャンプし
た。容姿が似ているので遠景では
マックイーンのように見える。
ジャンプ後、あちこちに猛然と走っ
て逃げまくるが、挟みうちで追い
詰められて、バイクに銃撃を食らい、
鉄条網に突っ込んでヒルツの逃走
劇は終了した。生存。収容所に連れ
戻される。脱走した76名のうち、
50名は逮捕後に野原で全員射殺さ
れ、逃げ延びたのは3名のみだった。
「お前はスパイか!?」とドイツ
兵はヒルツに言う。
だが、ヒルツはスパイではない。
「敵軍脱走兵」だ。
戦時において敵軍の軍服を着ると
スパイと見做されて、即銃殺が
通常だ。スパイはどの国でも銃殺
なのだ。ヒルツはスパイと断定
されずにラッキーだった。
日本の今の刑法でも殺人よりも
重い罪がある。それの量刑は死刑
しかない。殺人でさえ無期懲役が
定められているのに、死刑しか
存在しない刑がある。
それは「外患誘致」だ。
裏切者は死刑なのだ。死刑しかな
い。
死刑が当然と法で決められている。
法がどうの以前に、国や人を売り
渡すクズは死刑が当たり前なので
ある。これ日本の常識。世界の常識。
だが、クズ野郎は、法を以てせず
とも、そのうち天罰が必ず下る。
天罰は一気に来ない。徐々に来る。
手始めに天は裏切者のクズを人には
見えない足で蹴ってすっ転ばせて
鎖骨を折らせて入院とかね。
じわりじわりと来る。
天は絶対に見逃さない。
最後にはキュッと終わらせる。
この画像では完全停止で、ブレーキ
を四指で握っているが、走行中の
運転操作を見ると、マックイーンは
ブレーキは人差し指と中指の2本で
操作していた。
フラットトラックでならした彼だが、
フラットトラックマシンにはブレー
キは無い。逆ハン初期スライドで
減速させ、すぐにグリップさせて
旋回し、加速脱出して行く。
ただ、この映画で分かるように、
スティーブ・マックイーンはべら棒
にオートバイの運転が巧い。
トライアンフをまるで50の原付の
ように乗りこなしている。
本物の「乗れる人」。
『荒鷲の要塞』(1968/英米合作)
主演:
リチャード・バートン
クリント・イーストウッド
戦争映画というよりも、スパイアク
ション映画というタッチの作品。
英軍情報部エージェント少佐(R.
バートン)が米軍情報部将校(C.
イーストウッド)と共にドイツ軍
に扮して難攻不落の古城要塞に
乗り込んで二重スパイを暴くと
いうストーリー。
出てくるドイツ兵が全員英語しか
話さない等々、まあ当時あった
マカロニウエスタン風なのだが、
撮影技法や登場車両等の豊富さ
では観るべきところは多い作品。
ただ、大戦当時、独軍に作品で
出てくるオートジャイロは実用化
されていなかったのではと思うが。
特撮もスタジオ合成が多いのだが、
当時としては画期的だった。
また、出てくる軍用機(モック
アップの模型含む)や軍用車を
バンバン破壊するのは金をかけて
いる。再現車ではなく実物だと
したら相当な歴史的遺産の破壊だ
が、破壊シーンは再現車だろう。
そして、この作品はイーストウッド
は例によって大根。セリフの活舌
なんとかしろよ的な。
リチャード・バートンはさすがに
舞台俳優のような歯切れの良い
発音と語調でセリフを独特のリズム
感で発する。彼の持ち味だ。
特に要塞内でスパイを暴く時の活劇
は、もろに舞台劇のようだ。
こうしたバートンの持ち味は、10
年後公開の『ワイルド・ギース』で
の傭兵部隊隊長アレン・フォークナー
の役どころでも存分に発揮されて
いた。
この『荒鷲の要塞』は、劇場で見る
70ミリシネマスコープでの大迫力
(現在日本国内で上映できる映画館
はほぼ無い)と、そして、バートン
の役者ぶりがキモだと思う。
オープニング。
ナチスドイツ軍仕立ての飛行機で
アルプスにエージェントたちが
パラシュート降下して山岳古城要塞
に乗り込む。機体はドイツのJu52
実機を使用している。
そして、要塞で複数のスパイを暴き、
ケーブルカー(架空)で脱出する。
この古城はオーストリアの実在する
城でロケが行なわれたが、ケーブル
カー(日本語のロープウエー)は
実在の別場所の物を合成加工した
らしい。
このシーンのこのカットは、たぶん
絵だろう。CGの無い時代の手描き
の絵。それをキャメラで撮影。
実際の実在の古城でのロケだったの
で、要塞内の造作や景色は見事だった。
ただし、やはり爆破や銃撃で壁穴だら
けのシーンはスタジオ撮影だった事
だろう。
この作品、やたらとスタジオ撮影と
の合成が多い。
オーストリア、ホーエンヴェルヘン城
脱出した英米エージェントたちは
バス改造のラッセルカーを奪い、
ドイツ軍に偽装した友軍航空機が
迎えに来るドイツ軍の山岳空港まで
移動する。
その際、ドイツ軍のオートバイや
車両や航空機を重機のようなラッ
セル車でなぎ倒して破壊しながら
移動して行く。
これ、かなりの予算かけてる。
全部、ぶっ壊す
BMW等の二輪車もどんどんぶっ壊す。
Typ82ワーゲンもばんばん壊す。
爆破や転覆シーンが多いが、そこで
は当然マネキンが使われている。
しかし、実物大車両をリモコン操作
撮影で爆破したり転覆させている。
大迫力。つーか、本物だとしたら
実に歴史的損失。たぶん精巧に作っ
た新作疑似車両だろう。
フォッケウルフFw190風。
飛行シーンは無いのでたぶんモック
アップの実物大模型。
スピットファイアを超える独軍の
名機。
だが・・・
バートン演じるスミス少佐は冷静に
軒並みぶっ壊す!
どっしぇ~、だ。
この映画、やたら車両と航空機を
ぶっ壊しまくる。
しかもオーストラリア・アルプス
の現地のロケ先飛行場でも。
救出のためのドイツ軍に偽装した
ユンカースJu52が故障緊急着陸を
要請して空港に着陸する。
Ju52の実機を撮影に使っている。
管制塔へは「第3爆撃中隊」と操縦士
は言っていたが、機体マークは異な
る。撮影にはスペインのCASA社の
JU52 352/3M を使用。
第二次大戦中のユンカースJu52の写真
Ju52/3m7ge 第9特殊爆撃航空団
第4飛行中隊機
ユンカースJu52はロンドン-ベルリン
間を8時間で飛行する旅客機としても
活躍していた。
旧式化したがドイツ軍は敗戦時まで
輸送機や爆撃機として使用した。
このJu52は1960年代も旅客機として
各国で運用されていた。軍用機として
は1980年代までも運用されたが、
現在はルフトハンザが復活記念飛行
をする以外は現役引退。
だが、動態保存の機体が遊覧飛行等
しており、2018年にスイスで遊覧
飛行中に墜落し、乗員乗客20名が
死亡した。
さて、追ってくるドイツ軍の銃撃
をかわし、ユンカースにエージェ
ントたちは乗り込む。まるで007
映画の如し。
古城の要塞内での銃撃戦などは、
まるで『仮面ライダー』の一作目
のショッカーとの対決のようで
かなりショボい。
だが、この映画が後年の劇画
『ワイルド7』の「緑の墓」の
ベースになっている事がよく
わかる要塞内での長い作戦シーン
だった。
波のように押し寄せるドイツ軍と
の激しい銃撃戦でも、被弾して
死ぬのはドイツ軍のみで、エージェ
ントたちには一発も中らない(笑)。
だが、飛行場から管制塔に向けて
シュマイザー連射で管制官が全員
射殺されたり、キューベルワーゲン
がひっくり返ったり、子ども向け
のアクション番組並みの展開が続く。
爆破銃撃シーンは映画として大掛
かりだが、プロットがなんとも幼稚。
まあ、ジョン・ウエインの騎兵隊
西部劇のような荒唐無稽な話だ。
アクション娯楽作品としてならば
この作品は大アリだろう。
だが、「戦争映画」としては最低
だ。
「悪いドイツ軍と悪者たちをやっ
つける英米軍」という図式しかなく、
戦争映画のテーマである戦争の
惨さを描いて人々に平和の喚起を
促す真骨頂が皆無だ。
これは騎兵隊が「悪い」インディ
アンを殺しまくってヒャッハ~の
ハリウッドウエスタンと全く同じ
で、戦争映画としては下の下の下。
ランボーシリーズと全く同じ作風。
『戦場にかける橋』や『遠すぎた橋』、
『プラトーン』のような作品が
本物の戦争映画だ。捻り過ぎると
『イングロリアス・バスターズ』
のようになるが。
そして、体制は関係ない「権力」
と「民衆」と義勇的愛国テロリ
ストの悲劇をいかんなく描き切った
のがワイダの『灰とダイヤモンド』
だといえる。
現実世界では、戦争で泣くのは
いつも非戦闘員だ。
それが戦争。
「良い戦争」「悪い戦争」という
のは無い。
だからこそ、戦争映画の意味がある。
戦争映画に意味がある。
ドカーン、バキューン、チュドーン
のみを「楽しみたい」向き、それが
戦争映画と思っている層には、この
『荒鷲の要塞』や『ランボー』シリ
ーズは大好物となる映画作品だろう。
現実の戦争の悲哀や悲劇や惨状に
真正面から向かい合おうとしない
のならば、こうした作品群はうって
つけだ。
出てくるドイツ軍がすべて英語しか
話さない、という時点で世の中舐め
てる気がする。
本作はすべてイタリア語で済ます
マカロニウエスタンでしかない。
シンガーソングライターの伊勢
正三さんがかぐや姫時代に作った
「置手紙」という曲はとても良い
曲だが、今回はその曲ではなく
置手紙の文字の話。
これは映画『地獄への道』(1939)
で、ジェシー・ジェームズの妻が
彼に宛てた置手紙だ。
内容はかなりシリアスだが、文字が
とても読みやすい手書きの筆記体だ。
2.95kg。小柄な赤ちゃん。