我が家の末っ子はこれから、就活が始まる大学生である。男の子で名前はRと言う。
このRが朝、起きてくると私のプライベートな時間は彼が学校へ向かう時間まで
失われてしまう。
朝なので、家事をしながらTVをつけていたり、パソコンで調べ物をしていたり、
いろいろだが、音楽などを流していると、途端に自分の趣味を押しつけてくる。
強制的にYOUTUBEを延々と見せられる。
彼は母親の期待通りロック少年に育った。高校では軽音部にに所属し、大学では音楽系
サークルともう一個所属している。
母親の期待通りというのは、昔、私もロック大好き少女であった。あの頃はフォークも
好きだった。クラシックも好きだった。生まれ変わったらロックシンガーになりたいと
切に思っていた。
なので、男の子が生まれたので、小さい頃には玩具のギターをあたえ、彼はよく
尾崎の真似をしていた。
Rが生まれた頃は、私の大切にしていたレコードコレクションをほとんど聴けなかった。
それはCDが出てきて、レコード針が無くなっていたのだ。それに3人の子育てで、
ロックをあまり聴かず、ほとんどFMでバロックなどを聴いた時期だ。なので、Rもバロック
が好きだった。遊びから帰って来て私がロストロボービッチのバッハ、無伴奏を聴いている
と「ママ、凄いね~」と感慨深げに言ったので「幼い子は本物の芸術がわかるんだ!」と
驚いたものだが、今考えると単にあのチェロのベース音に驚いただけなのかもしれない。
Rが未だ幼稚園に上がる前の時期にびっくりした事がある。私は昔、レナード・スキナード
の「フリーバード」が大好きだったのだが、結婚してからは聴いた事はなかった。
そのRと散歩していて、小鳥が鳴いた。聴いた事のない鳴き声だった。心の中で
「フリーバードのイントロ部分に出てくる鳴き声の様だな」と思っていたら、Rが「ママ、
この鳥の名前はフリーって言うんだよね?」と聞いたのだ!
私は本当にビックリを通り越したが、その彼は今レナードスキナードが大好きだ。
Rの音楽趣味は変わっている。バーズ、ポコ、イーグルス、CSN、ピンクフロイドの
初期メンバーのなんたら最近はコーラルなどだが、60,70年代の音楽が好きらしい。
流石に私も知らないが、昔聴いていた日本のフォークなどはそれらのグループの影響を
モロに受けていたのだと、Rから教えられた。「プロコルハルムはね元祖プログレだよ」
などと言っている。「青い影」しか知らなかった私は成程と認識を新たにする。
昔、音楽的にというより森一美がだ―い好きで、山本コータロ―とウイークエンドの
ファンだった。申し訳ないが音楽性は?だったが、最近、Rが「岬めぐり」が良いという。
CDも復刻されて2枚持っているが、今聴くと確かにバーズの影響が日本式に
昇華されて、サウンドが素晴らしい。他にこの様なフォークカントリーのグループは
いたのかと、昔気付かなかった所に気付く。何年か前2度ほど、曙橋のライブハウスに
彼らのライブを見に行ってRもとても気に入っていた。
とても興味深く思う事は、昔マイナーだったグループが若い人にも受けている。
日本の音楽で最高のアルバムであると思っている「はちみつぱい」の「センチメンタル通り」
はあの当時知っている人がほとんどいなかったが、2年ほど前Rのサークルの先輩が
学園祭でコピーしていた。リアルタイムではコピーしているバンドは見かけた事が無かった
。小坂忠なども人気だし、むかしメジャーだった日本人のほうが聴かれなくなっている。
そのマイナーなファンだった私は感慨深いものがある。
これは学園祭の時のものだが、後日これを見た鈴木慶一さんご本人から
「良かったよ」と声をかけてもらったそうだ。