1989年この年も終わろうとしていた12月、株価は過去最高値を更新した。その翌年1990年からの10年間を失われた10年と言う。それから現在までの間にITバブルという局所的な好景気も出現したが本来の意味での日本の経済の復興ではなかった。その証拠に2008年に起きたリーマンショックは又しても日本を不景気の波へと誘った。
その頃欧米諸国に比べ日本は影響が少なく、いち早く立ち直るだろうと希望的観測が大半を占めていたが、そもそも日本の経済に自立性など無かったのだ。
今日、円は独歩高の様相を呈しているが本来なら円が強くなった事は日本経済にとって喜ばしい事なのだ。しかしながら失われた10年そして現在に至る10年合わせて20年の間に日本は従来の輸出に頼る電器、自動車等の産業からの産業転換を何も成し遂げなかった。政権は短命となりこの20年に何人の総理が誕生した事だろう?この事と産業におけるパラダイムシフトが進まなかった事は無関係ではないだろう。
今ここにきて一筋の光明が見えて来た。TPPである。日本は現在FTA(自由貿易協定)をシンガポール・タイ等と結んでいるが米国、EU、中国、韓国とはこれが無い。新しい産業の掘り起こしを怠ってきたツケで未だに電器・自動車産業の景気いかんで国の経済が左右されるのならばTPP締結は絶対条件だろう。日本の農業がダメになるとか、自給率が下がるという反対意見があるが、また別の次元で考えるべき問題であり国内の経済を活性化させなくてはならない今、またぞろ昔の農業票が命の議員の反対で時期を逸してはならないと思う。日本がTPPを締結すれば、EUを上回る経済圏が出現する事になる。今や経済に垣根など作ってはいけないし人口わずか1億人の島国が自国のみでの発展等ありえないのだから。
これと似たような話が日本のゴルフ界にある。現代の商業スポーツはこの経済状況に大きく影響される。今朝のスポーツ新聞で今年USPGAツアーに本格参戦したロウリー・マキロイが撤退しヨーロピアンツアーに復帰するというのだ。今現在のヨーロピアンツアーはすそ野が非常に広い。今年のヨーロピアンツアー選手の台頭をみてもこの広いフィールドで切磋琢磨した結果と言えるだろう。現に世界ランクNO1は英国のリー・ウエストウッドだ。レース・トゥー・ドバイに象徴されるようにヨーロピアンツアーの資金はUSPGAツアーを凌ぐものだった。ドバイショックで減額されてもUSPGAと互角の資金力を誇る。マキロイが「米国は合わないから」と言って撤退したのも結局このようななんの遜色も無くなったヨーロピアンの影響があるからだろう。そのUSPGAはタイガーの出現によってバブルになりそしてタイガーのよもやのスキャンダルからの失速で弾けつつある。経済の面から見ても非常に興味深いのはタイガーがプロデビューしたのは97年でアメリカの景気後退の年月が最長となる1年前である。その時期救世主のようにタイガーは現れUSPGAを世界の中で確固たるものとした。
この日本で似たような話が石川遼の出現である。男子ゴルフのどん底の低迷、国内経済も怪しくなってきた時期に彗星のように現れ、現在の男子ゴルフ界を牽引している。離れそうになったスポンサーもここ数年の景気では考えようがない位留まり、また新規のトーナメントまで創設された。ただ、タイガーやヨーロピアンの一流選手との相違は彼はゴルフ後進国に出現してしまった事だろう。ヨーロッパのようにアフリカやこれからは中国迄巻き込むと言った広いフィールドがない。またアメリカの様な世界的な一流の集まったフィールドでもない。おそらく、オリンピックを睨み南米などから才能あふれる選手がまたアメリカに流入するだろう。石川遼の父親は遼君が日本に留まり(今の人気を利用して)ゴルフファンが増えスポンサーを増やし日本からビックトーナメントに行くのではなく、世界の一流選手が日本でのビックトーナメントに出場するようになる事が夢で、それが遼君の使命だと考えているらしい。なので、日本ゴルフに所属する石川遼が世界のビックタイトルを手にし、日本のゴルフの質の高さを証明したいとの気持らしい。日本人で世界に飛び出し夢破れた選手は多い。それだけレベルが違うのだろう。ならば日本は比較的楽にポイントが貰えるのでその資格で世界の大きな試合に出た方が合理的では有る。世界レベルの試合で勝てずともジャンボ尾崎のような国内のみでの一大ムーブメントも起こせる。しかしこれは先のPTTと同じで垣根を取り払わないで自国の保護を行えば、国内は空洞化してしまうのである。ゴルフもそのフィールドで学ぶ事をしないで、甘い夢ないしは安全性のみを求めるならば結局国内のゴルフは衰退するだろう。