Y's クロニクル

旅行等の一生思い出に残る事から日々の小さな出来事まで少しずつクロニクルに残せたら・・・と思っています。

納得いかないヨブ記

2010-11-08 12:58:52 | TV・映画の感想、書評など
   私はクリスチャンでは無い。が、ずいぶんの子供の頃から縁あって折に触れ
   聖書を読んできた。(最近は随分読まなくはなったが)
   読むだけでは無く理解しようと努力もした。あれは理解しようと思う物ではなく
   「解る」物なのだなとも思う。あるご年配の先生が「私のような年にもなれば
   聖書の中に書かれている事に今更ながらに同意せざるを得ない」と仰っていたが
   私もこの年になりうすうすそれに気付く事がある。

   聖書のレトリックは古代の人間の(いや現代ですら)能力で可能だろうか?
   と考える事がある。それほど、整合性の取れた物語だと思う。

   しかしどうしても納得いかない話が「ヨブ記」である。主人公のヨブは全き義人である。
   人間から見ても、神から見ても文句のつけようがないのだ。
   そんなヨブをみてサタンは神をそそのかす。「神様、あんたヨブに絶対だまされて
   ますぜ!あいつは腹黒い奴で結局試練を与えれば、あんたへの信仰なんか
   簡単に捨ててしまいますよ。なんなら賭けても良いですよーん」
   日頃の素行を見れば子供だってこいつは信用ならんよと思いそうなものなのに
   神はそそのかしにのってヨブにあらゆる悲劇の試練を与える。
   そこはやはり人間だもの、ヨブさんだって理不尽な(土地は略奪される、従業員や
   家族までも殺される)神の試練攻撃で神に恨み事を言うようになる。
   あったりまえだよね~神様ってお馬鹿さん?と思いたくなる。
   最後はヨブの揺るぎない神への信仰が解って神様もヨブを許すんだけどさ、
   ヨブさんは長生きして、新しい家族にも財にも恵まれたらしいけどね。
   以前の家族を奪われた悲しみは消えないんではないの?

   このヨブ記はいろいろな芸術家や作家にも影響を及ぼし作品のテーマとなって
   いるらしい。そうそうユングの「ヨブ記の解釈」的な本を読んだが、
   あれはちょっとはこの物語を理解するヒントにはなったな。

   今日なぜ急に聖書の話かと言うと、来月にクリスマスが近づいて来たからではない。

   夫の大学時代の大の友人が先週末に亡くなったからだ。友人たちは大ショックを
   受けている。膵臓がんで亡くなったのだが、50代とは若すぎる。
   夫は見送る事は出来なかったが、昨日は「本当にくやしい」と泣いていた。
   親が亡くなった時ですら、あんなに泣かなかったのに。
   京都と東京で最近は会えなかったが、私達の結婚式の司会もやってもらった。
   夫は「なんであんな元気で、それにあんな良いやつはいなかったんだ、
   医者の息子のくせになんで病気に早く気が付かなかったんだ、馬鹿野郎と
   いいたいよ」と言っていた。
   
   この年になると本当に理不尽な事がいっぱいあると解り空しくなってしまう。
   そういう人達の為に祈るしか出来ないのだから。
   そう言う時必ずヨブさんを思う。納得できなさと共に。