渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

あるある、ないない

2015年06月20日 | open



放置せずとも、魚や肉を切った包丁は何度洗っても匂いが残る。
精肉を切った包丁のままで他の食材を切る人はいないとは思うが、
防菌の観点からも肉切り包丁と野菜切り包丁は分けたほうがよい。
料理の最中にいちいち肉を切った包丁を洗って熱湯をかけてなど
という処置をしていられないからだ。肉、魚、野菜、他と包丁は分ける
のが料理においては衛生上も好ましい。

で、上掲の件の質問と回答についてだが、私ね、これは日本刀にも
あると思うのよね。あくまで個人的感想ですが。
実際のところ、肉を切る包丁はどんなに表面を磨いても研いでも、
「ましになる」という程度で臭いは残る。これ不思議。
魚用の包丁も、どうして臭いが付着するのかという程に残る。
洗っても磨いても研いでも出刃は魚臭い。丹念に洗ってようやく
「どうにかかすかな匂い程度になった」ということで、臭いは残る。
人切り包丁として日本刀が使われた限り、やはり包丁と同じで
日本刀の刀身にも臭いは付着すると思う。
そして、実際に・・・・日本刀には臭い刀とそうではない刀がある。
これが何を物語るか・・・。
臭いの成分というのは科学的にあるいは化学的にどうなっているのか
よく知らないが、あの研いでも磨いても完全脱臭できないというのは
いささか閉口する。
実戦使用した日本刀に打ち粉を打って油を拭ったり、あるいは油で
清拭したくらいでは臭いは取れなかったことだろうと思う。
幕末の土方歳三の「ことのほか臭う。研ぎに出しても取れない」と
いう言葉にもあるように、やはり日本刀も武器として使われたならば、
包丁の臭いというものと同じ現象が起きていても然りだなと思う次第。
だって、あぁた、胃や大腸が詰まった胴部分を日本刀でぶった斬ったら
刀身はどういうことになるかと想像してください。汚物まみれなのよ。
洗っても臭い取れますかって。

なぜかつては日本刀の刀剣油に丁子油を用いたかというと、それは
平安時代に香が流行ったり、武士が兜の中や戦闘被服に香を焚いた
ように、臭い付け≒臭い消しだったのではなかろうかと思う。
別に江戸期でも、鉱物性ではない行燈用の灯油やびんつけ油や鯨油
や他の油を刀剣油としてもよかったはずだ。
なぜ芳香性の強い丁子油にしたかというと、あれはやはり臭い消しの
意味が強かったのではないか。オーデコロンのように。別な匂いで臭いを
消す、という。

てか、エレベーターの中に残るきつい香水の香り、あれはやめてくれ(笑)。
あれは香りではなく臭いだ、臭い!
香りとはほのかであるからかぐわしい。
俺はコロンとか嫌いだから一切着けないけどさ。

日本刀に関しては、不思議なことをここ数年で発見した。
無味無臭の化学合成油を使うと、日本刀の個体が本来持つ臭いが
蘇ってしまうということだ。まだ完全検証できていないが、これ、かなり
ありそうに現在のところ思える。
丁子油は植物油なので経年変化による酸化で油焼けしてしまう
デメリットがあるため、1970年代に刀剣用鉱物性オイルが開発
された。大田さんの油は非常に優れていて、刀剣柴田他の店舗や
研ぎ師も自家ブランドとして販売しており、国立東京博物館の刀剣室
もこの大田製油を使用しているようだ。皮膜が厚いためか臭いを
封じ込めるのにも一役買っているようだ。

(私が買う時には大人買い)


大田製は非常に優れているが、鉱物油である。
大田氏が原油精製して製造した訳ではない。油を作るのは油脂会社
の企業だ。


ただし、世の中に出回っている刀剣用油には決定的な欠点がある。
それは、成分表示が非公開のため、航空機の中に一切持ち込めない
ということだ。ネルに沁み込ませた物でさえ持ち込めない。
これは機内持ち込みだけでなく、手荷物預けでも拒否される。
私などは日本刀の手入れは、武術用であろうが鑑賞用であろうが、
ネルに浸み込ませた油で刀身を拭ったりはしない。理由はそれは
古い油だから。だから、湯水のように新しい油を毎回使う。
その私は刀剣油のボトルを常に刀と共に持ち歩くが、日本刀専用油
だと、機内に持ち込めないどころか、搭乗の前にボトルごと廃棄処分と
なってしまう。
そこでいろいろ方策を考え、数年かけて実地テストした結果、機内に
公式に持ちこめて、刀身にも悪影響が及ばない油を発見した。
それが管楽器の100%化学合成のバルブオイルだった。
バルブオイルといっても粘度がかなりの品種があり、結構試した。
その結果、落ち着いたのがヤマハのバルブオイル・ビンテージだった。

しかし、防錆成分も入っているので、決して鍔や刀身の中心(なかご)
にバルブオイルを塗布してはいけない。なかごなどは古い錆味が
なくなりかさついて、やがては錆びが落ちて来てしまう。つまり「綺麗に」
なってしまうのだ。なかごや鉄金具にバルブオイルは厳禁だ。
だが、刀身に対してはどうであるのかというと、拭いが剥げ落ちることも
ない。その上皮膜が薄く伸びる(なじむまではまだらになりやすいが
それ以降は薄くのびやかな皮膜を形成する)。

バルブオイルは私個人が人柱となって2年ほど使って良好だったので
この日記で数年前に公開したが、これは航空機内に刀剣油を持ち込め
ずに悩んでいた人たちや、一般的な武用で刀を使う方々に朗報だった
ようだ。日本各地から「使ってみたけどこれはよい」というご連絡を頂く。
良質刀剣油は地方ではなかなか手に入らず、小ビン1本を通販で
取り寄せというのも、送料がかかりすぎるという問題もあった。
楽器用オイルであれば、楽器屋さんがある町ならば管楽器用バルブ
オイルは手に入る。かなりスグレモノであることは間違いないと私自身
は感じているし、なによりも、口だけではなく私自身が愛用している。
ただし、日本刀への使用に際してはあくまでも自己責任でお願いします。

ヤマハ・バルブオイル・ビンテージ(店舗にもよるが630円ほど)


現在は昨年から白いボトルとなったが、私は以前の透明な
ボトルが好きなので、透明ボトルに詰め替えて使っている。
中身は同じなのでアホくさいが、なんというか、気分の問題(笑)